残業代請求

課長だと残業代が出ない?未払い残業代の請求方法を弁護士が解説

課長だと残業代が出ない?未払い残業代の請求方法を弁護士が解説
この記事をSNSでシェア!

1.課長(管理職)で残業代が出ないのは違法なのか

課長の役職にある場合には、管理職であることを理由に残業代が支給されなくなることがあります。

管理職とはいえ、仕事の内容は役職前と変わらなかったり、残業代が支給されなくなることから、不満を感じる方も多いことでしょう。

労働基準法では、使用者は、「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者」(管理監督者)に対し、深夜の割増賃金以外の残業代を支払う義務はないと規定しています(労働基準法第41条2号)。

しかし、肩書は管理職であっても、実際は他の労働者と同じような仕事をしている課長には

残業代を支払う義務があります。

したがって、課長であっても残業代が出ないことが違法になるケースもあります。

それでは、どのような場合であれば残業代が出ないことが違法になり、それまで支給されてこなかった未払いの残業代を会社に請求することができるのでしょうか?

そこで本記事では、そもそも課長は管理監督者なのか、管理監督者に該当するための条件、残業代の計算方法、残業代が未払いだった場合の対象方法などについて、労働問題に強い弁護士が解説します。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

2.「課長」は「管理監督者」なのか

課長とは、一般的には、総務課や経理課などの各業務による課の責任者としての立場にある者に対して与えられる役職名です。

各課を取りまとめる責任者としての地位にあるため、中間管理職として認識されています。

では、課長は管理監督者に該当するのでしょうか?

ここでは、管理監督者に該当するための要件について詳しく見ていきます。

2-1.管理監督者に該当するための要件

管理監督者とは、労働条件や労務管理について、経営者と一体的な立場にある者とされております。

そして、管理監督者に該当するかどうかは、形式的な役職名ではなく、その職務内容、責任と権限、勤務態様等の実態によって判断します。

したがって、役職についていれば残業代を支払わなくてよい、課長だから残業代が支給されないというわけではありません。

管理監督者に該当するか否かは、過去の判例などから、以下の4つの条件が必要とされています。

(1)職務内容

管理監督者に該当するための1つめの条件は、労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を担っていることです。

管理監督者は、各部署を管理監督する地位にある者であり、部署内の部下に指示や職命令を出すだけではなく、成績評価や採用不採用、解雇などの人事権やその他の決裁権など、特別な権限を有している必要があります。

さらに、管理監督者は、会社の経営会議に参加したり、労働環境の改善など労働者の声も参考に、社長や経営陣に報告や意見をだせる立場にあるか否かも重要になります。

(2)会社内での重要な責任と権限

管理監督者に該当するための3つめの条件は、会社内で重要な責任と権限があることです。

会社内の労働者の労働条件の決定や労働条件の整備、その他の労務管理などを、経営者と一体的な立場に立って判断し決定できるのが、管理監督者です。

したがって、会社から管理監督者に重要な責任や権限が付与されていなければなりません。

たとえ、会社内で課長という役職が与えられていても、他の労働者と同じように業務内容の決定権を持っていない場合には、管理監督者には該当しない可能性が高いでしょう。

(3)労働時間の裁量

管理監督者に該当するための2つめの条件は、自身の労働時間について裁量があることです。

一般の労働者であれば、就業規則により出退勤時間が決められており、業務内容も基本的には、上司をはじめとする会社の指示に従うことがほとんどです。

これに対して、管理監督者は、時間を選ばず経営上の判断や対応が求められることから、固定の勤務時間での勤務に馴染まず、自分の業務内容や出退勤時間について、自身の裁量で決める必要があります。

管理監督者であるのか否かの判断において、自身の業務内容の決定や労働時間の裁量権を有しているか否かは、重要な判断基準になります。

(4)賃金の待遇

管理監督者に該当するための4つめの条件は、賃金の待遇が優遇されていることです。

管理監督者は、会社内で重要な職務を担っていることから、他の労働者よりも賃金の待遇が優遇されていなければなりません。

基本給のほかに役職手当がなかったり、これまでの給与と変わらないどころか、課長に昇進したことで手取り金が減額するような場合には、管理監督者とはいえないでしょう。

賃金の待遇が他の労働者よりも優遇されているのか否かも、管理監督者であるのか否かの重要な条件となります。

課長が管理監督者にあたるのか否か不明な場合には、早い段階で弁護士に相談してみることをおすすめします。

管理監督者にあたらない場合には、課長であることを理由に残業代が出ないことは違法になり、会社に対して未払い残業代の請求が可能になります。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

