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【労働者向け】労働基準法違反の事例と対処法などを弁護士が解説

【労働者向け】労働基準法違反の事例と対処法などを弁護士が解説
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労働基準法とは、労働者の権利を守るために規定された法律です。労働条件をはじめ、残業代や解雇、有給休暇や休息、賃金の支払義務、労災などについて規定しています。

たとえば、会社での基本的な労働時間である法定労働時間、これを超えて残業させる場合は36協定の締結が必要であること、また法定労働時間を超えて労働させた場合の割増賃金の支払などについて、詳細に定めています。

会社が労働基準法に違反した場合は、労働者が労働基準監督署に通報することにより、会社に刑事罰が科されることもあります。

会社の労働基準法違反が疑われる場合には、早い時期から弁護士に相談して早期解決を図る必要があります。

では、どのような場合に労働基準違反となるのでしょうか?

本記事では、労働基準法違反となる代表的なケースと罰則、会社が違反した際の対処法や問題となった事例などについて、労働問題に強い弁護士が解説します。

目次

1.労働基準法違反となる事例と罰則

ここでは、具体的にどのような場合に労働基準法違反となるのか、労働基準法違反となる代表的な13の事例と罰則について解説します。

それぞれについて、見ていきましょう。

1-1.社会的な身分や性別で差別してはいけない

会社は、労働者の国籍や信条、社会的身分を理由にして、賃金や労働時間などの労働条件について、差別的な取り扱いをすることを禁じています(労働基準法第3条)。

また、労働者が女性であることを理由に、賃金について、男性と差別的な取り扱いをすることも禁じています(労働基準法第4条)。

違反した場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科せられます。

1-2.労働者の意思に反する労働の強制等

会社は、暴行、脅迫、監禁、その他に精神や身体の自由を不当に拘束する手段により、労働者の意思に反して強制労働をさせることはできません(労働基準法第5条)。

例えば、労働者の自由な意思によらずに、上司が恫喝して無理やり労働させることはできません。

また、退職を願い出ているにもかかわらず、退職をさせない行為も、場合によっては強制労働に該当する場合があるため、注意が必要です。

違反した場合には、1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金刑が科されることがあります(労働基準法第117条)。

1-3.中間搾取の排除(ピンハネの禁止)

派遣労働など法律で認められる場合を除き、業務として、他人の就業に介入して利益を中間搾取する行為(賃金をピンハネするなど)は、禁止されています(労働基準法第6条)。

例えば、就職の斡旋、労働者募集、労働者供給を有料で行う場合は、中間搾取に該当するため、注意が必要です。

違反した場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金刑が科されることがあります(労働基準法第118条)。

1-4.労働契約に違約金を含める・債権と賃金の相殺

会社は労働者に違約金を払わせたり、労働者が借金をしている場合に賃金と相殺させることはできません(労働基準法第16条)。

例えば、労働者が労働契約に違反して労働契約中に退職や迷惑行為をしても、賃金から違約金を差し引くことは禁じられています。

違反した場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科せられることがあります(労働基準法第119条)。

1-5.一方的・予告なしの解雇(解雇予告がない)

会社が労働者を解雇する場合、必ず1か月前に労働者に解雇予告をしなければなりません。解雇予告ができない場合には、平均賃金の30日分以上の賃金を労働者に支払わなければなりません(労働基準法第20条)。

ただし、事業が継続できない場合、労働者に問題があって懲戒解雇する場合は、予告なしで解雇が認められることもあります。

予告なしで解雇した場合、会社は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられることがあります(労働基準法第119条)。

1-6.法定労働時間を超えて働かせること

会社は、労働者を1日8時間、1週間に40時間以上働かせることはできません(労働基準法第32条)。この時間を超えて労働させることは原則違反となります。

ただし、36協定を締結することで労働者に時間外労働をさせることができます。

これに違反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科せられます(労働基準法第119条)。

1-7.休憩を与えない

会社は労働者に対し、労働時間が6時間を超える場合には少なくとも45分、8時間を超える場合には1時間以上の休憩を労働時間の途中に与えなければなりません(労働基準法第34条)。

休憩を与えなかった場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科されます(労働基準法第119条)。

