残業代請求

残業代請求の時効は2年から3年に!残業代の請求方法を解説!

残業代請求の時効は2年から3年に!残業代の請求方法を解説!
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「未払い残業代があるけど、会社になかなか言い出せないまま時間が過ぎてしまっている」

このような悩みを抱えている方は注意してください。

残業代の請求には時効があるため、請求しないで放置していると時効期間が経過して請求ができなくなるおそれがあります。

今回の記事では、残業代請求の時効について説明した上で、残業代請求の時効の完成を猶予する方法や残業代請求の方法などを詳しく解説します。

未払い残業代を請求しようか迷っている方は、ぜひ最後までご覧いただいた上で、時効期間が経過しないうちに早めに弁護士に相談することをおすすめします。

目次

1.残業代請求の時効について

残業代請求には時効が存在します。改正前民法174条では、賃金債権については1年の短期消滅時効により消滅することになっていました。

しかし、1年の短期消滅時効は労働者保護の観点から妥当ではないという趣旨から、改正前の労働基準法115条では、賃金の請求権を行使することができる時から2年間行わない場合は時効によって消滅するとされていました。

1-1.残業代請求の時効は2年から3年に延長

2020年4月1日から施行された改正民法では174条が削除されました。これに伴い、同日に施行された改正労働基準法では、賃金請求権の消滅時効が2年から3年に延長されました。

1-2.残業代請求の時効が延長された経緯

改正労働基準法115条では、「5年」で時効消滅すると規定されておりますが、同法143条3項で当分の間「3年」とすることが規定されています。

改正民法では、170条から174条に規定されていた短期消滅時効が削除され、債権の消滅時効は166条により5年に統一されました。

これを受けて賃金債権の消滅時効も5年に統一しようとする動きがみられましたが、企業側からの反発が大きかったため、労働基準法115条では「5年」としつつ、当分の間は「3年」とすることで決着が図られました。

当分の間は「3年」とするということですので、将来的に「5年」とされる可能性は十分にあるといえます。

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2.残業代請求の時効が成立する例

現在の労働基準法が施行されたのは2020年4月1日であるため、2020年4月1日を境に残業代請求の時効消滅期間が異なってきます。以下で場面を分けて説明します。

2-1.残業代が2020年3月31日以前に発生した場合

残業代請求の時効の起算点は、賃金の請求権を行使することができる時、すなわち賃金の支払期日です。賃金の支払期日に残業代が発生し、そこから時効が起算されるということです。

賃金の支払期日が2020年3月31日以前である場合、改正前の労働基準法が適用されます。よって残業代請求の消滅時効は2年のままです。

例えば、賃金の支払期日が2020年3月31日であった場合、2年後の2022年3月31日をもって残業代請求権は時効消滅します。

2-2.残業代が2020年4月1日以後に発生した場合

賃金の支払期日が2020年4月1日以降である場合、改正後の労働基準法が適用されます。よって残業代請求の消滅時効は3年に延長されます。

例えば、賃金の支払期日が2020年4月1日であった場合、3年後の2023年4月1日をもって残業代請求権は時効消滅します。

3.残業代の時効が適用されないケース

残業代請求の消滅時効は3年に延長されましたが、場合によっては消滅時効が適用されないケースもあります。以下では、残業代請求の消滅時効が適用されないケースとして3つを説明します。

3-1.企業側が不法行為をしている場合

企業側の故意又は過失によって未払い残業代が発生し、それが不法行為と認められる場合には、残業代請求ではなく不法行為に基づく損害賠償請求として構成される余地があります。不法行為に基づく損害賠償請求の消滅時効は、民法724条によれば、損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときとされています。この場合、少なくとも「損害」を知らなかった、つまり未払い残業代が発生していたことを知らなかったとして、消滅時効の起算点が到来していない可能性があるのです。

3-2.会社が時効を援用せずに承認した場合

民法上、当事者が時効を援用しなければ時効の効果は生じないとされています。これは、時効の効果により債務を免れることをよしとしない者もいるためです。つまり、消滅時効期間が経過しても会社が時効を援用しなければ残業代の時効は適用されません。

