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休日出勤は割増賃金をもらえるの?ケース別にわかりやすく解説!

休日出勤は割増賃金をもらえるの?ケース別にわかりやすく解説!
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カレンダーどおりに休日が定められている会社であれば、会社の休日がいつなのかを悩むことは少ないと思います。しかし、変形労働時間制や裁量労働制を採用している会社にお勤めの方は、休日についてしっかり理解していない場合もあるのではないでしょうか。

今回の記事では、休日について説明した上で、休日出勤した場合に割増賃金はいくらになるのか、休日出勤に関するトラブル事例などを詳しく解説します。休日出勤に関するトラブルでお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。

1. そもそも休日出勤とは?

休日出勤とは、会社において休日と定められた日に出勤して労働を行うことをいいます。会社が休日出勤をさせること自体は違法ではありません。

しかし、「休日」と一口にいっても実はさまざまな休日の種類があり、それによって割増賃金が支払われたり支払われなかったりすることがあるのです。

また、労働形態によっては休日出勤の概念が異なる場合もあります。

そこで、次に「休日」の種類について解説するとともに、休日と割増賃金の関係を詳しく見ていきます。

2. 休日の種類

休日出勤を解説する前提として、「休日」とは何かを説明する必要があります。以下では、「法定休日」「所定休日」「振替休日」「代休」「祝日」の5つの休日について詳しく解説します。

2-1.法定休日

法定休日とは、法律上設けなければならない休日のことをいいます。労働基準法では、毎週少なくとも1日以上の休日を与えなければならないとされています。なお、条件を満たすことで4週に4日以上の休日を与えることにしても可能とされています。

1年は52週ありますから、最低でも52日は法定休日があります。これを下回る場合、労働基準法に違反することになり、会社は処罰される可能性があります。

52日と聞いて少ないと感じた方も多いのではないでしょうか。法定休日は労働基準法で定められた最低限の休日ですから、もちろん法定休日以外にも休日を設けることは可能です。

2-2.所定休日(法定外休日)

所定休日(法定外休日)とは、法定休日以外の休日のことをいいます。例えば週休二日制を採用する企業では、週に2日の休日が存在することになりますが、この場合、2日のうちの1日は法定休日、もう1日は法定外休日です。

カレンダー通りに休日が定められている会社の場合、日曜日を法定休日、土曜日を法定外休日と定めている場合が多いです。

法定休日か法定外休日かによって割増賃金が発生するかが変わってきますので、ご自身の会社の法定休日と法定外休日については確認しておくとよいでしょう。ただし、法律上は法定休日を特定する必要は必ずしもありません。よって、法定休日と法定外休日の区別がはっきりしない会社も存在します。

2-3.振替休日

振替休日とは、休日出勤をさせる場合に、その振替としてあらかじめ設定される休日のことをいいます。振替休日を設定しておけば、会社は休日出勤をさせたとしても割増賃金を支払う必要はありません。

例えば、法定休日が日曜日である場合に、あらかじめ水曜日を振替休日としておけば、日曜日に休日出勤をさせたとしても法定休日に休日出勤をしたと扱われないことになります。

2-4.代休

代休とは、休日出勤をさせた場合に、休日出勤後に別の日を休日として設定したときの休日をいいます。

代休と振替休日は、ともに休日出勤の代替となる休日という意味では共通しますが、振替休日があらかじめ設定される休日であるのに対し、代休は休日出勤が発生した後に設定される休日であるという点で異なります。

この違いは、割増賃金の支払義務の有無に関係してきますので、後述します。

2-5.祝日

祝日とは、通常は法定外休日の一種とされ、国民の祝日を指すのが一般的です。祝日を必ず休日に設定しなければならないわけではなく、毎週少なくとも1日以上の休日を与えていれば、祝日を出勤日とすることも違法ではありません。

