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会社都合退職と自己都合退職の違いは?弁護士を徹底解説!

会社都合退職と自己都合退職の違いは?弁護士を徹底解説!

退職をする際にどのような理由で退職するかによって、失業手当や再就職の際に影響します。

退職理由はおおまかに会社都合退職と自己都合退職に分けられるのですが、具体的にどのような退職理由がこれにあたり、どのような影響を受けるのでしょうか。

このページでは、会社都合退職と自己都合退職の違いを中心にお伝えします。

1.会社都合退職と自己都合退職の違いとは

会社都合退職と自己都合退職の違いにはどのようなものがあるのでしょうか。

1-1.会社都合退職とは

会社都合退職とは、会社の都合によって労働者が退職を余儀なくされることを指す一般的用語です。

労働者が退職をする理由には様々ありますが、その中でも会社の都合によって退職する場合をいいます。

ただ、自己都合退職として退職した場合でも、会社の都合や正当な理由で勤務することが難しくなった場合には、会社都合退職と取り扱うこともあります。

履歴書に記載するときには「会社都合により退職」と記載します。

雇用保険(失業手当)との関係で会社都合退職として有利に取り扱われる、「特定受給資格者」「特定理由離職者」について詳しく確認しましょう。

1-2.特定受給資格者に該当する場合

雇用保険(失業手当)との関係で会社都合退職として扱われる要件である「特定受給資格者」には次のようなものがあります。

1-2-1.「倒産」等により離職した者

まず、倒産等により離職した者として次の4つが挙げられます。

(1) 倒産(破産、民事再生、会社更生等の各倒産手続の申立て又は手形取引の停止等)に伴い離職した者

(2) 事業所において大量雇用変動の場合(1か月に30人以上の離職を予定)の届出がされたため離職した者(※)及び当該事業主に雇用される被保険者の3分の1を超える者が離職したため離職した者
※事業所において、30人以上の離職者が生じることが予定されている場合は、再就職援助計画の作成義務があり、再就職援助計画の申請をした場合も、当該基準に該当します。
また、事業所で30人以上の離職者がいないため、再就職援助計画の作成義務がない場合でも、事業所が事業規模の縮小等に伴い離職を余儀なくされる者に関し、再就職援助計画を作成・提出し、公共職業安定所長の認定を受けた場合、大量雇用変動の届出がされたこととなるため、当該基準に該当します。

(3) 事業所の廃止(事業活動停止後再開の見込みのない場合を含む。)に伴い離職した者

(4) 事業所の移転により、通勤することが困難となったため離職した者

特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要|ハローワークインターネットサービス

事業者の移転により通勤することが困難となったため離職した場合、形式的には自己都合退職となるのですが、会社都合と同視すべき場合であることから、会社都合とされています。

1-2-2.「解雇」等により離職した者

解雇等により離職した者には次のものが挙げられます。

(1) 解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く。)により離職した者

(2) 労働契約の締結に際し明示された労働条件が事実と著しく相違したことにより離職した者

(3) 賃金(退職手当を除く。)の額の3分の1を超える額が支払期日までに支払われなかっ
たことにより離職した者

(4) 賃金が、当該労働者に支払われていた賃金に比べて85%未満に低下した(又は低下することとなった)ため離職した者(当該労働者が低下の事実について予見し得なかった場合に限る。)

(5) 離職の直前6か月間のうちに[1]いずれか連続する3か月で45時間、[2]いずれか1か月で100時間、又は[3]いずれか連続する2か月以上の期間の時間外労働を平均して1か月で80時間を超える時間外労働が行われたため離職した者。事業主が危険若しくは健康障害の生ずるおそれがある旨を行政機関から指摘されたにもかかわらず、事業所において当該危険若しくは健康障害を防止するために必要な措置を講じなかったため離職した者

(6) 事業主が法令に違反し、妊娠中若しくは出産後の労働者又は子の養育若しくは家族の介護を行う労働者を就業させ、若しくはそれらの者の雇用の継続等を図るための制度の利用を不当に制限したこと又は妊娠したこと、出産したこと若しくはそれらの制度の利用の申出をし、若しくは利用をしたこと等を理由として不利益な取扱いをしたため離職した者

