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性格の不一致で離婚できる?慰謝料や財産分与などを弁護士が解説
夫に対して「もっと子どもの世話をしてほしい」
妻に対して「少しはショッピングを控えてほしい」
このような思いを抱いたことはありませんか。
これらの思いを抱く原因は、夫婦間の子育てに対する価値観や金銭感覚のずれにあります。
夫婦間の重要な価値観などのずれは、一般的に「性格の不一致」と呼ばれ、多くの日本人が離婚に至る原因です。
本記事では、性格の不一致で離婚できるケースとできないケース、性格の不一致で慰謝料や財産分与を請求できるかなどについて、離婚・男女問題に強い弁護士が詳しく解説します。
目次
1.「性格の不一致」とはどのような場合か
性格の不一致とは、一般的には、人生において大切にする時間やものなどの価値観が合わないことを意味します。
夫婦間で問題となる価値観は、金銭感覚、生活スタイル、仕事に対する姿勢、子どもの教育方針、もともとの性格など様々な種類があるでしょう。
結婚当初は同じであっても、結婚後に妻、夫それぞれの価値観が変化し、合わなくなるというケースは少なくありません。
また、そもそも確認不足で大きな価値観の違いに気付かないまま結婚し、婚姻後に発覚するというケースもあるでしょう。
特に、自分にとって重要な価値観が相手と合わないと感じると、その後は途端にささいな言動にも疑問を感じてしまうというのはよくあることです。
このようにして発生し、また発覚した性格の不一致が原因で、離婚にまで至ってしまうことは決して珍しくありません。
2.なぜ性格の不一致で離婚する方が多いのか
夫婦とはいえ人格や性格は別であるため、人生において大切にする価値観が違うことは珍しくないでしょう。むしろ、多かれ少なかれそのような価値観の違いを乗り越えて結婚に至る場合の方が多いかもしれません。
ここでは、性格の不一致を原因として、多くの方が離婚にまで至る理由を紹介します。
2-1.性格の不一致は1番の離婚理由
離婚の原因には様々な理由がありますが、1番多い理由は性格の不一致です。
令和4年度の司法統計によると、離婚調停の申立て件数は夫によるものが15,176件、妻によるものが41,886件あります。
そのうち、性格が合わないことを理由とした申立ては夫側が9,127件、妻側が16,151件であり、下記表の通り1番多くなっているのです。
【離婚調停申立ての主な動機】
申立ての動機 | 夫 | 妻 |
---|---|---|
性格が合わない | 9,127件 | 16,151件 |
異性関係 | 1,779件 | 5,655件 |
暴力を振るう | 1,353件 | 7,861件 |
酒を飲みすぎる | 382件 | 2,383件 |
性的不調和 | 1,669件 | 2,733件 |
参考:令和4年 司法統計年報(家事編)第 19 表 婚姻関係事件数―申立ての動機別
2-2.多くの方が性格の不一致で離婚する理由
それでは、なぜ性格の不一致による理由がここまで多いのでしょうか。
性格の不一致による離婚が多い原因の一つには、離婚理由として説明しやすいということが挙げられます。
たとえば、不貞や暴力などは、実際にこのような事情がなければ、離婚原因として挙げられることはないでしょう。
他方で、性格の不一致については明確な定義があるわけではありません。
そのため、明確な離婚理由がない場合に、「あえて挙げるなら性格の不一致」というように離婚理由として挙げやすいという特徴があります。
実際に、性格の不一致と一言でいっても、離婚に至るまでの経緯や背景事情は各家庭で様々です。
また、一般的には結婚してからの方が人生の期間は長いです。
結婚後に人生観や価値観が変わり、結婚相手との認識にずれが生じたとしても何ら不思議ではありません。
このように、理由として挙げやすいことや、結婚後に夫婦の価値観が変わる可能性があることから、性格の不一致が1番の離婚理由となっているものと思われます。
3.性格の不一致で離婚できるケース、できないケース
性格の不一致を原因として実際に離婚できるのは、どのような場合でしょうか。
ここでは、性格の不一致で離婚できるケースとできないケースをそれぞれ紹介します。
3-1.性格の不一致は法律上の離婚事由ではない
裁判所の判断で離婚が認められる離婚事由は、民法で以下の通り決められており、「性格の不一致」自体は挙げられていません。
【法律上の離婚事由】(民法770条)
