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支給前に退職してもボーナス(賞与)は受け取れる?弁護士が解説

支給前に退職してもボーナス(賞与)は受け取れる?弁護士が解説

会社によっては、定期的に「ボーナス(賞与)」が支給されることがあります。

しかし、従業員の事情などによっては、ボーナス支給前に会社を退職してしまい、ボーナスを受け取れなかったということがあるかもしれません。

本記事では、支給前に退職してもボーナスを受け取ることができるのかについて弁護士が解説します。

1.そもそもボーナス(賞与)とは

まずは、そもそもボーナス・賞与とはどのようなものであるのか、その基本的な部分について解説します。

1-1.ボーナス・賞与とは何か?

「ボーナス」や「賞与」と呼ばれるものは、固定給が支払われている労働者に対して、その固定給とは別に支払われる給与のことです。

よく、ニュースなどで「夏のボーナス」とか「冬の賞与」などといわれているように、多くの場合は夏と冬の年に2回のタイミングで支払われることが多いですね。

一般的に「月給の〇か月分」というように、基本となる給与に連動して賞与の金額が決まるケースが多いですが、企業によっては直近の業績や会社の決算時の業績などに依存して、支払われる賞与の金額が決まるケースもあります。

一般的な企業・組織においては賞与に関する法的な決まりはありませんが、公務員に関しては法令による定めがあり、期末手当と勤勉手当という2種類の手当の合計額が賞与として支給されることになっているのです(支給日は夏が6月30日で冬が12月10日)。

一般企業の場合は法律上必ず支払わなければならないというものではなく、会社側が賞与を支払うと決めた場合のみ労働条件に加わり、従業員に対する賞与の支払い義務が生じます。

賞与を楽しみして日々の労働をこなしているという方も多く、それゆえに支払いのタイミングや金額によっては会社側とトラブルになるケースも決して珍しくありません。

労使関係におけるトラブルの解決には法律の知識とトラブル解決の経験が生かされますので、労使関係のトラブルに強い弁護士などの専門家の力を借りることをおすすめします。

1-2.ボーナス(賞与)と給与の違い

ボーナス・賞与と通常の給与・給料の最大の違いは「支払い義務の有無」についてです。

先ほども触れていますが、公務員の場合は別として、一般企業の場合は会社側が労働契約や就業規則などにおいて「賞与を支払う」と明言していない限り、賞与の支払い義務を法的に負うわけではありません。

一方で通常の給与の場合は、月給制のような固定給の場合は毎月1回以上の支払いが法律によって義務付けられています。

きちんと勤務実績がある期間における月給については必ず支払うことが義務付けられている一方で、賞与については会社において定めている規定がない限り支払う必要性は絶対的ではありません。

また、賞与に関しては法的に定めがない(公務員を除く)ため、年に1回だけ賞与を支給したり、年に3回以上支払うことも可能ですし、その金額についても個人や部署ごとの業績や会社全体の業績に依存しても問題ないのです。

このように、どちらも「従業員に支払う」という点では共通していますが、細かい法的なルールの有無やその内容については大きな違いがある点に注意が必要です。

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2.ボーナス支給日前に退職した場合

会社においてボーナス・賞与の支給がある可能性があるとしても、問題になるのは「賞与の支給日以前に退職してしまった」という場合です。

この場合だと、労働者は賞与の計算期間中に勤務実績がある場合だと、それに見合った賞与を受け取ることができるのでしょうか。

2-1.(1)労働契約における、ボーナスに関する規定のチェックポイント

賞与の支払いに関するルールについては、その会社が定めている就業規則や、雇用契約時に締結した契約内容をチェックすることが重要です。

チェックするべき項目は、主に以下の3つになります。

  • ボーナス支給にかかる算出期間
  • ボーナスの支給時期
  • 支給日在籍条項の有無

もし、就業規則や労働契約の内容をチェックしてもこれらの項目が見つからない、もしくは記載されている内容が分かりにくい場合において、賞与の支払いについてトラブルになってしまった場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

2-2.(2)ボーナス支給日前に退職した社員には、会社はボーナスを支払う義務がない?

