不当解雇

労働審判の解雇の解決金相場は?交渉の手順など弁護士が解説!

労働審判の解雇の解決金相場は?交渉の手順など弁護士が解説!
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不当解雇されたけれど、会社に復職したくない場合、退職する代わりに会社に対して解決金を請求するという選択肢があるということをご存じでしょうか。

まず会社と直接交渉を行い、交渉が成立しなかった場合は裁判所に労働審判を申し立てることも可能です。

本記事では労働審判で認められる解決金の相場や、会社との交渉の手順等について解説します。

1.そもそも不当解雇とは?

本章では、まず、どのような場合に、解雇の効力を争うことができるのか。すなわち、不当解雇とはどのような場合をいうか、適法・有効な解雇とはどのように異なるか等について解説します。

1-1.正当な解雇と不当解雇の判断基準

不当解雇とは、労働基準法・労働契約法等に定められた解雇の条件を満たしていないのに、一方的に労働契約を解除する行為をいいます。

不当解雇にあたる解雇として以下の場合があります。

  • (1)労働関係法規(労働基準法・男女雇用機会均等法等)によって明文で禁止されている解雇原因に基づく解雇
  • (2)その他の原因に基づく解雇が解雇権濫用(労働契約法第15条、同法第16条)にあたる場合

(1)の場合は、解雇の制限が明文で規定されているので、解雇の適法性についての問題は生じません。これに対して、(2)の場合は、労働契約法第15条ないし同法第16条が定める「解雇権(懲戒権)の濫用」に該当するといえるか否かが問題となります。

労働契約法第15条及び同法第16条は「(懲戒)解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めています。

従って、適法・有効な解雇といえるためには、(懲戒)解雇に客観的に合理的な理由があり、かつ社会通念上相当であると認められることが必要です。

つまり、(1)に列挙した解雇にあたらないことが明白な場合でも「合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要であることになります。

この「合理的な理由」と「社会通念上の相当性」を判断する上で、まず行われた解雇の種類がどれにあたるかが重要な意味を持ちます。

1-2. 解雇の種類と合理的理由・社会的相当性の判断

解雇の種類自体を定義した法令はありませんが、大きく分けて以下の3種類があります。

(1)普通解雇

労働者の労働契約上の債務不履行を主な理由とする解雇です。普通解雇の理由は通常、就業規則に列挙されています。例としては以下のようなものがあります。

  • 傷病または健康状態の悪化による労働能力低下
  • 成績不良、適格性の欠如
  • 職務怠慢や勤怠不良
  • 不正行為、職場規律違反や業務命令違反

普通解雇事由に該当するか否かは会社側が判断します。そのため、従業員側が「合理的理由や社会通念上の相当性に欠けるので不当解雇にあたる」と主張する場合もよくあります。

例えば、労働能力低下や勤怠不良を理由に解雇されたが、そのような労働能力低下や勤怠不良を引き起こした原因が上司のセクハラによる精神疾患の発症であった場合等です。

(2)整理解雇

会社の経営合理化のために、人員整理を目的として行う解雇です。

整理解雇は専ら会社の都合で行われます。従って、それが認められるための「合理的理由と社会通念上の相当性」の基準は普通解雇よりも厳しくなります

判例上、整理解雇が認められるための要件として以下のものがあります(整理解雇の4要件)。

  • 人員削減の必要性
  • 会社が解雇回避のための努力を行ったか
  • その人物を解雇対象としたことの相当性
  • 労働者や労働組合に対して説明や協議を十分に行ったか

整理解雇が不当解雇となるのは、これらの要件を1つでも満たしていないと認められる場合です。

(3)懲戒解雇

会社による懲戒処分の中で最も重い処分にあたります。会社が従業員を懲戒解雇する場合は、その理由について就業規則に定めていることが必要です。

懲戒解雇に該当する例として、①業務上横領や機密情報漏洩等の不正行為、②刑事事件で起訴されて氏名を公表された場合等があります。

また、バス・タクシー・トラック運転手等の自動車運転従事者の場合は、それ以外の職種と比べて交通事故や交通ルール違反が懲戒解雇原因となっていることが多いです。

懲戒解雇と他の解雇との違いとして、「懲戒解雇処分を受けた従業員に対しては退職金を支払わない」旨就業規則で定めている会社が多いということがあります。また、離職の原因としても非常にネガティブな意味を持つため、再就職に影響が及ぶことがあるでしょう。

