残業代請求

業界・年代別の平均残業代はいくら?計算方法を弁護士が解説!

業界・年代別の平均残業代はいくら?計算方法を弁護士が解説!
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コロナ禍で働き方は変化しつつあります。リモートワークによってプライベートとの境界があいまいになり、残業時間が増えた企業がある一方で、フレックスタイムや週休3日を導入して週の労働時間全体が減った企業もあります。

適正な残業代を把握するには、業界・年代・都道府県別の平均残業代と比較してみると良いでしょう。残業代が適正でなければ、正しい残業代を計算した上で、会社に未払い分を請求することができます。

本記事では、業界・年代・都道府県別の平均残業代について、政府の開示しているデータなどをもとに解説します。また、残業代の計算方法や未払い分の請求方法についても解説します。

残業時間と残業代が見合っていないと感じている方はぜひご覧ください。

1.残業代の平均額

自分の残業代が標準なのかを知るためには、業界・年代・都道府県別の平均額を確認してみましょう。平均と比較してあまりにも残業が長い、あるいは、残業代が少ない場合には、残業代が適正でない可能性があります。

2023年からは「コロナ明け」と称されることが多くなり、経済活動も活発化してきました。2024年4月には労働時間の上限規制が厳しくなることから、業界によってはこれまでよりも残業時間が減ると想定されます。直近の残業代だけでなく、これまでの変遷を確認しながら、「自分の残業代は適正か」を見極めるようにしましょう。

1-1.業界別の残業代平均額

まずは業界別の残業代平均額を見てみましょう。2023年8月に公開された「毎月勤労統計調査 令和5年6月分結果確報」によると、業界ごとの給与総額、残業代、残業時間は以下のようになっています。

業界給与総額(円)残業代(円)残業時間(時間)
鉱業・採石業等746,93326,09013.9
建設業570,32622,87213.1
製造業528,01929,03813.4
電気・ガス業1,063,56749,82414.4
情報通信業887,26032,00915.3
運輸業・郵便業517,73242,61421.9
卸売業・小売業362,65711,9617.1
金融業・保険業907,77324,50012.2
不動産・物品賃貸業674,22821,74612.1
学術研究等736,95326,72513.8
飲食サービス業等140,0397,1705.1
生活関連サービス等264,0888,6896.0
教育・学習支援業678,1666,72111.7
医療・福祉405,37814,1675.0
複合サービス事業679,16219,5768.0
その他サービス業372,25118,65910.8
出典:「厚生労働省|毎月勤労統計調査 令和5年6月分結果確報」から抜粋して作成

16業界のうち、それぞれ最も大きい値を黄色いマーカー、2番目に大きい値を太字で表しています。残業代支給額が最も多い業界は「電気・ガス業」の49,824円、最も少ない業界は教育・学習支援業の6,721円だということがわかります。

一方、残業時間をみると「運輸業・郵便業」が突出して多く、21.9時間という結果になっています。こうしてみると、「運輸業・郵便業」は残業時間が多いにも関わらず、給与総額が低い水準であることがわかります。

1-2.年代別の残業代平均額

残業代は手当などを除いた給与額から算出するため、給与が上がるにつれて高くなってきます。したがって、業界別の残業代のみを見て判断せず、年代別の平均もチェックしておきましょう。

残念ながら、年代別の残業代平均額に関する調査資料は確認できませんでした。ここでは、年代別の平均残業時間と平均給与(残業代を含まない)を元に、残業代平均額を算出します。

(1)年代別の平均残業時間

大手転職サイトの「doda」が調査した年代別の平均残業時間は以下のとおりです。

20代30代40代50代
2022年18.323.323.122.5
2021年16.821.722.220.8
2020年17.520.322.421.7
2019年22.025.226.224.2
出典:doda|年代別の平均残業時間の推移

(単位:時間)

20代や50代と比べ、脂の乗ってきた30代〜40代の平均残業時間が多いことがわかります。コロナ禍真っ只中だった2020年・2021年には一時的に残業時間が減りましたが、2022年からはまた徐々に増えてきています。ただし、まだコロナ前には至っていません。

