不当解雇
50代でリストラされそうになった際の対処法を弁護士が解説!
目次
1.そもそも退職勧奨とは
退職勧奨(たいしょくかんしょう)とは、会社が退職してほしい労働者に対して、自主退職を促すことです。
退職勧奨は、労働者の同意があって始めて退職となり労働契約が終了するものです。労働者の同意を要するという点で、一方的な労働契約の解除を告げる解雇予告とは異なります。
会社が労働者を解雇する場合には、30日前に解雇予告をしなければなりません(労働基準法第20条1項)。
また、会社はいつでも自由に労働者を解雇できるわけではありません。客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性があるとは認められない解雇は無効です(労働基準法第16条)。
解雇は労働者の生活に大きな影響を与えることから、このように会社に対して厳しい法的な規制を設けており、また、解雇自体労働者に対する影響が大きいため、会社が労働者との労働契約を解消したいときは、まず退職勧奨を試みるのが一般的です。
退職勧奨では、解雇の際に必要になる就業規則や解雇予告、その際に支払われる解雇予告手当などは必要になりません。退職勧奨を制限する法律上の定めもありませんから、退職勧奨は比較的自由に会社が行うことができます。
近年は、コロナ禍の影響から、一定年齢(例えば50代)以上の労働者を対象に退職勧奨が行われたり、解雇されることも増えてきています。
そこで本記事では、50代でリストラされそうになった時にやるべきことやリストラの対処法、解決金や退職金の相場などについて、労働問題に強い弁護士が解説します。
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2.50代でリストラされそうなときにまずやるべきこと
50代でリストラされそうなときにまずやるべきことは、以下の2点です。
それぞれについて見ていきましょう。
2-1.解雇の理由を確認
会社から解雇された場合、あるいは、解雇を予告された場合には、会社に対して、解雇の理由を記載した解雇通知書または解雇理由証明書を交付するよう請求しましょう。
一言で「解雇」といっても、解雇には、整理解雇、懲戒解雇、普通解雇の3つの類型があることはご存じでしょうか。
整理解雇とは、会社が業績悪化を原因とする経営難など、会社側の都合により、人員削減を行うための解雇(いわゆるリストラ)をいいます。
懲戒解雇とは、会社の秩序を著しく乱すような労働者の規律違反に対して、労働契約や就業規則等の定めに基づき制裁として行われる解雇です。
普通解雇は、上記の理由以外の労働契約を継続することが困難である事情による解雇一般をいいます。例えば、労働者の体調不良により出勤することができない状態が続いていたり、労働者の職務上の適性や能力にかける場合などです。
万が一、会社から解雇(またはその予告)を言い渡された場合には、解雇通知書ならびに解雇理由証明書を確認することが重要です。
会社が解雇を通告する方法については法律上の規定はありませんが、口頭で解雇が言い渡された場合には、解雇通知書を交付するように会社に請求しましょう。
さらに、会社が解雇する理由を明確に説明しないケースも多く見られます。このような場合には、解雇理由証明書の発行を求めましょう。
会社は、労働者から解雇理由証明書を交付するよう請求されたときは、解雇理由を詳しく記載した解雇理由証明書を発行しなければなりません(労働基準法第22条)。
解雇の有効性を検討するためには、解雇理由を確認することが非常に重要です。
会社から解雇(またはその予告)を言い渡された場合には、早い時期に解雇理由証明書の発行を請求しましょう。
2-2.自分の意思を伝える。 退職手続きは進めない。
客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が認められない解雇は無効です。
解雇されることに納得がいかない、あるいは、継続して勤務したい意思がある場合は、その旨を会社に伝えることが重要です。
会社側の不当解雇が疑われる場合には、交渉や労働基準監督署への通告、労働審判などの法的手続きによって、解雇の撤回を求めることも可能です。
一方で、会社に対し、解雇予告手当や退職金を請求したり、あるいは退職届を提出するなど、退職の意思があると認められるような行為をとることは避けなければならないということに注意が必要です。
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3.50代でリストラされそうなときの対処法
50代でリストラされそうなときには、以下の4つの対処法があります。
それぞれについて、見ていきましょう。
3-1.まずは会社と話し合う
50代でリストラされそうなときの1つめの対処法は、まずは会社と話し合うことです。
退職勧奨された後に解雇を予告された場合には、解雇予告通知書や解雇理由証明書を確認し、記載された理由が事実であるか、合理性や社会的相当性など法的にも有効であるかを確認しましょう。
たとえ、会社が退職勧奨や解雇予告をしても、働き続ける意思があり、解雇に納得がいかない場合には、解雇の撤回を求める書面を内容証明郵便で会社に送付して交渉しましょう。
