不当解雇

整理解雇とは?整理解雇された際の対処法を弁護士が解説!

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1.整理解雇とは

整理解雇とは、使用者が経営上の必要性から人員削減を行うためにする解雇をいいます。会社が労働者との雇用契約を一方的に解除する解雇には「普通解雇」や「懲戒解雇」などの種類がありますが、整理解雇も解雇の一つです。

昨今では新型コロナウイルスの感染拡大により、飲食業や旅行・宿泊業を始めとする各業界で景気が後退し、倒産する企業も多く発生しました。事業活動の縮小を余儀なくされた会社で雇用を維持することを目的として雇用調整助成金の特別措置が適用されましたが、従業員を解雇せざるを得ない状況に追い込まれた企業は少なくありません。

過去にはドルショック、オイルショック、リーマンショックに起因する不況の中で、雇用を調整せざるを得ない状況が発生したこともあります。

整理解雇はこのように人員削減の必要性が生じたときに行われる解雇であり、経営者にとってはやむを得ない手段であるようにも思われます。

ところが日本では解雇が非常に厳しく制限されており、社内の秩序を著しく乱した従業員に対するペナルティとして行われる懲戒解雇ですら厳格な要件の下でのみ認められています。整理解雇は従業員ではなく会社側の事情により行われるものですので、より一層厳しい要件が過去の判例法理の中で確立しています。

この記事では、整理解雇の要件や、解雇を巡るトラブルに巻き込まれたときの相談先について解説いたします。

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2.整理解雇と普通解雇・懲戒解雇との違い

ここで、整理解雇と他の解雇の違いについて確認しておきましょう。

解雇には大きく分けて普通解雇、懲戒解雇、そして整理解雇の3種類があります。

2-1.普通解雇とは

普通解雇とは、従業員が雇用契約に基づく義務を履行できる見込みがないときに行われる解雇です。

たとえば、無断欠勤が続いて一切連絡が取れない場合や、トラックドライバーとして職種を限定して雇用された者が免許停止となり車を運転できなくなった場合などがこれに当たります。

2-2.懲戒解雇とは

懲戒解雇とは、社内の秩序を著しく乱した従業員に対してペナルティとして行われる解雇です。従業員を懲戒解雇するためには就業規則や雇用契約書に根拠となる規定が必要です。従業員が10人以上の会社では就業規則の作成・届出義務がありますが、就業規則がなかったり、就業規則に懲戒の種類や懲戒事由に関する定めがない場合には、別途雇用契約書等にこれらが記載されていない限り懲戒解雇をすることはできません。懲戒の種類には懲戒解雇の他に、譴責、減給、出勤停止、諭旨解雇などがあります。懲戒解雇は懲戒処分の中でも最も厳しい処分です。

2-3.普通解雇・懲戒解雇と整理解雇の違い

このように、整理解雇や懲戒解雇は従業員から事情を理由として行われる点が特徴です。また、整理解雇や懲戒解雇では解雇の対象者の人選という問題は生じません。

これに対して整理解雇は、労働者側の事由ではなく、使用者側の事情に起因する解雇である点が大きな特徴です。労働者にとって整理解雇は会社側の事情で突然生活の糧を奪われることを意味しますので、労働者保護の観点から、整理解雇の有効性は厳格に判断される必要があります。

そこで、労働者側と入念な協議を行いながら、解雇を回避するための様々な手段を講じ、それでも解雇せざるを得ないという状況に置かれたときに初めて解雇が認められるという判例法理が確立しています。

解雇を回避するための手段とは、残業削減、新規採用の中断、余剰人員の配転や出向、パートやアルバイトなどの非正規労働者の雇止めや解雇、一時休業、希望退職者の募集などです。

詳しくはこの後ご説明します。

また、整理解雇では、会社の経営状況によって一度に多数の従業員が解雇の対象とされることが多くあります。そのため、誰を解雇対象とするかという人選の問題が生じる点も整理解雇や懲戒解雇と異なる点です。