1-8.休日を与えない

会社は、労働者に対して、毎週1回以上の法定休日を与えなければなりません(労働基準法第35条)。

違反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科せられます(労働基準法第119条)。

1-9.残業代|時間外労働や休日および深夜労働に対する割増賃金の未払い

会社が労働者に時間外労働、休日労働、深夜労働をさせた場合、所定の割増賃金を別途支払わなければなりません(労働基準法第37条)。

割増賃金率は、一般の時間外労働は1.25倍、深夜労働は0.25倍、休日労働は1.35倍です。

違反した場合には、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科されます(労働基準法第119条)。

1-10.有給を与えない

会社は、勤続期間6か月以上の労働者に対して、労働期間や労働時間数に応じた有給休暇を付与しなければなりません(労働基準法第39条)。

違反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科せられます(労働基準法第39条)。

1-11.坑内における18歳未満の未成年、妊娠中女性の労働

会社は、18歳未満の未成年者や妊娠中の女性を坑内で労働させることはできません(労働基準法第63条、64条の2)。

違反した場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金刑が科せられます(労働基準法第118条)。

1-12.産前後の休業・育児期間の請求を認めない

会社は、労働者が産前産後休暇や育児休業の申出を必ず認めなければなりません(労働基準法第65条、66条、67条)。

これに違反した場合、6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科せられます(労働基準法119条)。 

1-13.療養補償や休業補償・障害補償がない

会社は、労働者が労災にあった場合の治療費、休業補償、後遺障害が残った場合の障害に対する補償を負担しなければなりません(労働基準法第75条)。

この補償は、労災保険に加入して必要なときに保険給付を受けさせる会社の義務とされています。

これに違反した場合は、6か月以上の懲役または30万円以下の罰金刑が科されます(労働基準法第119条)。

1-14.遺族に対する補償

労働者が労災により死亡してしまった場合、会社は労働者の遺族に葬祭費の支払と生活保障をしなければなりません(労働基準法第79条)。

この補償も、労災保険への加入とそこからの給付受取をさせる会社の義務です。

違反した場合は、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金刑が科せられます(労働基準法第119条)。

1-15.就業規則明示および作成と届出違反

会社は、労働者を雇用するときに雇用条件を明示することが義務づけられています。

また、10人以上の労働者のいる会社では、就業規則の作成と届出、就業規則を労働者に周知させることが義務付けられています(労働基準法第15条、89条、106条)。

違反した場合は、30万円以下の罰金刑が科せられます(労働基準法第120条)。

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2.会社側に労働基準法違反があった際の対処法

では、会社側に労働基準法違反がある場合、どのように対処するべきでしょうか?

対処法を知っておくことで、事前に対策をたてることができるでしょう。

ここでは、労働基準法違反がある場合の対処法について解説していきます。

2-1.社内の内部通報窓口を利用

会社に労働基準法違反がある場合、まずは社内の内部通報窓口や労働組合などの相談窓口に相談してみることで解決できることもあります。

2020年に公益通報者保護法が改正され、300人以上の会社や法人組織には内部通報制度の整備が義務付けられました。内部通報制度とは、会社内の不正を通報する制度です。

