残業代請求

未払い残業代を労働基準監督署に相談する方法やメリットを解説!

未払い残業代を労働基準監督署に相談する方法やメリットを解説!
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会社が残業代を支払わない場合に、残業代を請求するためにはいくつかの方法が考えられます。

その中の一つに、労働基準監督署に相談することが挙げられるのですが、この方法にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

このページでは、未払い残業代の問題を労働基準監督署に相談する方法や、相談したことによるメリットなどについてお伝えします。

目次

1.残業代の未払いに関する法律関係を整理

まず、残業代の未払いという状態についての法律関係を整理しましょう。

1-1.残業代とは

一般に残業代とは、所定労働時間を超えた労働に対する給与・賃金のことを言います。

労働契約を結ぶときに、何時から何時まで働くかという所定労働時間とそれに対する給与の額を決めています。

しかし、実際には所定労働時間を超えて労働することがあり、この場合、会社は、労働をさせた以上、超過分の給与・賃金を支払わなければなりません。

残業というと一般的には所定労働時間を過ぎて働いていることを差しますが、残業代の計算をするにあたっては、所定労働時間前に出勤して働くいわゆる早出残業や、土日の休日出勤なども含めて考えます。

1-2.残業代の未払いは違法なのか

残業代の未払いは違法なのか、法的にはどう考えるべきなのでしょうか。

上述したように、残業代は所定労働時間を超えた労働に対して支払う給与・賃金のことをいいます。

そのため、残業代は会社からの福利厚生や恩恵的な金銭給付ではなく、労働基準法11条に定義される賃金であり、労働基準法24条に規定される賃金支払の5原則に基づいた支払いがされる必要があります。

残業代の支払いがないというのは、労働基準法24条に違反するもので違法といえます。

違法である結果、残業代の支払いをしない会社が負う責任としては、

  • 未払い残業代に遅延損害金を付して支払うべき民事上の責任
  • 行政から行政指導を受ける対象となる行政法上の責任
  • 労働基準法120条で30万円以下の罰金刑が課される刑事上の責任

があります。

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2.労働基準監督署とは

では、残業代問題について労働基準監督署に相談することは有効なのかを確認するために、労働基準監督署とはどのようなものなのかを確認しましょう。

2-1.労働基準監督署とは

労働基準監督署とは、労働基準法などの労働者保護のための法律が守られているかを監督したり、労働基準法違反の捜査、労災保険の給付などを取り扱う、厚生労働省の出先機関です。

実務上では「労基(ろうき)」などと省略されます。

労働基準法では、労働基準法違反をする事業者に対して、様々な行政指導を行うことができる旨を規定しているほか(労働基準法101条)、労働基準法違反の刑事事件においては司法警察員としての職務を行うことが規定されています(労働基準法102条)。

