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確実に退職できるやむを得ない理由とは?具体例を弁護士が解説!

確実に退職できるやむを得ない理由とは?具体例を弁護士が解説!
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「会社がブラックすぎるので辞めたいけど、無理やり引き留められるか、何かしら理由をつけられて懲戒解雇されて退職金なしとか、下手すると損害賠償請求されたりとか面倒なことになりそうだ。理由をどう伝えたらトラブルなく確実に退職できるだろうか?」

など、会社への退職理由の伝え方などで悩む方は多いのではないでしょうか。

本記事では、確実に退職できるやむを得ない事由にあたる理由があるのかということや、退職を認めてもらえない場合の対処法などについて労働問題に強い弁護士が解説します。

1. 退職のためにやむを得ない事由は必要なのか

会社と労働者との雇用関係を解消する方法は、①合意退職、②解雇、③辞職があります。

合意退職とは、会社と労働者とが合意によって雇用契約を解消することですので、双方の合意が必要です。

解雇は、一定の要件を満たす場合に、会社が、労働者の合意なくして一方的に雇用契約を解消することです。

辞職とは、労働者が、一方的に会社に対して、雇用契約を解消することで、会社の合意は必要ありません。

辞職が認められているのは、民法第627条1項において、

当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。

民法第627条1項

と定められているからです。

そのため、「雇用の期間を定めない雇用契約」(一般的に正社員のことを指します)の場合には、理由の如何によらずに、労働者が一方的に雇用契約を解消することが権利として認められています。

他方で、「雇用の期間を定めた雇用契約」(一般的に契約社員のことを指します)の場合には、事情が異なります。

この点、民法第626条は、

雇用の期間が五年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、五年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。
前項の規定により契約の解除をしようとする者は、それが使用者であるときは三箇月前、労働者であるときは二週間前に、その予告をしなければならない。

民法第626条

と定めています。

また、民法第628条では、

当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。

民法第628条

と定めています。

さらに、労働基準法附則第137条は、

期間の定めのある労働契約(一定の事業の完了に必要な期間を定めるものを除き、その期間が一年を超えるものに限る。)を締結した労働者・・・は、・・・民法第六百二十八条の規定にかかわらず、当該労働契約の期間の初日から一年を経過した日以後においては、その使用者に申し出ることにより、いつでも退職することができる。

労働基準法附則第137条

と定めています。

そのため、いわゆる1年を超える雇用期間が定められた契約社員の場合には、1年が経過するまではやむを得ない事由がなければ、労働者側から一方的に雇用契約を解消する(辞職する)ことができないのです。

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2. 「やむを得ない事由」として退職できる主な理由

「やむを得ない事由」として退職が認められる可能性があるものとして、主に以下のような事由が考えられます。

2-1. 病気

まず、病気を理由とすることが考えられます。内臓疾患や精神疾患などの病気による体調不良で、担当する業務をこなすことが困難になった、あるいは現在の仕事を続けることによって症状が悪化する可能性があると伝えれば、引き留められることなく退職することができるでしょう。

ただし、病気を理由に退職する場合、診断書の提出を求められる可能性がありますので、事前に医師に相談しておくとよいでしょう。

2-2. 介護

家族の介護も、「やむを得ない事由」として退職できる可能性があります。本人の病気を理由とする場合の診断書の提出と同様に、介護が必要な家族の身体の状態について証明を求められることがありますので、家族や主治医に事前に相談しておくとよいでしょう。

2-3. 結婚や出産

結婚や出産を理由としても、「やむを得ない事由」として退職できる可能性があるでしょう。

2-4. 引越し

遠隔地への引越しを理由とする場合も、引き留めにあう可能性は低いでしょう。特に「配偶者の転勤に同伴する」「親の介護のために実家に帰る」などの家庭の事情を理由とする場合には退職できる可能性が高いといえるでしょう。

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3. 確実に退職するコツや流れ

本章では確実に退職するために知っておきたいことや、円満な退職手続の流れを解説します。

3-1. 確実に退職するコツ

確実に退職したい場合のコツとして、以下のことを心がけるとよいでしょう。

(1)繁忙期を避ける

退職を希望する日については、会社の繁忙期を避けるようにしましょう。繁忙期に退職しようとすると業務に支障が出るほか、有給が残っていても取らせてもらえないなどのトラブルが起こるおそれがあります。

(2)退職の1~2か月前に会社に伝える

退職の意思を伝える時期について、法律上は民法第625条ないし627条に基づき2週間前までに辞職の申し出をすれば足りるということになります。

ただし、多くの会社では就業規則で退職の意思を定める時期を定めています(1か月前まで、または30日前までとする場合が多いですが、2か月前と定めている会社もあります)。

この就業規則の定めが有効であるのかという点については争いのあるところではありますが、円満に退職手続きを進めたいということでしたら、就業規則の規程に従った退職手続きを採ることをお勧めします。

(3)退職理由をネガティブなものにしない

前述のように、特に契約社員の場合には、「やむを得ない事由」に限り辞職が認められていますので、退職理由については、会社に対するネガティブな理由を告げない方が良いでしょう。

