残業代請求

サービス残業を告発するメリットやリスク、手順を弁護士が解説!

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「うちの会社では、表向きに残業禁止といっていて残業がないことになっているから残業代が出ない。だけど実際には家に持ち帰って仕事しないと担当分の仕事が終わらない。同僚もみんな仕事を家に持ち帰っている。転職も考えているけど、同僚がそのまま隠れサービス残業状態なのはつらいから労基署に告発しようと思っている。告発は仕事を持ち帰りさせられている社員みんなでやるのか、代表者が同僚たちの証拠を揃えて持っていくのかとか、どうすればよいか知りたい。あと告発したことが会社にばれないかとか」

等、サービス残業の告発を考えている方は、告発の方法やリスク等について気になっていると思います。

本記事では、サービス残業を告発するメリットやリスク、告発の方法やその後の流れ等について労働問題に強い弁護士が解説します。

目次

1. そもそもサービス残業とは

本章では、そもそもサービス残業とは何か、サービス残業はなぜ発生するか等を解説します。

1-1. サービス残業は労働基準法第37条違反

まず、1日あたり8時間・週あたり40時間の法定労働時間を超えて労働させることが必要な場合は、まず労使間で同法第36条に基づく協定を締結することが必要です。そして、時間外労働をさせた場合は原則として1分単位で基本給の25%以上の割増賃金を支払わなければなりません(労働基準法第37条1項)

サービス残業は、賃金が支払われていない時間外労働であり、労働基準法第37条違反の違法な業務慣行です。

1-2. サービス残業が発生する原因

サービス残業が発生する原因としては以下のものが考えられます。

(1)経営陣の知識不足

大企業では法務部やコンプライアンス担当の部署があり、従業員に対しても労働時間の管理が行き届いているところが多いです。

しかし、中小企業では経営者が労働基準法の内容を十分に理解していなかったり、軽視していることもよくあります。

(2)人件費削減の目的

また、サービス残業が違法であることを知りながら、人件費を増やさないために「サービス残業が当たり前」の空気を作って同調圧力をかけている場合も多くあります。

最近は、タイムカードを定時に打刻させるといった、あからさまに違法な手法をとる会社は減っています。

他方で、働き方改革に伴う労働基準法の残業時間上限規定が設けられたこと等から、明らかに定時に終わらない量の仕事を与えて定時に帰らせ、実際には仕事を持ち帰らせて自宅で無報酬で仕事をさせるという「隠れサービス残業」が増えています

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2. サービス残業を告発する前に確認するべきこと

サービス残業の告発、つまり会社の従業員に対する残業代不払い(労働基準法第37条違反)の事実の申告は労基署に対して行います(労働基準法第104条1項)。

サービス残業を告発するにあたっては、事前に以下のことを確認する必要があります。

2-1. 労働契約内容

その労働者の雇用形態や該当する賃金支払制度によっては、残業代が発生しないか、あるいは既に支払済みになっている場合があります。

サービス残業を告発するにあたっては、雇用契約書を参照して自身の労働契約内容を確認してください。

(1)残業代が発生しない例

残業代が発生しない例としては、労働基準法第41条各号に該当する場合があります。同条各号に該当する場合は、労働基準法の労働時間に関する規定が適用されないため、残業代も発生しないことになります。

ただし、特に「管理監督者」(同条2号)については注意が必要です。判例上「管理監督者」に該当する役職は「労働条件の決定その他、労務管理について経営者と一体的な立場にあるもの」に限られるとされています。

従って、店長やエリアマネジャー、部長・課長等の役職は、一般的には管理職とされていても「管理監督者」に該当しない場合には、残業代が支払われていなければ労働基準法第37条違反となります。

