差押え・強制執行

差し押さえとは?流れや対象となる財産を弁護士が解説!

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借金や税金を滞納し続けると、最終的には財産が差し押さえられてしまう可能性があることは多くの方がご存じかと思います。しかし、差し押さえの具体的な流れや差し押さえの対象となるものなど、詳しくは知らない方が多いのではないでしょうか。

本記事では、差し押さえを行う上で必要なもの、差し押さえができるものとできないもの、差し押さえの際の注意点などを弁護士が解説します。

借金をなかなか返してくれないので差し押さえを検討している方、逆に財産が差し押さえられそうで困っている方はぜひ最後までお読みください。

1.差し押さえとは

差し押さえとは、借金や税金を滞納し続けた場合に、債権者が債務者の財産から強制的に債権を回収する手続きのことをいいます。

もっとも、差し押さえは債権回収の最終手段であり、借金や税金を滞納したからといって即財産を差し押さえられてしまうわけではありません。差し押さえは厳格な法的措置に則って行われる必要があります。差し押さえをするためには手間と費用がかかります。債権者としても、できれば差し押さえではなく任意に支払ってほしいと考えていますが、債務者がどうしても任意に支払ってくれない場合は差し押さえを行うことになります。

2.差し押さえになる原因

差し押さえの原因となるものは主に①借金と②税金の2つです借金を返済しなかったり、税金を支払わなかったりして放置することが差し押さえになってしまう原因です。すなわち、本来支払うべき期日を過ぎても債務を弁済しない場合に差し押さえが行われることとなります。

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3.差し押さえを行う上で必要なもの

支払期日を過ぎても借金や税金を支払わないと自動的に差し押さえがされるわけではありません。差し押さえを行うには必要なものがあります。以下では、差し押さえを行うために必要なものを詳しく解説します。

3-1.債務名義

差し押さえを行う上で最も重要なものは債務名義です。「債務名義」とは、強制執行によって実現されるべき債権の存在および範囲を公的に証明した文書のことをいいます。

代表的な債務名義は、確定判決です。例えば、返済期日を過ぎても借金を返してくれない相手を訴えて勝訴すると、勝訴判決を得ることができます。この勝訴判決が確定したものが確定判決です。

確定判決を含め、例えば以下のような文書が債務名義になります。判決が確定しなくても、仮執行宣言が付いていれば債務名義とすることができます。

  • 確定判決
  • 仮執行宣言付きの判決
  • 仮執行宣言付きの支払督促
  • 強制執行認諾文言付き公正証書
  • 確定判決と同一の効力を有するもの(和解調書、調停調書など)

3-2.執行文

執行文とは、債務名義に強制執行ができる効力があることを公的に証明する文書のことをいい、債務名義の末尾に付記されます。確定判決の場合、裁判所書記官が付与してくれます。公正証書の場合、公証人が付与してくれます。

債務名義があっても執行文がなければ強制執行をすることはできませんので、確定判決であれば裁判所書記官に執行文を付与してもらうことが必要です。

3-3.送達証明書

送達証明書とは、強制執行がされる債務者に債務名義が送達されたことを証明する文書のことをいいます。

①債務名義、②執行文、③送達証明書は、強制執行に必要な3点セットと呼ばれています。

3-4.資格証明書

債権者、債務者、第三債務者が法人の場合、差押命令を申し立てた日から1か月以内に発行されたその法人の商業登記事項証明書が必要です。

3-5.その他

債権執行、不動産執行など執行の種類によって異なりますが、債権目録や不動産目録などが必要です。

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4.差し押さえができるものとできないもの

差し押さえは、債務者の財産を強制的に処分してそこから債権を回収する手続きですが、債務者の財産であればいかなる財産でも差し押さえられるわけではありません。差し押さえができるものとできないものがあります。以下では、差し押さえができるものとできないものをそれぞれ解説します。

4-1.差し押さえができるもの

差し押さえができるものとして、主に以下のようなものがあります。

(1)土地や建物などの不動産

土地や建物などの不動産は差し押さえの対象として代表的なものです。債務者が土地や建物を所有している場合、真っ先に差し押さえの対象として検討されることになります。土地や建物などの不動産は高額で売却することができ、債権の回収がしやすいからです。

