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協議離婚とは?円滑に進める方法やトラブル対処法を弁護士が解説
離婚をする方法には様々な方法があるのですが、最もよく利用され、手続きとして簡易に離婚できるのが協議離婚です。
しかし、簡易に離婚ができることからトラブルになることも多く、特に金銭問題でトラブルになった場合には離婚後の生活が苦しくなってしまうことも珍しくありません。
本記事では、協議離婚とはどのようなものか、円滑にすすめる方法や、トラブルになった際の対応方法について離婚・男女問題に強い弁護士が解説します。
目次
1.協議離婚とは
協議離婚とは、当事者の協議によって行う離婚のことをいいます。
民法763条は、「夫婦は、その協議で、離婚をすることができる。」としており、裁判所等の介入なく離婚ができる旨を規定しています。
そのため、楽に手続きをすることができ、また弁護士費用等もかからないので、最も利用される離婚方法です。
1-1.協議離婚と調停離婚との違い
協議離婚と調停離婚はどのように異なるのでしょうか。
調停離婚とは、家庭裁判所での離婚調停によって行われる離婚のことをいいます。
当事者の協議で離婚ができない場合には、法的手続きで離婚をすることになります。
法的手続きというと裁判が思い浮かぶ方も多いのですが、離婚のような家族関係に関する問題については、まず一度話し合いを経てから裁判をすることが望ましいことから、最初に調停を利用することとしています(調停前置主義)。
調停は、裁判官と民間人から選ばれる調停委員2名からなる調停委員会が主導し、当事者から主張や意見を聞きながら、話し合いで紛争解決に導く手続きです。
離婚調停は家庭裁判所で行われ、夫・妻の双方から主張や意見を聞きながら、法律や過去の判例などに照らしながら合意を目指して行く手続きです。
協議離婚との間には次のような違いがあります。
- 協議離婚は当事者の合意だけで行われるのに対して協議離婚は家庭裁判所で行う手続きである点
- 協議離婚では離婚と子の親権者について合意できれば離婚成立が可能であるのに対して、調停離婚では基本的には慰謝料・財産分与・親権・養育費などのすべての事項に合意することで手続きを進められる点
- 協議離婚では離婚届を提出してはじめて離婚が成立するのに対して調停離婚では調停によって離婚は成立し離婚届は報告的な届け出に過ぎない点(調停離婚が成立した場合には、離婚届に代えて調停調書を役所に提出します)
1-2.裁判離婚との違い
協議離婚と裁判離婚はどのように異なるのでしょうか。
裁判離婚とは、離婚裁判によって行われる離婚のことをいいます。
当事者の協議が調わず、離婚調停でも合意ができないような場合には、離婚裁判で離婚について争います。
離婚裁判では裁判所が判決を下し夫婦はその判決に従うことになります。
そのため、離婚という判決が下れば離婚をすることになります。
協議離婚と裁判離婚との間には次のような違いがあります。
- 協議離婚は当事者の合意だけで行われるのに対して裁判離婚は家庭裁判所で行う手続きである
- 協議離婚は当事者が合意できなければ離婚できないが裁判離婚では当事者が合意していなくても離婚ができる
- 協議離婚をするのに離婚原因はいらないが裁判離婚をするためには離婚原因(民法770条1項)が必要
- 協議離婚では離婚届を出さないと離婚の効力は成立しないが離婚裁判では判決によって離婚が成立し離婚届は報告的なものにすぎない(離婚届に代えて、離婚の判決が確定したら、判決と確定証明書を役所に提出します)
2.協議離婚のメリット・デメリット
協議離婚にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
2-1.協議離婚のメリット
協議離婚のメリットとしては次のようなものが挙げられます。
(1)手続きが簡単である
協議離婚のメリットとしては手続きが簡単であることです。
離婚調停では、申立書を作成して、添付書類とともに家庭裁判所に提出した上で、裁判所から指定される期日に裁判所に出頭して、調停委員と交互に話し合い手続きをすすめます。
離婚裁判では、訴状を作成して、準備書面や答弁書、証拠書類の収集や証拠説明書を作成するなどした上で、期日に裁判所に出廷して手続きを進めていきます。
これに対して、協議離婚では、離婚届を作成して、市区町村役場に提出するのみで済みます。
(2)離婚にかかる時間が短い
離婚にかかる時間が短くて済みます。
調停離婚をする場合、離婚調停の申立から初回の期日が開始されるまでに1ヶ月くらいかかります。