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3. 休日出勤が割増賃金になるケース

休日の種類についてはおわかりいただけたことと思います。次に、休日出勤をした場合に、割増賃金が発生するケースについて、3つのケースを説明します。

その前に、割増賃金とは何かについて簡単に説明します。労働基準法上、時間外労働をした場合は割増賃金を支払わなければならないとされています。割増賃金は基礎賃金の1.25倍以上と定められています。なお、基礎賃金とは1時間あたりの賃金をいいます。

例えば、基礎賃金が1時間あたり2,000円で3時間の時間外労働を行った場合、会社は労働者に対し、2,000×3×1.25=7,500円の割増賃金を支払わなければなりません。

3-1.法定休日出勤の場合

法定休日に休日出勤をした場合、会社は35%以上の割増率による割増賃金を支払う必要があります。

例えば、日曜日が法定休日に設定されていた場合において、基礎賃金が2,000円である労働者が日曜日に5時間出勤したときは、2,000×5×1.35=13,500円以上の割増賃金を支払わなければなりません。

3-2.所定休日出勤(法定外休日出勤)の場合

法定休日ではない所定休日に休日出勤をした場合、法定休日出勤のように割増賃金は発生しません。よって、会社は35%以上の割増率による割増賃金を支払う必要はないのです。

もっとも、所定休日に休日出勤をした場合、法定労働時間である週40時間を超えることが多いと思われます。その場合は時間外労働に該当しますので、会社は25%以上の割増率による割増賃金を支払う必要があります。

3-3.代休を取った場合

法定休日に休日出勤をした後、代休を取った場合、法定休日に休日出勤をしたことが無くなるわけではありません。よって、会社は代休を与えたとしても、法定休日出勤に対する賃金として、35%の割増率による割増賃金を支払う必要があります。

4.休日出勤が割増賃金にならないケース

次に、休日出勤が割増賃金にならないケースとして、6つのケースを見ていきます。

4-1.法定外休日出勤の場合

法定外休日出勤の場合、会社は法定休日出勤のような割増率35%以上の割増賃金を支払う必要はありません。もっとも、先ほども説明したとおり、法定外休日出勤は時間外労働になることが多いため、25%以上の割増率による割増賃金を支払う必要があります。

しかし、法定外休日出勤が割増賃金にならないケースがあります。それは、法定外休日出勤が法内残業である場合です。法内残業とは、法定労働時間の範囲内であるものの、所定労働時間を超えて働くことをいいます。

例えば、所定労働時間が1日7時間、週35時間だったとします。この場合において、法定外休日に1時間の休日出勤を行った場合、その週は36時間働いたことになるため、所定労働時間を超過することになります。しかし、法定労働時間である1日8時間、週40時間は超過していないため、時間外労働にはなりません。よって、この場合は法定外休日出勤であっても割増賃金を支払う必要はありません。ただし、基礎賃金に労働時間を乗じた金額は支払う必要があります。

4-2.振替休日を決めていた場合

振替休日を決めていた場合、法定休日に休日出勤をしたとしても会社は割増賃金を支払う必要はありません。ただし、先ほども説明したとおり、振替休日はあらかじめ設定しておく必要があります。

法定休日に休日出勤をした後に設定した休日は代休であって振替休日とはなりません。

代休の場合、会社は35%以上の割増率による割増賃金を支払う義務から逃れることはできません。

4-3.みなし残業の場合

「みなし残業」とは、実際に残業したか否かに関係なく、基本給にあらかじめ所定時間分の残業代を含めて給与として支給する制度をいいます。

例えば、基本給にみなし残業代10時間が含まれている場合、実際に残業をした時間が5時間だったとしても、会社は10時間分の残業代を支払う必要があります。

みなし残業による残業代の支給金額は、基礎賃金に25%以上の割増率を乗じて算出します。

例えば、基礎賃金が2,000円、みなし残業代10時間を含むという条件だった場合、みなし残業代は以下の計算式で算出されます。

(みなし残業代)=(基礎賃金)×(みなし残業時間)×(割増率+1)
=2,000×10×1.25=25,000

みなし残業が適用されている労働者が法定外休日出勤をした場合、時間外労働に当たります。みなし残業では時間外労働に対する割増率による割増賃金があらかじめ支給されるため、別途割増賃金を支払う必要はありません。