このため、懲戒解雇処分に対しては従業員が不当解雇を主張することが多く、また裁判で解雇の無効及び慰謝料請求が認められるケースも多くあります。

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2.不当解雇における解決金とは

不当解雇における解決金とは、解雇された日付以降の賃金(未払い賃金)・慰謝料等、従業員が会社に対して請求できる金銭を包括したものです。

不当解雇に対しては解雇の無効とともに従業員の地位確認(復職)を求めることもできます。しかし、たとえ裁判で解雇の無効が認められたとしても、不当に解雇したうえ解雇の有効性をめぐって訴訟で争うことになった会社では再び働きたくないと思うほうが自然です。復職を希望しない場合は、退職するかわりに解決金を請求するという方法をとることができます。

3.不当解雇を労働審判で争った場合の解決金相場

不当解雇を労働審判で争った場合の解決金相場は、賃金の3か月分~6か月分といわれています。ただし、解雇の合理性がないことが明らかなケースで、解雇の言い渡しの日から相当期間が経過しているような事案では、賃金の6か月分を超える解決金となることがあります。

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4.不当解雇されそうな場合にすべきこと

本章では、会社から不当解雇されそうな場合に従業員がすべきことについて解説します。

4-1. 不当解雇を主張するための証拠を集める

会社から不当解雇されそうな場合は、最終的に訴訟提起することまで想定して、退職前に不当解雇を主張する根拠となる証拠を集めておきましょう。以下のような資料が有効な証拠となります。

  • 就業規則の写し
  • 賃金規程の写し
  • 雇用契約書
  • 業務命令書
  • タイムカード
  • 上司や役員等とのメールやチャットの写し

4-2.解雇理由証明書の交付を受ける

解雇を予告された場合、解雇通知書についてはその時点で会社から交付されます。解雇が不当であると考えたら解雇の理由を確認するため、まず解雇理由証明書の請求を行ってください。

解雇理由証明書は、従業員からの請求があった場合は会社側はこれを発行しなければなりません(労働基準法第22条1項)。これは特に、従業員が訴訟を提起した際に会社側が「自主的に退職した」などと主張して解雇を否定する可能性があるためです。

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5.不当解雇されたことに対する解決金交渉の手順

不当解雇で解決金を請求するためには、①未払い賃金 ②未払いの残業代 ③慰謝料請求権のうち1つ以上の金銭債権が発生していることを主張する必要があります。本章では、解雇された従業員が解雇の無効とともに解決金を請求する方法について解説します。

5-1. 不当解雇の慰謝料を請求する旨を内容証明郵便で通知する

(1)会社に送る請求書の記載

最初に、会社に対して解雇の無効とともに解決金を請求する旨の書類を送ってください。

解決金については、復職を求めない場合は円満退職の条件として請求書に記載することが多いように思います。

(2)内容証明郵便により通知する

会社に対する請求書類は、請求を行ったことを公的に証明できる「内容証明郵便」を利用して送付することをお勧めします。これは、会社に無視せずに対応させる目的とともに、未払い賃金や慰謝料請求権などの金銭債権を明確にいつ請求したのかを証拠化することができるためです。

5-2. 示談交渉を行う

内容証明郵便による請求に対して会社から交渉に応じる旨の回答を受けたら、会社と話し合い(示談交渉)を行いましょう。合意が成立した場合は、交渉成立日付・支払名目・支払金額・支払日付(期限)等を記載した書面を作成してもらってください

5-3.労働審判の申立てを行う・訴訟を提起する 

(1)労働審判は早期に終了するが一方または双方が異議申立てを行うと無効になる

会社との示談交渉が成立しなかった場合、地方裁判所での労働審判または訴訟によって解決金請求を行うことになります。

労働審判のメリットとして以下のものが挙げられます。

  • 審理が非公開で行われる(労働審判法第16条)ため、プライバシーが守られる
  • 審判委員が過去の事例に照らして現実的な解決策を提案してくれる
  • 原則として審理3回で終了する(労働審判法第15条2項)ので訴訟に比べて早期に解決できる