- 不貞行為(不倫)があったとき
- 悪意で遺棄されたとき(理由もなく同居に応じないなど)
- 生死不明が3年以上続いたとき
- 重い精神病にかかり、回復が見込めないとき
- その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき(DV、金銭問題など)
離婚事由として挙げられていないのは、夫婦とはいえ人格が別である以上、お互いの価値観が一致しないことは十分に想定されるためです。すなわち、性格の不一致は、基本的には夫婦間の話し合いで解決すべきことと考えられているのです。
それでは、性格の不一致を理由に離婚できる場合とはどのようなケースなのでしょうか。
以下で離婚できるケースを紹介します。
3-2.性格の不一致で離婚できるケース
(1)夫婦で合意して離婚するケース
法律上の離婚事由は、あくまでも裁判によって離婚が認められるための条件です。
夫婦間で話し合い、離婚の合意をする場合には、法律上の離婚事由にとらわれることなくお互いの意思で自由に離婚できます。
そのため、離婚理由が性格の不一致であったとしても、何ら問題なく離婚できるのです。
(2)法律上の離婚事由があるケース
性格の不一致が原因で結婚生活がすでに破綻している状況であれば、離婚できる可能性があります。
そのような状況であれば、法律上の離婚事由である「婚姻を継続し難い重大な事由」に当たる可能性があるからです。
たとえば、性格の不一致が原因で別居し、別居期間が長期に渡るような場合には、「婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚できる場合があるでしょう。
なお、「婚姻を継続し難い重大な事由」として認められる別居期間の目安は3〜5年程度です。
また、性格の不一致が原因であっても、不倫をされたり暴力を受けたりした場合は、別の離婚事由に該当するため、離婚できます。
3-3.性格の不一致で離婚できないケース
前述した通り、性格の不一致は法律上の離婚事由ではないため、お互いの合意がない限り、原則として離婚できません。
たとえば、単に相手と性格が合わないと感じる、喧嘩が増えたといった程度では、離婚をすることは難しいでしょう。
性格の不一致と一言でいっても、実際には様々なケースがあります。
夫婦間の関係修復の余地が残されていると一般的に考えられるケースでは、性格の不一致を理由に離婚することは難しいのです。
4.性格の不一致で離婚を成立させるポイント
前述の通り、性格の不一致は法律上の離婚事由ではありませんが、きちんと準備をした上で手続きを進めれば離婚できる場合はあります。
そこで、性格の不一致を理由に離婚を成立させるための重要なポイントを解説します。
4-1.相手の認識を確かめる
性格の不一致を理由とした離婚を成立させるために一番早い方法が、相手と協議し、離婚の合意をすることです。
離婚の合意をするためには、まずは自分が感じている性格の不一致を相手も認識しているかどうかを確かめる必要があります。
相手も性格の不一致を認識し、それに対して違和感や不快感を抱いている場合は、協議によって離婚の合意をすることは難しくないでしょう。
このように、性格の不一致による離婚をすみやかに成立させるためには、まずは相手の認識を確かめることが重要なのです。
4-2.婚姻関係がすでに破綻していることを示す証拠を集める
前述した通り、性格の不一致を原因としてすでに結婚生活が破綻している状況であれば、
お互いの合意がなくても離婚できます。
合意なく離婚をするためには裁判をする必要があり、裁判所に離婚を認めてもらうには証拠が必要です。
すなわち、結婚生活がすでに破綻していることを示す証拠の収集が必要になります。
そのような証拠としては、たとえば、以下の資料があります。
- 離婚に関する相手とのやりとりがわかる資料(LINEやメールなど)
- 相手と別居していることを示す住民票など
自分の場合にどのような証拠を集めればよいかわからなければ、弁護士に相談するとよいでしょう。
5.性格の不一致で離婚する手順
性格の不一致を理由に離婚したい場合に、実際にどのような対応を取ればよいかを順番に説明します。
5-1.夫婦で協議する
性格の不一致を理由に離婚するためには、まずは夫婦間で協議をします。
協議においては、夫または妻(あるいは双方)が性格の不一致を感じる原因(価値観の違いなど)について、お互いの認識を確かめ合うことが重要です。
