その他

退職の引き止めは法律違法なの?対処法などを弁護士が解説!

退職の引き止めは法律違法なの?対処法などを弁護士が解説!

社会的に労働力不足が深刻化する中で、退職をめぐって多くのトラブルが発生していることをご存知でしょうか。

会社に退職の意向を伝えたら、後任の不在を理由に拒まれ、ひどいケースでは損害賠償請求を示唆されることもあるのです。

このような退職トラブルに巻き込まれても困らないためには、退職引き止めの手口やその対処法を事前に理解しておくことが大切です。

本記事では、退職引き止めの具体的な方法や、引き止め行為の違法性と対処法、在職時に行っておくべきことなどを弁護士が具体的に解説します。

目次

1.在職強要とは

在職強要とは、労働者の退職の申し出を認めずに、会社での勤務の継続を強いることをいいます。

たとえば以下の事例が典型例です。

  • 退職届を受理してもらえない、または突き返される
  • 辞めたいなら後任を見つけてこいと上司から言われる
  • 辞めたら損害賠償請求をすると会社から脅迫される
  • 退職日までの有給休暇の取得を拒否される
  • 退職を拒否され、出勤しなかったら無断欠勤扱いで懲戒解雇になると脅迫される

このように、会社は様々な言い分を立てて、在職を強要してくることがあります。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

2.会社による退職の引き止めは法律違反なのか

上述した労働者に対する在職強要が違法であることは言うまでもないでしょう。

もっとも、会社による退職の引き止めがすべて法律違反というわけではありません。

会社としても、事業を安定的に継続するためには、一定の労働力を確保することが必須です。特に繁忙期に突然退職されると困るでしょう。

他方で、労働者には、後述する例外的な場合を除いて、退職の自由が認められています。すなわち、会社の承諾なく労働者の意思によって会社を辞めることができるのです。

そのため、会社による退職の引き止めが法律違反になるのは、この労働者の退職の自由を侵害する場合です。

たとえば、労働者が退職届を提出し明確に退職の意思を示したのに対し、しつこく退職を引き止めようとするケースは違法といえるでしょう。他方で、労働者が退職意向を伝えた最初のタイミングで、退職を思いとどまるように上司が常識の範囲内で説得・要請する程度なら法律違反になる可能性は低いです。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

3.会社を辞めさせないための行動で法律に違反する6つの事例

会社は様々な方法を使って、退職の引き止めを行ってきます。ここでは、会社による退職引き止めの方法のうち、法律に違反する代表的な事例を6つ紹介します。

3-1.退職届を受理しない

退職を認めない会社でよくある方法が、退職届を受理しないことです。

退職届の受け取りを拒む、上司が預かっておく、破り捨てられる、一度受け取った後に返却されるなど、受領拒否のバリエーションは多様性に富んでいます。

しかし、そもそも会社が退職届の受領を拒むことはできません。

前述した通り、労働者の退職について会社に承諾権限はなく、法律上は退職の意思表示から2週間の経過で退職となります。

そのため、会社がどうしても退職届の受領を拒否する場合は、退職の意思を示した書面を配達証明付きの内容証明郵便で会社に郵送しておけば問題ありません。

会社が内容証明を受領できるようになった時点から2週間が経過すれば、会社が受け取らなくても退職が認められます。

3-2.損害賠償請求をちらつかせる

損害賠償請求に言及して退職を引き止めようとする会社もあります。

たとえば、後任がいないのに辞めたら業務が回らなくなり会社に損害が発生するから、その損害の賠償を請求することになる、といった具合です。

しかし、そもそも労働者には退職の自由があるため、辞めたら業務が回らなくなる事を理由に損害賠償請求することはできません。

法的にできない損害賠償請求をちらつかせて退職を引き止める行為は当然に違法です。

3-3.懲戒解雇扱いにする

退職を拒否し、出勤しなかったら無断欠勤として懲戒解雇する、と脅すケースもあります。

しかし、退職の申し出から2週間が経過すれば退職の効果は発生するため、その後はそもそも無断欠勤扱いにできないのです。そのため、無断欠勤を理由に懲戒解雇することはできません。