さらに、会社が時効を援用しない間に未払い残業代があることを承認した場合、時効は更新され、時効期間はリセットされます。その場合、従前の時効は適用されず、新たに3年の期間がスタートすることとなります。

3-3.会社が不正に時効を成就させた場合

例えば、会社が労働者から残業代請求をされないよう労働時間の改ざんを図ったり、労働者に威迫をして残業代請求をさせてないようにした場合などは、不正に時効完成を成就させたとして、時効が適用されない可能性があります。

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4.残業代請求の時効消滅を阻止する方法

残業代請求の消滅時効は改正後の労働基準法では3年に延長されました。しかしながら延長されたといっても3年間行使しないと消滅してしまいます。

以下では、残業代請求の時効期間が経過するのを阻止する方法として2つの方法を説明します。

4-1.内容証明郵便を送る

残業代請求の時効消滅を阻止する方法の一つ目は、会社に対し、残業代を請求する旨を記載した内容証明郵便を送付することです。

このことを民法では「催告」するといい、催告すると、その時から6か月を経過するまでは、時効は完成しないという効果が発生します。つまり、消滅時効を6か月間阻止することができます。

しかしながら、催告をしても6か月間が経過してしまえば再び時効期間が進行するため、訴訟を提起するなどしなければ消滅時効を完全には阻止できない点は注意が必要です。

また、会社に残業代請求をする際には、配達証明付きの内容証明郵便で送るようにしましょう。普通郵便などで送ると、会社側から届いていないなどと主張された場合に反論することが難しくなります。

4-2.未払い残業代について会社に承認してもらう

未払い残業代について、会社がその存在を認めた場合、「承認」があったものとされ、時効更新により時効期間はリセットされます。

現実の支払いが行われることは必要ではなく、未払い残業代が存在することを会社が認めれば足ります。ただし、会社が認めたという証拠は書面で残しておくようにしましょう。そうしないと、後で言った言わないの水掛け論になる可能性が大きいです。

4-3.会社と協議を行う旨の合意を書面で締結する

未払い残業代の請求について、会社と協議を行う旨の合意を書面で締結した場合、一定期間、時効の完成は猶予されます。一定期間の間は時効完成がストップしますので、その間に協議をまとめることが可能です。

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5.支払義務がある残業代の例

残業代請求には時効が存在することや、時効消滅を阻止するための方法についてお伝えしましたが、そもそも残業代はどのような場合に発生するのでしょうか。

以下では、残業代が発生する典型的なケースとして3つを詳しく解説します。

5-1.法定労働時間を超えて労働した分にかかる残業代

時間外労働をした場合、会社は残業代を支払う義務があります。時間外労働とは、法定労働時間を超えて労働することをいいます。法定労働時間とは、1日8時間、週40時間の労働時間のことをいい、会社はこれを超えて労働させてはならず、労働させた場合は残業代を支払う義務を負います。

5-2.深夜労働の残業代

深夜労働とは、22時から5時までの間に労働をする場合をいいます。深夜労働をした場合、会社は深夜手当を支払う必要があります。さらに、深夜労働が時間外労働に該当する場合は、深夜手当とは別途、残業代を支払う義務を負います。

5-3.休日労働分の残業代

休日には大きく分けて、法定休日と法定外休日の2種類があります。法定休日とは、法律上必ず設けなければならない休日のことをいいます。労働基準法では、毎週少なくとも1日以上の休日を与えなければならないとされています。なお、4週に4日以上の休日を与えることも可能です。

一方、法定外休日とは、法定休日以外の休日のことをいいます。週休二日制を採用する企業では、週に2日以上の休日が設定されています。仮に土曜日と日曜日が休日として設定されているとすると、どちらかが法定休日、もう一方が法定外休日です。

法定休日に休日出勤をした場合、残業代として休日手当を支払う必要があります。

6.未払い残業代の計算方法

先に説明したとおり、会社に残業代の支払義務が発生するのは、①時間外労働、②休日出勤、③深夜労働の3つでした。以下ではこの3つの場合について未払い残業代の計算方法を具体例を挙げて説明します。