なお、虚偽の理由を用いることは絶対にやめましょう。

3-2. 円満な退職手続の流れ

円満に退職するためにとるべき段取りは、以下のような流れになります。

(1)1~2か月前に退職の意思を伝える

先に述べたように、引継ぎを十分に行い、会社が代替要員を確保する時間を取れるよう、退職を希望する時期の1~2か月前に上司に退職の意思を伝えます。

(2)上司と相談して退職日を決める

退職について会社の了承を得たら、上司と相談して退職日を決めてください。退職日が決まれば、引継ぎや有給取得など退職に向けての行動を具体的に決めることができます。

(3)退職届を提出する

退職日が決まったら、退職届を提出します。就業規則などで定められた書式に従って作成して直属の部署の責任者に提出してください。

(4)引継ぎとあいさつ回りを行う

退職日までの間、有給取得予定の日を除いて業務引継ぎとあいさつ回りを行ってください。

直接あいさつできない相手には、挨拶状や挨拶メールを送ることをお勧めします。

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4. 退職する際の注意点

本章では、退職する際に気をつけるべき点について解説します。

4-1. 退職の意思を会社に伝える前に関係者に話さない

退職の意思は、家族に話す程度は問題ありませんが、会社に伝えるまでは周りの人(特に同僚・後輩・取引先などの会社の関係者)には話さないようにしてください。

また、転職先が決まっていても口に出さないようにしてください。

本人が伝える前に関係者を通して会社に知られてしまうと、直属の上司が少なからず不快に感じたとしても仕方ありません。また、先回りして引き留めにあうなど、退職しづらい状況になるおそれもあります。

4-2. 必要書類の交付を受ける

退職の際、会社から以下の書類の交付を必ず受けるようにしてください。

(1)退職日に必ず受け取るもの

  • 雇用保険被保険者証
  • 年金手帳

(2)後日郵送などの方法で受け取るもの

以下は、退職日当日に受け取ることができないため、後日郵送などの方法で受け取ってください。

  • 源泉徴収票
  • 離職票

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5. 退職を認めてもらえない際の対処法

退職の意思を口頭で伝えたら「損害賠償請求する」などと脅し文句とともに引き留められたり、退職届を出しても受理してもらえない・・などという場合はどうすればよいでしょうか。

本章では、退職の意思を明確に伝えても会社が辞めさせてくれない場合にはどのような行動をとればよいか、対処法を解説します。

5-1. 内容証明で退職届を出す

退職の意思を口頭で伝えたり、退職届を提出しても受理してくれない場合は、内容証明郵便によって退職届を送付するという方法があります。

内容証明郵便は、差出日時・差出人・宛先・通知内容について、日本郵便が証明する制度です。内容証明郵便を送付する際に差出人と郵便局が保管する謄本が、退職届を提出した事実の証明となります。

従って、内容証明郵便で退職届を送ることにより、会社側が退職届を受け取っていないと主張できなくなります。

5-2. 弁護士に退職代行の相談をする

内容証明で退職届を出しても、なお会社が受理せず、法的手段をとるなどと脅迫的な引き留めを続けている場合には、弁護士(または、弁護士が関与する退職代行サービス)に相談することをお勧めします。

退職代行サービスとは、退職を希望する労働者本人に代わって会社への退職の連絡その他の必要手続きを行うサービスです。

退職代行を弁護士に依頼すると、退職手続きのほか残っている有給休暇の取得や、未払いの賃金や残業代の請求も代理で行うことができます。

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6. 退職に関するトラブルを弁護士に相談、依頼するメリット

前章でも述べたように、退職をめぐって会社とトラブルになった場合には、労働問題を専門とする弁護士に相談することをお勧めします。

本章では、退職に関するトラブルを弁護士に相談、依頼するメリットについて解説します。

6-1.退職手続の代行(退職代行)を依頼できる

会社がどうしても退職させてくれない場合、弁護士に相談すれば、本人に代わって退職手続きを行うことが可能になります。

いわゆる退職代行については、退職代行手続きを専門に行っている業者も多く存在します。弁護士(または、法律事務所が運営する退職代行サービス)に依頼した場合は相対的に料金が高くなりますが、他の代行業者と異なり、依頼者の代理人として会社との交渉や労働審判・訴訟などの手続きをすべて行うことができます。

6-2.未払賃金・残業代・有給消化の交渉や訴訟対応も依頼できる

退職トラブルの解決を弁護士に依頼した場合、退職の際に行使できる権利をすべて行使することが可能になります。これは、退職代行サービスとして考えた場合も最大のメリットとなります。

弁護士に依頼することで、退職手続そのものを完了させることに加えて、退職金・未払賃金・未払残業代を予め算定した上で会社に請求交渉を行ったり、有給消化の意思がある場合は併せて有給取得の交渉を行うことができます。

6-3.不当な損害賠償請求や不当解雇を防ぐことができる

退職に関するトラブル解決を弁護士に依頼した場合、会社から「勝手に退職したために会社に損害を与えた」等という理由で損害賠償請求されるリスクを軽減することができます。

あるいは代行業者に依頼した場合に起こりやすいトラブルの1つである「本人の無断欠勤を理由に懲戒解雇処分にされてしまう」というリスクもなくなるでしょう。

また、弁護士に依頼した時点でそれらの請求や処分をされていた場合には、請求が不当である旨を弁護士が主張することにより、請求や処分を撤回させることができます。

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7. 退職に関するよくあるQ&A

本章では、退職に関して頂くことが多い質問と、それに対する回答をご紹介します。

7-1.即日退職は違法になりますか?