3.残業代の計算方法

課長職にある人の残業代が未払いである場合、まずは、残業代がいくらあるのか適切な計算式により金額を算出しなければなりません。

残業代の計算式は、以下の計算方法により算出できます。

3-1.基本的な計算方法

残業代の基本的な計算式は、以下の通りです。

・残業代 = 1時間当たりの基礎賃金 × 残業時間 × 割増賃金率1.25

1時間あたりの基礎賃金は、月給制と日給制により計算式が異なります。

月給制の場合の1時間当たりの基礎賃金の計算式は、以下の通りです。

・1時間当たりの基礎賃金 = 月給 ÷ (1日の所定労働時間 × 月間所定労働日数)

日給制の場合の1時間当たりの基礎賃金の計算式は、以下の通りです。

・1時間あたりの基礎賃金 = 日給 ÷ 1日の所定労働時間

さらに、労働基準法で規定された1日8時間、1週40時間以上の法定労働時間を超えた時間外労働については、25%以上の割増率により算出した割増賃金が支払わなければなりません。

3-2.雇用形態や勤務状況によっては、残業代の計算は複雑

雇用形態や勤務状況により、残業代の計算はさらに複雑になります。

例えば、固定残業代制(みなし残業代制)、変形労働時間制、フレックスタイム、年俸制、休日出勤、深夜労働など雇用形態や勤務状況により割増率も異なります。

さらに、在職中であるか退職後であるかにより、未払い残業代の遅延損害金の利率も異なるため、注意が必要です。

在職中の未払い残業代の遅延損害金は、会社が別に利率について規定を設けていなければ、年に3%の法定利率が適用されます(民法第404条)。

退職後の未払い残業代の遅延損害金は、退職日の翌日から支払済みまで年に14.6%利率が適用されます(賃金の支払の確保等に関する法律第6条)。

したがって、退職後に未払い残業代を支払わない場合には、会社に対して利率の高いペナルティが科せられることになります。

未払い残業代をいくら請求できるのか、正確な残業代や遅延損害金の金額を算出するためには、まずは弁護士に相談することをおすすめします。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

4.残業代が未払いだった際の対処法

残業代が未払いだった際は、以下の3つの対処法が考えられます。

それぞれについて、見ていきましょう。

4-1.会社と直接交渉する

残業代が未払いである場合の1つめの対処法は、会社と直接交渉をすることです。

課長という役職名が与えられているものの、実際には名ばかりの管理職で、会社の経営決定や労務管理上の決定権限がない場合は、労働基準法上の管理監督者ではないため、未払い残業代を請求できます。

会社と直接交渉する場合には、残業をしたことを証明する証拠をもとに、正確な残業代ならびに遅延損害金の金額を算出して請求することが必要です。

未払い残業代の請求を会社が認める場合には、残業代の回収時期や支払方法などについても交渉を進め、合意に至った場合には、合意書を作成しておくことをおすすめします。

4-2.労働基準監督署に相談する

残業代が未払いである場合の2つめの対処法は、労働基準監督署に相談することです。

労働基準監督署とは、会社が労働基準法などに違反している場合に是正監督を行う厚生労働省の機関です。会社の労働条件などを厳しく監視し、強い権限が与えられています。

課長であることを理由に未払い残業代がある場合は、労働基準監督署から指導や是正勧告が出されるようになるため、会社はこれに従うようになります。

労働基準監督署以外にも、労働局の紛争調整委員会や労働委員会によるあっせん手続など、裁判以外の紛争処理手続きを利用することもできます。

ただし、労働基準監督署やその他の紛争機関では、未払い残業代の支払を会社に強制することはできません。残業代の回収を望む場合は、弁護士に依頼することを検討しましょう。

4-3.弁護士に相談する

残業代が未払いである場合の3つめの対処法は、弁護士に相談することです。

弁護士に依頼することで、弁護士が労働者の代理人として会社と直接交渉することをはじめ、残業代請求に必要な様々な手続きを代行してもらえます。

労働者が個人で会社に未払い残業代の請求をしても、課長だから、または、役職手当がついているから等の理由により、残業代の支払を拒むことが少なくありません。

この点、弁護士に一任しておけば、会社と直接交渉したり、様々な手続きをするための手間と時間、さらにはストレスも軽減することが可能になります。

万が一、会社が請求を拒んだ場合でも、そのまま労働審判や訴訟に移行することができ、全面的にサポートしてもらえるため安心です。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

