不当解雇
無断欠勤は解雇になる?解雇される欠勤日数などを弁護士が解説!
無断欠勤してしまった場合、「会社をクビになるのでは」と不安になる方は多いと思います。
会社の事業遂行は休暇を取得している従業員を除くすべての従業員が予定通り出勤することを前提としているので、無断欠勤によって会社や、場合によっては取引先にも迷惑をかけることになるでしょう。
しかしながら、1回無断欠勤を行ったとしても、それだけで従業員を解雇された場合には、当該解雇は違法であり不当解雇であると主張することができる可能性が高いでしょう。
それでは、解雇が有効とされる可能性が高いのはどのような場合でしょうか。
本記事では、無断欠勤を原因として解雇される欠勤日数、解雇されないための対処法、不当に解雇された場合の対処法などを労働問題に強い弁護士が解説します。
目次
1. そもそも無断欠勤とは
無断欠勤とは、無断で、つまり会社に事前に連絡を入れることなく、または会社の承諾を得ずに欠勤することをいいます。
無断欠勤には、事前の連絡をしない場合に加えて、連絡をしたが会社が許可しない場合も含まれる場合があります。
ただし、自身や家族に起こった突発的な事故のようにやむを得ない理由がある場合は、事前に連絡していれば会社が欠勤を承諾しなかった場合でも無断欠勤にはあたりません。
このような場合は、会社に無断欠勤扱いされたとしても正当な理由があった(無断欠勤にあたらない)ことを主張できる可能性が高いでしょう。
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2. 無断欠勤のデメリット
無断欠勤をしてしまうと、以下のような不利益を受けるおそれがあります。
2-1. 会社の内外に迷惑をかける
無断欠勤をすると、その日の所属部署の業務に支障が出ることは当然です。
また、関連部署や、取引先の業務にも影響が出るおそれがあります。
2-2. 評価が下がる
無断欠勤すると、まずその日は欠勤扱いとなるので、その日の労働時間分の給与は支払われません。
さらに、人事評価にマイナスの影響が出るので、ボーナスを減額される可能性もあります。
また、昇進のチャンスを失う、社内での信用が損なわれ上司や同僚との関係が悪くなるおそれがあります。
2-3. 減給などの懲戒処分を受ける可能性がある
就業規則で、懲戒処分の対象として無断欠勤が含まれている会社は多くあります。その場合、減給・降格などの懲戒処分を受ける可能性があります。
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3. 無断欠勤で解雇されてしまうケース
無断欠勤をしてしまった場合でも、必ず解雇されるわけではありません。
会社が労働者を解雇する場合、解雇することに客観的な合理性と社会的相当性が認められなければ解雇権の濫用として違法と評価されるからです(労働契約法第16条:解雇権濫用の法理)。
それでは、どの程度、あるいはどのような状況で無断欠勤した場合に解雇される(解雇の合理性・相当性が認められる)といえるでしょうか。
3-1. 2週間以上の無断欠勤が続いた場合
厚生労働省は、通達により「解雇予告なしに従業員を解雇できる基準」として、「原則として2週間以上正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」を挙げています(1948[S23]年11月11日基発※第1637号・1956[S31]年3月1日基発第111号)。
また、労働者は勤務月数が6か月以上あり、8割以上出勤していれば10日以上の有給休暇を取得する権利が認められています(労働基準法第39条)。つまり、1年間に10日を超える一定の日数だけ会社を休む権利があるといえます。
このこととのバランスを考えると、無断欠勤を理由とする解雇に合理性と相当性が認められるのは、無断欠勤が連続して2週間以上に至った場合といえるでしょう。
3-2. 上司や経営者側から注意されても無断欠勤を繰り返した場合
上司や、経営者側から注意されても無断欠勤を繰り返した場合は、就業規則で定められた普通解雇の理由によくある「勤務態度が著しく不良で、指導しても改善の見込みがないとき」に該当するとして、解雇されてしまう可能性があるでしょう。
3-3. 重大な影響を及ぼす状況で無断欠勤した場合
また、会社の社運を賭けた見込み顧客に対するプレゼンの日など、会社に重大な影響を及ぼす状況で無断欠勤した場合は、解雇理由として認められる可能性はあるでしょう。
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4. 会社から解雇されてしまうとどうなるのか