残業代の未払いについては、給与の支払いをしないことになるので、労働基準法違反であり、その担当は労働基準監督署です。

2-2.労働基準法違反は労働基準監督署に申告できる

労働基準法104条1項は、会社が労働基準法・労働基準法に基づいて定められる命令に違反した場合には、労働基準監督所に申告できる旨を規定しています。

そして、同2項で、労働基準監督署に申告したことを理由として、解雇などの不利益な処分をすることを禁止しています。

2-3.労働局とは

似たようなものとして、各都道府県に「労働局」というものがあります。

労働局とは、厚生労働省の地方紙分極であり、労働相談や労働法違反の摘発、労災保険・雇用保険料の徴収、職業紹介と失業の防止などを職務とする機関です。

労働基準監督署はこの労働局の下部組織であり、労働局の指揮監督を受ける立場にあります。

労働局は個別労働紛争解決制度の助言やあっせんを業務としていますが、労働基準監督署の中で相談を受けるなどして両者は密接な関係にあるともいえます。

残業代の未払いについては、相談を受けたり、裁判外紛争処理手続であるあっせんを行うことができる点で関係があるといえます。

2-4.ハローワークとは

労働に関する相談場所として、ハローワークがあります。

正式名称は公共職業安定所といい(「職安」などと略されることもあります)、雇用の安定を目的とする機関で、職業紹介や雇用保険に関する事務を行っています。

労働局の下部組織である点で、労働基準監督署と共通します。

ハローワークは職業紹介や雇用保険に関する事務を行っているので、残業代の未払いの問題とは直接関係しません。

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3.残業代の未払いを労働基準監督署に相談するメリット

残業代の未払いを労働基準監督署に相談するメリットは次の通りです。

3-1.労働基準監督署の行政指導等で会社に支払うよう圧力をかけられる

労働者から残業代の支払いがない旨を申告された労働基準監督署は、調査・立ち入り・報告をさせる・是正勧告をするなどの行政指導を行うことができます。

これらの行政指導を通じて、会社が労働者に対して支払っていない残業代の支払いを自主的に行うことが期待できます。

3-2.会社全体の是正につながる

労働基準監督署の行政指導は、特定の労働者に対してのみの残業代の支払いを命じるわけではなく、残業代を払わない会社の業務に対して行われます。

そのため、自分の残業代だけではなく、他の従業員にも残業代の支払いをしてもらえることが期待できます。

3-3.相談するのに費用がかからない

法律問題について弁護士に相談すると、30分5,000円程の相談料がかかることがあります。

しかし、労働基準監督署に相談した場合には、相談するのに費用がかかりません。

どのような解決策があるのかを気軽に相談することができます。

3-4.労働基準監督署に申告したことを原因として不利益処分はされない

労働基準監督署に申告したことが会社にバレてしまった場合でも、会社は労働基準監督署への申告をもって従業員に解雇などの不利益な処分を禁止していることは上述したとおりです。

会社を辞めたくないような場合には、不利益な処分を禁じる条項があるのはメリットといえるでしょう。

3-5.匿名で申告ができる

労働基準監督署への申告は匿名で行うことができます

そして、労働基準監督署に対して申告があったことを伏せて調査を依頼することが可能です。

法律で不利益な処分を禁止しているとはいえ、昇進・昇給・契約更新などに影響がある可能性があるので、匿名での申告を認めています。

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4.労働基準監督署に相談するデメリット

一方で労働基準監督署に相談するデメリットも存在します。

4-1.労働基準監督署は個別の労使関係のトラブルを解決する機関ではない

労働基準監督署に相談するデメリットの1つ目は、労働基準監督署は個別の労使関係のトラブルを解決する機関ではないことです。

労働基準監督署は、労働基準法などの法令を会社に遵守させるために存在しています。

そのため、労働基準監督署に相談したとしても、相談者の未払い残業代を支払うようにだけ働きかけることはありません。

4-2.事実上の不利益取扱いがあることがある

上述したように、労働基準監督署に申告したことを原因として、解雇などの不利益処分をするのは法律で禁止されています。

しかし、労働基準監督署に申告したのを会社が知れば、会社との関係が悪化することが避けられないケースもあります。

昇給や昇進のチャンスに恵まれなかったり、無理なノルマを課される・急に転勤を命じられるなどの不利益を受ける可能性があります。

4-3.労働基準監督署がすぐに動いてくれない可能性がある

労働基準監督者がすぐに動いてくれない可能性があります。

実は労働基準監督署の実態として、慢性的な人手不足であることが知られています。

そのため、調査のために時間がかかることがあり、充分な資料などがなく労働基準法違反が判断できないような場合には、証拠を集めてくるように労働者に指示するなどすることがあります。