(7) 事業主が労働者の職種転換等に際して、当該労働者の職業生活の継続のために必要な配慮を行っていないため離職した者

(8) 期間の定めのある労働契約の更新により3年以上引き続き雇用されるに至った場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者

(9) 期間の定めのある労働契約の締結に際し当該労働契約が更新されることが明示された場合において当該労働契約が更新されないこととなったことにより離職した者(上記(8)に該当する場合を除く。)

(10) 上司、同僚等からの故意の排斥又は著しい冷遇若しくは嫌がらせを受けたことによって離職した者、事業主が職場におけるセクシュアルハラスメントの事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者及び事業主が職場における妊娠、出産、育児休業、介護休業等に関する言動により労働者の就業環境が害されている事実を把握していながら、雇用管理上の必要な措置を講じなかったことにより離職した者

(11) 事業主から直接若しくは間接に退職するよう勧奨を受けたことにより離職した者(従来から恒常的に設けられている「早期退職優遇制度」等に応募して離職した場合は、これに該当しない。)

(12) 事業所において使用者の責めに帰すべき事由により行われた休業が引き続き3か月以上となったことにより離職した者

(13) 事業所の業務が法令に違反したため離職した者

特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要|ハローワークインターネットサービス

形式通りに解雇された場合のみならず、会社の都合によって辞めざるを得なかったといえる場合が広く挙げられています。

よくある例として、長時間残業が常態化しており、1ヶ月で100時間、連続する2ヶ月以上の平均が月80時間を超えるような場合には、たとえ自己都合退職で退職した場合でも、(5)によって会社都合退職とすることができます。

1-3.特定理由離職者に該当する場合

次に会社都合退職として取り扱われる、特定理由退職者について確認しましょう。

1.期間の定めのある労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことにより離職した者(その者が当該更新を希望したにもかかわらず、当該更新についての合意が成立するに至らなかった場合に限る。)(上記「特定受給資格者の範囲」の2.の(8)又は(9)に該当する場合を除く。)(※補足1)

2.以下の正当な理由のある自己都合により離職した者(※補足2)

(1) 体力の不足、心身の障害、疾病、負傷、視力の減退、聴力の減退、触覚の減退等により離職した者

(2) 妊娠、出産、育児等により離職し、雇用保険法第20条第1項の受給期間延長措置を受けた者

(3) 父若しくは母の死亡、疾病、負傷等のため、父若しくは母を扶養するために離職を余儀なくされた場合又は常時本人の看護を必要とする親族の疾病、負傷等のために離職を余儀なくされた場合のように、家庭の事情が急変したことにより離職した者