会社から即日解雇されてしまった場合には、そのまま何もしなければ当日付で従業員の地位を失い、翌日からその会社で働くことができなくなります。また、その日以降の分の給与も支払われなくなります(ただし、解雇予告手当は支払われる可能性があります)。
解雇は会社都合退職にあたるので、会社から離職票の交付を受けてハローワークで離職票提出・求職申込みの手続きをすれば、雇用保険の基本手当(失業手当)を受給することが可能です。ただし、退職前の1年間に6か月以上雇用保険に加入していたことが条件となります。
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5. 無断欠勤しても解雇にならないための対処法
無断欠勤をしてしまった場合でも、その後の対処によって解雇を免れることは可能です。解雇されないための対処法としては以下のような行動をとることをお勧めします。
5-1. 事後であっても欠勤の連絡をする
無断欠勤してしまった場合、通常は会社側がその従業員に何かアクシデントがあったのではないかと心配して、安否を確認しようとします。
そのまま連絡しないでいると、家族に連絡が行ったり、会社の人事担当などが確認のために自宅に来たりすることになります。
まずは、心配を避けるために、できるだけ早く会社に電話するか、メールや業務用チャットなど何らかの連絡手段で会社に連絡を入れ、無事であることを知らせてください。
電話の場合は、社用携帯が配布されていれば上司に電話したほうがよいですが、社用携帯を使用しない会社や部署の場合は会社の部署の番号でよいでしょう。
「解雇を避けること」との関係では、本当に事故に遭って救急車で病院に運ばれたなどの理由で連絡できなかったという事情があれば、後で事情が分かっても「連絡しないで欠勤した」ことを理由に解雇される可能性は低いでしょう。
しかし、それ以外の理由だった場合、そのまま連絡しないでいると解雇される可能性が高まるでしょう。
5-2. 欠勤の連絡をした事実を証拠に残す
無断欠勤に対しては、欠勤の連絡をしなかったことが人事評価上大きなマイナス要素になりえます。
何らかの連絡をした上で、連絡をした事実を後で証明できるよう、証拠に残してください。
スマホであれば、電話の履歴画面やメール・チャットの画面をスクリーンショットなどで保存してください。
また、スマートフォンなどの携帯電話で連絡する場合は、録音機能で通話音声を録音しておくことをお勧めします。
5-3. 欠勤の正当な理由がある場合は必ず説明する
また、事故に遭った場合など、欠勤したことに正当な理由がある場合には、上司に理由を説明してください。
正当な理由があれば、欠勤理由を証明することも難しくないので、証明できる書類や画像なども用意することをお勧めします。
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6. 無断欠勤で解雇される流れ
無断欠勤を始めてから解雇されるまでの流れは以下のようになります。
6-1. 会社からの状況確認の連絡が頻繁に来る
会社に連絡せずに欠勤すると、まず会社から安否確認などを目的とした連絡がくるでしょう。事故や突発性の病気等により動けなくなっている可能性もあるからです。
何等の連絡もしなければ、家族にも連絡がいく可能性があります。
また、確認のために人事担当者などが自宅に来ることもあります。
6-2. 出社命令
翌日以降も無断欠勤すると、2日目には出社を命じる業務命令が出ることがあるでしょう。会社によっては、家族や自宅訪問によって確認を行った上で命令を出します。
欠勤は労働契約違反なので、正当な理由がないことが確認できれば、出社するように業務命令が出されるということです。
6-3. 軽度の懲戒処分または退職勧奨
出社命令が出ても無視した場合、減給などの軽度の懲戒処分を科す旨の通知または、退職勧奨の通知が出されることがあるでしょう。
通常は、その前に、懲戒処分を行う前の告知・聴聞手続(言い分を聞くための手続)が採られることが多いでしょう。
場合によっては、退職を進められることもあるでしょう。
6-4. 普通解雇または懲戒解雇処分
就業規則の規定にもよりますが、会社に全く連絡を入れず、出社命令も無視した状態での無断欠勤が連続して1週間以上続けば、普通解雇または懲戒解雇の通告(解雇予告)が出される可能性があるでしょう。
普通解雇の場合も懲戒解雇の場合も、原則として労働基準法第20条1項に従い、会社が定めた解雇日の30日以上前に予告するか、予告しない場合は平均賃金の30日分(解雇予告手当)を支払うことが義務づけられています。
ただし、無断欠勤を理由とする懲戒解雇の場合、同条但書で定められた解雇予告または予告手当支払いの除外事由である「労働者の責めに帰すべき事由」にあたる可能性もあります。
会社によっては、同条但書を理由に、即日解雇する可能性もあります。