もっとも、法定休日に休日出勤をした場合は、みなし残業の枠外となるため、会社はみなし残業による支給額とは別に割増率35%による割増賃金を支払う必要があります。

4-4.裁量労働制の場合

裁量労働制とは、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。例えば、1日8時間をみなし労働時間とした場合、1日9時間働いたとしても8時間働いたとみなされるため、8時間を超えて働いた1時間分の残業代は支給されません。逆に、1日5時間しか働かなかったとしても8時間働いたとみなされるため、減給されることはありません。

裁量労働制の場合、実際の労働時間とは関係なくみなし労働時間分働いたとみなされるため、残業代は一切支給されないと誤解されることがありますがそれは誤りです。

裁量労働制であっても、法定休日に休日出勤をした場合、割増率35%以上による割増賃金を支払う必要があります。

一方、法定外休日出勤の場合はケースバイケースです。一般的には時間外労働となるため、割増率25%以上による割増賃金を支払うことが多いですが、法定労働時間を超過していない場合は割増賃金を支払う必要はありません。

4-5.管理職の場合

「管理監督者」とは、厚生労働省の定義によれば、労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者をいいます。管理職であっても「管理監督者」であるとは限らないため注意が必要です。

管理職の場合、労働基準法上の「管理監督者」に該当すれば、労働基準法における労働時間、休憩及び休日に関する規定が適用されなくなります。すなわち、毎週少なくとも1日以上の休日を与えなければならないというルールは適用されないため、管理監督者には法定休日という概念はありません。よって、他の労働者にとっては法定休日に当たる日に出勤して業務を行っても、休日出勤とはならないため割増賃金は発生しません。

4-6.その他

休日出勤をしても割増賃金が発生しないその他のケースとして、例えば休日中に出張で移動する場合が挙げられます。

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5.割増賃金の計算方法

法定休日に休日出勤をした場合、割増賃金を支払う必要があります。

休日出勤の割増率は35%以上ですが、割増賃金の種類によって最低割増率が定められており、これを下回ることは労働基準法上認められていません。

割増賃金の種類に応じた割増率は以下のとおりです。

種類条件割増率
時間外手当法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えたとき25%以上
時間外手当時間外労働が限度時間(月45時間、年360時間)を超えたとき25%以上
時間外手当時間外労働が月60時間を超えたとき50%以上
休日手当法定休日に勤務させたとき35%以上
深夜手当22時から5時までの間に勤務させたとき25%以上

例えば、基礎賃金が2,000円である労働者が法定休日に8時間の勤務をした場合、割増賃金は以下の計算方法で算出されます。

(割増賃金)=(基礎賃金)×(勤務時間)×(割増率+1)
=2,000×8×1.35=21,600円

では、法定休日に8時間の勤務をしたが、そのうちの4時間が22時以降の深夜勤務だった場合はどうでしょうか。その場合、4時間分については休日手当の他に深夜手当を支払う必要がありますので、割増賃金の計算方法は以下のとおりです。

(割増賃金)=(基礎賃金)×(勤務時間)×(割増率+1)
=2,000×4×1.35+2,000×4×1.6=23,600円

6.休日出勤に関するトラブル事例

以下では、休日出勤に関するトラブル事例として2つのケースを紹介します。

6-1.休日出勤の割増賃金が少ない

休日出勤に関するトラブル事例の一つ目は、休日出勤の割増賃金が少ないケースです。

法定休日に休日出勤をした場合、先ほども説明したとおり、35%以上の割増率による割増賃金を支払う必要があります。しかし、通常の時間外労働の割増率である25%の割増賃金しか支払われないケースがあります。