就業規則などのチェックにおいて最も重要なのは「支給日在籍条項の有無」です。

支給日在籍条項とは、賞与の支給において、その支給日に会社に在籍していない従業員については、賞与の支払い義務が発生しないというルールとなります。

賞与の支払いにおいては、一定の期間を賞与の金額を決定する算出期間として定めておいて、特定の支給日にその金額を賞与として支払うという仕組みです。

もし、6月30日を賞与の支払い時期として定めている場合において、6月20日にすでに退職してしまっている場合は、支給日在籍条項が就業規則等において定められている場合はその従業員は賞与の支払い義務から外れてしまいます。

賞与の支払い義務から外れているため、仮に算出期間において勤務実績がしっかりとあり、勤務態度等に問題がなかった場合であっても、会社側は賞与を支払わなくても違法とはなりません。

「算出期間中に会社に在籍していたのだから、会社への貢献に応じて賞与が支給されないのは違法だ!」と主張したくなるでしょうが、法律上も会社側に支払いの義務はないため、このケースでは適法となります。

2-3.(3)ボーナス支給日前に退職しても、ボーナスが貰える可能性があるケース

基本的に、支給日在籍条項が定められている会社の場合は、賞与の支給日よりも前に会社を退職している場合、賞与の請求権は認められていません。

逆に言えば、就業規則や労働契約において支給日在籍条項の項目がとくに定められていない場合であれば、会社は支給日より前に退職した従業員に対しても賞与を支払う可能性があります。

また、会社を退職する理由が「会社都合による解雇」である場合も、会社から賞与が支払われる可能性があるのです。

ほかにも、会社の決定や労使の合意、支給の慣行などがあればそれに従い、賞与を支給する必要があります。

こうした問題はデリケートなことが多く、仮に会社に請求するとしても時間と手間がかかるケースが多くなるため、それでも賞与を会社に請求したいのであれば就業規則などの情報を持ち帰って弁護士に相談し、今後の行動について話し合うと良いでしょう。

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3.ボーナス支給日後に退職した場合

今度は賞与の支給日前の段階で退職した場合ではなく「賞与の支給日後に退職した場合」について解説します。

3-1.(1)ボーナス支給日後の退職を計画しても大丈夫?

会社の就業規則などに支給日在籍条項が定められている場合であれば、ボーナス支給日を過ぎて計画的に退職したとしても、賞与の支給については差し支えはありません。

たとえば「6月30日の賞与支給を見越して7月1日付で退職する」という計画をする方もおられると思います。

仮に、すでに出社せずに有給休暇を消化中の状態であっても、その間に会社に籍が残っている限りは賞与の支給対象とするのが原則です。

これについては「賞与支給日に在籍していれば賞与の支給対象となる」という、支給日在籍条項の逆の意味をとってみても差し支えない内容となりますので、誰に何を言われようが問題はありません。

「賞与の算出期間中に勤務実績がきちんとある」「賞与の支給日に会社に在籍している」という2つの条件を満たしているにも関わらず、退職を理由に賞与の支給を渋られている場合には、弁護士に相談して賞与を支給してもらうよう交渉することをおすすめします。

3-2.(2)ボーナス後の退職は、支給はされるが減額される可能性もある

賞与の支給日後のタイミングで退職しても基本的には問題にならないのが原則ですが、就業規則や労働契約において、「ボーナスの算定基準に将来への期待値を含む」ことが具体的に示されている場合は、賞与の支給額が減額される可能性があります。

賞与の基本原則としては、これまでの算出期間において会社に大きな功績をしたことに対する報酬の意味合いと、これからの会社への貢献・活躍を期待して支払う金額の2つが合わさっており、このうち将来への期待については会社を退職する以上は望むことができません。

ただし、仮に就業規則等において賞与に将来の期待値が含まれているとしても、それを過剰に評価して、賞与の支給額を大幅に減額することは認められていません。

過去の裁判例においても、退職予定者に対して賞与を通常の82%減という大幅削減をしたことで適法性が争われた事例があり、この事例においては過去の貢献に対する報奨という賞与の性格が含まれることを考慮して将来の期待部分は20%程度が妥当であると判断されました。