また、土地や建物などの不動産は動産と異なり隠匿がしにくく、登記簿で把握が容易なため差し押さえの対象とされやすいです。

(2)車や宝石などの動産

車、宝石、高級腕時計、ブランド品、株券、小切手などの動産も差し押さえの対象となります。動産は不動産と異なり、登記簿によって公示されているわけではないため、債務者の財産として把握が不動産よりもしにくいですが、換価処分できるものは差し押さえることができます。

(3)債権

債権とは、特定の人に特定の行為や給付を請求できる権利のことをいいます。債権も差し押さえの対象となります。債務者が債権を有している場合、債務者はその債権においては債権者となるわけですが、債務者に対して給付をする義務を負っている者を第三債務者といいます。債権を差し押さえられた場合、第三債務者は債務者ではなく債権者に対して給付をしなければなりません。

差し押さえができるものとして、主に次の5つがあります。

①預金債権

銀行などの金融機関にお金を預けている場合に、金融機関に対して金銭の交付を請求できる権利です。差し押さえの対象として代表的なものであり、預金口座に預けられている全ての金額が対象となります。

第三債務者は銀行などの金融機関です。

給与債権

債務者が会社員のようなサラリーマンの場合、会社からもらう給与を差し押さえることができます。ボーナスや退職金も差し押さえの対象となります。

第三債務者は会社など債務者に対し給与を支払う者です。

売掛債権

売掛債権とは、商品やサービスを販売した場合に、その代金を買主に対し請求できる権利のことをいいます。債務者が事業を行っている場合は売掛債権を有している場合が多いため、売掛債権を差し押さえることができます。

第三債務者は債務者の取引先です。

貸金債権

債務者が第三者に金銭を貸し付けている場合、貸金債権を差し押さえることができます。第三債務者は、債務者に対し貸金の返済義務を負っている者です。

⑤賃料債権

債務者が土地や建物などの不動産を有していて、第三者に不動産を賃貸しており賃料を得ているような場合、その賃料債権を差し押さえることができます。第三債務者は、賃借人です。

4-2.差し押さえができないもの

債務者も生活をしなければなりませんから、債務者が生活をするために必要な財産は差し押さえることができないものとされています。差し押さえができない財産としては、例えば以下のようなものがあります。

(1)動産

差し押さえができない動産として、以下のものがあります。

  • 66万円以下の現金
  • 生活に必要な衣服、家具、生活用品など
  • 債務者が1か月生活をするのに必要な食料や燃料
  • 実印など生活に欠くことができないもの

66万円以下の現金は差し押さえることができませんが、預金口座の預金は全額差し押さえの対象となる点は注意が必要です

(2)債権

差し押さえができない債権として、以下のものがあります。

  • 生計を維持するための年金、生活保護給付金など
  • 給与債権のうち、手取り金額の4分の3

給与債権については、全てを差し押さえの対象としてしまうと債務者が生活できないため、原則として手取り金額の4分の1までしか差し押さえることができないこととされています。ただし、33万円を超える部分については4分の1以上差し押さえることができます。

例えば、債務者の手取り給料が20万円の場合、33万円を超えていないため、その4分の1である5万円まで差し押さえることができ、残りの4分の3である15万円は債務者の生活を守るため差し押さえることができません。

一方、債務者の手取り給料が50万円の場合、33万円を超えた部分、つまり17万円を差し押さえることができます。

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5.差し押さえの流れ

借金を2~3か月滞納すると、債権者から催告書が送られてきて支払いの催告がされます。

催告書が送られてきても滞納し続けていると、支払督促を申し立てられたり訴訟を提起されたりします。

支払督促に異議を申し立てないまま2週間が経過したり、訴訟に負けて敗訴判決が確定すると、債権者が債務名義を得て強制執行ができる状態になります。

以下では、債務名義を得た後について、不動産、動産、債権ごとに差し押さえの流れを解説します。

5-1.不動産

不動産を差し押さえる場合、以下の流れに沿って行います。

①不動産強制競売の申し立て

不動産の所在地を管轄する裁判所に対し、強制競売の申し立てを行います。強制執行のための3点セットの他、不動産の登録事項証明書などを提出する必要があります。

②競売開始決定

書類に不備がなく申し立てが受理されると、不動産の競売を開始する旨の決定がなされます。競売開始決定がされると、これ以降の不動産の処分を禁止するため差し押さえの登記がされます。