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3.整理解雇の4つの要件

整理解雇が認められるための要件として、「4要件」がよく知られています。これは過去の判例により確立したものです。

「4要件」とは、「人員削減の必要性」「解雇回避努力」「人選の合理性」「手続きの妥当性」です。これらの4つの要件について詳しく見ていきましょう。

3-1.人員削減の必要性

人員削減の必要性とは、経営上の理由により人員を削減する必要性があることをいいます。

どの程度の必要性が必要とされるかについては基本的に経営者の経営判断が尊重される傾向があり、人員削減をしなければ企業が存続の危機に瀕するという差し迫った状況までは必要とされないとされています。

人員削減の必要性を裏付ける客観的な資料として、使用者は財務諸表等の提出を求められます。また、整理解雇を行いつつ新規採用をするといった矛盾した行動を会社がとっていた場合には人員削減の必要性がなかったと評価されることがあります。

会社によっては、経営状態が黒字であるにもかかわらず、経営の合理化や競争力の強化のために人員削減が行われることもあります。このような人員削減策は「攻めのリストラ」と呼ばれることもあります。このような人員削減は配転・出向や希望退職募集などで実現できることから、整理解雇における人員削減の必要性は認められないと考えられます。

3-2.解雇回避義務

人員削減の必要性が認められる場合でも、解雇以外の手段で経営の合理化を行うことができる場合があります。労働者保護の観点から、解雇はあくまで最終手段でなければならず、従業員への影響がより小さい他の手段を先にとるべきなのは当然のことだと言えます。

そこで整理解雇が認められるためには、解雇という手段をとる前に、他の人員削減の手段を用いて解雇をできる限り回避することが求められます。これを解雇回避義務といいます。

解雇を回避するための手段として、具体的には、残業の削減、新規採用の手控え、余剰人員の配転・出向・転籍、非正規雇用者の雇止め・解雇、一時休業、希望退職者の募集、役員報酬の削減などがあります。

3-3.人選の合理性

すでにご説明したとおり、整理解雇の大きな特徴は対象となる労働者の人選が必要であることです。

解雇回避努力を尽くしてもなお人員削減の必要性がある場合には、削減しなければならない人数を決め、合理的な人選基準を定めて、その基準を公正に適用して解雇の対象者を決定する必要があります。これが人選の合理性です。

問題となるのは人選の基準です。当然ながら、法令等で禁止されている違法な差別に当たるような基準は許されません。たとえば国籍・信条・社会的身分、性別、婚姻・妊娠・出産、育児・介護、労働組合員であることなどを基準に解雇の対象者を選定することはできません。また、「責任感」「協調性」といった曖昧な基準は使用者の恣意的な選定を許すことになるため認められません。人選の基準は、解雇の対象となる従業員に対する配慮を十分に行い、合理的な基準であることを客観的に説明できるようなものでなければなりません。

当然ながら、何も基準を定めずに人選を行ったり、定めた基準を公正に適用せずに人選を行った場合は人選の合理性を欠くものと認定されます。

3-4.手続きの妥当性

最後の要件が手続きの妥当性です。整理解雇は、労働組合や労働者に対して誠意をもって説明し、協議をした上で行うことが求められます。特に解雇の対象となる可能性が高い従業員に対しては事前に意見を聞くなどの手続きをとることが求められます。

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4.整理解雇に関するトラブルを避けるためのポイント

整理解雇に関して従業員との間でトラブルになることを避けるためには、いくつかのポイントがあります。

まず、法律で解雇が明確に禁止されている場合があります。この場合は整理解雇の要件を満たしていたとしても解雇は無効とされます。

労働基準法では、業務上の怪我や病気の治療のために休業する期間とその後30日間、そして女性社員の産前産後の休業期間とその後30日間は解雇が禁止されています(19条1項)。