この場合、休日出勤の割増賃金が少ないため、労働者は未払い残業代の請求をすることができます。

6-2.休日出勤しても割増賃金が全く支払われない

休日出勤に関するトラブル事例の二つ目は、休日出勤しても割増賃金が全く支払われないケースです。

先ほどは、割増率が低いものの割増賃金自体は支払われているケースでしたが、こちらのケースは割増賃金自体が全く支払われない悪質なケースです。

「裁量労働制だから」とか、「みなし残業時間に含まれるから」といった会社側の口実がよく見られますが、これらは全て誤りです。裁量労働制であっても休日出勤をした場合は割増賃金を支払う必要があります。また、みなし残業の残業代と法定休日出勤の残業代は全く別枠ですので、割増賃金を支払う必要があります。

一方で、「管理監督者だから」という理由の場合、検討を要します。管理監督者である場合、労働基準法上の休日の規定は適用されないため、休日出勤と扱われないからです。

もっとも、名ばかりの管理職で実態は経営者と一体的な立場にない場合、管理監督者ではないといえます。そういった場合、会社が休日出勤手当の支給を回避するために悪用されている場合がありますので、弁護士に相談して割増賃金の支払い請求が可能かを検討してみましょう。

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7.休日出勤に関するトラブルを弁護士に依頼するメリット

上記のトラブル事例でもご紹介したように、休日出勤にまつわるトラブルは多く、労働者を悩ませています。

例えば、休日出勤をしたものの、法定休日なのか法定外休日なのかがあいまいで割増賃金が少なかったり、代休なのに振替休日の扱いとされて割増賃金が支払われないといったケースもあります。

中にはみなし残業や裁量労働制のような制度を悪用し、休日出勤の割増賃金は支払われないといった誤った説明をするブラック企業も存在します。

そのような場合、会社に対し未払い残業代の請求をしていくことになりますが、弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士に依頼するメリットとして、以下の3つが挙げられます。

7-1.会社との交渉を弁護士に一任することができる

休日出勤に関するトラブルについて弁護士に依頼した場合、弁護士が代理人となって会社との交渉を行ってくれます。よって、自らが会社との交渉を行う必要がなく、慣れない交渉に負担を感じることはなくなります。

また、労働問題に強い弁護士に依頼すれば、会社の法的な誤りを的確に指摘して交渉を優位に進めることが可能です。その結果、会社が休日出勤の解釈の誤りを素直に認めて残業代の支払いに応じてくれるケースは少なくありません。

7-2.会社側が慎重に対応するようになる

労働者個人が休日出勤の解釈を会社に説明しても聞く耳を持たない場合が多いのですが、弁護士が代理人についた場合は会社側が慎重になることが多いです。弁護士がついた場合、法的に誤った主張は通りませんし、最終的には法的措置を取られ、残業代を支払う可能性が高くなることを会社は認識します。

そうすると、早めに和解をしたほうがよいと考えて未払い残業代の支払に応じるケースも出てきます。

7-3.労働審判や訴訟などの法的措置にも対応できる

労働問題に強い弁護士は、労働審判や労働訴訟の経験が豊富です。よって、会社が交渉に応じない場合、法的措置を取ることによって残業代請求を実現しやすくなります。

ご自身が労働審判や訴訟提起を行うには専門知識が必要となるため、難しいのが実情です。弁護士に依頼すれば、労働審判や訴訟の代理人として全て一任することができますので、大きなメリットを感じることができるでしょう。

8.まとめ

今回の記事では、休日の概念や休日出勤において割増賃金が支払われるケース・支払われないケースを説明しました。

そもそも休日には種類があることを知らない方が多く、法定休日に休日出勤をしたのに法定外休日と同様の割増率で割増賃金を計算されても気づかないケースがあります。会社にうまく言いくるめられないためにも、まずは休日の概念についてしっかり理解することが望ましいでしょう。

その上で、ご自身の休日出勤は割増賃金の支払い対象なのかそうでないかを今一度検討してみましょう。検討には労働基準法の理解が必要となるため、よくわからない場合は弁護士に相談することをおすすめします。労働問題に強い弁護士に依頼すれば、ご自身の休日出勤の状況について的確なアドバイスをしてくれるでしょう。休日出勤で疑問がある方はお気軽に弁護士に相談してみてください。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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