③裁判所による現況調査

不動産の最低売却価格を決定するため、裁判所による現況調査、価値評価が行われます。

④不動産の売却

最低売却価格による競売手続きにかけられます。入札期間内に最高金額で入札した者が不動産の購入者となり、現金一括で納付します。納付がされた時点で不動産が売却され、購入者の所有となります。

5-2.動産

動産を差し押さえる場合、以下の流れに沿って行います。

①強制執行の申し立て

動産の所在地を管轄する地方裁判所の執行官に対し、強制執行の申し立てを行います。

②動産の差し押さえ

動産は不動産と異なり、登記のような公示手段がないため、差し押さえの登記ができません。よって、直接差し押さえることになります。

具体的には、裁判所の執行官と動産執行の日時を打ち合わせて、その日時に執行官とともに債務者の自宅等に出向いて差し押さえを開始することになります。

③競売

差し押さえができた動産について競売手続きにかけ、購入希望者に売却されます。

5-3.債権

債権を差し押さえる場合、以下の流れに沿って行います。

①債権差し押さえ命令の申し立て

債務者の住所を管轄する裁判所に対し、債権差し押さえ命令の申し立てを行います。その際、強制執行のための3点セットの他、当事者目録、請求債権目録、差し押さえ債権目録を作成して提出する必要があります。

②裁判所からの差し押さえ命令

申し立てが受理され次第、裁判所から債務者および第三債務者に対し、債権差し押さえ命令が発令されます。

発令後は、第三債務者が債務者に弁済を行うことは禁止されます。

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6.差し押さえの注意点

差し押さえをするためには、いくつかの点に注意が必要です。以下では、差し押さえの際の注意点を解説します。

6-1.債務者の財産の調査

差し押さえを行うためには、差し押さえの対象となる財産が存在しなければなりません。そもそも債務者にめぼしい財産がない場合、差し押さえはできない点に注意が必要です

また、債務者に財産がある場合でも、財産開示手続きを取らない限り、債務者が財産の情報を教える義務はありません。債権者が調査を行う必要があります。

不動産執行の場合、不動産は登記簿によって公示されているため、調査は債権や動産に比べると比較的容易です。さらに不動産は価値が高いため、債権回収の実効性が高い財産であり差し押さえの効果が最も高いといえるでしょう。

しかし、借金を滞納する債務者の場合、借金が住宅ローンや事業資金でないかぎり不動産を所有していることは少ないかもしれません。

動産執行の場合、車であればある程度の調査が可能ですが、ブランド品などは当日執行官と債務者宅へ出向いてみないとわからない部分があります。めぼしい財産がなければ差し押さえる物がなく失敗に終わる可能性があるため、債務者にめぼしい動産があるかどうかは生活状況を調査するなどして把握しておく必要があります。

債権執行の場合、預金を差し押さえるには預金口座の情報が必要です。金融機関の支店名と口座番号の情報が必要であるため、債務者と取引関係がない場合、預金口座の調査は困難であることが多いでしょう。

6-2.仮差し押さえの申し立て

差し押さえを行うためには債務名義が必要です。債務名義を取得するためには、債務者に対して貸金支払請求訴訟などを起こし、確定判決や和解調書を入手する必要があります。

確定判決を取得するまでの間は、債務者は財産の処分を禁じられるわけではありません。差し押さえがされない限り、財産を処分してしまう可能性があります。例えば不動産や動産であれば売却されてしまう可能性がありますし、預金口座であれば預金を引き出されてしまうおそれがあります。

このようなことを防ぐために、差し押さえの前に仮差し押さえという手続きをしておくことが重要です。

仮差押えとは、債権を保全するために、債務者が財産を処分するのを禁止する手続きをいいます。仮差押えが執行されると、債務者は売掛債権額を限度として自己の財産を処分できなくなります。