(2)年代別の平均給与

では年代別の平均給与はどうでしょうか。厚生労働省による「令和4年賃金構造基本統計調査」の結果を元に作成しました。ここでいう「賃金」には残業代を含まないことに注意しましょう。

年齢賃金(万円)年齢賃金(万円)
〜19歳18.445〜49歳34.9
20〜24歳21.850〜54歳36.4
25〜29歳25.155〜59歳37.0
30〜34歳28.160〜64歳29.5
35〜39歳31.265〜70歳25.7
40〜44歳33.370歳〜23.8
出典:「厚生労働省|令和4年賃金構造基本統計調査」

日本では年功序列の賃金制度を採用しているところが多く、60歳の定年を迎えるまでは順調に賃金が伸びていることがわかります。

(3)年代別の残業代平均額を算出

2つのデータを元に、年代別の残業代平均額を算出してみましょう。残業代の計算方法は後述しますが、「1時間あたりの賃金(時給)×1.25(割増率)×残業時間」の計算式で求めます。

ここでは1日当たりの所定労働時間を8時間、1ヶ月当たりの労働日数を20日として計算しております。正式な調査結果とは異なるため、あくまで参考までにご覧ください。

年代1時間当たりの賃金残業代平均額
20代1,465円26,809円
30代1,853円43,174円
40代2,131円49,226円
50代2,293円51,592円

1-3.都道府県別の残業代平均額

最後に都道府県別の残業代平均額を見てみましょう。自分の残業代が適正かどうかを判断する上では、自分が働く地域の平均と全国平均の差を把握しておくことが非常に重要です。

都道府県別の残業代を調査したデータは確認できなかったため、厚生労働省が公開している「毎月勤労統計調査地方調査」を参考にして算出しております。割増率は一律「1.25」とします。あくまで参考値としてご覧ください。

都道府県所定外労働時間1時間当たりの賃金(円)残業代平均額(円)
北海道9.01,78220,048
青森8.91,55317,280
岩手9.81,63620,036
宮城9.71,75221,238
秋田9.01,56317,578
山形10.91,62322,119
福島11.21,72524,146
茨城10.81,88425,435
栃木11.41,86726,606
群馬11.31,82125,728
埼玉9.91,89823,493
千葉9.01,94021,829
東京11.72,47436,179
神奈川9.72,09025,346
新潟8.91,70819,004
富山8.51,77918,898
石川9.31,77720,659
福井9.91,78822,133
山梨11.41,78625,447
長野9.91,76621,851
岐阜9.61,78421,412
静岡10.31,84723,786
愛知11.72,04929,966
三重11.31,86826,381
滋賀10.81,88925,507
京都9.81,93523,707
大阪9.02,07123,296
兵庫9.21,89421,779
奈良7.11,78415,829
和歌山10.31,76622,733
鳥取8.51,60317,027
島根9.11,63218,563
岡山10.51,76723,194
広島10.91,89825,861
山口10.21,77322,610
徳島9.11,76420,068
香川10.41,78823,250
愛媛9.91,70221,066
高知6.71,64413,767
福岡9.41,87121,987
佐賀8.11,65316,735
長崎9.01,59417,936
熊本9.41,68619,808
大分10.01,68521,065
宮崎9.41,58618,632
鹿児島9.01,62318,263
沖縄8.81,56217,186

なお、全国平均は以下の通りです。

所定外労働時間1時間当たりの賃金(円)残業代平均額(円)
全国平均10.11,97224,902

残業代平均額が最も高いのは東京都で、最も低いのは高知県です。全体的に地方よりも大都市圏の方が給与は高い傾向にあります。そのため、所定外労働時間がほぼ同じでも、残業代平均額に差が出てきます。

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2.残業代の計算方法

ここからは残業代の計算方法について解説します。一般的に「残業代」とは時間外労働のことを指します。時間外労働の「時間外」とは、正確には「法定労働時間外」という意味で、労働基準法で定められた労働時間を超えた分を指します。