話し合いの過程で、性格の不一致について共通の認識が持てれば、お互いの合意により離婚することは難しくないでしょう。
なお、離婚の協議は必ずしも夫婦2人のみで行う必要はありません。
共通の友人や他の家族など第三者が入った方が協議を進めやすいようであれば、参加してもらうのも一つの方法です。
5-2.離婚調停を申し立てる
夫婦や第三者を交えた話し合いで離婚の合意ができない場合、家庭裁判所に対して離婚調停を申し立てる必要があります。
調停は、裁判所における話し合いの手続きです。
公平中立な裁判官や調停委員が当事者双方から言い分を聞いた上で調停案を提示するなどして、合意による解決を目指します。
離婚調停は裁判所による手続きではありますが、裁判とは異なり、離婚を成立させるにはお互いの合意が必要です。
調停でも妥協点が見出せず、離婚の合意ができない場合は、審判や離婚訴訟などの裁判を検討することになります。
5-3.離婚裁判による離婚は難しい
お互いの合意なく離婚が認められる方法としては、審判や訴訟といった裁判による離婚があります。裁判による離婚が認められるには、法律上の離婚事由が必要です。
しかし、前述した通り、性格の不一致自体は法律上の離婚事由ではありません。
そのため、性格の不一致を理由に裁判で離婚することは、婚姻関係が破綻しているなどの場合を除いて基本的に難しいです。
なお、裁判をしてでも離婚したいという場合は、早期に弁護士に相談することをおすすめします。
6.性格の不一致で離婚する場合、慰謝料請求できるのか
性格の不一致を理由に離婚する場合に、相手に対して慰謝料を請求したいという方もいるでしょう。
ここでは、実際に慰謝料を請求できるかどうかを解説します。
6-1.性格の不一致による慰謝料請求はできない
慰謝料とは、違法な行為によって受けた精神的苦痛に対する損害賠償金のことです。
そのため、慰謝料を請求するためには、相手の行為に法律上の責任が認められる必要があります。
たとえば、不倫をされた場合や暴力を受けた場合には、相手に法律上の責任があるため、離婚の際に慰謝料を請求できるでしょう。
しかし、性格の不一致については、基本的に夫婦のいずれにも法律上の責任がないというケースが一般的です。
夫婦間の価値観のずれやそれに伴う婚姻関係の破綻は、結果として生じるものであり、夫婦のいずれかを法的に責められるものではないからです。
ゆえに、性格の不一致で離婚するケースでは、多くの場合は慰謝料を請求できません。
6-2.他の離婚原因があれば慰謝料請求できる場合がある
性格の不一致が主な離婚原因であったとしても、他にも離婚原因がある場合には慰謝料請求をできる可能性があります。
たとえば、相手の不倫や暴力などの相手に法律上の責任が認められる違法行為が原因で、婚姻生活が破綻したようなケースです。
これらのケースでは、主な離婚原因が性格の不一致であったとしても、離婚の際に相手の不倫や暴力を理由として慰謝料請求ができます。
7.性格の不一致でとれる慰謝料の相場
前述した通り、性格の不一致で離婚する場合、基本的に相手から慰謝料はとれません。
ただし、相手の方が早く離婚したがっているケースでは、交渉により解決金などの名目で金銭の支払いを受けられるケースはあります。
この場合、慰謝料と異なり法律上の権利として支払いを請求できるわけではないため、相手の意向や経済状況により金額は大きく変わるでしょう。
また、性格の不一致の他に、不倫や暴力などの相手に法律上の責任が認められる違法行為があれば、慰謝料を請求できます。
この場合の慰謝料の相場は、一般的には数十万円〜100万円程度です。
相手の行為が悪質で精神的苦痛が大きい場合は、100万円〜300万円といった高額な慰謝料が請求できるケースもあります。
8.性格の不一致で離婚する際に弁護士に相談、依頼するメリット
性格の不一致による離婚を検討している方は、早めに弁護士に相談することがおすすめです。
弁護士に相談し、対応を依頼することで得られる主なメリット3点を詳しく解説します。
8-1.離婚に向けた的確なアドバイスがもらえる
前述した通り、性格の不一致を理由に離婚するためには、基本的に夫婦間で協議して離婚の合意をすることが必要です。
お互いの合意によらない裁判による離婚が認められることは多くありません。
そのため、離婚の手続きを進めるには、事前に十分な準備をする必要があります。
具体的には、相手との交渉の進め方や、裁判の見通しの検討、裁判で必要な証拠の収集などです。
これらの事前の準備を1人で調査して行うことは簡単ではありません。