他方、以下のようなデメリットもあります。

  • 労働者と会社側双方の譲歩を必要とするため譲歩を求められることが多い。そのため労働者側の主張がすべて認められる可能性が高いとはいえない。
  • 審判の決定事項に対して一方または双方が異議申立てを行うと審判が無効になり(労働審判法第21条3項)、通常訴訟に移行する。
  • 労働審判委員会の判断で審判手続を終了させる場合もある。
  • これにより、異議申立てや労働委員会の判断により訴訟に移行した場合には労働審判と訴訟の両方を行うことによる労力と時間がかかってしまう。

(2)訴訟手続中も和解交渉を行うことができる

労働審判を経ずに訴訟提起する場合、解決金請求額(訴額)の合計が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所に対して行います。

労働審判が行われていた場合は、訴額にかかわらず労働審判が行われたのと同一の地方裁判所に係属します。

訴訟を提起した場合も、裁判官が和解交渉を促すことが多くあります(民事訴訟法第89条)。訴訟手続は時間も費用もかかる印象がありますが、会社側が和解交渉に同意した場合には労働審判や訴訟判決に比べると労働者側の請求が認められやすくなる傾向があります。

このことから、労働者側が確実な証拠を揃えている場合は、労働審判を経ずに訴訟提起して早期に和解に持ち込むほうが得策であるという考え方もあるでしょう。

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6.不当解雇に関するトラブルを弁護士に相談するメリット

本章では、不当解雇された場合に労働者側の権利行使を弁護士に相談するメリットについてご説明します。

6-1.個人で会社と交渉することは難しい

会社を解雇された従業員が、一人で会社に対して解決金の請求を行うことは非常に困難です。不当解雇に対しては総合労働相談センターなどの相談機関を利用することも可能です。しかし、相談機関は従業員個人の代理人となることはできないので、会社との交渉や法的手続等は全て本人が行う必要があります。

6-2. 労働組合は対等な交渉が可能だが全ての権利行使に対応していない

前述のように、労働組合に加入した場合は団体交渉権行使により、会社と対等に交渉することができます。ただし、労働組合は訴訟手続の代理を行うことができません(弁護士法第72条により、訴訟手続代理を行うことができるのは弁護士に限られます)。そのため、交渉が成立しなかった場合に解雇無効主張や解決金の請求を行うには、改めて弁護士に依頼する必要があります。

6-3. 弁護士に相談・依頼するメリット

(1)会社との交渉や訴訟等の法的手続を全て任せることができる

この点、不当解雇等の労働問題に強い弁護士に依頼することにより、解雇無効の主張や、解決金請求に向けて必要な会社との交渉や労働審判・訴訟等の法的手続を全て任せることができます。

従業員が会社に交渉を求めても応じてくれなかったり、あるいは顧問弁護士を立ててきて従業員側が不利な立場になることが多いのですが、従業員側が弁護士に依頼することにより会社側が無視できなくなり交渉に応じてくれるようになります。また、会社側が弁護士に依頼している場合も対等に交渉を行うことができます。

さらに、少しでも多く解決金が受け取れるような証拠収集の方法についてアドバイスを受けたり、証拠収集にあたって会社に対する請求や公的機関に対する申請が必要な場合はその手続を代行してもらうことも可能です。

前述のように、多くの法律事務所では初回相談や初回相談の一部の時間を無料としています。そこで、無料相談を利用して費用見積もりや支払方法、弁護士側の労力を抑えるために依頼者側ができること等を相談することもできます。

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7.労働審判の費用についてよくあるQ&A

本章では、労働審判の費用について頂くことの多い質問と、それに対する回答をご紹介します。

7-1.労働審判は自分でできますか?

労働審判は労働者と会社の労働に関する問題を迅速に解決する制度です。そのため審理の回数も原則3回までと定められ、申立てから解決までに要する期間も平均2~3ヶ月と、裁判よりもかなり短く済みます。また、専門家でなければ対処できないような制度があるわけではなく、会社との話し合いを進めるために審判員が助言してくれることもあります。従って、労働者本人で行うことも不可能ではありません。

ただし、申立ての時に提出する「申立書」には会社に求めることを明示する「申立ての趣旨」と、申立てを行う根拠を明示する「申立ての理由」を記載しなければなりません。不当解雇に基づく解決金請求の場合であれば、申立ての趣旨には会社に請求する未払いの賃金や残業代の金額、慰謝料額等を記載する必要があります。また、申立ての理由については単に不当に解雇されたというだけではなく、その解雇を不当とする根拠も明示しなければなりません。このように、申立書の作成に当たっては専門的な知識を必要とする場合が多いので、弁護士に依頼するほうが良い場合が多いのではないかと思います。

7-3. 労働審判は弁護士費用以外に費用がかかりますか?