残業代の計算式は以下の通りです。

残業代=「1時間当たりの賃金」×「割増率」×「残業時間」

正確な残業代を算出するには、次の3つのステップで計算していきましょう。

ステップ① 1時間当たりの賃金を算出する

ステップ② 割増率ごとに残業時間を整理する

ステップ③ 割増率ごとに残業代を計算する

では順番に計算していきましょう。

2-1.1時間当たりの賃金を算出する

「1時間当たりの賃金」はいわゆる時給のことです。パートやアルバイトなど、時給制で働いていれば、その金額を当てはめて計算します。

月給制の場合は、以下の計算式で1時間当たりの賃金を算出します。

「1時間当たりの賃金」=「月給」÷「1か月当たりの平均労働時間」

月給には「家族手当」「通勤手当」「別居手当」「教育手当」「住宅手当」「臨時手当」「1ヶ月を超える期間ごとの賃金」は含みません(これを「除外手当」といいます。)。給与から各種手当を差し引いた金額で計算しましょう。

「1か月当たりの平均労働時間」は年間の平均のことです。「1日当たりの所定労働時間」×「年間労働日数」÷「12ヶ月」で計算します。

例えば、月給32万円、1日当たりの所定労働時間8時間、年間労働日数240日の場合を考えてみましょう。

「1ヶ月当たりの平均労働時間」=8時間×240日÷12ヶ月=160時間

「1時間当たりの賃金」=月給32万円÷160時間=2000円

したがって、1時間当たりの賃金は2000円となります。

2-2.割増率ごとに残業時間を整理する

残業代については、1時間当たりの賃金に一定の割増率をかけた賃金が支払われることになっています。これを割増賃金と言います。

通常よりも割増される賃金は大きく3つ。

割増賃金の種類内容割増率
時間外労働法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働くこと1.25倍
深夜労働午後10時から午前5時までの間に働くこと1.25倍
休日労働法定休日(週1日もしくは4週に4日の休日)に働くこと1.35倍

さらに、これらの組み合わせにより、割増率が加算されるケースもあります。

内容割増率
時間外労働+深夜労働法定労働時間外かつ深夜に労働すること1.50倍
休日労働+深夜労働法定休日かつ深夜に労働すること1.60倍

なお、休日労働と時間外労働の割増率は加算されません。休日労働はそもそも法定休日に行われるものであり、法定労働時間という概念が存在しないからです。

残業代を計算するときは、割増率ごとに労働時間を整理しておく必要があります。

2-3.割増率ごとに残業代を計算する

割増率ごとに労働時間を整理したら、それぞれ計算していきます。ここで、最初の計算式を使用します。

残業代=「1時間当たりの賃金」×「割増率」×「残業時間」

例えば、1時間当たりの賃金を2000円として、時間外労働が1ヶ月20時間あり、そのうち5時間が深夜労働だった場合を考えてみましょう。割増率ごとに整理すると、時間外労働(割増率1.25倍)は15時間、時間外労働+深夜労働(割増率1.50倍)は5時間となります。

残業代=(2000円×1.25倍×15時間)+(2000円×1.50倍×5時間)=52500円

この場合、労働者は5万2500円の残業代を受け取ることができます。

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3.残業代の未払い(不払い)が起きやすい業界

残業代の未払いが発生しやすい業界としては、次のような業界が挙げられます。

  • 建設業
  • 電気・ガス業
  • 情報通信業
  • 運輸業・郵便業
  • 教育・学習支援業

こうした業界には慢性的な人手不足の問題もあり、長時間労働になりやすくなっています。特に電気・ガス、運輸業、情報通信業などは生活インフラを支える業界であり、徹夜で対応に当たることも多く、労働時間の実態を把握しにくいことが問題化しています。

4.未払いの残業代を請求する方法

4-1.証拠を集める

まずは残業代が未払いとなっている証拠を集めます。「タイムカード」や「勤怠管理ソフト」のデータが最も有力な証拠となります。会社との交渉でも法的措置でも、最終的には証拠がものを言います。会社が言い逃れできないよう、明確な証拠を集めることが何より重要です。

