不当解雇

不当解雇の相談先は?弁護士に相談するメリットを解説!

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1.そもそも「不当解雇」とは?

不当解雇とは、会社が法律のルールの定めを守らずに一方的に従業員との労働契約を解除することをいいます。

日本では労働者の地位が手厚く保護されており、解雇は簡単には認められていません。能力不足や協調性がないなどの理由で突然「明日から来ないでいい」と言われたような場合は不当解雇に当たる可能性があります。

不当解雇されたときは、会社に対して未払いの賃金や慰謝料を請求することができる場合があります。

コンプライアンス意識が低く、従業員を使い捨てる、いわゆる「ブラック企業」は社会問題化しています。

「不当解雇かもしれない」と思ったときは適切な窓口に相談し、会社に対して正当な権利を行使しましょう。

1-1.解雇に関する法律のルール

「不当解雇」という言葉を耳にしたことがある方は多いと思いますが、法律的にどのような意味があるのでしょうか?

ここで、解雇に関する日本の法律のルールを確認してみましょう。

民法では、使用者と労働者は、期間の定めがない労働契約については理由を問わずに自由に解消できるのが原則とされています(627条1項)。この根底には、契約の当事者はお互いに対等な関係で契約条件を取り決めることができる「契約自由の原則」という考え方があります。

しかし、現実においては使用者と労働者の間には情報や交渉力の格差があり、対等な立場とは言えません。

そこで、労働者を保護するための法律として労働基準法(労基法)があります。

労働基準法に解雇の理由を限定する定めは置かれていませんが、日本の裁判所は弱い立場になる労働者を保護するために古くから解雇を厳しく制限してきました。判例の積み重ねによって確立された解雇規制の法律論は「解雇権濫用法理」と呼ばれています。

2007年に成立した労働契約法では、「解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」という定めが置かれました(16条)。これは解雇に関する過去の裁判所の判断を明文化したものです。最近の裁判例ではこの規定を根拠に解雇の正当性が争われています。

この条文を反対に解釈すれば、客観的な合理性があり、社会的に相当であれば解雇が認められることになります。しかし、裁判所は解雇の有効性を非常に厳しく判断しています。たとえば、能力不足や協調性が欠けていることを理由に会社が従業員を解雇することは往々にしてありますが、多くの場合、このような解雇は不当解雇とされて無効となります。

1-2.就業規則

法律違反だけでなく、就業規則や雇用契約書等に根拠がないことを理由に解雇が違法とされることもあります。就業規則とは労働基準法で従業員が10名以上の会社に作成が義務付けられているもので、いわば会社のルールブックです。

従業員が企業の秩序に反する行為をしたことに対する制裁として行われる解雇を「懲戒解雇」と呼びます。会社が従業員に対して懲戒解雇をするためには、あらかじめ就業規則や雇用契約書等に解雇の根拠となる規定が定められていることが必要です。就業規則や雇用契約書に懲戒処分の規定がなかったり、そもそもこれらが存在しない場合には、会社は従業員に対して懲戒処分をすることはできません。

また、就業規則はあるが全従業員に周知されていない場合は就業規則が無効とされ、それに基づいて行われた懲戒解雇も違法となります。

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2.不当解雇の相談窓口一覧

「不当解雇かもしれない」と思ったとき、どこに相談をすればいいかわからず途方に暮れる方もいらっしゃると思います。

労働問題の専門家から不当解雇についてアドバイスを受けられる窓口はいくつかあります。しかし、窓口によっては相談はできても問題の解決に繋がるとは限りませんので注意が必要です。

2-1.労働基準監督署(総合労働相談コーナー)

労働基準監督署(労基署)は厚生労働省の出向機関の一つです。その名のとおり、管轄内の企業が労働基準法を始めとする労働関連法規を守っているか監督し、違反があったときに監督指導を行う行政機関です。不当解雇のほか、労働条件の明示、長時間労働、賃金の未払い、最低賃金違反などが労働基準監督署の取扱業務です。

会社に重大で悪質な法違反があり、何度指導しても改善されない場合、労働基準監督署の監督官は事業場に立ち入って捜索・差押えをしたり、関係者を逮捕することができます。これを司法警察事務といいます。