(4) 配偶者又は扶養すべき親族と別居生活を続けることが困難となったことにより離職した者

(5) 次の理由により、通勤不可能又は困難となったことにより離職した者

(a) 結婚に伴う住所の変更

(b) 育児に伴う保育所その他これに準ずる施設の利用又は親族等への保育の依頼

(c) 事業所の通勤困難な地への移転

(d) 自己の意思に反しての住所又は居所の移転を余儀なくされたこと

(e) 鉄道、軌道、バスその他運輸機関の廃止又は運行時間の変更等

(f) 事業主の命による転勤又は出向に伴う別居の回避

(g) 配偶者の事業主の命による転勤若しくは出向又は配偶者の再就職に伴う別居の回避

(6) その他、上記「特定受給資格者の範囲」の2.の(11)に該当しない企業整備による人員整理等で希望退職者の募集に応じて離職した者等

特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要|ハローワークインターネットサービス

特定理由離職者については主に有期契約社員の雇止めや、自己都合退職についてやむを得ない理由がある場合です。

1-4.自己都合退職とは

自己都合退職とは、上記以外の労働者が自分の意思で退職することをいいます。

従来勤務している会社から、スキルアップ・新しいチャレンジをしたい・より待遇の良い会社に行きたいなどの理由から退職するような場合が多いといえます。

再就職のための履歴書に記載する場合、「一身上の都合により退職」とのみ記載します。

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2.「自己都合退職」のメリット・デメリット

退職にあたって自己都合退職とすることのメリット・デメリットには次のようなものがあります。

2-1.自己都合退職のメリット

自己都合退職のメリットとしては、退職理由について会社都合退職よりも、転職活動にあたって追及されづらい点が挙げられます。

会社都合退職には、上記のように様々な理由があり、中には再就職にあたってマイナスの要素となるものもあります。

自己都合退職をする場合には、退職理由については会社都合退職よりも追及されづらく、転職活動がスムーズに進みやすいといえるでしょう。

2-2.自己都合退職のデメリット

自己都合退職のデメリットとしては、失業手当について会社都合退職に比べて不利であることです。

会社都合退職の場合にはまず、雇用保険の加入期間について、会社都合退職の場合は1年の間に通算6ヶ月以上の加入期間があれば良いとされますが、自己都合退職の場合は2年の間に通算12ヶ月以上の加入期間が必要となります。

また、支給開始日についても、会社都合退職の場合には申請から待機が7日で支給開始されますが、自己都合退職の場合には7日の他に2ヶ月の待機期間があり、支給が開始される時期が2ヶ月遅れます。

さらに、失業手当の給付日数についても、会社都合退職のほうが自己都合退職よりも長い給付日数が設定されています。

例えば、40歳の労働者が退職し、雇用保険加入期間が15年ある場合、会社都合退職の場合給付日数は240日なのですが、自己都合退職の場合には給付日数は120日にとどまります。

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3.「会社都合退職」のメリット・デメリット

会社都合退職のメリット・デメリットは次の通りです。

3-1.会社都合退職のメリット

会社都合退職のメリットは、上述したとおり自己都合退職に比べて失業手当の給付が有利であることです。

生活のための十分な資金に乏しいような場合でも、待機期間が7日で給付が始まるため、すぐに生活のための資金を得ることができます。

また給付の期間も長いことから、じっくり転職活動ができるといえます。

3-2.会社都合退職のデメリット

会社都合退職のデメリットは、転職活動の際に会社都合で退職した理由を追及されやすいことです。

上述したように、会社都合退職の中には、転職活動をするにあたって不利になるものも含まれています。

転職のための面接では、会社は必ず確認するので、会社都合退職の内容によっては不利となることもあります。

しかし、例えば会社が倒産したような場合で、会社の倒産に関係のない職種であるような場合(例:経理・人事・総務など)、あまり気にする必要も無いといえるでしょう。

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4.会社都合退職に関してよくあるトラブル

会社都合退職に関してよくあるトラブルとしては、本当は会社都合退職であるにもかかわらず、自己都合退職として処理がされることが挙げられます。

会社都合退職か自己都合退職の取り扱いについては、基本的には退職の際に渡される離職票によって決められます。

会社は労働者が退職すると、加入していた雇用保険の資格喪失の手続きが必要です。

この際に会社がハローワークに退職事由を申告し、ハローワークは申告された退職事由に基づいて会社都合退職・自己都合退職の該当するものを記載した離職票を発行し、会社はその離職票を本人に送付します。

離職票を手に入れた労働者は、ハローワークに赴いて失業手当の受給に関する手続きを行うことなります。

トラブルになるのは、会社が本来は会社都合退職であるにも関わらず、自己都合退職として処理している場合です。

労働者としては会社都合退職として失業給付を受け取ろうとしているにも関わらず、会社から発行された離職票では、自己都合退職として取り扱われるため、本来の給付を受けられなくなる可能性があるのです。

4-1.会社が退職事由を偽る理由

会社が退職事由を偽る理由としては、雇用調整助成金などの受け取りに影響することが挙げられます。

補助金・助成金を受け取るための要件として、会社都合退職者の数が問題となることがあるため、補助金・助成金を受け取るために自己都合退職と偽ることがあります。

4-2.会社が退職事由を偽った場合の対応方法

会社が退職事由を偽った場合にはどのようにして対応すれば良いのでしょうか。

退職事由については、離職票の記載によって形式的に決められるわけではなく、実質的にハローワークが判断をします。

そのため、離職票には自己都合退職とされている場合でも、本当は会社都合退職に該当することを、ハローワークで手続きをする際に説明します。

その際に、会社都合退職のどの要件に該当するのか、その証拠となる資料を一緒に提出できるようにしましょう。

たとえば、残業時間が100時間を超えていたような場合は、タイムカードなど残業時間の実態を説明できる証拠を示します。

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5.退職に関するトラブルを弁護士に相談、依頼するメリット