5.残業代請求をする際の注意点

未払い残業代がある場合、未払い残業代に遅延損害金を加算した金額を会社に請求することが必要です。

ここでは、未払い残業代を請求する場合の注意点について解説します。

5-1.残業代請求をするには証拠が重要

未払い残業代を請求するには、まずは、労働者が残業をしたことを証明する証拠を収集することが必要です。

たとえ残業をしても、それを証明できる証拠がなければ、会社が残業代を支払うケースは少ないでしょう。

残業を証明する証拠は、タイムカード、給与明細、勤怠管理ソフトなどの記録データ、業務日誌、労働契約書、就業規則、賃金規定等です。

こうした証拠は、一般的には、会社が保管していることが多いため、証拠の収集は在職中に行うことをおすすめします。

万が一、証拠が入手できない場合でも残業代請求を諦める必要はありません。

弁護士に依頼することで、退職後であっても、弁護士が会社に証拠の開示請求をすることでタイムカードなどの勤怠管理データや雇用契約書、就業規則などを入手できます。

証拠がなくても、まずは弁護士に相談してみることで残業代の回収方法を提案してもらえるでしょう。

5-2.残業代請求には時効がある

未払い残業代の請求権には時効があります。一定の期間が経過してしまえば、それ以降は残業代の請求ができなくなってしまうため、注意が必要です。

残業代請求権の消滅時効の期間は、3年です。2020年3月31日以前に残業代が発生した場合の消滅時効の期間は、2年とされています。毎月の給料日から時効期間が始まります。

会社に未払い残業代を請求せずに放置しておくと、毎月時効を迎えるため、受け取れるはずの残業代が減少してしまいます。できるだけ早い時期に会社に請求することが重要です。

なお、会社に残業代の請求を求める内容証明郵便を送付することで、時効の完成を一時的に猶予することが可能です。

時効が一時的に止まっている間に、労働審判や訴訟などの適切な手続きをとることが必要になるため、弁護士に相談して時効の完成猶予の手続きをとることをおすすめします。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

6.未払いの残業代請求を弁護士に相談、依頼するメリット

未払いの残業代請求を弁護士に相談・依頼するメリットは、以下の4つです。

それぞれのメリットについて、見ていきます。

6-1.正しい残業代ならびに遅延損害金の計算ができる

未払い残業代請求を弁護士に依頼する1つめのメリットは、正確な残業代ならびに遅延損害金の計算ができることです。

未払い残業代を請求する場合、まずやらなければならないことは、正確な残業代ならびに遅延損害金を計算することです。

近年では、インターネットから未払い残業代の計算方法やアプリにより残業代の金額を調べることもできるようになりました。

しかし、労働者それぞれの雇用形態や勤務状況により計算式が複雑になるため、正確な残業代や遅延損害金の金額を算出することが困難になります。

万が一、残業代や遅延損害金の金額が間違っていれば、会社はこれを理由に残業代の請求を拒むことも予想されるため、注意が必要です。

未払い残業代の回収を成功させるためにも、早い時期から弁護士に相談して、正確な残業代や遅延損害金の金額を算出することをおすすめします。

6-2.証拠収集の保全やアドバイスができる

未払い残業代請求を弁護士に依頼する2つめのメリットは、証拠収集の保全やアドバイスができることです。

未払い残業代を請求する際には、タイムカード、労働契約書、就業規則、勤怠管理データなどの残業をしたことを証明するための証拠が必要です。

在職中であれば、証拠の収集が可能ですが、離職してしまうと、これらの証拠が会社に保管されていることが多いため、証拠収集が困難になり請求を諦める人も少なくありません。