労働基準監督署は全国に321署と4つの支署があり、労働問題に関する身近な相談窓口として真っ先に思い浮かぶ方も多いでしょう。

たしかに、労働基準監督署では不当解雇に関する相談に対応してもらうことができます。会社から解雇されたとき、その解雇が法律上の要件を満たしているかアドバイスをもらうこともできるでしょう。

しかし、労働基準監督署は管轄する事業場に監督指導を行うことはできますが個別の労働紛争を解決することはできません。労働基準監督署は裁判所と異なり、不当解雇を取り消すよう会社に命じるだけの権限がないのです。表現を変えれば、労働基準監督署の監督指導には法的拘束力がないと言うこともできます。

2-2.労働局

労働局とは厚生労働省の下部組織の一つであり、労働基準監督署の上位機関に当たります。労働局は全都道府県に1つずつ設置されており、「都道府県労働局」と呼ばれることもあります。

労働局には総合労働相談コーナーと呼ばれる相談窓口があり、解雇に限らず、雇止め、配置転換、賃金の引下げ、募集・採用、いじめ・嫌がらせ、パワハラなどのあらゆる分野の労働問題を相談することができます。

労働基準監督署の相談窓口と異なる点として、労働局の総合労働相談コーナーでは個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律に基づく個別労働紛争解決制度の申し込みをすることができます。個別労働紛争解決制度には労働相談、助言・指導、あっせんの3種類があります。

助言・指導とは、労働局が当事者に対して紛争の問題点を指摘し、解決の方向を示してくれる制度です。そしてあっせんとは、紛争の当事者の間に公平・中立な第三者として労働問題の専門家が入り、話し合いにより紛争の解決を図る制度です。

いずれも無料で利用することができ、裁判に比べて迅速で簡便に手続きが進む点がメリットです。また、あっせんでは弁護士、大学教授、社会保険労務士などの労働問題の専門家が紛争調整委員として間に入ることで、当事者同士の話し合いと比べて解決に繋がりやすい特徴があります。

しかし、労働局の助言・指導やあっせんはあくまで自主的な解決を促進するものであって、話し合いの方向性を示してもらうことはできますが、強制力があるものではありません。会社側が話し合いに応じない場合や、紛争調整委員会が示したあっせん案に応じない場合には解決に至りません。つまり、労働基準監督署への相談と同じく法的拘束力がない点が大きな欠点と言えるでしょう。

2-3.労働組合

労働組合は、労働者が主体となって自主的に労働条件の維持・改善や経済的地位の向上を目的として組織される団体です。

労働組合というと大企業に置かれているイメージが強い方が多いかもしれません。事実、中小・零細企業には労働組合がないケースが多いです。自分の会社に労働組合がない場合は、合同労組(ユニオン)に加入する方法があります。合同労組とは複数の企業の労働者が産業や地域ごとに団結している組織で、会社ごとの労働組合と同様の権利が認められています。

不当解雇をされたとき、従業員個人で対応していると会社はそもそも交渉に応じてくれないことがあります。

労働組合は、憲法上の権利である団体交渉権を行使して会社を交渉のテーブルにつかせることができます。団体交渉権は労働者が使用者と団体交渉を行うことを保障する権利で、会社は正当な理由がない限り交渉を拒否することができません。

しかし、労働組合に加入して会社と交渉すれば必ず解決に至るわけではありません。解決の落とし所が見つからなければ労働審判や訴訟などの裁判手続きによる解決しか選択肢がなくなります。

また、労働組合に加入するためには組合費がかかる点や、加入するユニオンによって交渉力に差がある点もデメリットとして挙げられます。

2-4.弁護士

弁護士は法律の専門家で、権利を侵害された本人の代理人として、様々な法律問題を解決に導くことができます。不当解雇も弁護士が解決することができる問題の一つです。

弁護士は、会社と交渉するだけでなく、労働審判や訴訟などの裁判手続きを通じて紛争を解決することができます。

これまでにご紹介した労働基準監督署、労働局、労働組合は、会社が任意の交渉に応じない場合には問題の解決にならない点が課題でした。弁護士は、裁判手続きにより紛争に決着をつけることができる点が大きな違いです。