退職に関するトラブルを弁護士に相談・依頼するメリットは次の通りです。

5-1.法的なサポートを得られる

会社都合退職・自己都合退職に該当する場合についてご覧いただいたように、退職に限らず、労働問題に関する法律は非常に細かく難解です。

また、労働問題の解決のためには、証拠に関する知識や、民事訴訟・労働審判などの手続きに関する知識などが欠かせません。

相手と交渉する場合には、相手の主張の当否をすぐに判断する必要もあり、非常に困難を伴います。

弁護士に相談・依頼すれば、法的なサポートを得ることができるので、法的問題の整理や手続きの進行をスムーズに行えます。

5-2.他の労働問題が無いか併せて検討ができる

他の労働問題が存在しないか併せて検討が可能です。

退職事由について偽るような問題行動を起こす会社は、労働時間の上限に関する法律を守っていない、残業代の適切な支払いをしていない、など多数の労働問題が発生することも珍しくありません。

弁護士に相談すれば、相談の過程で他の労働問題・法律問題が無いか併せて検討してもらうことができ、会社との関係を一気に解決することが可能でしょう。

5-3.会社との交渉を任せることができる

会社との交渉を任せることが可能です。

退職に関する問題・労働問題の解決には、相手との度重なる交渉は避けて通れません。

退職事由を偽るような会社の場合、労働者が何か請求するような場合、非常に厳しい態度で臨んでくることも珍しくなく、精神的に負担となることもあります。

弁護士に依頼すれば、会社との交渉を任せてしまうことが可能なので、精神的な負担を軽減することが可能です。

5-4.弁護士への相談は無料でできる

弁護士への相談をする際には通常は30分5,000円程度の費用がかかります。

しかし、市区町村では弁護士に無料で相談できる制度があったり、一定の収入要件を満たせば法テラスでも無料で相談が可能です。

また、地域の弁護士会が無料相談を実施していることもあれば、弁護士の中には相談料を無料としていることもあります。

これらの無料の法律相談を上手に活用しましょう。

法律事務所リーガルスマートでも初回60分無料の法律相談を実施しているので、是非ご活用ください。

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6.会社都合退職に関するよくあるQ&A

会社都合退職や退職事由に関するよくあるQ&Aとしては次のようなものがあります。

6-1.自己都合退職に納得がいかない場合は会社都合退職へ変更が可能ですか?

会社都合退職が相当であるのに、自己都合退職として処理された場合でも、会社都合退職に変更することは可能です。

この場合上述したように、ハローワークで失業手当の手続きをする際に、どのような事由にあたって会社都合退職であるのが相当かを、裏付け資料とともに提出するようにしましょう。

6-2.退職事由を勝手に変更されたのは労働基準監督署に相談できませんか?

退職事由を勝手に変更されたことについて、会社に強い影響力を持つ労働基準監督署に相談できないのでしょうか。

労働基準監督署は労働基準法などの法律を遵守させることを目的とした機関であり、失業手当を定めている雇用保険法はハローワーク(公共職業安定所)が管轄しています。

そのため、ハローワークで相談するのが良いでしょう。

6-3.そもそも離職票をもらえない場合どうすればいいですか?

会社都合退職・自己都合退職のどちらにされているか確認するには、会社から送られてくる離職票によって判断します。

しかし、そもそも会社が離職票を送って来ないようなケースもあります。

離職票を送ってこないことは、雇用保険法に違反する行為で、刑事罰も規定されているので、会社に対して厳重に抗議を行いましょう。

それでも会社が送ってこないような場合には、ハローワークで再発行してもらうことができるので、ハローワークに相談してみましょう。

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7.まとめ

このページでは、会社都合退職と自己都合退職の違いについてお伝えしました。

再就職の際の退職理由の説明と、失業保険の受け取りにあたって区別が問題となり、特に後者では受け取れる失業保険の内容に違いが出るなど、どちらと扱われるかは重要な問題です。

会社都合であるにも関わらず自己都合退職とされているような場合にはハローワークに相談してみましょう。

ほかにも心配となるような労働問題がある場合には、まずは弁護士に相談してみましょう。

私たち法律事務所リーガルスマートは、退職に関するトラブルをはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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