6-1.時間外労働の場合の未払い残業代の計算方法

時間外労働をした場合は残業代を支払わなければなりませんが、この場合、基礎賃金を支払えばよいのではなく、基礎賃金に割増率25%以上を乗じた割増賃金を支払わなければならないとされています。

なお、基礎賃金とは1時間あたりの賃金をいいます。例えば、多くの日本企業で採用されている月給制の場合における基礎賃金の計算方法は、以下のとおりです。

(月給額)÷{(1日の所定労働時間)×(月間平均所定労働日数)}

例として、基礎賃金が2,000円、時間外労働時間が2時間であった場合の未払い残業代の計算方法は以下のとおりです。

(未払い残業代)=(基礎賃金)×(時間外労働時間)×(割増率+1)
=2,000×2×1.25=5,000円

6-2.深夜労働の場合の未払い残業代の計算方法

深夜時間帯(22時から5時)の間に時間外労働をした場合、時間外手当の割増率である25%のほか、深夜手当の割増率である25%を別途支払わなければならないとされています。つまり、合計50%の割増率による割増賃金を支払う必要があるのです。

例として、基礎賃金が2,000円、時間外労働が4時間、そのうち深夜時間帯が2時間であった場合の未払い残業代の計算方法は以下のとおりです。

(未払い残業代)=(基礎賃金)×(時間外労働時間)×(割増率+1)
=2,000×2×1.25+2,000×2×1.5=10,000円

6-3.休日労働の場合の未払い残業代の計算方法

法定休日に休日出勤をした場合、35%以上の割増率による割増賃金を支払う必要があります。休日出勤の場合は別途時間外労働の25%が加算されるわけではありません。ただし、休日に深夜労働を行った場合、別途深夜手当である25%以上の割増率が加算される点に注意が必要です。

例として、基礎賃金が2,000円、休日出勤時間が8時間であった場合の未払い残業代の計算方法は以下のとおりです。

(未払い残業代)=(基礎賃金)×(休日出勤時間)×(割増率+1)
=2,000×8×1.35=21,600円

以上、未払い残業代の計算方法を簡単に説明しましたが、詳細な計算方法は別記事で説明しておりますので、詳しく知りたい方はそちらをご参照ください。

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7.未払い残業代を請求する方法

未払い残業代が発生していることがわかった場合、会社に対し、未払い残業代を支払ってもらうよう働きかけていくことになります。

しかし、会社によっては証拠がないとして応じてくれなかったり、みなし残業の制度などを悪用して残業代は支払わないとしている会社も存在します。

そこで本章では、未払い残業代を請求するに当たってどのような方法を取るべきかを詳しく解説します。

7-1.残業代が発生している証拠を集める

未払い残業代を請求するに当たり、どんな方法を取るにせよ必要となるのが、残業代が発生していることを証明できる証拠の収集です。

未払い残業代が発生していたとしても、それを立証できなければ会社は応じてくれない可能性が高いですし、法的措置を取るにしても証拠は必要です。

そこで、未払い残業代が発生していることがわかった段階で速やかに証拠を収集しましょう。未払い残業代を請求するに当たって有用な証拠には、例えば以下のようなものがあります。

  • タイムカード
  • 会社のパソコンのログイン履歴
  • 会社のメールの送受信時間
  • 上司からの指示があったことを示す資料
  • 公共交通機関のICカードの乗降履歴
  • 業務日誌
  • 給与明細書

7-2.会社と交渉する

未払い残業代が発生していることが証明できる証拠をそろえたならば、次に行うのは会社との交渉です。未払い残業代に関する証拠を提示した上で、会社に未払い残業代を支払ってもらうよう要求します。

しかし、会社に未だ在職している場合、会社と交渉を行うと会社との関係が悪化し、事実上会社に居難しくなる可能性があることは注意しておきましょう。

一方、すでに会社を退職している場合はそのようなリスクがないため在職時よりも交渉はしやすいですが、外部からの交渉となるため交渉自体がしづらくなります。交渉をうまく進めるために、法的な交渉については弁護士に依頼することをおすすめします。