法的に懲戒解雇はできない以上、懲戒解雇となることを示して退職を引き止める行為は違法行為です。

3-4.退職金や未払い賃金を支払わない

退職金や未払い賃金が支払われないことを理由に、退職を引き止められることがあります。

たとえば、繁忙期に辞められたら業務が回らなくなり会社に損害が生じるから、発生した損害の分、退職金や未払い賃金を支払わない、といった具合です。

しかし、前述の通り、辞めたら業務が回らなくなる事を理由に労働者に対して損害賠償請求をすることはできず、退職金や未払い賃金から差し引くこともできません。

そのため、退職金や未払い賃金の支払いを拒んで退職を引き止める方法も違法です。

3-5.有給休暇の消化を認めない

労働者が退職前に有給休暇を申請した場合、会社側で拒むことはできません。

有給休暇は労働者の権利です。

そのため、労働者が残っている有給休暇を利用することを会社は拒めません。

なお、通常時であれば、繁忙期で人手が足りないケースでは、有給休暇の取得時期をずらすように会社から求めることはできます。

しかし、退職前の時期では、退職日までの労働日が限られることから、ずらすこともできないケースが多いでしょう。

3-6.離職票を発行しない

会社には、労働者から離職票の交付請求を受けた場合、離職票を交付する義務があります(雇用保険法76条3項)。法律上の義務であるため、会社が拒否することは違法です。

離職票は失業保険の受給に必要な書類であるため、早めに交付してもらいましょう。

会社が交付に応じない場合、なるべく早くハローワークに相談することが大切です。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

4.労働者は自由に退職できる?退職する際の注意点

前述した通り、労働者には原則として退職の自由があり、会社の承諾なく労働者の意思により自由に退職できます。

具体的には、以下の通り法律で「退職の申し出から2週間の経過により退職できる」旨が定められています。

【民法627条1項】

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

他方で、一定の場合には、例外的に退職の自由が制限されることがあります。

そこで、以下では退職の自由が制限されるケースを解説します。

4-1.期間の定めがある雇用契約の場合

雇用契約に期間の定めがある場合、原則として、雇用期間中は退職できません。

たとえば、1年契約で雇われている場合です。この場合は、雇用期間である1年間は、退職するには原則として会社の承諾が必要になります。

労働者には原則として退職の自由があるものの、会社と契約で働く期間を約束した以上は、その期間中は働かなければいけないということです。

なお、やむを得ない事由がある場合は、雇用期間中であっても会社の承諾なく辞めることができます。たとえば、病気や怪我でそもそも働けなくなったような場合です。

4-2.就業規則に退職手続きの条項がある場合

就業規則に「退職する場合、1ヶ月以上前に会社に申し出なければならない」などの退職手続きを定めている会社があります。

このような就業規則の条項は、退職の申し出から2週間の経過により退職できるとする前述した民法627条と相容れません。

就業規則と民法627条でどちらが優先するかは専門家の間でも見解の対立があるものの、基本的には民法の規定が優先されます。民法627条は一般的に、法律への抵触を許さない強行規定と考えられているからです。

そのため、就業規則に1ヶ月以上前の退職の申し出が必要という条項があっても、基本的には2週間前に申し出をすれば退職できます。

ただし、会社との無用なトラブルを避ける点からは、間に合うならば1ヶ月以上前に退職届を提出しておくことが無難でしょう。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