最初の調停期日で合意ができなかった場合には、2回目の調停期日が開かれますが、期日は約1ヶ月後であり、仮に3回の期日で合意できたとして、3ヶ月以上の期間がかかります。
協議離婚は自分たちのペースで話し合い、合意ができれば離婚届を作成して提出すればいいので、離婚にかかる時間が短いです。
(3)とにかく離婚をすることが可能
調停離婚・裁判離婚ともに、慰謝料・財産分与・親権・養育費など、離婚にまつわる様々な事項をまとめて解決することになります。
これに対して、協議離婚では離婚をするかどうかと、子がいる場合の親権者がどちらなのかが決まっていれば離婚をすることが可能です。
その他の事項については別途決めることができます。
(4)離婚に関することを自分たちできめることができる
離婚調停や離婚裁判では、離婚に関する法律や、慰謝料の相場などに従って決められることになります。
協議離婚では法律に反しない限り、離婚に関することを当事者である夫婦が自分たちで決めることができます。
(5)離婚原因がなくても離婚ができる
離婚原因がなくても離婚が可能です。
当事者で合意ができずに離婚裁判を起こす場合、民法770条1項に規定されている離婚原因がなければ裁判が起こせません。
協議離婚は、離婚原因がなくても離婚が可能で、柔軟に対応をすることができます。
2-2.協議離婚のデメリット
一方で協議離婚には次のようなデメリットがあります。
(1)合意ができなければ離婚ができない
協議離婚では合意ができなければ離婚ができません。
そのため、協議に応じてもらえない場合や、話をはぐらかされて離婚届に記入をしてもらえなければ、協議離婚を行うことができません。
また、DVに悩んでいる人でも協議離婚をする場合にはDVの相手と交渉する必要があり、厳しい交渉を余儀なくされます。
(2)離婚条件などは当事者で決める必要がある
離婚において、慰謝料・財産分与・養育費や面会交流など、決めることはたくさんあります。
調停離婚や裁判離婚をする場合には、裁判所・裁判官・調停委員が、法律ではどうなっているか、実務的にはどうなっているかという観点を示してくれることが期待できます。
しかし、協議離婚をする場合にはこれらの条件について当事者で決めなくてはなりません。
(3)一方的に有利・不利な条件で離婚をしてしまうことがある
当事者が一方的に有利・不利な条件で離婚をしてしまうことがあります。
上述したように、各種条件は当事者で決める必要があります。
当事者が法律・離婚実務に詳しいほうが稀ですので、相場よりも高額・低額な慰謝料を定めてしまうこともで、一方にとって有利・不利ということが発生しえます。
また、夫婦それぞれの交渉によって、有利・不利な条件を飲まなければならないようなケースもあります。
例えば、モラハラが原因で家を出て離婚の請求をするも、貯金もあまりなく仕事もできず、頼ることができる親族もいないような場合、生活ができなくなってしまうことで離婚を諦めたり、早く支払いを受けるために著しく低い慰謝料・財産分与で合意してしまう場合もあります。
3.協議離婚の流れと進め方
協議離婚はどのような流れで進められるのでしょうか。
3-1.離婚することを提案する
離婚することを提案します。
離婚を提案する場合、次のようなことを伝えます。
- なぜ離婚を提案することになったのか
- 離婚における条件
特に例えば相手が不倫していたことを知っていて、探偵・調査会社に依頼して不倫をしていた調査報告書を手にしているような場合には、それを示してみても良いでしょう。
3-2.離婚の条件の交渉をする
離婚に関する条件を交渉しましょう。
離婚にあたっては離婚をすることのほかに、次のようなことを決めることになります。
- 財産分与
- 慰謝料
- 年金分割
- 子どもがいる場合
- 親権
- 養育費
- 面会交流
3-3.離婚協議書を作成する
離婚をすること及び離婚の条件について合意ができれば、離婚協議書を作成します。
このときに、離婚協議書は公正証書で作成しておくことが望ましいです。
公正証書とは、権利の存在や内容を公証してくれる書類のことをいい、これがあると万が一支払われない場合に裁判をしなくてもすぐに強制執行をすることが可能となります。
3-4.離婚届を市区町村役所に提出する
最後に離婚届を市区町村役場に提出します。
協議離婚は離婚届を市区町村役場に提出することで成立します。
なお、子どもがいる場合には、子どもがどちらの親権に服することになるか決めて記載しなければなりません(民法766条)。
離婚届には子の親権者を記載する欄があり、ここの記載がなければ離婚届は受理されません。
3-5.諸条件を決めなくても離婚することも可
以上は離婚協議の中で、離婚の条件について交渉する場合を前提にしています。