社内の総務部、法務部、人事部などに、内部通報窓口を設置している会社も増えました。通報することにより、労働基準法違反の問題解決や再発防止対策も期待できます。

ただし、社内の内部通報窓口に通報することにより不利益が事前に予想される場合には、できるだけ早い時期に弁護士に相談することをおすすめします。

2-2.弁護士事務所などの外部通報窓口に相談

社内に内部通報窓口がない場合は、法律事務所や通報窓口を専門としている外部の通報窓口の専門会社に相談することも有益です。

労働問題に精通した弁護士に相談することで、問題が大きくなる前に適切な解決方法を提案してもらい、自身の権利を守るための対策を講じることが可能になります。

例えば、未払い残業代や有給休暇が取れないなどの問題は、労働者が個人で会社に交渉しても対応してもらえないことも多くあります。

労働者の健康被害が懸念される場合には、早い時期から法律の専門家である弁護士に一任することで、問題の早期解決が図れるでしょう。

2-3.労働基準監督署に通報

会社に労働基準法違反がある場合、労働基準監督署に通報するなど、裁判以外の紛争処理手続を利用することも可能です。

労働基準監督署は、会社が労働基準法に違反している場合、労働基準法違反の事実について指導、是正勧告を行う公的機関です。

未払い残業代や強制労働などがある場合には、労働基準監督署が指導に入り、違反行為に対する是正勧告が出されるため、会社はこれに従わなければなりません。

ただし、労働基準監督署は指導と是正勧告をするにとどまり、例えば、未払い残業代の支払を強制することまではできないため、注意が必要です。

労働基準監督署以外にも、労働局の紛争調整委員会や労働委員会によるあっせん手続など、第三者による紛争処理手続を利用することも可能です。

こうした手続きは無料ですが、労働基準監督署と同様に強制力に欠けるため、未払い残業代の回収などが目的の場合は、以下の法的手続きをとることが可能です。

2-4.労働審判

会社が労働基準法に違反している場合は、労働審判を起こすという手段もあります。

労働審判とは、通常の訴訟手続と異なり、比較的簡易に会社と労働者間の労働関係のトラブルを解決するための裁判所の手続です。

労働審判は、裁判官である労働審判官1名と、労働審判員という有識者2名が会社と労働者の間に入って話合いを行います。

労働審判は、会社と労働者の間に第三者が介入して話合いを行うため、交渉がまとまりやすいというメリットがあります。

話合いがまとまらない場合、あるいは当事者のどちらかが異議を申し立てると、そのまま訴訟に移行することが可能です。

2-5.訴訟

労働基準法に違反している場合の最終的な対処法は、訴訟を起こすことです。

訴訟は、まず、裁判所に訴状ならびに証拠を提出します。その後、1か月から2か月後に第1回弁論期日が指定され、1か月に1回のペースで弁論期日が開かれます。

労働基準法違反を訴える労働者と会社が、それぞれ証拠を提出しながら弁論を繰り返し、それぞれの主張がそろった時点で、証人や本人の尋問が行われ、その後に判決が下されます。

労働審判と異なり、訴訟の判決は法的な判断が下されるため、労働者の勝訴判決が出されれば、会社は判決に従わなければなりません。

訴訟を起こす場合は、法的な専門知識が不可欠になるため、早い時期から弁護士に相談することが得策でしょう。

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3.労働基準法違反から発展する労働問題

労働基準法違反から発展する労働問題には、主に、以下の2つがあります。

それぞれについて、見ていきましょう。

3-1.不当解雇などの雇用契約に関する労働問題

会社と労働者間には、このような条件で雇う、あるいは、このような条件を守って働く、という雇用契約があります。

この雇用契約は、労働基準法、労働契約法、労働派遣法などにより保護を受けていますが、契約違反の例として、以下の代表的なものがあります。

労働問題の種類具体的な事例
不当解雇・仕事中にミスしたことで、明日から来なくてよいと突然クビにされた。
・経営不振であることを理由に、突然リストラされた。
退職勧奨・自主退職するか解雇にするか決めろ、と脅された
・別室に呼び出されて自主退職するように強要された。
派遣契約の更新拒否・突然明日から来なくてよいと契約を打ち切られた(派遣切りされた)
・契約更新を繰り返していたのに突然更新を拒否された(雇 止めされた)

不当解雇、退職勧奨、派遣契約の更新拒否のいずれも、労働基準法違反となる可能性がある労働問題です。

3-2.賃金に関する問題

会社は、労働者に対して、労働の対価として、通貨で直接、全額を毎月1回以上、一定の期日に、賃金を支払わなければなりません(賃金支払いの5原則)。

賃金に関する代表的な労働問題として、以下の代表的なものがあります。

労働問題の種類具体的な事例
残業代の未払い・時間外労働になるのに残業代が支給されない(サービス残業)
・管理職であることを理由に残業代が支払われない
・固定残業代、フレックスタイム制、年俸制を理由にして残業代が支払われない
退職金の未払い・退職時にトラブルが起きたため退職金がない
不当な減給・降格・小さなミスで不当に減給、降格された

賃金の支払いに関しては、労働基準法で保護されているため、会社がこれに違反すれば、刑事罰を受ける可能性もあります。

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4.労働基準法違反で問題になった実際の事例

ここでは、会社の労働基準法違反が問題となった実際の事例を紹介します。

それぞれについて、見ていきましょう。

4-1.予告なしに解雇した事例

アパレル会社において、労働者の一人が解雇予告ならびに解雇予告手当もなしに、突然会社から解雇通知が届き解雇されました。

その後、この解雇対象となった労働者が、会社を相手に解雇の無効を求めて訴訟を提起しました。

裁判所は、使用者が労働基準法20条の解雇予告期間を設けず、または解雇予告手当の支払なしに労働者に対して解雇の通知をした場合、即時解雇としての効力は生じない、との理由から即時解雇予告の無効判決が下されました。

