残業代請求

退職後の未払い残業代請求は可能!事前準備や手順を弁護士が解説

退職後の未払い残業代請求は可能!事前準備や手順を弁護士が解説
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1.未払い残業代は退職後でも請求できるのか

未払い残業代は、退職後でも請求することが可能です。在職中に法定労働時間を超えて勤務した以上、退職により従業員でなくなったからといって、法定労働時間を超えて勤務した事実がなくなるわけではありません。

未払い残業代を会社に請求する場合、残業代が支払われるまでの利息である遅延損害金も別途請求することが可能です。

ただし、以下で述べるとおり、残業代の請求権は(当面の間)3年間で消滅時効にかかるとされているため注意が必要です。

では、実際に退職後に未払い請求をするには、具体的にどのような準備が必要になるのでしょうか?

そこで本記事では、退職後に未払い残業代を請求する場合の事前準備や手順などについて、労働問題に強い弁護士が解説します。

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2.退職後に未払い残業代請求する際に事前に準備すること

退職後に未払い残業代請求をする際には、可能であれば在職中から証拠を準備しておくことが望ましいです。

ここでは、事前に準備しておくべき有効な証拠、証拠がない場合の対処方法について解説します。

2-1.残業代請求時に有効な証拠を集める

会社に未払い残業代を請求するには、労働者側が、実際に残業した証拠を集めて、残業時間や残業代の金額を立証する必要があります。

具体的に、残業代請求に必要になる証拠は、以下のとおりです。

証明する証拠の内容証拠の種類
労働契約締結の事実
残業代の計算根拠とを証明する証拠
労働契約書
雇用契約書
雇用通知書就業規則など
残業の事実を証明する証拠タイムカード
勤務記録
出勤表業務日誌
シフト表
日常連絡の記録パソコンなどのログデータ
残業の内容を証明する証拠上司からの残業命令を証明する記録
業務で使用するカレンダー
スケジュール管理アプリ
残業代の計算根拠を証明する証拠給与明細
源泉徴収票
ICカードの利用明細

これらの証拠は、会社に保管しているものが多いため、退職後に収集することが難しくなります。できる限り、在職中に集めておくことをおすすめします。

2-2.必要な証拠がない場合の対処方法

必要な証拠が入手できない場合は、会社に証拠の開示請求を行うことが考えられます。

会社は、原則として、労働者の名簿やタイムカードなどの勤怠管理ソフトのデータ、賃金台帳などの経理上重要な書類を3年間保管する義務があります。

もっとも、退職した労働者が会社に対して、タイムカードや就業規則などの資料の開示請求をしても会社が応じない場合は少なくありません。

会社が応じない場合には、できるだけ早い時期から弁護士に相談・依頼して、弁護士から会社に証拠の開示請求をしてもらうことが望ましいです。

弁護士に介入してもらうことで、証拠開示請求のみならず会社と直接交渉して、未払い残業代の回収をスムーズに進めることも可能になるでしょう。

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3.退職後に未払い残業代を請求する際の注意点

退職後に未払い残業代を請求するには、具体的にどのような点に注意するべきでしょうか?

ここでは、残業代請求にあたっての注意点について解説します。

3-1.消滅時効

退職後に未払い残業代を請求する場合には、まず、消滅時効が完成していないか確認することが重要です。

消滅時効とは、何もせずにその期間を経過すると、たとえ未払い残業代であっても、時効期間を過ぎてしまうことで残業代が請求できなくなるという制度です。

時効期間が経過すると、残業代を請求したとしても、会社から、消滅時効の完成を理由に、支払を拒否されることが通常です。

残業代請求権の消滅時効は、当面の間3年間と定められています。この残業代の消滅時効は、例えば、月給制である場合は、各月の給料日から起算して、1月ごとにそれぞれ計算します。