この点、法律の専門家である弁護士に相談すれば的確なアドバイスを受けられ、どのような準備をすればよいかがわかります。
また、裁判になった場合の見通しについても、事前に知ることができるでしょう。
8-2.相手と直接交渉をしなくてもよくなる
離婚を成立させるには、まずは夫婦間で協議する必要があるため、相手とやりとりをする必要があります。
しかし、性格の不一致を理由に離婚する場合には、相手の顔も見たくない、声も聞きたくないというケースもあるでしょう。
このような悩みは、弁護士に対応を依頼することで解決します。
弁護士に相談して対応を依頼すれば、弁護士が代わりに相手との交渉を行うため、相手と直接交渉をする必要がありません。
また、相手とのやりとりや交渉にかかる時間や労力もかけずに済みます。
弁護士費用はかかりますが、相手と直接関わりたくない方や、交渉に時間や労力をかけたくない方は、特に弁護士に対応を依頼するとよいでしょう。
8-3.親権や養育費などの離婚に関する子どもの問題も解決できる
離婚する際は、離婚以外の問題も解決しなければならないことが多いです。
解決しなければならない問題としては、たとえば子どもがいるケースでは、親権や養育費、面会交流などがあります。
特に親権については、事前に決めておかないと離婚自体が認められません。
また、子ども以外の問題としては、慰謝料や財産分与などの金銭的な問題があります。
これらの問題についても、弁護士に相談し、対応を依頼することが可能です。
離婚問題を相談して事情を把握している弁護士であれば、改めて事情を説明する必要がないため、相談しやすいでしょう。
このように、離婚問題と合わせて、親権などの子どもの問題や財産分与などの金銭問題を合わせて相談できることは大きなメリットといえます。
9.性格の不一致での離婚に関するよくあるQ&A
9-1.性格の不一致で離婚したときの財産分与はどうなる?
A.他の離婚原因で離婚する場合と同様に、財産分与を請求できます。
財産分与とは、婚姻生活中に夫婦2人で築いた財産を分配する制度であり、離婚が成立した場合に広く行われます。
財産分与はどのような離婚原因であったとしても請求できるため、性格の不一致を理由とする離婚であっても問題はありません。
財産分与の割合は基本的には2分の1ずつですが、お互いの合意によって異なる割合や分与方法を自由に決めることができます。
9-2.性格の不一致を理由に離婚しました。離婚後に婚姻中の不倫が見つかった場合、慰謝料を支払わなければなりませんか。
A.慰謝料を請求された場合、支払う必要があります。
性格の不一致を理由とする離婚の場合であっても、不倫などの法律上の責任が認められる違法行為があれば、前述の通り慰謝料請求が認められます。
このことは、離婚後に婚姻中の不倫が発覚した場合でも同じです。
離婚が成立したことをもって、慰謝料の責任を免れるわけではありません。
そのため、離婚の理由が性格の不一致であったとしても、離婚後に婚姻中の不倫が発覚し慰謝料の支払いを求められれば、支払う必要があります。ただし、不貞は離婚原因とは無関係であることが認められれば減額できる可能性はあります。
10.まとめ
本記事では、性格の不一致による離婚について解説しました。
性格の不一致を原因としてお互いの合意によって離婚することは可能です。
合意ができない場合、裁判をする必要がありますが、婚姻関係が破綻しているなどのケースを除き、難しいケースが多いでしょう。
性格の不一致を理由とする離婚の場合、一方が離婚原因について法律上の責任を負うわけではないため、相手に対する慰謝料請求は基本的にできません。
財産分与については、性格の不一致を理由とする離婚であっても、問題なく請求できます。
性格の不一致を理由に離婚を検討する場合は、早めに法律の専門家である弁護士に相談した上で、対応することをおすすめします。相談する際は、事前に弁護士事務所のウェブサイトを確認して、離婚問題の取扱い実績が十分かどうかを確認するとよいでしょう。
特に裁判をしてでも早く離婚したいと考えている方は、裁判の見通しを確認するためにも、まずは弁護士に相談してみてはいかがでしょうか。
担当者
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■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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