5.会社を辞めるまでにやった方が良いこと

会社の在職中にしかできないことや、退職前に確認しておくべきことは多数あります。

退職後にやるべきことをスムーズに進めるためにも、在職中にやっておくべきことを事前に確認しておきましょう。

5-1.失業保険の受給手続きを確認しておく

会社を辞めたら給料がもらえなくなり、生活の糧を失います。

退職時に転職先が決まっていない場合は、会社を辞めるまでに失業保険の受給手続きを確認しておくべきでしょう。

事前に手続きの流れや必要書類を確認しておけば、退職後スムーズに申請手続きを進められます。

5-2.税金や社会保険の扱いを確認しておく

退職後の税金の納め方や、社会保険の扱いがどうなるかを事前に確認しておきましょう。

たとえば、会社を辞めて事業を始めた場合は、確定申告が必要になる場合があります。

また、退職後は健康保険や厚生年金、雇用保険などの変更手続きも必要です。

源泉徴収票や離職票など、その後の手続きで必要になる可能性のある書類を会社からもらいそびれないためにも、税金などの扱いを確認しておきましょう。

5-3.退職金や未払い残業代がないかを確認する

退職を決めたら、退職時に退職金が支給されるか、未払いとなっている残業代などの賃金がないかを確認することが重要です。

退職金は、その支給要件が就業規則に定められていることが多いので、自分が支給要件に当てはまるかどうかを事前に確認しておきましょう。

また、場合によっては残業代などの賃金が未払いのままになっているかもしれません。

未払い残業代があるかどうかは在職時の方が確認しやすいので、辞める前に確認しておきましょう。なお、残業代などの請求自体は退職後でも可能です。

5-4.必要な証拠集めを行う

退職後に未払い残業代の請求や、上司のハラスメントによる損害賠償請求などを行うことを予定している場合、在職時に可能な限り必要な証拠を集めておきましょう。

たとえば、未払い残業代の計算のためには会社の就業規則の写しが必要です。

また、上司のパワハラやセクハラなどを立証するには、メールでのやりとりの写しや会話の録音データが役に立ちます。

これらの証拠は、基本的に在職時でなければ収集できません。

そのため、退職後に会社に対して何らかの請求を行うことを考えている場合は、退職までに必要な証拠集めを行うことをおすすめします。

5-5.引き継ぎを十分に行う

退職を円滑に進めるには、引き継ぎを十分に行うことが重要です。

労働者には退職の自由がありますが、退職時に会社に不要な迷惑をかけないためにも、引き継ぎは丁寧に行いましょう。

十分な引き継ぎの実施は、会社が違法な退職の引き止めをする口実を減らすことにも繋がります。

引き継ぎを十分に行うことは、会社のみならず自分自身にとっても大切であることを覚えておきましょう。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

6.違法な引き止めにあって退職できない場合の対処法

会社からの違法な退職の引き止めにより、なかなか退職できないケースは少なくありません。違法な引き止めに対する対処法を事前に確認しておきましょう。

6-1.書面で退職意思を会社に示す

退職の意向を上司に口頭で伝えたところ、引き止めを受けるというケースは多いです。会社としては、早めに引き止めれば翻意してくれる可能性があると考えているからでしょう。

そのため、退職の意思が固まっている場合は、早めに退職意思を退職届などの書面により伝えるべきです。書面で退職意思を示せば、会社に対して退職の意思が明確に伝わります。

書面で退職意思を示しても会社が退職を認めない場合は、後述する労働基準監督署や弁護士に相談しましょう。

6-2.労働基準監督署に相談する

会社が違法な退職の引き止めを行う場合、労働基準監督署に相談してみましょう。

労働基準監督署は、事業者が労働関係法令を遵守しているかを監督し、必要に応じて指導・是正を行う行政機関です。相談は無料であるため、比較的相談しやすいでしょう。

ただし、労働基準監督署は労働者の代理人ではないため、相談したら必ず解決に向けて動いてくれるわけではありません。

解決のために積極的に動いてほしい場合は、後述する弁護士に相談するべきです。

6-3.弁護士や退職代行に相談する

違法な退職の引き止めの相談先として、最も有力な相談先が法律と紛争解決の専門家である弁護士です。

弁護士に相談し、対応を依頼すれば、退職までの会社との交渉をすべて任せられます。自分で会社との面倒な交渉を行う必要はありません。

また、一般の会社が行う退職代行サービスに退職手続きを依頼するという方法もあります。

この退職代行サービスのメリットは、弁護士に比べて費用が安くて済む点です。ただし、弁護士法の規制により会社との間で退職の条件を協議したりするなどの交渉を行うことができません。

そのため、退職までの手続きをすべて任せたいという場合は、弁護士に依頼することをおすすめします。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

7.退職の引き止めから発展する労働問題を弁護士に相談、依頼するメリット

退職の引き止めやそこから発展する労働問題は早い段階で弁護士に相談しましょう。相談、依頼する主なメリットを解説します。

7-1.未払い残業代も合わせて請求できる

前述した通り、会社は退職の引き止めの際に、未払い残業代や退職日までの賃金を支払わないといった方法をとることがあります。

これらの方法による退職の引き止めは、前述の通り、当然に違法です。

しかし、会社が未払い残業代などを支払わない場合に、強制的に会社に支払わせる方法としては訴訟などの裁判手続きしかありません。

裁判手続きは、法律上は労働者一人でも行えますが、手続きの中で自分の主張を効果的に伝えるためには法律の専門知識や実務経験が必要です。そのため、現実的には一人で対応することは難しいでしょう。