しかし、懲戒解雇を行う場合は、労働者側の悪質な非違行為の事実があっても、原則としては、聴聞手続を必要とします。
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7. 無断欠勤で不当解雇されたときの対処法
無断欠勤を理由とする解雇であっても、解雇が不当である場合には会社に対して解雇の撤回を求めるか、あるいは退職する前提で解雇の無効と未払い賃金/残業代等の解決金支払いを求めることになります。本章では無断欠勤で不当解雇されたときにとるべき行動について解説します。
7-1.自分で会社と交渉する
解雇が不当であることに確信があり、それを主張するための証拠も揃えているような場合には自身で会社と解雇撤回を求める交渉をすることができます。
その場合、労働局や労働基準監督署に併設されている総合労働相談コーナーや都道府県の労働相談コーナー等に相談すると、必要な手続きを教示してもらうことができます。
ただし、労働基準監督署や労働相談コーナーは従業員の代理人となることはできないので、内容証明郵便送付や交渉は全て労働者自身が行う必要があります。
7-2.労働組合に加入して団体交渉権を行使する
労働者が解雇の撤回を求めると会社側が顧問弁護士を立ててくることも多く、労働者単独で会社と対等に交渉することは困難です。
その場合、まず労働組合に相談するという方法があります。
労働組合は労働組合法で認められた団体交渉権を持つので、不当解雇を争う場合も組合として会社と交渉することができます。
また、会社側が交渉を拒否したり放置したりすることは労働組合法で禁止された不当労働行為(不誠実団体交渉:労働組合法第7条2号)にあたります。
団体交渉権行使によって解雇の撤回等を求めるにあたっては労働組合に加入することが必要となります。
勤めていた会社に労働組合があれば、自社の労働組合に相談することができます。また自社の労働組合がない場合も、合同労組(ユニオン)に加入するという方法があります。
合同労組は労働問題の交渉に豊富な実績を持ち、勤務する会社を解雇された場合でも労働者個人で加入することができます。
労働組合に加入して団体交渉する場合には一定の費用がかかりますが、弁護士費用に比べるとかなり安くなります。ただし、労働組合が団体交渉する場合は、会社側が対応を弁護士に依頼することが多いです。
7-3.交渉を弁護士に依頼する
「解雇された会社で長期にわたりサービス残業を強いられていた上、上司のパワハラでうつ病になった。退職代行業者に退職手続を依頼して会社を休んでいたら無断欠勤で解雇された」
など、解雇の無効を主張するとともに未払い残業代や慰謝料を請求したいという場合には、会社との交渉を弁護士に依頼することをお勧めします。
弁護士に交渉の代理を依頼すると費用がかかりますが、後述のように多くの法律事務所では初回相談や初回相談の一定の時間を無料にしているので費用の見積もりや交渉の見通し等を詳しく聞くことができます。
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8. 不当解雇を弁護士に相談、依頼するメリット
裁判で不当解雇が認められた例は数多くあります。その中には、無断欠勤を理由とする懲戒解雇の事例もあります。
そして、訴訟提起に至らなくても、会社との交渉により解雇が撤回されたり、解決金の支払いが行われることもよくあります。
他方、従業員個人で会社と交渉して解雇の撤回や解決金支払いを認めてもらうことは容易ではありません。特に会社に対して多額の慰謝料や賠償金を請求したい場合には弁護士に相談するのが得策です。
本章では、不当解雇を弁護士に相談するメリットについて解説します。
8-1.解雇が不当であるかを的確に判断してもらえる
解雇されて少しでも納得がいかない場合は労働問題に強い弁護士に相談すれば、過去の事例に照らして、不当解雇の可能性があるか否かを迅速かつ的確に判断してもらうことができます。
8-2.会社との交渉を任せることができる
不当解雇を争う上で障壁となるのが会社との交渉です。個人で交渉を申し入れると会社側が対応してくれないことが多く、また労働組合を頼ると労組対応経験豊富な弁護士を立ててくることがよくあります。弁護士に依頼することにより、会社と対等な立場で交渉することができます。
8-3.離職票発行を受けることと不当解雇主張を両立させることができる
不当解雇を争う場合、会社が発行する離職票が懲戒解雇されたことの証拠となります。また、法律上も離職票の発行を受けることにより解雇の正当性を認めたという扱いにはなりません。しかし離職票発行を受けると退職を受け入れたものとみなされ、会社に対して解雇無効を主張することや復職を求めることが難しくなります。不当解雇の裁判でも会社側が離職票発行の事実を主張することや、逆に離職票を発行していなかった場合に懲戒解雇の事実を否定することがあります。