正社員、つまり無期雇用の従業員の場合は原則として即日退職が認められません。これは、民法第627条により、期間の定めのない雇用契約は「当事者の一方が解約の申し入れをしてから2週間後に終了する」と定められていることによります。

正社員が適法に即日退職するための方法としては、①会社の同意を得た上で退職日まで欠勤扱いにしてもらうか、または②即日退職そのものの同意を得ることがあります。

①については、欠勤期間も会社との雇用契約は残っているので会社の同意があればこの扱いは問題ありません。

また②については、民法第627条は強行規定ではないため、雇用契約の他方当事者である会社の承諾があれば即日退職も違法ではないからです。

さらに、その会社に入社してから3年6か月以上経過していて、出勤率が8割以上の場合は年次有給休暇が14日以上付与されます。この条件に該当していて、有給休暇が14日以上残っていれば、退職日までに有給を消化する形で事実上即時退職することができます。

7-2. 退職金の支給要件を満たしているのに会社が退職金を払ってくれない場合はどうすればよいですか?

退職金については、労働基準法などの法令の定めはありません。しかし、就業規則などの会社規程で明確に支給要件の定めがあり、それを満たしているのに退職金を支払わないことは違法です。

退職金の請求権は、退職時から5年で消滅時効にかかります(労働基準法第115条)。しかし、会社に対して退職金支払いを内容証明郵便によって請求することにより、民法第150条の「催告」を行ったものと認められるので、消滅時効の完成を6か月間猶予させることができます。

従って、内容証明郵便を利用して退職金の支払いを請求することをお勧めします。ただし、経理担当による単純な見落としの可能性もあるので、最初は会社に電話かメールで問い合わせて確認して、返信を待ったほうがよいでしょう。

返信がなかったり、具体的な期日までに支払う旨の返信があってもその期日までに支払われなかった場合には、内容証明で請求してください。

7-3. 退職するときに絶対にやってはいけないことはありますか?

法律違反というわけではないのですが、勤めていた会社での人間関係を将来につなげるため、あるいは退職後の仕事などにネガティブな影響をもたらさないためという意味で、以下のような行動・言動は行わないようにしてください。

  • 退職理由を聞かれたときに、会社に対する不満や愚痴をいう
  • 上司に退職の意思を伝える前に、同僚や後輩、取引先などに会社を辞めることを話す
  • メールで退職届を出す(退職届ファイルの添付もNG)
  • 引き継ぎ未完了のまま退職する

7-4. 退職届が受理されなくても退職できますか?

正社員(無期雇用従業員)の場合は、民法第627条に基づき、退職希望日の2週間前に上司に退職の申し出をすることにより退職が可能です。

有期雇用従業員の場合、原則として契約期間が満了するまで退職できません。ただし、民法第628条により「やむを得ない事由」がある場合に限り契約期間の途中で退職することができます。たとえば、パワハラやセクハラ等のハラスメントの被害に遭った場合は「やむを得ない事由」と認められます。

有期雇用従業員でも、契約の開始日から1年を経過している場合は、労働基準法附則第137条の経過措置により、いつでも退職できます。

退職、つまり雇用契約を終了する要件として必要なのは(契約開始から1年未満の有期雇用従業員を除き)退職の意思表示のみで、退職届は必要ありません。

従って、法律上、退職届が受理されなくても退職は可能です。

ただし、退職の意思表示を口頭で行っただけでは、退職の意思表示を行った事実を会社が否定した場合に、その事実を証明することができないことになります。

従って、会社に退職を引き留められている場合には「その従業員が何月何日に退職の意思表示をしたという事実」を公的に証明するために、退職届を内容証明郵便で会社に送付することをお勧めします。

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8. まとめ

確実に退職するためには、退職理由として自身の病気や家族の介護など、他者が立ち入りにくい個人的な理由を挙げることをお勧めします。

不当解雇やパワハラ手段による退職勧奨などによって気に入らない社員を辞めさせようとする会社も少なからずある一方で、人手不足・離職率を上げたくないなどの理由で退職を認めてくれない会社も多くあります。

この点、労働問題に強い弁護士に依頼することにより、確実に退職するために必要な会社との交渉、さらに労働審判・訴訟等の法的手続きを全て任せることができます。

退職に関わるトラブルでお悩みの方は、ぜひ弁護士にご相談ください。

私たち法律事務所リーガルスマートは、退職に関するトラブルをはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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