(2)給与が残業代込みで支払われている場合

また、給料が一定時間数分の残業代を含める形で支払われる制度(固定残業代制)をとっている場合もあります。

固定残業代制(みなし残業代制)とは、毎月一定の時間数分残業したとみなし、その時間数(みなし残業時間)分に相当する残業代を固定残業代として支払う制度です。

固定残業制をとっている場合、その労働者の実労働時間がみなし残業時間を超えない場合には別途残業代は発生しません。

しかし、実労働時間がみなし残業時間を超えた場合は、超えた時間数分の割増賃金が支払われなければなりません。

従って、固定残業代制をとっている場合でも、実労働時間が固定残業代を超えていて、それにもかかわらずその超過時間数分の残業代が支払われていない可能性があります。

固定残業代分の時間数を超える時間分の残業代が発生したか否かを調べるためには、日々の実労働時間を確認する必要があります。

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3. サービス残業を告発するメリット

労基署にサービス残業を告発することには、次のようなメリットがあります。

3-1. 職場環境が改善される

サービス残業は特定の従業員一人が行っていることは少なく、同じ部署の全員、あるいは複数の従業員がサービス残業させられていることが多いです。

サービス残業を告発して労基署が動いてくれることで、サービス残業がなくなり、職場環境が改善されることが期待できます。

3-2. 未払い残業代を支払うように指導・勧告してもらえる

労働基準法第37条違反で是正勧告を受けた会社(事業所)が、勧告に従わなかった場合は労基署がその会社と代表者を送検することができます(労働基準法第102条)。

厚生労働省「長時間労働が疑われる事業場に対する令和4年度の監督指導結果を公表します」2023[R5]年8月3日

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4. サービス残業を告発するリスク

一方、サービス残業を告発する場合、以下のようなリスクを懸念される方が多いと思います。そのようなリスクは実際には起こりうるでしょうか。

4-1. 告発したことが会社に知られるリスク

サービス残業の告発を考える方にとって、一番気になるのが「自分が告発したことが会社に知られること」ではないでしょうか。

この点、労基準署で勤務する労働基準監督官には守秘義務を負っています(労働基準法第105条)。従って、通報の事実や通報者について、外部に知らせることはありません。

ただし、会社が小規模で事業所が1つしかないために告発者が特定できてしまう場合や、提出された証拠の中に特定の個人にしか知りえない情報があるという場合、事実上通報者が会社にばれてしまう可能性はあります。

4-2. 会社から解雇等の不利益な取り扱いを受けるリスク

また、労基署に告発したことが会社に知られた場合に、解雇や降格、配置転換等で報復的に不利益な取り扱いを受けることを不安に思う方も多いと思います。

この点、労基署に告発したことを理由とする不利益取り扱いは法律で禁止されています(労基法第104条2項)。

また、公益通報者保護法は、一定の要件を満たす公益通報を行った労働者に対して、公益通報を行ったことを理由とする解雇その他の不利益取り扱いをすることを事業者に禁止しています(同法第3条[解雇の無効]、第5条[その他の不利益取り扱いの禁止])。

労基署へのサービス残業告発を行った労働者は、正社員以外の雇用形態の労働者も含めて公益通報者保護法の適用を受けます。

従って、会社がサービス残業告発を行った労働者に対して不利益な取り扱いを行うことは違法なので、仮に不利益な取り扱いを受けた場合は法的手段をとることができます。

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5. サービス残業を告発する方法

サービス残業、つまり会社の当該事業所による労働基準法第37条違反に対しては、違反の事実をその事業所を管轄する労基署の監督課に「申告」する形で告発を行います。

(労基法第104条1項)。

以下、サービス残業を告発する方法を解説します。

5-1. 証拠をそろえる

まず、その会社の事業所で労働基準法第37条違反の事実があったことを証明できる証拠をそろえてください。役立つ証拠としては以下のものが挙げられます。

①残業代が発生する雇用形態であることの証拠

  • ・雇用契約書
  • ・就業規則
  • ・労働条件通知書

②残業指示があったことを証明するもの

  • ・上司の残業指示があったことがわかるメールやチャットの履歴

③残業日時と時間数を証明するもの

  • ・タイムカード
  • ・その時間残業していたことを証明できるPCの使用履歴(ファイル・ソフト等で最終閲覧日時が表示されるもの等)
  • ・上司あての退勤報告メールやチャットの履歴

5-2. 電話・メールまたは面談により申告を行う

証拠が揃ったら、労基署に申告を行います。

申告は、できる限り労基署の窓口(監督課)に直接出向き、労働基準監督官との面談によって行うことをお勧めします。会社の行為の違法性を証明する証拠をそろえて対面で告発を行ったほうが、緊急度が高いと判断されやすいからです。