このように、就業規則や労働契約の内容次第では、賞与支給日後の退職においては賞与の支給額が減額されるリスクはあるものの、それが過剰に評価されれば不当であるとして裁判で争うことが可能です。

ただし、裁判で争うにあたっては法律の知識が必要ですし、手続きには時間と手間がかかりますので、弁護士に相談して今後の対応についてアドバイスをもらって、手続きの代理を依頼することをおすすめします。

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4.円満に退職するための方法や注意点

ボーナス・賞与の支給タイミングの前後で会社を退職するとなると、賞与の支給においてトラブルに見舞われる可能性を考慮しなければなりません。

賞与をきちんと支給してもらい、円満に会社を退職するためには、いくつか注意しなければならないポイントがあります。

4-1.辞めるタイミングを決めるときに注意すべき2つのポイント

賞与をきちんと支給してもらったうえで会社を退職するためには、「賞与の支給日に会社に在籍していること」と「賞与の支給前に退職予定を知らせずに支給後に退職届を提出すること」の2つのポイントが重要です。

賞与が支給されるタイミングの頃に会社を退職しようと検討している場合であれば、賞与が問題なく支給されて、そのうえで賞与が減額されることがないタイミングでの退職を目指すのが最も賢明な選択肢となります。

退職のスケジュールを立てる前の段階で、必ず所属している会社の就業規則と労働契約の内容をしっかりとチェックしてください。

賞与の支給日在籍条項が定められているのか、それに算定基準に将来への期待値が含まれているのかを確認したうえで、退職予定者に対する減額率が明記されているのかをチェックします。

これらの情報を考慮したうえで、退職するタイミングを見計らったうえで、会社に対して退職願いを提出するのが妥当な選択肢です。

もし、就業規則等を確認しても適切な退職タイミングがわかりにくいという場合には、専門家に相談して適切なタイミングをアドバイスしてもらうと良いでしょう。

4-2.ボーナス支給日前後に大きな業績を残したような場合は要注意

もし、賞与の支給日の前後のタイミングにおいて、会社に対して大きく貢献するような大きな業績を残している場合には、退職のタイミングを大きくずらす必要が出てくるかもしれません。

先ほども説明していますが、賞与の算定基準は「月給の〇か月分」とする会社が多いですが、会社によっては個人や部署ごとの業績によって賞与の金額が大きく左右されるというケースもあります。

営業職のように個人の成績が明確にわかるような仕事をしている場合だと、個人の貢献度が賞与に大きく左右されることになり、賞与支給日の前後の成績は次の賞与の金額に影響することになるわけです。

つまり、賞与の支給日前後に大きな業績を残した場合において賞与の支給日前後に退職するということは、次に大きくもらえる可能性がある賞与を捨ててまで退職するということになります。

もちろん、転職先の都合などにも影響するので賞与だけを考慮して退職スケジュールを調整することは現実的ではないケースもありますが、もし次の職場がまだ決まっていない場合であれば、次の賞与支給日まではその会社に在籍しておいたほうが経済的なメリットが大きくなる可能性が高いことを考慮しましょう。

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5.ボーナスに関するトラブルに発展するケース

ボーナス・賞与の支給日前後に退職する場合だと、状況次第では大きなトラブルに発展する可能性があります。

たとえば、以下のようなケースだと、退職することによって賞与が十分に支給されない可能性が出てくるのです。

  • 支給日在籍条項を満たしていたのに退職を理由として賞与が支給されなかった
  • 会社の都合で賞与の支給日が遅延したため支給日在籍条項の対象になって不支給となった
  • 会社都合の解雇を受けたのにそのうえで賞与が支給されなかった
  • 退職する予定であることを理由として賞与に不当に大幅な減額を受けた
  • 賞与の支給後に退職したところ全額または一部の返還請求を受けた
  • 就業規則や労働契約に賞与についての内容がきちんと書面化されてなかった

賞与は決して少なくない金額をもらえる制度であり、賞与を受け取る条件を満たしているにもかかわらずそれが十分に受け取れなかったり返還請求を受けることは不当な扱いとなります。