労働審判の申立ての際に、裁判所に納付する手数料として申立書に印紙を貼付する必要があります。また、裁判所からの当事者への書類送達用の切手代も支払う必要があります(切手は先に購入して裁判所に渡します)。この印紙代と切手代が、弁護士費用とは別に申立費用としてかかることになります。

印紙代は請求額によって決まります。請求額が10万円までの場合は500円で、それ以上100万円までは10万円ごとに500円ずつ高くなります。100万円の場合は5,000円で、それ以上500万円までは20万円ごとに500円ずつ高くなり、200万円の場合は7,500円、300万円の場合は10,000円・・となります。詳しくは裁判所の手数料額早見表をご覧ください。

7-4.労働審判で費用倒れになることはありますか?

労働審判の結果に対して一方が異議申立てを行った場合や、審判員の判断で訴訟に移行した場合には労働審判が無効になります。この場合は労働審判に費やした弁護士費用が無駄になってしまうともいえます。

もっとも、完全成功報酬制をとっている法律事務所に依頼していれば、労働審判が無効になっても訴訟で請求が認められた場合のみ、得られた解決金から弁護士費用を支払う形となります。労働審判に対して労働者側の請求がある程度認められたが会社側が異議を申し立てて訴訟になった場合に、訴訟でより多額の請求が認められることもあります。

仮に訴訟でも請求が認められなかった場合は弁護士費用は発生しません(交通費等の実費はかかる場合があります)。

ただし、完全成功報酬制を採用している法律事務所は、その性質上、成功報酬割合が着手金報酬金型の料金体系を採用している法律事務所のそれよりも高くなっていることが多い事には注意が必要です。

完全成功報酬制をとっている法律事務所に依頼した場合でも、労働審判が無効になった場合は労働審判の間待機していた本人の時間が無駄になってしまうことは否定できません。

労働審判を申し立てる前の段階で弁護士に相談していれば、経験に照らして労働審判を申し立てるか、最初から訴訟提起するかについて判断することができます。不当に解雇された場合は、できるだけ早期に弁護士にご相談ください。

7-5. 労働審判で当事者の話し合いが成立しなければ審判は無効となりますか?

労働審判では当事者間の話し合いによる解決を目指しますが、話し合いが成立しなければ審判が無効になるわけではありません。仮に3回の期日の中で話し合いがまとまらなかった場合には、労働審判委員会が、審理によって認められた事実から事案の実情に即した判断を示すことになっています。この判断は「労働審判」といわれます。

従って、労働審判は、通常の調停と審判の手続を併せ持った制度であるといえます。

この労働審判に対して、当事者のいずれか(または双方)が異議の申立てをしなければ、労働審判が確定します。

7-6.労働審判で解決しなかった場合はどうなりますか?

労働審判で解決しなかった場合は、解決金(慰謝料・未払い賃金等)請求訴訟を提起することになります。訴訟は労働審判を行ったのと同一の地方裁判所で行われます(労働審判法第22条1項)。

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8.まとめ

会社に不当に解雇された場合、解決金請求が必ず認められるわけではありません。しかし、解雇された直接の原因が起こった背景には、サービス残業やパワハラ・セクハラ等、会社側の従業員に対する違法行為が存在することも少なくありません。他方で会社を相手に単独で解決金を請求することは容易ではなく、会社側が応じたとしても弁護士に交渉代理を依頼して少額の解決金で済ませようとすることが多くあります。

労働問題を専門とする弁護士に依頼することで、対等な立場で正当な権利行使が可能になります。また、「労働審判を申し立てるか、最初から訴訟を提起するか」という問題についても判断を任せることができます。

解雇に納得がいかない方、不当解雇を主張して解決金を請求したい方はぜひ法律事務所の無料相談をご利用ください。

私たち法律事務所リーガルスマートは、解雇・退職勧奨をはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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