仕事の都合等でどうしても窓口に赴くことができない場合は電話やメールによっても申告を行うことができます。この場合は、証拠資料の提出方法について担当者に確認してください。

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6. サービス残業を告発した後の流れ

サービス残業の申告(告発)を行うと、労基署の判断により事業所に対して申告監督を行います。本章では、サービス残業を告発した後の労基署が行う手続の流れを解説します。

6-1. 申告監督(事業所立入り調査)

申告監督の方法には、①労働者から申告があったことを明かして呼び出し状を発行する場合と、②申告があったことを明かさずに、定期監督と同じように実施する場合の2種類があります。

立入り調査は、労働基準監督官が事業所に強制的に立ち入り、実態を調査します。立入り前に予告する場合と、予告なしで立入りを行う場合があります。調査にあたっては関連資料の確認や事業所の責任者や従業員に対して聞き取りが行われます。

6-2. 監督指導または是正勧告

調査によって、労働基準法第37条違反の事実や改善の必要が見つかった場合には、会社及びその事業所に対して指導や是正勧告が行われます。

指導や是正勧告が行われた場合には、会社は労働基準監督官が定めた期限内に是正を行い、労基署に報告する義務があります。指導や勧告に従わなかった場合、労働基準法第37条違反の疑いで送検される可能性があります(同法第119条・第102条)。

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7. 労基署以外の相談先

労基署が対応してくれなかった場合の相談先として、以下の機関があります。

7-1. 労働組合

労働者個人や、代理人による交渉ではなく、労働者組織の一員として交渉に参加して職場環境を改善したい場合には、労働組合に相談することをお勧めします。

労働組合は団体交渉権を持つので、組合として会社側と対等に交渉することにより問題解決を図ることができます。

他方、労働組合には訴訟代理権がありません(弁護士法第72条により、少額訴訟等の一部の例外を除き、訴訟代理権を持つのは弁護士に限られます)。

そのため、交渉が成立しなかった場合の訴訟手続の代理については弁護士に依頼する必要があります。

会社に労働組合がなかったり、存在しても機能していない場合には、合同労組(ユニオン)に加入して、ユニオンに団体交渉を依頼することができます。

いずれの場合も、組合に加入した場合には加入金と毎月の組合費がかかるほか、団体交渉を依頼して問題が解決した場合には解決金の一部を組合に支払う必要があります。

7-2.総合労働相談コーナー

労基署や労働局で開設している総合労働相談コーナーでは、未払い残業代などの労働問題について無料で相談することができます。労基署に相談内容の引継ぎも行います。また、あっせんについて説明や申込み手続を行っています。

7-3. 労働条件相談ホットライン

厚生労働省から委託を受けて民間企業が運営している無料の電話相談サービスです。労基署が閉庁している土日の9時~21時と平日の17時~22時に相談を受け付けています。

サービス残業問題についても専門知識を持つ相談員が対応し、対処方法を教えてもらうことができます。

7-4.弁護士

見積もりが数十万円から100万円以上に及ぶ場合や、その他の請求を合わせて行いたい場合などは、労働問題に強い弁護士に相談することをお勧めします。

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8. 残業代請求を含む労働問題を弁護士に相談、依頼するメリット

本章では、労働問題を弁護士に相談するメリットをご説明します。

8-1.会社に対しての請求の可否を教えてもらえる

例えば未払い残業代を請求する場合、①残業代が発生する雇用形態か否か ②実際に残業代が発生しているか、消滅時効にかかっていないか、請求できる残業代の合計金額はいくらになるか等について詳細に教えてもらうことが可能です。

8-2.会社と交渉するのに必要な証拠収集方法を教えてもらえる

未払い残業代を請求する場合、雇用契約書や労働条件通知書など自身が保管していれば利用できるもの以外に、タイムカードや業務アカウントによるメールの送受信履歴等、会社側が保持しているデータもあります。