したがって整理解雇はこれらの期間が経過した後に行う必要があります。

また、労働基準法で国籍、信条、社会的身分を理由とする不利益な取り扱いは禁止されていますので、これらの事由を理由に解雇することも認められません。さらに労働組合法では労働組合員であることを理由とする不利益取り扱いが、男女雇用機会均等法では婚姻、妊娠、出産、産休・育休取得等を理由とする不利益取り扱いがそれぞれ禁止されています。整理解雇の人選にあたってこれらの事由を理由とすることは合理性を欠くものと判断されることはすでにご説明したとおりです。

人員削減が必要なときに会社が取りうる有効な手段が希望退職者の募集です。

希望退職者の募集とは、従業員の全部または一部を対象として、早期退職を希望する者を募集することをいいます。その際、退職金を上乗せするなどして従業員を退職に誘因することがあります。労働者としても希望退職の募集があった時には、その先に整理解雇があるかもしれないことを念頭に置きつつ、応募するかどうかを判断しましょう。

5.整理解雇が不当解雇にあたるとされた裁判例

5-1.整理解雇のリーディング・ケース

1983年のあさひ保育園事件判決(最一小判昭和58年10月27日労判427号63頁)は、最高裁で初めて整理解雇の「4要件」が採用され、整理解雇が不当解雇に当たるとされた裁判例です。

この判決は、園児の減少に対応するために決定された保母2名の人員削減が違法とされたもので、希望退職者の募集などの措置がとられなかったこと、人員削減の決定と同時に2名の解雇の実施が決定されたこと、職員に対し人員整理の必要性などを説明して協力を求める努力が一切なされず解雇日の6日前に突如解雇が通告されたことに言及し、整理解雇を違法としました。

5-2.人員削減の必要性に関する裁判例

人員削減の必要性を欠くことを理由に整理解雇が不当解雇に当たるとした裁判例として、売上げは横ばいまたは微増で未処分利益剰余金が巨額にのぼることから会社の経営状況に問題がないとされた事案(ゼネラル・セミコンダクター・ジャパン事件判決・東京地方裁判所平成15年8月27日労判865号47頁)などがあります。

5-3.解雇回避義務に関する裁判例

解雇回避義務がとられていないことを理由とした裁判例に、日本通信事件(東京地方裁判所平成24年2月29日労判1048号45頁)があります。これは、4期連続赤字の中で不採算部門の従業員に希望退職の募集をし、これに応じない者を解雇した事案で、社長が多額の報酬を受け取っており、これを削減する措置を何らとっていなかったことから違法とされました。

尾崎織マーク事件(京都地方裁判所平成30年4月13日労判1210号66頁)は、センターの所長を勤めていた労働者が解雇された事案で、会社が同時期に東京支店で2名の新規採用をしていたことから、一貫性を欠き、解雇を回避するための努力を尽くしたとはいえないとして解雇を無効としました。

冒頭で述べたとおり、新型コロナ禍で雇用調整助成金の特別措置が適用されましたが、このことが解雇回避義務の判断に影響した事案もあります。センバ流通事件(仙台地方裁判所令和2年8月21日労判1236号63頁)は、コロナ禍で雇用調整助成金の利用が可能であったにもかかわらず、会社がこれを利用せずに解雇が実施された事案で、解雇回避義務が果たされていないとして解雇を無効としました。

5-4.人選の合理性に関する裁判例

人選の合理性について、コパル事件(東京地方裁判所昭和50年9月12日判時789号18頁)は、「既婚社員で子供が2人以上いる者」という人選基準を女性に対する不合理な差別として無効としました。

使用者の恣意的な選定を許すような抽象的で客観性を欠く基準として人選の合理性が否定された事例として「適格性の有無」という基準の合理性が否定された労働大学事件(東京地方裁判所平成14年12月17日労判846号49頁)、「将来の活用可能性」という基準の合理性が否定されたジャパンエナジー事件(東京地方裁判所平成15年7月10日労判862号66頁)があります。