弁護士であれば、退職の違法な引き止めの問題のみならず、未払い残業代の問題への対応も合わせて依頼できます。

退職の引き止めだけではなく、そこから派生する問題もまとめて解決できる点は弁護士に依頼する大きなメリットといえるでしょう。

7-2.ハラスメントの問題も解決してもらえる

退職の引き止めで会社とトラブルになるケースでは、実は在職時から会社と何らかのトラブルを抱えているという事例が少なくありません。

その代表的なトラブル事例として、在職時に受けたハラスメントの問題があります。

ハラスメントについては、在職中は会社や上司との関係を考えて我慢していたけれど、辞めるとなれば損害賠償請求をしたいという方は多いでしょう。

弁護士には、このような退職の引き止めとは直接関係ない労働問題への対応も合わせて依頼できます。

そのため、退職の引き止めやそこから派生する労働問題の他にも、会社との間でトラブルを抱えている方は、特に弁護士に相談することがおすすめです。

7-3.安心して任せられる

退職の引き止めの問題を解決する方法として、一般の会社が提供している退職代行サービスの利用があります。

確かに、一人で交渉しても退職を認めない会社でも、第三者である退職代行サービスを通じた退職の申し出があれば、応じるというケースはあるでしょう。

しかし、一般の会社による退職代行では、会社から退職日や退職金の金額などの退職条件に関して交渉があった場合は対応できません。また、会社から損害賠償請求を受けるなどのトラブルに発展した場合も、それ以降の対応ができません。

退職交渉やトラブル対応は、弁護士法により弁護士以外が行うことを禁じられているからです。

弁護士であれば、退職条件をめぐる交渉や、会社とのトラブル対応もすべて任せられます。

すなわち、退職が実現するまでの対応を一任できるのです。

このように、退職までの手続きを安心して任せたい場合は、弁護士に相談、依頼すべきでしょう。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

8.退職の引き止めに関するよくあるQ&A

8-1.退職の引き止めを受けたくありません。会社に黙って出勤せず、フェードアウトする形で退職できませんか。

A.退職するためには、基本的に会社に対して退職意思を伝えることが必要です。会社からの連絡を無視すると懲戒解雇となる可能性もあるため、避けるべきでしょう。

退職するためには、会社に対して退職の意思表示をすることが必要です。

会社に対して退職意思を伝えずに黙って出勤しなくなると、無断欠勤を理由に懲戒解雇されてしまう可能性があります。

懲戒解雇でも退職とはなりますが、転職活動の際に大きなマイナス材料となってしまうので、避けるべきでしょう。

8-2.退職時の有給休暇は会社に買い取ってもらえますか

A.基本的には買い取ってもらえません。

有給休暇は法律に定められた労働者の権利です。そのため、退職前に残っている有給休暇の取得を申請した場合、会社において拒否することはできません。

他方で、会社には法律上、有給休暇を買い取る義務はありません。

就業規則で退職時の有給休暇の買取りの制度を設けている会社はありますが、あくまでも例外的なケースです。

そのため、退職を決めた時に有給休暇が残っている場合、退職日までにすべて使い切りましょう。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

9.まとめ

本記事では、会社による退職の引き止めとその対処法を解説しました。

退職の引き止めがすべて法律違反というわけではありませんが、労働者の退職の自由を侵害する場合は違法になります。具体的には、損害賠償請求や懲戒解雇を示唆した退職の引き止めは違法といえるでしょう。

会社から執拗な退職の引き止めを受けてなかなか退職できない場合は、早期に弁護士に相談し、対応を依頼することをおすすめします。

弁護士を選ぶ際は、ホームページなどを見て、労働問題の解決実績が十分にあるかを確認するとよいでしょう。

退職後に思い描いている生活を早く実現するためにも、退職手続きで困ったことがあれば、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。

私たち法律事務所リーガルスマートは、退職の引き止めトラブルをはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

相談無料初回60分

担当者

南 陽輔
南 陽輔一歩法律事務所弁護士
■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立

大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
ホーム お役立ちコラム 労働問題 その他 退職の引き止めは法律違法なの?対処法などを弁護士が解説!

電話受付時間 10:00〜17:30 (土日祝・年末年始を除く)