したがって、退職後に未払い残業代を請求しようと検討している場合は、できるだけ早い時期に弁護士に相談して残業代を請求することをおすすめします。

3-2.未払い残業代と一緒に遅延損害金も請求可能

未払い残業代を請求する場合には、残業代と共に遅延損害金を請求することが可能です。

未払い残業代の遅延損害金とは、会社が残業代を支払わなかったことによる損害を賠償するための損害金です。

未払い残業代の遅延損害金は、在職中であっても退職後であっても請求することができ、未払い残業代とは別途に請求できる損害金です。

退職後の遅延損害金の利率と計算方法は、以下の通りです。

(1)退職後の遅延損害金の利率

未払い残業代の遅延損害金は、未払い残業代の元金に一定の利率を乗じて算出し、この利率は、在職中と退職後では異なります。

在職中であれば年3%の利率が適用されます。

他方で、退職後の遅延損害金の利率は、年14.6%の利率が適用されます(賃金の支払確保等による法律第6条)。

このように、会社が、退職後も未払い残業代を支払わない場合、より大きな利率で会社に対し、より大きい利率で遅延損害金を請求することができます。

(2)退職後の遅延損害金の計算方法

退職後の未払い残業代の遅延損害金は、以下の計算式により求めることができます。

遅延損害金 = 未払い残業代合計 × 遅延損害金の利率 ÷ 年間日数 × 遅延日数

例えば、未払い残業代が100万円、遅延損害金の利率が14.6%、遅延日数が30日の場合の遅延損害金の計算式は、以下のとおりです。

100万円 × 14.6%  ÷ 365日  × 30日 =  12,000円

なお、残業代は毎月の給料日に支払われるものであるため、複数月にわたり残業代が支払われていない場合には、各給料日ごとの遅延損害金を算出しなければなりません。

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4.退職後に未払い残業代を請求する方法

ここでは、退職後に未払い残業代を請求するための具体的な方法について解説します。

それぞれについて見ていきましょう。

4-1.弁護士に相談・依頼する

退職後に未払い残業代を請求する場合には、まずは、労務問題に詳しい弁護士に相談してみましょう。

退職後に未払い残業代を請求するとなると、どのような証拠が必要になるのか、証拠の種類や収集方法も事案に応じて、異なってきます。

労務問題に詳しい弁護士に相談することで、どのような手順で迅速に未払い残業代を回収できるのか、早い時期からアドバイスすることが可能です。

また、未払い残業代の請求を検討している時点で弁護士に相談すれば、残業代の請求時に必ず行わなければならない残業代の計算も、弁護士が代行できます。

そして、退職後に手元に証拠が乏しい場合であっても、弁護士を通じて、会社に対し、残業代の計算資料を請求し、会社がこれに応じることが考えられます。

4-2.残業代と遅延損害金を計算する

弁護士に依頼することが決まりましたら、弁護士が手元にある証拠や資料を基にして、正確な残業代と遅延損害金の計算を行います。

注意しなければならないのは、残業代の計算は労働時間の種類により、割増賃金が異なることです。

以下は、割増賃金を計算する場合の割増率をまとめたものです。

労働時間の種類時間数割増率
法定内残業
*会社の就業規則の所定労働時間は超えているが、法定労働時間は超えていない
1日8時間、1週40時間以内割増なし
法定外残業
*法定労働時間を超える残業
1日8時間、1週40時間以上25%
月60時間超の時間外労働1か月に60時間以上50%
法定休日労働法定休日の労働時間35%
深夜労働午後22時から翌朝午前5時25%
限度時間内の深夜労働+深夜残業時間外労働+深夜労働の時間50%
法定休日労働+深夜労働休日労働+深夜労働の時間60%

法定外残業の残業代の計算式は、以下の通りです。

残業代 = 時給 × 残業時間 × 割増率25%

未払い残業代の請求には、労働者の1時間当たりの基礎賃金を算出しなければなりません。

1時間当たりの基礎賃金の算出方法は、以下の通りです。

1時間当たりの基礎賃金 = 月給 ÷ 月平均所定労働時間(年間所定労働時間÷12か月)

例えば、1時間当たりの基礎賃金が1,000円、会社の労働時間が9:00〜18:00である場合、18:00~21:00まで残業をしたときの計算式は、以下の通りです。