どういったトラブルで賞与の受け取りに問題が生じるかはケースバイケースではありますが、労働者側に問題がないケースでは、適切な対応をとることによってこの問題を解決し、問題なく賞与を受け取ることができる可能性は出てくるでしょう。

詳しくは次の項目において解説しますが、基本的には労働基準監督署などの公的機関への相談か、会社と交渉する場合であれば個人でも問題ありませんが成功率を考えれば弁護士に相談して問題の解決へと臨むことをおすすめします。

すでに退職を検討している以上、この対応において会社側との関係が悪化しても大きなデメリットにはならないでしょうから、決して泣き寝入りすることなく適切な対処法を実践してください。

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6.ボーナスに関するトラブルに発展した際の対処法

ボーナス・賞与の支払いにおいて労使間でトラブルが発生した場合、それを適切に解決しないと本来もらえるはずの賞与がもらえないという事態に陥ってしまいます。

それを避けて適切な金額の賞与を受け取るためには、トラブル発生後に速やかに適切な行動に移すことが重要です。

労使間のトラブルについては、労働基準監督署や各都道府県の労働センターに相談して解決へと導くという手段もあります。

しかし、これらの公的機関はあくまでも中立の立場で指導等を行いますので、不払いの賞与を強制的に取り立てることはできず、会社側があくまでも支払いに応じない場合には裁判所での手続きが必要となるのです。

訴訟手続きは個人でも可能であり、お金をあまりかけずに会社に対して裁判を起こすことは可能ですが、証拠を集めて裁判に出廷する必要があるなど、時間と手間が過大にかかってしまうことは避けられません。

とくに退職を考えているということは次の転職先が決まっているケースもあるでしょうから、転職先の仕事に差し支える可能性を考慮すると、裁判に手間取ることはおすすめできないのです。

そのため、賞与問題でトラブルが発生した場合には、弁護士に相談して適切な手続きを進めることが現実的です。

弁護士に依頼するということは報酬の支払いが必要になりますが、賞与をきちんと受け取るためには弁護士のサポートを受けることが最も手軽で現実的な手段となりますので、ご自身の時間を守るためにも早めに弁護士に依頼することをおすすめします。

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7.ボーナスに関するよくあるQ&A

最後に、ボーナス・賞与に関するよくある質問についてまとめてみました。

7-1.ボーナス・賞与・給与の違いは?

「ボーナス」と「賞与」は基本的に同じ扱いであり、ほかにも「特別手当」といった名称で使われることもあります。

賞与と通常の給与は大きな違いがあって、給与は固定給の場合であれば月に1回以上は支給しなければなりません。

一方で賞与については就業規則等の決まりにより異なりますが、法的には支給の義務はなく、支給する場合における回数についても法的な決まりはありません。

7-2.賞与の支給日前後に退職する場合の扱いは?

就業規則等において支給日在籍条項が定められている場合、賞与の支給日より前に退職した場合は基本的に賞与はもらえませんが、場合によってはもらえる可能性もあります。

支給日後に退職する場合は基本的に賞与をもらうことができますが、就業規則等において「賞与に将来の期待値を含める」と明記されている場合には減額される可能性があります。

7-3.賞与トラブルを弁護士に相談したほうが良い理由は?

賞与などの労使間におけるトラブルは労働基準監督署などの行政機関に相談して解決することもできますが、これらの期間は中立的な立ち位置での指導になりますので強制的に賞与を支払わせる効力はありません。

そうなると訴訟手続きが必要になりますので、その際に力になってもらうためにも弁護士に相談したほうが良いのです。

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8.まとめ

賞与と退職の関係性は、どうしてもトラブルが起こりやすいです。

賞与に関してトラブルが発生した場合は、弁護士に相談するのが最も効果的でしょう。

会社との交渉を代理してくれますし、訴訟などの裁判手続きになっても大きな力となってくれます。

弁護士への依頼はトラブルが発生してから少しでも早いほうが良いので、まずは相談だけでもしてみてください。

私たち法律事務所リーガルスマートは、ボーナスに関するトラブルをはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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