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労働審判の費用とは?弁護士や裁判所の費用相場を弁護士が解説!

労働審判の費用とは?弁護士や裁判所の費用相場を弁護士が解説!
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「休日出勤をしたのに手当を支払ってくれない…」

「能力不足を理由としていきなり解雇されてしまった…」

このような労働関係のトラブルを解決するための制度として「労働審判」という手続があります。通常の民事訴訟と比べて審理期間が短く、費用が安く済むという利点があり、広く利用されています。

ただし、審理日が原則3回しかないため、主張内容や提示する証拠などの入念な準備が必要です。審理を有利に進めるためには弁護士などの専門家に頼るのも一つの手でしょう。

そうなると、気になるのが労働審判を弁護士に依頼する場合の費用ではないでしょうか。この記事では弁護士や裁判所の費用相場、弁護士に依頼するメリットなどをわかりやすく解説します。

労働関係のトラブルを抱えている方はぜひ参考にしてみてください。

1.そもそも労働審判とは

労働審判とは、不当な解雇や給料の未払いなどのような労働関係のトラブルを解決するための裁判上の手続きです。審判には裁判官1名と労働問題に詳しい専門家(労働審判員)2名が参加します。これには労働者と雇用者との間で発生した紛争を公正に解決する狙いがあります。

労働審判は当事者が地方裁判所に申立てることで開始できます。審理は原則として3回まで行われ、まずは話し合いによる調停を目指します。1回目の審理であっても話し合いがまとまれば、それで終了です。

調停に至らなかった場合には、双方の主張・証拠などを元に労働審判委員会が結論を下します。労働審判の結果は法定な拘束力を持ち、強制執行をすることも可能です。ただし、当事者の一方が異議を申し立てると、通常の民事訴訟に移行するので注意しましょう。

労働審判は2006年に新設された比較的新しい制度です。通常の訴訟に比べて簡易迅速かつ柔軟な解決が図ることができるため、労働関係のトラブル解決に広く利用されています。厚生労働省によると、リーマンショックの影響を受けた2008年に大きく件数が増加し、以降高水準で推移しています。

1-1.労働審判を利用する理由

労働審判を利用する理由として目立つのは解雇や手当に関するトラブルです。最高裁判所事務総局の司法統計によると、2020年度の労働審判のうち、「地位確認(解雇等)」が47%を占め、「賃金手当等(解雇予告手当を含む)」(38%)が続きました。

新型コロナウイルスの感染拡大下では、経営不振による解雇などのトラブルが相次ぎ、2020年度の労働審判は過去最高件数となりました。日本では労働者の解雇については厳しい制限がありますが、不当な理由で解雇に至ることが少なくありません。また、「残業代を支払わない」「休日にタダ働きをさせる」などの賃金未払い事例もあり、労働審判や民事訴訟に発展しています。

1-2.労働審判と民事訴訟の違い

労働関係のトラブルを解決するには、労働審判のほか、民事訴訟を提起するという選択肢があります。

結論として、労働審判は民事訴訟よりも簡易的な手続きで解決を図れるため、民事訴訟の前に検討すべき手段だと言えます。ただし、労働審判で解決ができない場合には訴訟に移行するため、あらかじめ訴訟も念頭に置いておく必要があります。

労働審判と訴訟には以下のような違いがあります。

特徴労働審判民事訴訟
解決までの期間比較的短い(3ヶ月〜半年)比較的長い(1年以上)
解決方法の柔軟性柔軟な解決が期待できる白か黒かで判断
審理方法口頭書面
秘匿性非公開公開

(1)解決までの期間

労働審判は通常訴訟に比べ、解決までの期間が短い傾向があります。これは労働審判において、3回の期日までに審理を終えることが原則となっているからです。期日は1ヶ月おきに開催されるため、解決までの期間は3ヶ月が目処となります。

実際、労働審判における2006年から2021年までの平均審理期間は80.6日となっています。コロナ禍前の2018年度までは、約7割の事案が申立てから3ヶ月以内に終結。コロナ禍で審理期間はやや延びたものの、2020年度も9割弱が半年以内に審理を終えています。