4-4.労働基準監督署への申告にはある程度の証拠が必要

労働基準監督署への申告には、ある程度の証拠が必要となります。

上述したように、労働基準監督署は慢性的な人手不足で、労働基準法違反があることが明白でない限り動くことができないという実情があります。

そのため、申告するにあたってはある程度の証拠があることが必要です。

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5.労働基準監督署に相談する際の流れと進め方

労働基準監督署に相談する際の流れは次の通りです。

5-1.未払い残業代に関する証拠を集める

まず、未払い残業代に関する証拠を集めます

未払い残業代に関しては、

  • 残業の命令・黙字の命令があることを示すもの
  • 残業をしたことを証明するもの
  • 雇用契約書
  • 就業規則
  • 給与明細書

の証拠が必要となります。

業務の指示に関するメールなどの資料や、業務体制が残業することを前提に組まれていることがわかるようなもの(例:シフト表)などを取得しましょう。

5-2.請求する残業代の計算をする

請求する残業代の計算を行います。

残業代の計算をするためには、1時間あたりの賃金がいくらなのかを計算し、残業代の割増率を適用して計算する必要があります。

また、固定残業代のように、残業代の一部の支払いをしている場合には、その部分については差し引く必要があります。

これらによって未払いになっている残業代の計算を行います。

5-3.労働基準監督署に相談をする

労働基準監督署に相談を行います。

相談を行う方法としては、厚生労働省のホームページからフォームに入力して申告を行う方法、直接労働基準監督署に赴いて相談をする方法があります。

直接労働基準監督署に赴く場合には、あらかじめ労働基準監督署に連絡をして、残業代の未払いがあり申告をしたい旨の連絡を入れるほうが良いでしょう。

労働基準監督署は全国にありますが、居住地の最寄りの窓口にまずは相談をしてみましょう。

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6.残業代の未払いを弁護士に依頼するメリット

未払い残業代問題については、労働基準監督署に相談するよりも、弁護士に相談・依頼するメリットがあります。

6-1.労働基準監督署は個別の残業代の請求を解決しない

残業代請求は個別に解決する必要があります。

前述したように、労働基準監督署は、労働基準法の遵守を求めるのが職務で、残業代の支払いをしてもらえてない個々人の残業代請求についての解決をするための機関ではありません。

労働基準監督署が会社に行政指導を行って、会社がそれに応じて同じ職種の人全員の残業代の支払いをするためには、給与についてのルールを変えたり、ケースによって未払い残業代の支払いのための資金の調達を行ってから、支払うことになります。

一方で、残業代請求を民事事件として会社と争えば、民事事件としてその個人と交渉をして金額を支払うことになります。

未払い残業代の支払いを求めたいのであれば、労働基準監督署に申告をして指導をしてもらうのは間接的な方法に過ぎないので、民事事件として請求するのが本来の筋といえます。

民事事件として相手と交渉・裁判等を行うのであれば、専門家である弁護士に相談・依頼するのが良いといえます。

6-2.未払い残業代は個別に請求するほうが解決まで早い

未払い残業代は、労働基準監督署に申告をして行政指導をしてもらうことで支払ってもらうよりも、個別の民事上の請求をするほうが早く解決します。

上述したとおり、労働基準監督署は慢性的な人手不足であるため、残業代が未払いである申告を受けたとしても、すぐに動けない可能性があります。

その結果、労働基準監督署が会社に対してアクションを起こすまで時間がかかり、会社が労働基準監督署からのアクションに応じて残業代を個別に支払う場合には、すべての従業員との関係で支払うことになるため、準備などで相当の期間がかかることが予想されます。

一方で個別の民事事件として請求をすれば、自分が請求の準備ができたタイミングで直接請求することができ、かつ会社としても未払い残業代を請求してきた労働者に対してのみ支払えばいいので、労働基準監督署を通じて請求をするよりも、早く解決するといえるでしょう。

そのため、弁護士に依頼して民事上の請求をすることにメリットがあります。

6-3.民事上の請求をする場合のサポートを受けられる

弁護士に依頼をすれば、民事上の請求をする場合のサポートを総合的に受けることができます

民事上の請求をする場合、最終的には裁判を起こして勝訴判決を獲得できるかが重要です。

勝訴判決をもらうために特に重要なのは、証拠の存在です。

民事裁判では、当事者に争いのある事実については、証拠によって認定することになっています。

そのため、証拠がなければ、実際に未払いの残業代があるという認定をしてもらうことができず、請求が棄却されることになります。

そのため、証拠の存在は非常に重要です。

証拠をしっかり突きつけられれば、裁判などの法的手続きでの請求の前に、任意に請求に応じてもらうことが期待できます。

民事上の請求をする場合には、弁護士は法的なサポートはもちろん、これらの手続き面でのサポートをすることができます。

6-4.他の法律問題についても同時に検討をすることができる

残業代の支払いを適切にしない会社である場合、他にも様々な問題を抱えていることがあります。

労働基準監督署は労働基準法等の違反についての監督を行うことから、パワハラ・セクハラといった問題については管轄外とされています(労働局の管轄となります)。

そのため、残業代の未払いだけではなく、パワハラ・セクハラなどの他の問題も同時に解決したような場合には、労働基準監督署に相談するだけでは解決しない可能性が高いです。