よって、仮差し押さえ命令を申し立てて仮差し押さえを執行しておけば、債務名義を得るまでの間に債務者が財産を処分することを禁止することができるため、安心です。

6-3.他の債権者や担保権者の調査

債務者の財産を差し押さえることができたとしても、自分の他に債権者がいる場合は財産の売却価格の全額を回収することはできません債権者が複数の場合、それぞれの債権額に応じて按分比例となるため、注意が必要です。

また、債務者の財産に担保権がついている場合、担保権者が優先弁済を受けることができ、一般債権者は財産を差し押さえたとしても担保権者が弁済を受けた残りの部分からしか弁済を受けることができません

例えば、不動産に抵当権が設定されている場合、担保権を有しない一般債権者が不動産を差し押さえたとしても、抵当権者に優先して弁済を受けることはできません。抵当権が実行されて不動産の売却代金が全て抵当権者の債権の弁済に充てられた場合、一般債権者は全く弁済を受けられないのです。

よって、差し押さえの際には、自分の他に債権者がいるかどうか、財産に担保がついていないかどうかを調査する必要がある点に注意が必要です。

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7.差し押さえに関するよくあるQ&A

以下では、差し押さえに関するよくある質問に回答します。

7-1.取引先の売掛債権が差し押さえられたという通知が裁判所から来ました。取引先に支払ってはいけないのでしょうか?

裁判所から債権差し押さえ命令が発令された場合、第三債務者は債務者に債務を弁済することを禁止されます。よって取引先に支払ってはいけません。命令を無視して取引先に支払ってしまうと、取引先の債権者にも支払うことになり二重払いの危険が生じてしまいます。

債権差し押さえ命令が発令された場合、取引先への支払いは停止しましょう。

7-2.マイホームが差し押さえられてしまいました。マイホームを手放したくない場合、どうすればよいでしょうか?

不動産執行によりマイホームが差し押さえられてしまった場合、競売手続きにかけられマイホームは強制的に売却されてしまいます。マイホームを手放したくないのであれば、早急に債務を弁済するようにしましょう。債権者に債務を弁済すれば、マイホームが売却されることを阻止することができます。

債務が弁済できないのであれば、残念ながらマイホームは手放さなければなりません。

7-3.動産執行がなされた際、友人から借りている高級腕時計が差し押さえられてしまいました。取り返すにはどうすればよいでしょうか?

動産執行がなされた場合、執行官が自宅に出向いて債務者のめぼしい財産を差し押さえることになります。その際、自分の所有物ではない物が差し押さえられてしまう可能性もあります。

友人から借りている高級腕時計が差し押さえれてしまった場合、その友人は、債権者に対し、第三者異議の訴えを提起することができます。もっとも、第三者異議の訴えを提起しても強制執行が停止されるわけではありませんので、強制執行停止の申し立ても必要です。

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8.差し押さえに関するトラブルを弁護士に相談するメリット

差し押さえに関するトラブルを弁護士に相談するメリットについて、以下では主なメリットを2つ挙げた上で解説します。

8-1.債務者と交渉してくれる

債務者が任意に債務を履行しない場合に差し押さえを検討することになりますが、その前段階で弁護士が代理人となることによって、債務者と弁護士が直接交渉することが可能です。弁護士が交渉をした結果、差し押さえをせずに和解でまとめることができる可能性があります。差し押さえには手間と費用がかかりますので、差し押さえを回避できるに越したことはありません。

弁護士が交渉に入ることによって差し押さえをせず話し合いによる解決を目指すことができます。

8-2.法的な手続きを全て代理することができる

以上見てきたように、差し押さえを行うためには債務名義の取得や差し押さえの申し立てなど複雑な法的手続きが必要です。

弁護士に差し押さえを依頼すれば、債務名義の取得のための訴訟提起や、その後の債権執行や不動産執行など、全ての手続きを代理して行ってくれます。本人が裁判所に行って手続きを行う必要がないため、本業に専念することができます。

9.まとめ

差し押さえを行う上で必要なもの、差し押さえ手続きの流れ、差し押さえの注意点などについて解説しました。

差し押さえ手続きは複雑であり、注意しなければならない点も多くあります。ご自身で差し押さえ手続きを行うと、最悪の場合債権回収が失敗に終わる可能性もあります。

差し押さえを検討している場合、早めに弁護士に相談することをおすすめします。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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