残業代請求
美容師のカット練習は残業代を請求できる?
1.この記事の要約
- 美容師の営業後のカット練習については、残業代が発生することがあります。
- 発生するかしないかの分かれ目は、営業後のカット練習が「労働」にあたるかどうかであり、「労働」かどうかの判断はカット練習が会社の指揮命令下にあるかどうかで判断されます。
- 指揮命令下にある場合の具体的な例は、営業後のカット練習が会社や上司の指示によるものであったり、明確な指示はなくても暗黙的にやらざるを得ない状況にある場合などです。
2.この記事の対象の方
- 美容師の方
- 勤務先からカット練習は残業代を支払わないと言われている方
- 雇用契約ではなく業務委託や請負契約のため残業代が発生していない方
- 美容師以外でも、業務時間外に練習や修行を行っている方
3.争点
本件では、営業終了後のカット練習が「労働」にあたれば、美容師は当然残業代を請求できます。
そして、労働にあたるかどうかは、「労働者が使用者の指揮命令下に置かれているかどうか」により判断されます。
反対に、指揮命令下にないならば、自主的な練習や修行であり「労働」とはいえないため、残業代を請求することはできません。
そこで、本件はカット練習が美容室の指揮命令下に置かれていると言えるかが争点となります。
4.争点に対する結論と理由
結論として、会社や上司の指示で行われたカット練習は、会社の指揮命令下に置かれてカット練習を行ったと言えるので労働に当たり、残業代の支給対象になります。
さらに、「新人が業務終了後にカット練習するのは当たり前」という風潮があり、カット練習を断ることが難しい状況にあれば、会社による黙示の指示があったとして労働とみなされる可能性が高くなります。
5.一歩進んで(雇用形態が請負契約や業務委託契約の方)
※ここからは、会社との契約が、雇用契約ではなく「業務委託契約」の方や「請負契約」の方のみ、対象となります。
契約が請負契約や業務委託契約の方の場合、賃金は「時間」ではなく「仕事の成果」に対して支払われることとなります。
したがって、請負契約や業務委託契約の方の場合には、カット練習を行っても原則として残業代は発生しません。
しかし、会社との契約が業務委託契約や請負契約であっても、「実質的な雇用関係にある」と言える場合には、残業代を請求できる可能性があります。
そして、「実質的な雇用関係にある」か否かは、契約書などで形式的に判断されるものではなく、就労状況から具体的に判断されます。
出勤退勤時間が定められていたり、仕事を受けるか否かの裁量が与えられていなかったりする場合には、「実質的な雇用関係にある」と判断されやすくなる傾向にあります。
したがって、契約が業務委託契約や請負契約の美容師であっても、お勤め先と実質的な雇用関係にあると言える場合には、カット練習について残業代を請求できる可能性があります。
6.諦めないでください!
カット練習で帰るのが遅いのに残業代が支払われていないという方や、「雇用形態が違うから残業代は支払わない」とお勤め先から言われていても、残業代を請求できる可能性あります。
ご自身が残業代を請求できるのかどうかわからないという方は、一度弁護士へ相談してみることをお勧めします。
担当者
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■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務
■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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