弁護士に相談して依頼すれば、未払いの残業代以外の問題についても同時に検討し、解決に導いてくれることになります。

6-5.会社との交渉を任せることができる

弁護士に依頼をすれば、会社との交渉を任せることができます

残業代の支払いをしないような会社に対して、残業代を支払えという交渉をする場合、非常にタフな交渉が求められます。

通じないと解っていても様々な言い訳をするので、それらに適切に反論する必要がありますし、労働者個人で交渉をする場合には非常に威圧的であり誠実に交渉に応じないことがあります。

弁護士に依頼すれば、会社との交渉を任せることができるので、タフな交渉から解放されます。

また労働者に代理して弁護士から請求したような場合には、会社の顧問弁護士・社会保険労務士のような専門家に相談することがあります。

顧問弁護士・社会保険労務士は未払い残業代があるような場合、会社に対して早く支払うようにアドバイスをすることが期待できます。

6-6.他士業と異なり制限なく任せることができる

残業代請求については、司法書士・社会保険労務士・行政書士が相談に乗っていることがあります。

残業代請求のような、民事上の請求は弁護士法に規定されている法律事務とされ、法律の規定なしに弁護士以外のものが報酬を得て行うことができません(弁護士法74条:非弁行為の禁止)。

司法書士(認定司法書士)は、140万円以下の、簡易裁判所が管轄となる案件について代理をすることが認められています。

そのため、140万円以下の残業代請求について、依頼を受けて業務を行っていることがあります。

ただ、司法書士は交渉と第一審のみを代理することができ、控訴された場合の控訴審以降の権限を持っていません。

労務関係の専門家である社会保険労務士は、残業代請求については裁判外紛争解決手続であるあっせんについての代理権があるとされています。

この権限をもとに残業代請求についての依頼を受けている社会保険労務士はいるのですが、それ以外の権限がなく、あっせんを用いての残業代請求をすることは極めて稀であるため、実際に残業代請求をする社会保険労務士を探すのは困難でしょう。

また行政書士は、権利関係に関する書面の作成をすることができるとされており、内容証明を作成する業務で残業代請求の内容証明を請け負っていることがあります。

しかし、行政書士は代理人として活動できる権限はなく、内容証明を送った後の交渉は自分で行わなければなりません。

以上より、制限なく任せることができる弁護士に相談・依頼をすべきでしょう。

6-7.弁護士には無料で相談できる可能性が高い

弁護士に相談・依頼する場合の最大のデメリットは弁護士費用です。

労働基準監督署と異なり、弁護士に相談する場合、一般的には30分5,000円程度の相談料の支払いをしなければなりません。

しかし、市区町村の無料相談や、弁護士会・法テラスの相談を利用すれば、無料で弁護士に相談することが可能です。

また、労働者側の労働問題については、無料で取り組んでいる弁護士も多く存在しており、相談を無料で行うことができる可能性が高いです。

法律事務所リーガルスマートでも初回60分の無料相談を実施しているので、気軽に相談をしてください。

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7.まとめ

このページでは、未払い残業代を労働基準監督署に相談する方法やメリットを中心にお伝えしました。

労働基準法を遵守させる責務を持った労働基準監督署に相談すれば、会社に対して未払いの残業代を払うように行政指導をすることで、会社が自主的に未払いの残業代の支払いをしてくれることが期待できます。

しかし、慢性的な人手不足等から、確実でスムーズな解決は見込めません。

弁護士に相談をして、民事事件として確実に未払いの残業代を請求することをお勧めします。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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