一方、通常の民事訴訟では、半年以内に終結する割合は20%程度に止まっています。コロナ禍になってからは5割を超える事案で、申立てから終結までに1年以上かかっています。

ただでさえ、裁判上の紛争解決は当事者にとって大きな負担です。裁判所に出向く回数や解決までの期間が少なくなれば、その負担を大きく軽減できると言えます。

ただし、審理期間が短いのはメリットだけではありません。3回という少ない審理回数で納得できる結果を得るためには、相手の主張や審理員の質問に的確に答えられるよう、事前に入念な準備が必要となります。また、3回の審理で解決できないような複雑な事案については労働審判は向かないでしょう。

(2)解決方法の柔軟性

労働審判では民事訴訟よりも柔軟な解決が望めます。民事訴訟の判決では、原告の申立てが「認められるか」「認められないか」について、裁判所が厳格な事実認定を行い、法的評価を加えて判断します。

一方、労働審判では、まずは当事者の意見を聞いて、調停という形での解決を目指します。それでも話し合いがまとまらない場合に審判を行います。この審判でも、トラブルの内容に合わせて「相当と認める事項」を定めることができます。

例えば、地位の確認を求めて申立てを起こしたとしても、金銭の支払いによる解決を図るというようなことも可能です。

(3)審理方法

書面でやりとりをする訴訟と違い、労働審判では口頭でのやりとりがメインとなります。主張や証拠などの書面は審理前に提出し終わり、それ以降は自分の言葉で説明をしなければなりません。スムーズな進行が期待できますが、その場の質問に臨機応変に対応できるよう、しっかりと準備をする必要があります。

(4)秘匿性

民事訴訟は誰でも傍聴ができますが、労働審判は原則として非公開で行われます。必要に応じて裁判所が認めた人の傍聴を許すことはありますが、無関係の第三者が傍聴することはありません。

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2.労働審判の弁護士にかかる費用の種類と相場

労働審判では労働者側、企業側ともに弁護士をつけるケースが多くなっています。3回という少ない審理で解決する必要があり、それには法的知識と豊富な経験が欠かせないためです。

弁護士に依頼する際、特に気になるのは費用ではないでしょうか。費用の相場は地域や事務所によって異なりますが、一般的な目安としては数十万円から百万円程度とされています。ただし、個別のケースによってはこれよりも高額な場合もあります。

以下、弁護士にかかる費用について詳しく解説します。

費用の種類内容費用相場
相談料相談を持ちかけた時点で発生する費用無料〜1万円
着手金依頼成功・失敗に関わらず最初に発生する費用10万〜50万円
成功報酬依頼が成功した場合の報酬回収額の15〜30%
実費郵送費や交通費、申立て費用など依頼による
手数料書類作成や事務手数料など依頼による
日当・タイムチャージ裁判所への同行などで必要となる依頼による

2-1.相談料

相談料とは、弁護士に相談する際に発生する費用です。初回相談は30分〜60分の時間を設定している事務所が多く、費用相場は5000円から1万円程度です。初回は無料で相談を受けてくれる事務所もあります。

いずれにせよ、相談時間はあまり長いとは言えません。初回無料でも2回目からは費用が発生することがほとんどです。弁護士に相談する際には、あらかじめ相談内容や証拠などの資料、質問事項をまとめておくことをおすすめします。

2-2.着手金

着手金とは、依頼した時点で発生する費用のことです。結果的に依頼が成功するか、失敗するかに関わらず、支払う必要があります。労働審判の場合、10万〜50万円が着手金の相場です。事務所によっては、申立て時の請求金額に一定の料率を乗じて計算する方法を取っていることもあります。

2-3.成功報酬

成功報酬は依頼が成功した場合に支払う報酬です。多くの場合、労働審判で回収できた金額の一部から支払います。回収額が高くなればなるほど料率は下がりますが、相場は回収額の15%〜30%です。これは、着手金を比較的定額に抑えて、その分成功報酬を高く設定している法律事務所から、いわゆる旧弁護士報酬基準をそのまま続けている事務所があるためです。