4-2.人事部や労働組合に相談する

法的措置を検討する前に、社内での解決を図ることをお勧めします。最初から社外の専門機関に相談したり、法的措置を実施したりすると、会社との関係が悪化してしまうことも考えられます。

今後も会社で働き続けることを望んでいる場合には、まず会社の人事部や労働組合に話を持ちかけると良いでしょう。上司の独断でサービス残業をさせているなど、会社側が指導・改善に動いてくれるケースもあります。

4-3.専門機関に相談する

人事部や労働組合に相談しても話が進まない場合、社外の専門機関に相談することを検討しましょう。専門的なアドバイスをもらうことができるほか、場合によっては会社に直接働きかけてくれることもあります。

(1)労働基準監督署

残業代の未払いは立派な労働基準法違反です。労働基準局は会社の法令違反について改善を促してくれます。労働関連のトラブル全般を受け付けているため、誰でも気軽に相談することが可能です。

(2)弁護士

弁護士は法律のスペシャリストです。中でも、労働問題の経験豊富な弁護士であれば、未払い残業代を回収できる確率が高まります。そもそもどのくらいの残業代請求ができるのか、どのような証拠を集めるべきなのかなど、専門的な観点からアドバイスを受けることができ、会社との交渉を有利に進められます。

4-4.法的措置

会社との交渉がうまくいかなければ、裁判所を介した手続きを進めていくことになります。最終的には訴訟まで発展するケースもあるため、事前の準備が重要です。

(1)労働審判

労働審判は訴訟よりも簡易的な裁判上の手続きです。労働問題をより迅速に解決するために設けられました。審理は原則3回、早ければ1回で終了することもあります。訴訟よりも柔軟な解決を図ることができ、費用も安く済むのが特徴です。

(2)訴訟提起

労働審判において、会社側が異議を申し立てた場合、通常訴訟に移行します。訴訟はかなり厳格な手続きで、「勝ち・負け」が明確に決定します。

訴訟を有利に進めるためには、有力な証拠を集めて適切な主張をする必要があります。会社側は顧問弁護士などを用意する可能性が高いため、労働者側でも弁護士に相談しておくことをおすすめします。

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5.残業代の請求を弁護士に相談するメリット

未払い残業代を会社に請求する際には法的な知識が不可欠です。労働者自身が手探りで勉強しながら進める手もありますが、会社側に弁護士がつくことを考えると、素人だけで望むのは圧倒的に不利です。

無理に自力で対処しようとせず、あらかじめ弁護士に相談しましょう。弁護士に相談するメリットとしては以下が挙げられます。

  • 専門知識をもとに的確なアドバイスを得られる
  • 対等な立場で会社と交渉できる
  • 法的措置を代理できる

弁護士に相談すれば、会社との交渉から法的措置まで一括して任せることができます。労働者の負担を大きく軽減することができるのも、大きなメリットだと言えるでしょう。

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6.残業代の請求に関するよくあるQ&A

6-1.残業代の未払いは違法ですか?

残業代の未払いは違法です。労働者には労働した時間分の給与を受け取る権利があります。会社が残業代を支払わない場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科される可能性があります。

6-2.残業代の請求に時効はありますか?

未払い残業代の請求には時効があります。遡って請求できるのは過去3年間です。残業代の時効の完成が近づいている場合、まず時効の完成を妨げる必要があります。内容証明郵便を送る、一部の支払いを求めるなど、いくつかの手段があるため、なるべく早く弁護士に相談しましょう。

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7.まとめ

自分の残業代が適正かどうかを判断する方法としては、自分が属している業界や年代、都道府県別の平均残業代と比較するのが手っ取り早いです。平均と比較して、残業代が著しく低い、または、残業時間が長い場合には、残業代の未払いが発生していることが考えられます。

未払い残業代を会社に請求するには証拠が不可欠です。あらかじめ弁護士に相談することで、専門的な観点から証拠の揃え方を教えてもらうことができます。交渉でも法的措置でも有利に進めることが可能となるため、まずは弁護士の無料相談を利用してみましょう。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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