容易に入手できない証拠についても収集が必要なのか、必要であればどのように入手すればよいか等についても弁護士に教えてもらうことができます。

この点、会社は賃金台帳等の労働関係に関する重要な情報について、3年間保存する義務を負っています(労働基準法第109条)。

また、判例上、未払い残業代請求においては会社側がタイムカード等の証拠開示義務を負っていると解されています。

しかし、実際には会社が証拠開示に応じないこともあります。

会社に対する証拠開示請求が労働者本人では難しい場合証拠開示請求を弁護士に代理してもらうことができます。

8-3.会社との交渉を任せることができる

未払い残業代の請求にあたっては、最初に会社側と交渉する必要があります。

しかし、労働者本人が交渉しようとすると取り合ってくれない可能性があります。また逆に会社側が顧問弁護士を立ててくることもあります。

弁護士に依頼していれば会社側の対応に関係なく、請求に向けての交渉を対等に行うことができます。

8-4. 労働審判や民事訴訟などの法的手続を任せることができる

請求にあたり、証拠収集・交渉とともに労働者個人で行うことが困難なのが、労働審判や訴訟等の裁判所が関わる手続です。

労働審判は手続が比較的単純なので短期間で終結させることができます。しかし、申立てから審理まで全て一人でやることは容易ではありません。

さらに訴訟提起するとなると、証拠収集に加えて期日に出廷して口頭弁論での陳述や証拠調べ等を行う必要があります。

少額訴訟や簡易裁判所への訴訟提起であっても、一人でやることには大きな負担が伴います。この点、弁護士に依頼していれば労働審判・民事訴訟ともすべて任せることができます。

請求手続代理・代行には費用がかかりますが、弁護士に依頼することで確実に未払い残業代の支払いを受けることができます。

また、多くの法律事務所では初回相談や初回相談の一定時間(30分~60分程度)を無料としているので、無料相談を利用して問題点を的確に整理することで費用を抑えることが可能です。

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9. サービス残業の告発に関するよくあるQ&A

本章では、サービス残業の告発に関して頂くことの多い質問と、それに対する回答をご紹介します。

9-1. 労働基準監督署へ匿名で告発できますか?

労基署への告発(労働関係法令違反事実の申告)は、氏名や勤務先での役職等を秘して行うこともできます。

ただし、匿名での告発をメールや電話等の非対面の方法で行うと、優先順位が低くなる可能性があります。

匿名であっても、客観性の高い証拠をそろえて直接労基署の窓口に出向いて申告を行えば、

緊急性や証拠の信用度が高いと判断して、申告監督を行ってくれる可能性があります。

9-2. 従業員の家族がサービス残業の告発を行うこともできますか?

労基署への申告は、労働者の家族が行うこともできます。

家族が申告を行う場合は、サービス残業の事実を証明する証拠のほか、①本人の勤務先の会社情報、②本人がその会社の従業員であることを立証できる証拠(社員証等)、③本人と代理人の家族関係を証明する証拠(保険証、住民票等)を用意してください。

ただし、労基署は本人からの申告を優先しているため、家族による申告で動いてくれる可能性は、本人が申告を行う場合に比べて低くなります。

もっとも、同じ会社・事業所・部署の従業員の家族が、十分な証拠を揃えて全員で労基署に申告に赴いたような場合は、緊急度が高いと判断して申告監督を行ってくれる可能性があります(実例もあります)。

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10. まとめ

会社に対してサービス残業をやめて、未払いの残業代を支払ってほしいと思っていても、労基署に告発したら会社にばれて解雇やパワハラを受けるのではないかという不安で告発をためらっている方は少なくないと思います。

労基署や、各相談機関は守秘義務を負っているので通報者が会社に知らされることはありません。小規模な会社等で、万一通報者が特定されてしまった場合も、通報者に対して会社が不利益な取り扱いをすることは労働基準法と公益通報者保護法で禁止されています。

ただし、労基署が動いてくれたとしても、個々の労働者を代理して未払い残業代請求を行ってくれるわけではありません。この点、労働問題に詳しい弁護士に相談すれば、労基署への告発から未払い残業代請求まで、必要な手続についてサポートを受けられるとともに、交渉や裁判所手続の代理を任せることができます。

サービス残業の告発を考える方は是非、労働問題を専門とする弁護士にご相談ください。

私たち法律事務所リーガルスマートは、未払いの残業代請求をはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

内田 貴丈
内田 貴丈法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2019年12月 弁護士登録
2020年1月 都内法律事務所にて勤務
2021年8月 法律事務所リーガルスマートにて勤務
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