残業代請求
ツアー添乗員など事業場外で仕事する方は残業代を請求できる?
目次
1.この記事の要約
この記事は、最二判平成26年1月24日(阪急トラベルサポート(派遣添乗員・第2)事件)を参考にしています。
ツアー添乗員の方など、事業場外で仕事をする方は、会社から、事業場外労働のみなし時間制(以下「みなし労働時間制」といいます。)を理由に、残業代が支払われないことがあります。
しかしながら、裁判例上、みなし労働時間を認めた例は多くありません。
そのため、ツアー添乗員の方など、事業場外で仕事をする方でも、会社に対し、残業代を請求することができる場合があります。
2.この記事の対象の方
- ツアー添乗員として働く方
- 事業場外で働く方
- 残業代が支払われていない方
3.詳細
⑴ 争点について
本件判決では、ツアー添乗員の添乗業務につき、みなし労働時間制を理由に残業代の支払いを拒むことができるかが問題となりました。
みなし労働時間制が適用されると、原則、所定労働時間だけ労働したものとみなされますので、時間外労働(残業)が発生せず、残業代を請求することができません。
⑵ 争点についての結論
結論として、本件判決では、ツアー添乗員の添乗業務につき、みなし労働時間制を適用するための要件である「労働時間を算定し難いとき」には当たらないとして、残業代の請求を認めました。
本判決は「労働時間を算定し難いとき」には当たらないとした理由として、当該ツアー添乗業務が、
- あらかじめ定められた旅行日程に沿った旅程の管理等の業務を具体的に指示されていた
- イレギュラーな事態が生じた場合にはその時点で個別の指示を受けることとされていた
- 旅行日程の終了時には添乗日報により報告を義務付けられていた
ことなどを指摘しました。
⑶ 最終結論
以上のとおり、本件判決は、当該ツアー添乗業務にみなし労働時間制が適用されないとしましたので、添乗員の残業代請求が認められました。
そして、その金額は約15万円でした。
4.諦めないでください!
会社から、みなし労働時間制を理由に残業代が支払われないというご相談は少なくありません。
実は、裁判においてこのみなし労働時間制の適用を認めた例は多くありません。
みなし労働時間制が適用されなければ、従業員において、労働時間を主張・立証する必要がありますが、実際に働いた時間を基礎に、1日・1週ごとの法定労働時間を超える労働を行った場合には残業代を請求することができます。
会社の主張がすべて正しいということはありません。
ツアー添乗員の方を含め、事業場外で働いく方で、みなし労働時間制を理由に残業代が支払われていない方は、是非一度弁護士へ相談してみてはいかがでしょうか。
5.一歩進んで(解説)
⑴みなし労働時間制とは
労働者が事業場外で業務に従事した場合における実労働時間の算定困難性を理由として、使用者による実労働時間の把握算定義務を免除し、一定時間により労働時間をみなす制度です。
⑵みなし労働時間制が適用されるための要件
「事業場外」で労働したこと
事業場外みなし労働時間制を適用するためには、労働者が事業場外で労働を行ったことが必要です。
労働時間を算定し難いとき
判例上、労働時間を算定し難いときとは、「勤労実態等の具体的事情をふまえ、社会通念に従い、客観的にみて労働時間を把握することが困難であり、使用者の具体的な指揮監督が及ばないと評価される場合」と定義されています。
そして、その判断要素としては、以下のような事情が考えられると言われています。
- ①使用者の事前の具体的指示の有無
- ②労働者の事前の業務予定の報告の有無
- ③事業場外労働の責任者の指定の有無
- ④労働者の事後の業務内容の報告の有無
- ⑤始業・終業時刻の指定の有無
- ⑥事業場外労働前後の出社の有無
- ⑦携帯電話等での業務指示・業務報告の有無
- ⑧業務内容等についての労働者の裁量の有無
担当者
-
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務
■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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