反対に、会社を退職したい場合であっても不当解雇であれば、解雇を言い渡されてから退職をするまでの期間の賃金を請求することができます。
ただし、不当解雇について会社に解雇の無効を主張したい場合には、解雇予告手当や退職金の請求など、退職に合意していると認められるような行為を行わないように注意してください。
会社と交渉して解決できる場合には、法的手続きをとるよりも、時間や手間、また費用を抑えられるでしょう。
労働者個人で交渉しても会社が対応しないケースも多いため、弁護士に相談してみることをおすすめします。
3-2.労働審判を申し立てる
50代でリストラされそうなときの2つめの対処法は、労働審判を申立てることです。
労働審判とは、裁判官1名と審判官2名が会社と労働者の間に入り、話合いによって解決を図る裁判所の手続です。
労働審判は、会社と労働者との間で発生した労働問題を実情に即して、通常の訴訟に比べ早期に解決することができる手続きでもあります。
したがって、労働審判は、リストラなど解雇や転職・出向、未払い賃金など、争点が比較的明確で当事者が多数ではないトラブルの解決に適しています。
労働審判では、話し合いがまとまると調停が成立し、調停が不成立になると、労働審判委員会が事案に即して労働審判を下します。
2週間以内に当事者から異議の申し立てがなければ、審判は確定し、確定した労働審判の内容は裁判上の和解と同じ効力を有することになります。
労働審判の調書は裁判の判決と同じ効力があるため、リストラされた場合に未払いの残業代や退職金がある場合で会社が審判内容に従った任意の支払をしないときには、強制執行をすることも可能です。
3-3.民事訴訟(労働裁判)を起こす
50代でリストラされそうなときの3つめの対処法は、民事訴訟を起こすことです。
会社との交渉がまとまらなかったり、労働審判の調書に納得ができない場合、さらに未払い賃金や退職金、あるいは慰謝料を請求したい場合には、民事訴訟を検討しましょう。
ただし、民事訴訟を提起する場合は、厳密な立証を求められるため、あらかじめ弁護士と十分な対策を立てることが重要になります。
また、会社と裁判をすることになると、提訴から判決を得るまで半年から1年以上の期間を要するケースがほとんどであるため、不当解雇が認められたとしても、会社に復職することは実際には珍しいケースと言えるでしょう。
3-4.失業保険の仮給付を申請する
50代でリストラされそうになったときの4つめの対処法は、失業保険の仮給付を申請することです。
会社からリストラ勧告された場合、会社と交渉する、あるいは労働審判や民事訴訟を起こすにしても、その間の給料が支給されません。
そのため、ローン返済、子どもの教育費、生活資金、保険など、労働者の人生設計に大きな支障が生じる可能性があります。
リストラ勧告された場合には、できるだけ早い時期にハローワークに行き、失業保険の仮給付を申請することをおすすめします。
ただし、失業保険の仮給付はあくまでも仮のものであるため、会社との係争が終わり決着がついた場合には、給付金を返還しなければならないケースもあるため、注意が必要です。
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4.解決金の相場・退職金について
会社が一定の退職条件を付してリストラ勧告を出し、労働者がこれに同意すれば、会社が退職条件で定めた金銭の支払等を行い、労働者は退職することになります。
会社からの解決金の金額は、あくまでも会社と労働者の双方で話し合ったうえで解決するものですが、ある程度の相場感が存在すると言ってよいでしょう。
また、労働審判で不当解雇を争う場合、裁判所から協議での解決案を提案されるのが一般的です。
ここでは、解決金の相場や退職金について解説します。
4-1.不当解雇の解決金の相場
会社から不当解雇された場合、労働審判で不当解雇を争うことになったときに、退職することを前提にして解決金を支払い、紛争が解決するケースがあります。
解決金の相場は、それぞれの事案に応じて異なりますが、一般的には、給料の1か月分~6か月分ほどとなることが多いでしょう。
人によっては、解決金の相場以上になるケースもあれば、相場以下になるケースもあります。ご自身の判断が難しい場合は、弁護士に相談してみるとよいでしょう。
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5.解雇や退職勧奨を弁護士に相談、依頼するメリット
解雇や退職勧奨を弁護士に相談、依頼するメリットは、以下の3つです。
それぞれについて、見ていきましょう。
5-1.不当解雇かどうか判断できる
解雇や退職勧奨を弁護士に相談、依頼する1つめのメリットは、不当解雇かどうかを判断することができるという点です。
会社から解雇や退職勧奨をされた場合、弁護士であれば、解雇の有効性について法的な判断が可能です。
さらに、解雇に関して、会社との交渉のしかた、証拠の収集方法など、法律知識に基づいて、適切なアドバイスをすることができます。
5-2.会社と適切な交渉ができる
解雇や退職勧奨を弁護士に相談、依頼する2つめのメリットは、会社と適切な交渉ができることです。
解雇や退職勧奨の撤回を求めて、労働者が会社と直接交渉しても、様々な反論を理由に会社が交渉に応じない場合も少なくありません。