弁護士に依頼するメリットについては後ほど詳しくご説明します。

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3.不当解雇を会社と争う場合に準備するべきこと

不当解雇の交渉や裁判手続きでは、解雇に至るまでの事実関係が争点となったり、「言った言わない」の争いになることがよくあるため、有利に進めるためには証拠集めが何より重要です。不当解雇を会社と争うためには、以下のような証拠を集めて交渉や裁判手続きの準備しましょう。

3-1.雇用契約書、労働条件通知書、就業規則

雇用契約書、労働条件通知書、就業規則は、会社と従業員の雇用契約の内容について記載された書類です。これらの書類は、雇用契約締結時に会社と従業員が退職についてどのような取り決めをしたか証明する証拠となります。当然ながら、取り決めに従って解雇がされれば解雇が有効になるわけではなく、取り決めそのものが法律に違反していて無効とされることもあります。

そもそも会社がこれらの書類を作成していない場合もありますが、会社の労務管理体制が整備されていないという事情は労働者側に有利に働きます。

3-2.解雇通知書

解雇通知書とは、会社が従業員に対して解雇の意思表示をしたことを証明するための書類です。

ただし、全ての解雇事案において解雇通知書が存在するわけではありません。むしろ、不当解雇の事案では「お前は解雇だから明日から来なくていい」など口頭で解雇の意思表示がなされることが多いでしょう。

もちろん、解雇通知書がなければ解雇の事実を証明することができないわけではありません。解雇したことについて当事者間で争いがなければ、会社から解雇の意思表示があったことを前提に裁判所の審理が行われます。

3-3.解雇理由証明書

解雇理由証明書とは、解雇の理由を記載した書面です。

解雇理由証明書には、会社が就業規則のどの規定に基づいて解雇を行ったのか、懲戒解雇事由に該当する具体的な事実としていつどのようなことがあったのかなど、解雇の理由が詳細に記載されます。

労働基準法により、労働者から請求があったとき、会社は遅滞なく解雇理由証明書を交付しなければならないとされています(22条1項・2項)。逆に言えば、こちらから請求しなければ会社は解雇理由証明書を交付してくれるとは限りませんし、交付しなくても違法ではありません。不当解雇が争いになったときには、必ず会社に解雇理由証明書を請求するようにしましょう。

3-4.解雇に関して会社側とのやり取りを記載した書面など

解雇通知書や解雇理由証明書と同様に、解雇について会社側とのやり取りを記載した書面も経緯を証明する証拠となります。たとえば、解雇に関するメールのやりとりを印刷したものがこれに当たります。

上司との面談の様子や解雇の言い渡しの様子を録音した音声データもこれらの事実を証明するための証拠となります。

3-5.人事評価書、勤務成績表

解雇の理由として会社側からよく挙げられるのが能力不足です。「期待していたほどのパフォーマンスを発揮してくれなかったというのが会社の言い分です。

しかし、解雇が厳しく制限されている日本では能力不足を理由に従業員を解雇することは簡単ではありません。能力不足を理由に行われる解雇は不当解雇に当たる可能性が高いのです。

解雇された従業員を会社がどのように評価していたか、評価が低かったとしても、それは解雇もやむなしと言えるほどだったかを判断するための書類として、人事評価書や勤務成績表があります。人事評価書や勤務成績表は人事評価のときに交付されることがありますので、証拠として保管するようにしておくとよいでしょう。

3-6.給与明細、賞与明細

能力不足を理由とする解雇の場合、解雇された従業員が会社から受け取っていた賃金が解雇の有効性の重要な判断基準となることがあります。

たとえば月の給与が300万の従業員であれば、一般的に、新入社員や一般職の従業員程度の働きが期待されていると言えるでしょう。しかし月の給与が1000万円の従業員であれば、会社に大きく貢献する高いパフォーマンスを期待されていると考えられます。

この両者が同じパフォーマンスだった場合、当然ながら後者の方が能力不足による解雇は認められやすくなります。

給与明細や賞与明細は給与の支払い状況を示す重要な書類ですので、大切に保管するようにしましょう。不当解雇の重要な証拠となる場合があります。

3-7.仕事に関するメール

解雇に至るまでの仕事に関するメールも不当解雇を争う上で重要な資料になります。

会社が従業員を解雇するときには、上司が高すぎる要求をしたり、逆に能力に見合わない仕事を与えるなど、不当な指示が行われることがあります。従業員を精神的に追い込むためのハラスメント行為が行われることも少なくありません。これらの行為があったときには解雇が不当であると判断される可能性が高くなります。