しかし、これらの条件を決めなくても、離婚に合意して離婚届を作成して提出すれば離婚自体は可能です。
なお、子どもがいる場合は、子どもがどちらの親権に服するかは決めなければならず、離婚届への記載は必須です。
そのため、とりあえず離婚をしてしまい、後の条件については追って決めても法律上は問題ありません。
しかし、一度離婚してしまうと、相手と連絡が付きづらくなることや、財産分与は離婚から2年で、慰謝料は3年で時効となることに注意が必要です(財産分与:768条2項・慰謝料(不法行為)724条)。
4.協議離婚の必要書類とは
協議離婚に必要な書類を確認しましょう。
4-1.離婚協議をする際に必要な書類
離婚協議をする際には特に必要な書類は、法律上要求されていません。
しかし、離婚協議書を作成する場合に、財産の特定にあったほうが良い書類はあります。
たとえば、夫婦で不動産を所有している場合、不動産の所有権を決めたとして、所有権を決めた不動産の特定をするために、所在地を記載します。
この所在地は通常は不動産登記簿謄本に記載されている事項を記載しますので、不動産登記簿謄本が必要ということになります。
他にも自動車や株券など財産分与で特定のために必要な情報を記載するために、その情報が記載されている書類があったほうが良いでしょう。
4-2.離婚届を提出するのに必要な書類
離婚届を提出するのに必要な書類には次の2つがあります。
- 届出人の身分証明書(免許証・マイナンバーカードなど)
- 戸籍謄本(本籍地以外に届け出る場合)
なお、届出時に訂正等の必要がある場合があるので、離婚届に押した印鑑も持ってくるようにしましょう。
5.協議離婚を有利に進めるポイント
協議離婚を有利に進めるポイントとしては次のようなことが挙げられます。
5-1.証拠をきちんと集める
協議離婚を有利に進めるポイントとしては、証拠をきちんと集めておくことが挙げられます。
相手が離婚に反対した場合、上述したように最終的には裁判となります。
裁判においては主張した事実を証明する必要があり、証拠の存在が非常に重要となります。
協議離婚では証拠は直接必要とされませんが、きちんとした証拠が揃っていれば、相手としては調停・裁判を行っても負けることになると認識することになります。
調停・裁判になって手続きへの負担や弁護士費用を負担することになるくらいであれば、交渉に応じようと考える場合もあり、離婚交渉を有利に進めることが可能となります。
証拠は、離婚の交渉が始まると収集が難しくなるので、離婚の申し出をする前から収集しておきます。
5-2.相手の財産に対する調査
離婚で問題になるのが財産分与・慰謝料・養育費といった金銭問題です。
この金銭問題で有利に協議離婚をすすめるために、相手の財産に対する調査をきちんと行いましょう。
財産分与をするにあたっては、夫婦でどれだけの財産があるかわかっていなければ、交渉が上手にできません。
相手が家庭のためにしている貯蓄があっても、その存在や口座を知らない場合には、これを隠した状態で財産分与の交渉に応じることになりかねません。
そうなると、分与すべき財産が、本来財産分与の対象となる財産よりも少ないということになります。
また、万が一相手が取り決めた財産分与・慰謝料・養育費の支払いをしない場合には強制執行をする必要があるのですが、強制執行をする場合には相手の財産をある程度特定する必要があります(例:銀行口座の場合は銀行名と支店名を特定する必要がある)。
そのため、相手の財産に対する調査は離婚申し出前に行うようにしましょう。
6.協議離婚後に後悔しないためのポイント
協議離婚後に後悔しないためのポイントを確認しましょう。
6-1.離婚の交渉を余裕をもってできるようにする
離婚の交渉を余裕をもってできるようにしましょう。
たしかに法律上は、精神的苦痛を受けることがあれば慰謝料請求ができ、財産分与・年金分割・養育費など、離婚後の生活を守るための権利が規定されています。
しかし、不利な交渉をした結果、本来得られる慰謝料や財産分与を得られないこともあります。
特に、十分な準備をせずに別居を初めて離婚の交渉をしてみたものの、生活費を渡してもらえず、自分も十分な貯蓄がなく、子どもも小さくて就職して給与を得ることもできないような場合、相手は足元を見てのらりくらりと生活に困り始めるまで交渉を続けることも考えられます。
離婚の交渉をする際には余裕をもって交渉できるように、貯蓄や生活の援助を受けられる親族を確保しておくなどしておきましょう。
6-2.離婚協議書はきちんと作成し公正証書にする
離婚に関する条件に合意が得られた場合に、離婚協議書はきちんと作成し、できれば公正証書にするようにしましょう。