2-4.実費

上記のような弁護士費用のほか、実費の支払いを求められることがあります。裁判所に赴く際の交通費や書類作成のためのコピー代などがその例です。

2-5.手数料

別途、書類作成の代行を含む事務手数料がかかることがあります。こちらも依頼内容によりますが、相場は2万〜4万円程度です。

2-6.日当・タイムチャージ

事務所によっては、日当制・タイムチャージ制を採用しているところもあります。これは弁護士が実際に業務を行う日数や時間に応じて、費用が加算されるシステムです。裁判所への同行を依頼する際など、事務所外での業務を行う場合に発生します。

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3.労働審判の裁判所に支払う費用の種類と相場

弁護士に依頼した場合でも、個人で申し立てる場合でも、一定の額を裁判所に支払う必要があります。費用は労働審判で求める金額によって異なりますが、民事訴訟よりも低額で済むのが一般的です。

労働審判では、大きく分けて「印紙代」と「郵券代」の2種類の費用を支払います。

費用の種類内容費用相場
印紙代申立書に貼る収入印紙500円〜13万3千円
郵券代書類送付などに必要な費用2000円〜5000円

3-1.印紙代

裁判所に支払う費用のうち、印紙代は申立書に貼る収入印紙のことを指します。印紙代は申立て時に相手に請求する金額によって異なります。例外として、解雇の無効を主張する申立てなど、請求金額の算出が難しい場合には160万円と見なされます。

印紙代は10万円までの請求であれば500円、9900万円から1億円であれば13万3千円と、請求金額によってかなり幅があります。とはいえ、労働関係のトラブルで1億円ほどの高額な請求になることはほとんどありません。以下に示すように、請求金額1000万円程度までの印紙代を把握しておくと良いでしょう。

請求額印紙代請求額印紙代請求額印紙代請求額印紙代
10万500円120万5500円320万10500円550万16000円
20万1000円140万6000円340万11000円600万17000円
30万1500円160万6500円360万11500円650万18000円
40万2000円180万7000円380万12000円700万19000円
50万2500円200万7500円400万12500円750万20000円
60万3000円220万8000円420万13000円800万21000円
70万3500円240万8500円440万13500円850万22000円
80万4000円260万9000円460万14000円900万23000円
90万4500円280万9500円480万14500円950万24000円
100万5000円300万10000円500万15000円1000万25000円

3-2.郵券代

郵券代とは、申立て時に裁判所に予納する郵送費用のことです。裁判所から相手方に通知をするために必要な費用となります。郵券代は裁判所によって金額が異なりますが、一般に2000円〜5000円に収まることが多いようです。例えば、仙台地方裁判所における労働審判の郵券代は5000円です。

裁判所に問い合わせれば具体的な金額を教えてくれますので、気になる方は管轄の裁判所に問い合わせてみましょう。

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4.労働審判の解決金とは

労働審判の解決金とは、主に会社側が労働者に対して和解のために支払う金銭のことを指します。裁判所が当事者一方に支払いを命じるのではなく、あくまでも当事者同士の話し合いの結果として支払いが行われます。

解決金の金額は、個々の事情によって異なります。

厚労省の調査によると、2020年から2021年に終局した事案において、労働審判よりも民事訴訟(和解)の方が解決金が高い傾向であることが分かっています。いずれも解決金の金額分布は幅広いですが、労働審判の中央値は150万円程度、民事訴訟の中央値は300万円程度です。

5.労働審判を弁護士に依頼するメリット

弁護士は法律のスペシャリストであり、特に労働問題に詳しい弁護士に依頼することで、不安や負担を軽減することが可能です。弁護士に依頼するかどうかは、最終的には個人の意思に委ねられますが、審判を有利に進めていくためにも専門家のアドバイスは大きな助けとなります。

労働審判を弁護士に依頼することには、以下のようなメリットがあります。

  • 申立て手続きを代行してもらえる
  • 労働審判を有利に進められる
  • 交渉から訴訟まで一括して依頼できる

5-1.申立て手続きを代行してもらえる

労働審判で主張するためには、申立書の作成や証拠の収集が必要です。申立てに必要な証拠を集め、的確な主張をしていくことが鍵となります。こうした手続きは煩雑で時間がかかることが多く、労働トラブルに関する法的知識も必要です。