7-3.労働基準監督署に相談する

労働基準監督署は、各企業が、労働基準法をはじめとする労働法令を遵守しているかを監督する機関です。

未払い残業代が存在するということは、労働基準法に違反していることになりますので、労働基準監督署に相談することが可能です。

労働基準監督署に相談することのメリットは主に2つです。

(1)無料相談が可能

労働基準監督署は無料で相談が可能です。無料なので、悩んでいる場合にはまず相談してみるのがよいでしょう。応じてもらえなかったとしても、デメリットはないといえます。

(2)指導勧告をしてもらえる

労働基準監督署は、企業が労働法上問題があると判断した場合、該当企業に指導勧告をする権限を有しています。指導勧告により問題が解決する場合もあるため、大きなメリットといえます。

一方、労働基準監督署に相談することのデメリットは主に3つです。

(1)労働法に違反するか不明な場合は応じてもらえない

労働基準法に違反するかどうかが不明な場合、相談に応じてもらえない可能性があります。違反しているかが不明な企業に対して労働基準監督署が働きかけることにより影響を与えることを避けたいからです。

(2)指導勧告には強制力はない

労働基準監督署が指導勧告をすることによって会社が態度を改めることが期待できますが、指導勧告は行政指導にとどまり、強制力を有しません。よって、会社に改善を強制することはできません。

(3)紛争の仲介はできない

労働基準監督署は交渉や仲介をしたりすることはできません。また、労働法令上問題があると判断しても、労働審判や訴訟を起こすことはできません。本人に代わって交渉や法的措置を行ってもらいたい場合、弁護士に依頼する必要があります。

7-4.弁護士に相談する

未払い残業代について会社と交渉したり、法的措置を検討している場合は、弁護士に相談することが可能です。労働基準監督署に相談すると、企業に対して指導勧告を行ってくれる場合がありますが、紛争の仲介などは行ってくれません。

一方、弁護士は法律問題の全てを代理することができますので、当然、労働問題に関する全ての問題に対処することが可能です。

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8.残業代請求のトラブルを弁護士に依頼するメリット

会社に対し未払い残業代の請求をしたがトラブルになってしまった場合、弁護士に依頼することをおすすめします。会社とトラブルになった場合に弁護士に依頼するメリットとして、以下の2つが挙げられます。

8-1.会社との交渉を任せることができる

休日出勤に関するトラブルについて弁護士に依頼した場合、弁護士が代理人となって本人に代わり会社との交渉を行ってくれます。よって、慣れない交渉で精神的な負担を感じることはなくなります。

また、労働問題に強い弁護士に依頼すれば、会社がブラック企業であったとしても強気に交渉することが可能です。

また、労働者個人が交渉しても会社が取り合ってくれない場合は少なくありませんが、弁護士が代理人についた場合は適当な交渉ができなくなります。

8-2.労働審判や訴訟など、あらゆる解決策を取ることが可能

会社が交渉に応じない場合、考えられる全ての法的措置を取ることが可能です。例えば、労働基準監督署のように法的措置が取れないなどの制限はありません。依頼者の権利の実現のためにあらゆる手段を使うことができます。

9.まとめ

未払い残業代請求には時効があることや、時効期間が延長されたこと、時効期間の進行を阻止する方法などについて詳しく解説をしました。

未払い残業代請求には時効が存在することを知らないと、未払い残業代を請求しようか迷っているうちに消滅時効が完成し、請求ができなくなってしまう可能性があります。まずはご自身の未払い残業代がいつ発生したのかを把握した上で、いつまでに未払い残業代を請求しなければならないのかを確認するようにしましょう。

まもなく消滅時効が完成してしまうことがわかった場合、内容証明郵便を送付して催告することにより、6か月間の猶予ができます。その間に対策を練り、早急に未払い残業代を請求することが重要です。

自分に未払い残業代が発生しているのか、発生していたとしてどれくらいで時効消滅してしまうのかがわからない場合、まずは弁護士に相談してみましょう。労働問題に強い弁護士に相談すれば、現在の状況を速やかに教えてくれるでしょう。その後の会社との交渉や法的措置に進んだ際にも弁護士がついていれば安心です。

未払い残業代について悩んでいる場合や疑問がある場合はお気軽に弁護士に相談してみてください。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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