この点弁護士に依頼することで、離職票発行を受けて懲戒解雇の証拠とすることと不当解雇を主張することを両立させることが可能になります。
8-4.労働審判・訴訟等の法的手続の代理を任せることができる
会社との交渉がまとまらなかった場合は、労働審判を申し立てるか、訴訟を提起して不当解雇を争うことになります。
しかし、これらの裁判所が関与する手続を労働者が一人ですべてこなすことは困難です。
労働審判は審判期日が3回までに限られ、短期で完結することや、非公開で行われるためにプライバシーが守られるなどのメリットがあります。
他方、短期で解決するために労働者側も多かれ少なかれ譲歩を求められることや、決定事項に対して当事者のいずれかが異議申立てを行うと自動的に通常の民事訴訟に移行するなどのデメリットもあります。
従って、会社との交渉が成立しなかった時点で、先に労働審判を申し立てるか、労働審判を経ずに訴訟提起するかという判断も必要になります。
この点、弁護士に依頼していれば、労働審判申立てや訴訟等の法的手続も全て任せることができます。
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9. 無断欠勤に関するよくあるQ&A
本章では、無断欠勤に関して頂くことが多い質問と、それに対する回答をご紹介します。
9-1. 無断欠勤による解雇は、自己都合?会社都合?
解雇(使用者側による労働契約解除)によって従業員が退職する場合は、会社都合退職として扱われます。
これは、解雇の理由や種類(普通解雇・懲戒解雇・整理解雇)を問いません。無断欠勤による解雇は、普通解雇の場合と懲戒解雇の場合がありますが、いずれに該当する場合も会社都合退職として扱われます。
9-2. 無断欠勤が原因で解雇される場合も解雇理由証明書をもらえますか?
無断欠勤を理由とする解雇の場合も、解雇理由証明書の発行を受けられます。
労働基準法第22条2項により、労働者が解雇理由証明書の発行を請求した場合には会社がこれを「遅滞なく発行すること」が義務づけられています。
9-3. 無断欠勤が原因で即日解雇された場合、会社に対して損害賠償請求できますか?
労働基準法第20条1項が会社に義務づけている解雇予告手当が支払われずに即日解雇された場合は、まず、予告手当分の金額を請求できます。ただし、この請求ができるのは解雇そのものの効力を争わない場合に限られます。
これに対して、解雇が懲戒解雇であった場合は、会社側が、予告手当支払いを免除される「労働者の責めに帰すべき事由による解雇」にあたるとして、予告手当の支払いを拒否する可能性があります。
しかし、懲戒解雇の場合がすべて「労働者の責めに帰すべき事由による解雇」に該当するわけではありません。判例も、これに該当するのは特別な背信行為があった場合に限られるとしています。
従って、無断欠勤を理由とする場合でも、予告手当分の金額の請求が認められることがあります。
また、解雇の効力を争う場合は、予告手当を請求せずに、解雇日以降の賃金を「不当解雇による損害」として賠償請求することができます。
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10. まとめ
無断欠勤は重大な労働契約違反ですが、これを理由とする解雇が認められるのは合理的理由や社会通念上の相当性がある場合に限られます。
他方、現実には無断欠勤を続けるとある時点で即日解雇されるおそれがあります。
解雇が不当であっても、労働者一人で会社に対して撤回を求めたり、解雇を認めるとしても予告手当や慰謝料、未払い賃金などの請求を行うことは困難です。
労働問題を専門とする弁護士に相談することで、不当な解雇に対して解雇無効や損害賠償請求、未払い賃金請求などの正当な権利行使が現実的に可能になるでしょう。
無断欠勤で解雇される不安のある方、不当に解雇されてしまった方は、労働問題を専門とする弁護士に相談することをお勧めします。
私たち法律事務所リーガルスマートは、無断欠勤に関するトラブルをはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
担当者
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■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務
■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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