4-2.法定労働時間を超過した事例

旅行会社に勤務する添乗員が、未払い残業代の請求をするために旅行会社を提訴しました。

会社は、添乗員という職業柄、労働基準法にいう労働者の労働状況を把握できないことを理由に(労働基準法第38条)、労働時間を算定できないとして、残業代を支給していませんでした。

これに対して、裁判所は、予め決められた旅程表から日時や行き先を確認することができるため、会社が労働者の労働状況を把握できないとはいえない、として、会社側の反論が認められず、残業代の支払が命じられました。

4-3.労働条件の明示が問題となった事例

ハローワークの求人票に掲載されていた労働条件から入社した労働者が、入社後に求人票の労働条件と異なることを理由に、会社を訴えました。

求人票に記載されていた労働条件は、「雇用期間の定めは無し」と記載されていたものの、入社後の労働条件は、「1年契約」と記載されていたと主張しました。

これに対して裁判所は、入社前の求人票に記載されていた労働条件が適用されるとの判決を下しました。

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5.労働問題を弁護士に相談、依頼するメリット

労働問題を弁護士に相談・依頼するメリットは、以下の3つです。

それぞれについて、見ていきましょう。

5-1.弁護士に一任できる

労働問題を弁護士に相談・依頼する1つめのメリットは、労働問題の解決を弁護士に一任できることです。

労働問題を解決するためには、まずは会社との交渉が必要なりますが、労働者が個人で会社と交渉することになると、資料の収集、書類の作成、交渉など、多大な負担がかかります。

また、労働者が交渉すれば、本来認められるはずの適正な権利も主張できないことが多いため、会社から不利な条件を提示され、泣き寝入りする結果になりかねません。

法律の専門家である弁護士に依頼することで、労働問題に必要な法的手続きから会社との交渉まで、原則すべて一任できるため、時間的、精神的な負担が軽減され、より有利な条件で問題を解決することができます。

5-2.弁護士が証拠資料を法的に判断できる

労働問題を弁護士に相談・依頼する2つめのメリットは、証拠資料を基にして法的な判断をすることが可能です。

労働問題を解決するためには、何よりも証拠が重要になりますが、どのような証拠が必要になるのか、どのように収集できるのかなど、法的な知識がないと判断できないことも少なくありません。

弁護士に依頼することで、手持ちの証拠資料を基に、証拠資料として認められるのか否か判断することが可能です。

5-3.会社が対応するようになる

労働問題を解決するために、労働者が個人で会社に交渉しても、会社は様々な反論をして交渉に応じてくれないケースも少なくありません。

また、会社と直接交渉をすることで、その後会社との関係がこじれてしまい、不利な立場に立たされてしまう可能性もあるでしょう。

弁護士が法的に対処することで、会社のほうでも対応せざるを得なくなり、労働問題の解決を目指すことが可能になります。

依頼者の状況やご希望に合わせて、弁護士が戦力を提案することができます。

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6.労働基準法に関するよくあるQ&A

6-1.会社が労働基準法に違反すると、どうなりますか?

会社が労小津基準法に違反すると、最悪の場合、経営者が逮捕されて罰則を科される可能性があります。

その他にも、労働者から損害賠償などを請求されたり、刑事罰が下されることもあります。

7.まとめ

今回は、労働基準法違反となる代表的なケースと罰則、会社が違反した際の対処法や問題となった事例などについて、労働問題に強い弁護士が解説しました。

労働基準法を守ることは会社の義務であるため、決して労働基準法を軽視することはできません。

労働問題でお悩みの方は、できるだけ早い段階から労働問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

私たち法律事務所リーガルスマートは、労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

福永 臣吾
福永 臣吾法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2005年3月 慶應義塾大学経済学部 卒業
2011年3月 一橋大学法科大学院 修了
2014年12月 最高裁判所 司法研修所(鹿児島地方裁判所配属) 修了
2015年1月 弁護士法人アディーレ法律事務所 入所
2015年4月 弁護士法人アディーレ法律事務所鹿児島支店支店長 就任
2023年9月 法律事務所リーガルスマート入所
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