仕事に関するメールを証拠として確保しておくことで、在職中に会社からどのような指示があったのか、ハラスメント行為があったのかを証明することができます。

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4.労働基準監督署に相談する際の注意点

労働基準監督署は全国各地にあり、労務問題を専門とする職員に無料で相談できます。そのため、不当解雇について相談するときの最初の窓口としてはお勧めです。

しかし、すでにご説明したとおり、労働基準監督署は不当解雇に関する個別の紛争を解決に導いてくれるわけではありません。

解雇が無効と判断されると、解雇されていなければ支払われたはずの賃金(いわゆるバックペイ)や慰謝料を会社に対して請求することができます。しかしバックペイや慰謝料を支払ってもらうためには会社と交渉して任意による支払いを受けるか、裁判手続きによって判決文を得て強制的に支払ってもらうしかありません。

労働基準監督署で不当解雇の可能性があると確認したあとは早めに弁護士に相談し、会社に対する交渉に移るとよいでしょう。

5.不当解雇を弁護士に相談をするメリット

不当解雇の相談先をいくつかご紹介しましたが、最もお勧めする相談先が弁護士です。最後に、不当解雇を弁護士に相談するメリットについて解説いたします。

弁護士に依頼する最大のメリットは、訴訟で判決を得ることにより、強制的に権利を実現することができることです。この点が、あっせんなどの手続や労働組合との交渉とは大きく異なる点です。

交渉段階においてもメリットがあります。弁護士が介入することにより、「もし裁判になったら裁判官はどんな判決を出すか」を基準に交渉が行われ、解決につながりやすくなります。弁護士の名前で交渉を開始すれば会社側も弁護士に依頼することが多いので、早期の和解を期待することもできます。

なお、弁護士以外の者が代理人として交渉することは弁護士法で禁止されています。弁護士資格がないのに「会社との交渉を代理で行うことができる」と言って近づいてくる業者は違法な業者である可能性が高いので十分に注意しましょう。

弁護士に依頼することで、会社との煩わしい交渉や手続きを全て任せることができます。労働基準監督署に相談すればアドバイスはもらえますが交渉を行ってくれるわけではありません。そのため会社との話し合いそのものは自分で行う必要があります。個別労働紛争解決制度のあっせんの手続きでは紛争調整委員が間に入ってくれるものの、基本的には当事者同士の交渉であることには変わりありません。

弁護士は交渉や裁判、それに伴う手続きを全て代理で行ってくれますので、会社とやりとりする心理的な負担から解放されることができます。

弁護士は法律と交渉のプロフェッショナルです。労働基準監督署や労働組合の職員も労働問題のプロには違いありませんが、弁護士は最も難しい国家試験の一つである司法試験に合格した専門家です。弁護士に依頼することで、労働法令や過去の裁判例に基づく適切な解決に導いてもらうことができます。

注意したいのは、弁護士なら必ず不当解雇の問題に詳しいわけではないという点です。医者に外科や消化器科などの専門分野があるように弁護士の専門分野も様々で、離婚や相続などの家事事件を中心に取り扱っている弁護士や、刑事事件専門の弁護士もいます。労働問題専門の弁護士の中には会社側の事件を専門にしている弁護士もおり、従業員側の案件を取り扱った経験が豊富にあるとは限りません。弁護士を選ぶときには労働者側の不当解雇の事案の知識と経験が豊富で、親身になって相談に乗ってくれる弁護士を選ぶようにしましょう。

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6.まとめ

不当解雇は会社との関係で従業員が直面するトラブルの典型例です。不当解雇のような労働問題の相談先として労働基準監督署、労働局、労働組合などがありますが、根本的な解決のためには弁護士に相談するのが最善の選択肢です。不当解雇されたときには、解雇されていなければ支払われたはずの賃金や慰謝料を会社に対して請求することができます。

「不当解雇ではないか」と思ったら、できるだけ早く労働問題を専門とする弁護士に相談するようにしましょう。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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