ヴァリグ日本支社事件(東京地方裁判所平成13年12月19日労判817号5頁)は、「53歳以上の幹部職員」という人選基準の合理性を否定しました。これは、経済的代償や再就職支援なく「53歳」という年齢を解雇基準とすることは、労働者やその家族の生活への配慮を欠くものであり、「幹部職員」のみを解雇対象とすることも業務の性質からみて合理席とは言えないというのが理由です。

5-5.手続きの妥当性に関する裁判例

手続きの妥当性を欠くことを理由に解雇を無効とした裁判例に、労働組合と協議しその合意を得ていたが、解雇の対象となる可能性の高い労働者から意見を聴くなどの手続きをとっていなかったことから、解雇手続きは十分な相当性を備えたものとはいえないとしたものがあります(ジャパンエナジー事件)。

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6.整理解雇で退職金はどうなるか

整理解雇で退職金がどうなるかは、退職金の支給基準に関する会社の定めによります。

就業規則や退職金規程で退職金を支給する旨が定められている場合には、整理解雇された場合であっても退職金が支給されます。退職金の金額も会社が定めた基準によって計算されます。

他方、退職金に関する定めがない場合には退職金の支払い義務は生じません。

ただし、整理解雇のときには退職金の金額が上乗せされたり、退職金に関する規定がないにもかかわらず退職金が支払われる場合があります。これは整理解雇が会社側の都合で行われる解雇であることを考慮して、従業員の生活を保障するために支払われるものです。

会社が従業員を懲戒解雇した場合、退職金を支払わない旨の規定が就業規則等に置かれていることがよくあります。しかし問題を起こした従業員に対するペナルティである懲戒解雇と異なり、整理解雇は会社側の事由による解雇ですので、整理解雇のときに退職金を支払わない旨の規定が置かれることは通常ありません。

7.解雇に関して弁護士に相談するメリット

整理解雇を巡ってトラブルになったときに、アドバイスをしてくれるのが弁護士です。

整理解雇の4要件は判例で確立された考え方ですが、実際に自分にあてはめたときに、これに該当して解雇を有効なものとして受け入れなければならないのか、解雇を不当なものとして争うことができるのかを判断することは簡単なことではありません。

会社の経営状況を分析して本当に人員削減の必要性があるのか慎重に検討し、解雇を回避するための措置を検討・実施し、合理的な人選基準に基づき、適正な手続きに従って整理解雇がなされているのかにつき、法的に分析・判断をしてアドバイスを行うことができるのが、法律の専門家である弁護士です。

解雇をめぐるトラブルで、会社側との交渉や裁判を行うことは時間的にも心理的にも大きな負担となります。

労働者側が自らの主張を文書にまとめたり、裁判期日で裁判所に出頭したりすることは現実には難しいでしょう。弁護士は法律と交渉の専門家であり、交渉や裁判手続きを本人の代理で行うことができる唯一の国家資格です。弁護士に解雇トラブルの対応を依頼することにより、書面の作成や裁判対応を全て一任することができ、時間的な負担や心理的な負担から解放されることができます。

整理解雇を巡るトラブルに巻き込まれたときは、労働問題を得意とする弁護士にできるだけ早く相談することをお勧めします。

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8.まとめ

人員削減を目的として行われる整理解雇は、会社にとってもやむを得ない事情がある場合もありますが、要件を満たさなければ、違法であり無効です

新型コロナウイルスの感染拡大等により経営状態が悪化した会社は増えており、中には雇用を維持することが困難になっている会社も少なくないでしょう。もっとも、そのようなときに、会社の経営者等がこのような状況を奇貨として、会社が問題社員だと認識している労働者を解雇するということもあるようです。

整理解雇された場合、あるいはその全段階として退職勧奨をされた場合などには弁護士に相談し、どのような手段をとるべきか相談することをお勧めします。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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