特に、養育費は多くのケースできちんと払われていないことが知られています。
令和3年度全国ひとり親世帯等調査によると、養育費が支払われているのは、母子家庭のうち28.1%にとどまります。
もし取り決めをしたにも関わらず書面にしていないような場合には、養育費請求調停・審判を起こして養育費の内容を確定して、強制執行をする必要があり、時間がかかります。
公正証書があれば上述したように、すぐに強制執行をすることができるので、払ってもらえない期間を短くすることができます。
7.協議離婚で困った際に弁護士に相談、依頼するメリット
協議離婚で困った際には弁護士に相談、依頼するメリットとしては次のようなものが挙げられます。
7-1:法的なサポートを受けられる
協議離婚においては、当事者で離婚するかどうか、離婚に関する条件についての交渉が必要となります。
裁判になった場合の離婚原因、離婚する条件についての請求根拠や、裁判をする場合の証拠の収集など、協議離婚の段階から法律的な知識は欠かせません。
弁護士に相談すれば、どのような法律問題があり、どう解決すべきかを的確に示してもらうなどの法的サポートを受けられます。
7-2.相手との交渉のポイントを知る/交渉をまかせることができる
協議離婚で困った際に弁護士に相談すべき理由としては、相手との交渉のポイントを教えてもらうことが可能となります。
弁護士に依頼すれば代理人として相手と交渉をしてくれます。
感情的になってしまってきちんと交渉できなくなってしまった場合には、直接交渉を続けると余計に解決しなくなるので、弁護士に任せてしまったほうがスムーズに解決することが期待できます。
自分が弁護士に依頼すれば、相手も弁護士に相談・依頼する可能性が高く、感情的な対立を避けつつ争点となる事項に絞った交渉ができることも期待できます。
8.協議離婚に関するよくあるQ&A
協議離婚に関するよくあるQ&Aには次のようなことがあります。
8-1.相手が行方不明になっているが協議離婚はできますか?
夫婦の一方が自宅を退去してそのまま行方不明となっているケースがあります。
相手が行方不明であるような場合には当然協議そのものができません。
そのため、協議離婚をすることはできず、同じく合意を目指す離婚調停も出来ないので、離婚裁判を起こして、公示送達によって離婚裁判を求めることになります。
なお、3年以上の生死不明は、離婚原因となっています(民法770条1項3号)。
8-2.協議離婚の相談を弁護士に無料でする方法はありますか?
弁護士に相談するためには30分5,000円程度の相談料の支払いが必要です。
しかし、市区町村の無料の弁護士相談を利用すれば無料で弁護士と相談が可能です。
また、一定の収入以下である場合には、法テラスによる民事法律扶助の制度を利用すれば、無料で相談が可能です。
これらの場合、相談時間が限られていることもあるので、効率よく相談できるように、予め事案や証拠などを整理しておくようにしましょう。
また、弁護士の中には、無料で法律相談に応じていることもあるので、上手に利用しましょう。
法律事務所リーガルスマートでは、初回60分無料の法律相談を行っているので、まずはご相談ください。
9.まとめ
このページでは協議離婚についてお伝えしました。
当事者の協議で離婚を行うのが協議離婚で、手続きの負担が軽いことから離婚の方法の中でも最も多く用いられています。
離婚条件などについて適切に定めないとトラブルになったり、あとで後悔をすることになるので、早めに弁護士に相談・依頼をするようにしましょう。
私たち法律事務所リーガルスマートは、離婚・男女問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
担当者
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■経歴
2004年3月 大阪大学法学部卒業
2007年3月 関西大学法科大学院卒業
2008年12月 弁護士登録(大阪弁護士会所属)
2008年12月 大阪市内の法律事務所で勤務
2021年3月 一歩法律事務所設立
大阪市内の法律事務所に勤務し、民事訴訟案件、刑事事件案件等幅広く法律業務を担当しておりました。2021年3月に現在の一歩法律事務所を設立し、契約書のチェックや文書作成、起業時の法的アドバイス等、予防法務を主として、インターネットを介した業務提供を行っております。皆様が利用しやすい弁護士サービスを提供できるよう心掛けております。
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