法的知識が豊富でない者が証拠を取捨選択するのは非常に難しく、必要な証拠を十分に集められないことも考えられます。労働審判では、審理前に証拠の提出が必要となるため、最初から決定的な証拠を突きつけることも重要です。弁護士に依頼すれば、申立て手続きを代行してもらうことができるほか、証拠集めの際にも的確な助言をもらうことができます。

5-2.労働審判を有利に進められる

これまで解説してきたように、労働審判には審理日が3回しかないため、1回1回の審理が非常に重要です。口頭でやりとりを進めなければならず、質問に対する適切な回答が求められます。このような準備を法的知識の少ない者が行うことは非常に難しいと言えるでしょう。申立ての段階から弁護士にサポートを依頼することで、的確な主張・答弁で労働審判を有利に進めることができます。

5-3.交渉から訴訟まで一括して依頼できる

弁護士に依頼するメリットとして、最も大きいのは「交渉から訴訟まで一括して依頼できる」という点です。労働審判前に相手との交渉で解決したい場合や、労働審判で解決ができず、通常の訴訟に移行した場合でも、弁護士の手を借りることができます。自分の事情を知っている弁護士に最初から最後までお願いできるため、安心して任せることが可能です。

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6.労働審判の費用に関するよくあるQ&A

6-1.労働審判の弁護士費用は会社側に請求できますか?

結論として、労働審判の弁護士費用は会社側に請求することはできません。労働審判の申立てに関わる費用は基本的に各自の負担となります。弁護士費用のほか、裁判所に支払う印紙代と郵券代も同様です。

6-2.労働審判の費用を安く済ませるにはどうしたら良いですか?

労働審判の費用を安く済ませるポイントは主に3つあります。

・弁護士の無料相談を活用する

弁護士の事務所によっては、初回無料で相談を行っているところがあります。こうした無料相談を活用して、依頼する弁護士をしっかり見極めることが大切です。「料金体系がしっかりしているか」「依頼内容と似た分野での実績があるか」などの観点から信頼できる弁護士を選びましょう。

・自分でできることは自分でやる

弁護士に依頼する場合でも、自分でできることは自分でやることで、費用を節約することができます。証拠集めや書類作成など、弁護士に依頼する部分を少なくすれば安く済ませることは可能です。ただし、費用を気にするあまり、労働審判で不利になっては本末転倒です。労働審判を有利に進める上では弁護士のサポートが不可欠となるため、「自分でできない部分」を判断する力も重要となってきます。

・現実的な金額を請求する

労働審判で裁判所に支払う費用のうち、印紙代は請求金額によって左右されます。印紙代を節約するには、現実的な金額での請求が有効です。労働関係のトラブルでは高額な支払いが行われることは少ないため、印紙代は可能性のある額に抑えておくと良いでしょう。

6-3.通常の訴訟と労働審判のうち、低額で利用できるのはどちらですか?

裁判所に支払う費用、弁護士に支払う費用のいずれについても、労働審判の方が低額です。裁判所費用は訴訟のほぼ半額で済みます。ただし、解決金は訴訟の方が高額になる傾向がありますので、一概にどちらが良いとは言えません。労働審判の3回の審理で解決できそうな事案であれば、まずは労働審判から始めるのが良いかもしれません。

6-4.労働審判の費用を抑えるため、自分で行うのはアリですか?

労働審判を弁護士に依頼しなければならないという決まりはありません。最終的には自己判断ですので、もちろん自分で行うことも可能です。ただし、労働審判では3回の審理で的確な主張をする必要があり、入念な準備が必要となります。こうした手続きを行うには法的知識が不可欠なため、審理を有利に進めるためにも弁護士への依頼をおすすめします。

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7.まとめ

労働審判は3か月から半年程度の短期間で、訴訟よりも柔軟な解決が図れる制度です。労働問題に詳しい専門家を交えた審理を行うため、迅速かつ公正な解決が期待できます。訴訟と比べて費用も低額で済み、労働関係のトラブル解決に広く利用されています。

労働審判は3回の審理日で判断を下すため、あらかじめ主張の的を絞り、的確な証拠を集める必要があります。こうした手続きを効率よく進めるためには、弁護士の専門的なアドバイスが有効です。解雇や賃金未払いなどのトラブルで困っている方は、まずは無料相談を活用してみてはいかがでしょうか。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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