残業代請求

パティシエ等の職人は残業代を請求することができるのか?

パティシエ等の職人は残業代を請求することができるのか?
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1.本記事の対象者

・パティシエの方

・いわゆる職人として働いている方

2.本記事の要約

※この記事は、人気洋菓子店「パティシエ エス コヤマ」が、従業員に対し、長時間の時間外労働をさせていたとして、伊丹労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けたというニュース(以下「本件ニュース」と言います。)を参考にしています。

会社が、従業員に対し、残業をさせた場合には、会社は残業代を支払わなければなりません。

それは、職人の世界でも雇用契約である以上は同じです。

パティシエなどの職人の世界では、いまだに「一人前になるまでは修行の一環として仕事をしているのであって、残業代は発生しない」などといった誤った考えが残っています。

しかし、会社の指揮監督下の業務である以上は、労働時間であり、残業代を含む賃金を請求することができます。

3.詳細

⑴ 争点について

パティシエなどの職人であっても雇用契約である以上、残業代が発生するのが原則です。

もっとも、会社からの指揮命令下にない時間は、労働時間として認められないため、残業代が発生しません。

そこで今回は、職人の特殊性に触れつつ、例えば店舗の仕込み業務をした場合に残業代を請求することができるのかについて解説します。

⑵ 争点についての結論

店舗の仕込みの業務は、会社の指揮命令下に置かれていると考えられますので、労働時間として認められ、残業代を請求することができます。

「残業」であるというためには、会社の指揮命令下にあるかどうかがポイントとなります。

会社の指揮命令下にあるかどうかは、以下のような事情を総合的に考慮して判断されます。

・明示又は黙示の業務命令があったかどうか

・会社の業務としての性質が強いかどうか

・場所的時間的拘束があるかどうか

仕込み業務は、お客様に提供するものを作っているわけですから、その業務の性質上、会社からの明示又は黙示の業務命令があったと考えられ、業務としての性質が強く、お店の厨房で行われますので、場所的拘束もありますから、会社の指揮命令下にある業務であると言えそうです。

⑶ 最終結論

パティシエなどの職人であることは会社が残業代を支払わない理由にはならず、仕込み業務であれば労働時間として認められ、残業代を請求することができる。

4.諦めないでください!

まだまだ多くの会社で、法律を正しく理解せず、従業員の権利を侵害していることがあります。

業界の「常識」が正しいとは限りません。

会社が残業代を支払わないと主張する場合にもすぐには諦めないで、是非一度弁護士にご相談ください!

5.一歩進んで(解説)

●修行期間と労働時間

労働時間

労働基準法によれば、労働時間とは、「始業から終業までの拘束時間から休憩時間を除いた実労働時間である」(同法32条)とされています。

また、判例では、労働時間とは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間をいい、右の労働時間に該当するか否かは、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定めるもの」であるとしています。

職人の「修行」の特殊性

パティシエなどのいわゆる「職人」は、自らの技術を向上させるために働いているという側面が強く「仕事=自分の修行の場であって、残業代を請求するなんてできない」という考えが根強く残っているように思います。

確かに、完全に業務とは別のものとして、自らの技術向上のために終業時間後に練習にあてる時間などは、使用者の指揮命令下に置かれていませんので、労働時間に含まれないと考えることもできるでしょう。

しかしながら、会社の業務と完全に無関係な「修行」が行われているケースは少ないのではないでしょうか。

例えば仕込み等の作業であれば、使用者の指揮命令下に置かれている時間と評することができるでしょう。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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