退職後に証拠が手元にない場合でも、弁護士であれば、残業代支払請求書を内容証明郵便で会社に郵送して、証拠の開示請求を行うことが可能です。

さらに、万が一、会社が証拠の開示を拒む場合には、裁判所に証拠保全の申立を行い、証拠を確保することができるため、残業代請求を諦める必要はありません。

6-3.会社との交渉など請求手続きを一任できる

未払い残業代請求を弁護士に依頼する3つめのメリットは、会社との交渉など残業代請求に必要な手続きを一任できることです。

未払い残業代を請求するには、正確な残業代の計算をはじめ、証拠の収集、内容証明郵便による請求書の送付、会社との交渉など、様々な手続きや事務作業が必要になります。

弁護士に依頼することで、こうした労力を要する手続きを一任することが可能になり、手間や時間の削減はもちろん、精神的な負担を軽減することも可能になります。

時間や精神的な負担を軽減できることは、弁護士に依頼する際の大きなメリットといえるでしょう。

6-4.会社が対応するようになる

未払い残業代請求を弁護士に依頼する4つめのメリットは、弁護士が介入することで会社が対応するようになることです。

労働者が個人で会社に未払い残業代の請求をしても、会社が課長であることを理由に支払を拒むというケースは少なくありません。

しかし、弁護士が介入することで、会社のほうでもいい加減な対応ができなくなり、真摯に請求に応じるようになることがあります。

特に、ブラック企業など課長職を理由に未払い残業代の支払が労働基準法に違反している場合は、弁護士に依頼して早い時期に残業代を回収してもらうことが得策です。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

7.課長(管理職)の残業代に関するよくあるQ&A

7-1.課長として役職手当を貰っています。残業代を請求できますか?

はい、役職手当を貰っていても、課長としての職務が労働基準法の管理監督者にあたらない場合には、残業代を請求できます。

課長とは言っても、他の労働者と同じような業務を行っていたり、部署内での経営や職務管理上の決定権を有していない、賃金も他の労働者よりも優遇されていないような場合は、課長といえども、管理監督者には該当しません。

課長職が管理監督者にあたらない場合には、たとえ役職手当を支給していても、会社は残業代を支給しなければなりません。

7-2.採用時に課長職であるため残業代は支給されないと言われました。残業代は出ないのですか?

採用時に課長職であるため残業代は出ないと会社に言われても、残業代を請求することは可能です。

会社が労働者に残業をさせる場合は、労使間で決めた36協定を締結して、残業代を支給しなければならないことが労働基準法で定められています。

労働基準法は強制力のある法律であるため、たとえ会社が残業代を支給しないと採用時に労働者に説明しても、こうした会社の説明は無効になります。

また、課長職であることを理由に残業代が支給されない場合とは、課長の職務内容が労働基準法の管理監督者に該当する場合に限られています。

課長職であっても管理監督者にあたらない場合は、残業代を支給することができます。

7-3.証拠がない場合は残業代の請求はできませんか?

現時点で証拠を保有していない場合でも、在職中または退職後に残業代を請求できます。

弁護士に相談依頼することで、弁護士が会社に残業代請求をする際に、証拠の開示を求めることが可能です。

タイムカードや勤怠管理データは、会社が3年間保管しておかなければならない義務があります。たとえ退職後であっても、資料の開示を求めれば、証拠を収集できます。

証拠がない場合でも、まずは弁護士にご相談ください。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

8.まとめ

今回は、そもそも課長は管理監督者なのか、管理監督者に該当するための条件、残業代の計算方法、残業代が未払いだった場合の対象方法などについて、労働問題に強い弁護士が解説しました。

課長という役職が管理職であるという理由から、残業代が支払われてこなかったケースが多くなりました。

しかし、一般的に言われている課長が直ちに労働基準法の管理監督者にあたるとは限りません。課長という役職がついていても、実質的に見て管理監督者に該当しない場合は、未払いとなっている残業代を請求することが可能です。

未払い残業代を会社に請求するにあたっては、労働問題に強い弁護士のサポートが何よりも必要になります。早い時期に相談することで、早期に残業代の回収も可能になるでしょう。

私たち法律事務所リーガルスマートは、未払いの残業代請求をはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

この記事をSNSでシェア!

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

相談無料初回60分

担当者

内田 貴丈
内田 貴丈法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2019年12月 弁護士登録
2020年1月 都内法律事務所にて勤務
2021年8月 法律事務所リーガルスマートにて勤務
ホーム お役立ちコラム 労働問題 残業代請求 課長だと残業代が出ない?未払い残業代の請求方法を弁護士が解説

電話受付時間 10:00〜17:30 (土日祝・年末年始を除く)