弁護士が会社と直接交渉することで、有利に交渉手続きを進めてくれることが期待でき、労働審判や訴訟を起こす前に、解雇が撤回される可能性も高くなります。
また、会社に復帰しない場合でも、残業代などの未払い賃金だけでなく、退職金の上乗せ、慰謝料の支払いなどを請求することも可能です。
弁護士に会社と適切な交渉をしてもらうことで、有利な和解金を得ることが可能になり、退職後も安定した生活を維持することができるようになるでしょう。
5-3.法的手続きを全て任せられる
解雇や退職勧奨を弁護士に相談、依頼する3つめのメリットは、法的手続きを全て任せられることです。
弁護士は法律の専門家であるため、労働審判や民事訴訟に移行した場合に、必要となる証拠や書類の準備、訴訟の勝敗の可能性、解決時期、解決金の見通しなどについて、アドバイスが可能です。
解雇や退職勧奨に関するトラブルを一人で解決しようとしても、そもそも解雇が違法であるのか否か、法律知識に基づいた判断が困難なケースも少なくありません。
また、必要となる証拠の収集や書類の準備、会社との交渉など、時間的精神的な負担も大きくなります。
不当解雇の解決に伴う法的手続きを全て任せられることで、時間的のみならず精神的な負担を軽減できることは、弁護士に依頼する場合の大きなメリットといえるでしょう。
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6.50代のリストラに関するよくあるQ&A
6-1.50代のサラリーマンです。会社からリストラされても、再就職できますか?
はい、会社からリストラされても再就職することは可能です。会社からリストラされた場合には、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。
会社からのリストラに問題があると疑問に思っても、そのことを会社に指摘して自分で解雇を撤回するよう交渉することは非常に難しいでしょう。
早い段階から専門家に法的措置の対応を進めてもらい、ご自身は転職や再就職のために時間を有効に使うことが有益です。
6-2.50代のリストラで弁護士に相談するときに、注意することはありますか
まずは、ご自身の状況をすべて隠さずに伝え、疑問や不安をすべて弁護士に聞いてみることが重要です。
弁護士は、どのような状況にあるのか、現状を把握することは、今後の方針や対策を考える上で、非常に重要です。
また、弁護士に依頼する前に、今後の手続きの流れや解決までの期間、獲得できる解決金の相場、手続きにかかる裁判費用など、遠慮せずに疑問になる点を質問することが大切になります。
6-3.リストラで必要になる証拠は何ですか?
弁護士に相談する前であっても、できるだけ早い時期からリストラに関する証拠を集めておくことが重要です。
例えば、会社との交渉を時系列に記載したメモ、雇用契約書、就業規則、給与明細、タイムカード、出勤表などの勤怠記録、解雇理由証明書、解雇予告通知書、などです。
これらの証拠が手元にある場合は、弁護士に相談する際に持参することで、より具体的にその後の手続きの流れなどを提案できます。
6-4.証拠がなくても、不当解雇の撤回は可能ですか?
はい、証拠がなくても弁護士に依頼することで、必要な証拠の開示を会社に行うことはできる可能性があります。
たとえば法律では、会社が労働者名簿・賃金台帳や労働関係に関する重要書類を5年間(当分は3年間)保存することを義務づけていますので、これらの資料がなければ依頼することができないということではありません。
どのような証拠が必要で、どのような見通しとなるのかについては個別の事情によるところが大きいと思いますので、まずは無料相談等を利用してみるのが良いかと思います。
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7.まとめ
今回は、50代でリストラされそうになった時にやるべきことやリストラの対処法、解決金や退職金の相場などについて、労働問題に詳しい弁護士が解説しました。
解雇は、客観的に合理的な理由及び社会通念上相当な理由がなければ無効であり、会社は、労働者を簡単に解雇することは認められていません。
しかし、労働者の知識不足等を利用して、十分な検討をしないまま、従業員を安易に解雇する会社も存在するため、注意が必要です。
弁護士に相談することで、解雇が有効であるのか、解雇の無効を前提とした未払賃金等の支払請求が可能であるのかなどがわかるでしょう。
50代でのリストラとなると、今後の生活に大きな影響を与えることになるため、早い段階から弁護士に相談することが得策です。
私たち法律事務所リーガルスマートは、解雇のトラブルをはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。
担当者
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■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務
■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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