残業代 = 1,000 × 3 × 0.25 = 3,750

1時間当たりの基礎賃金を算出する際にも、会社の就業規則や雇用契約により複雑な計算を要するケースもあります。

時間や労力を費やす前に、労務問題に詳しい弁護士に相談して、残業代回収のための具体的な対応策をたてることをおすすめします。

4-3.会社に残業代請求書を内容証明郵便で郵送する

未払い残業代の計算後は、弁護士が会社に残業代の請求書を内容証明郵便で郵送します。

内容証明郵便とは、誰が、いつ、誰に、郵便を送付したかを郵便局が証明する制度です。

内容証明郵便には法的な拘束力はありませんが、内容証明郵便で郵送することにより、相手に確実に送達した事実が郵便局には残ることになります。

例えば、既に述べたとおり、残業代請求権は、給与の支払日から3年間で消滅時効が完成しますが、時効完成前に、会社に対し催告することで、時効完成を6ヶ月猶予することができます(民法第150条2項。ただし、会社が支払いに応じない場合には、6ヶ月以内に訴訟提起等を行う必要があります。)。

時効完成前に、内容証明郵便にて残業代を催告することにより、会社の時効完成の主張に対し、根拠をもって反論することが可能となります。

また、弁護士名義で内容証明郵便を送付することにより、会社にプレッシャーを与え残業代の回収を促すことができます。

4-4.会社に証拠開示請求を行う

会社に内容証明郵便を郵送して残業代の請求をした場合でも、証拠がないなどの理由により請求を拒否したときには、弁護士から証拠の開示請求を行います。

弁護士が会社に対して証拠の開示請求を行うことにより、会社が保管しているタイムカードや勤務記録、出勤表、就業規則、労働契約書などを開示させることが可能です。

会社は、労働者の勤務記録を3年は保管しなければなりません。会社は、労働者からの労働時間に関する資料や記録を開示する義務があるとした判例もあります。

しかし、会社が証拠開示請求に応じないケースも少なくありません。

4-5.労働審判・訴訟を提起する

会社が残業代請求に必要な証拠の開示請求に応じない場合、あるいは、未払い残業代の請求に応じない場合には、労働審判を申し立てたり、訴訟を提起して残業代を請求します。

労働審判とは、比較的簡易な手続きで紛争を解決する裁判所の手続きで、裁判官である労働審判官1名と労働問題に精通した労働審判員2名が、労使間に入って話合いを進めます。

裁判に比べ柔軟な解決が期待でき、原則として3回の期日で解決を目指すため、比較的早期に結論が出ることが多いです。

万が一、話合いがまとまらない場合には、調停不成立として調停手続は終了し、裁判所が審判を下すことになります。

当事者のどちらかが、審判に対して異議を申し立てた場合は、そのまま訴訟に移行することになります。

訴訟にて勝訴判決が下されれば、会社は労働者に未払い残業代ならびに遅延損害金を併せて支払わなければなりません(ただし、場合によっては判決に至る前に和解成立となることもあります)。

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5.退職後の残業代請求を弁護士に依頼するメリット

退職後の残業代請求を弁護士に依頼するメリットは、以下の5つです。

それぞれについて見ていきましょう。

5-1.証拠が無くても弁護士に依頼することで請求できる可能性がある

弁護士に依頼する1つめのメリットは、証拠がなくても弁護士に依頼することで退職後の未払い残業代を請求できる可能性があることです。

先に述べたように、弁護士が会社に証拠の開示請求をすることで、たとえ退職後であっても、タイムカードや勤怠記録、就業規則などの開示を請求することが可能です。

さらに、訴訟を提起した場合には、訴訟手続きの中で文章提出命令、文書送付嘱託などの資料開示手続きを利用することにより、証拠を収集することもできます。

したがって、証拠がないことを理由に、未払い残業代の請求を断念する必要はありません。

証拠がない場合でも、弁護士に依頼することで、残業代の回収は可能になります。

5-2.正確な残業代ならびに遅延損害金の計算ができる

弁護士に依頼する2つめのメリットは、正確な残業代ならびに遅延損害金の計算ができることです。

残業代ならびに遅延損害金の計算は、想像以上に複雑です。なぜなら、残業代の正確な計算には、就業規則や給与明細などの個別情報が必要になるからです。

計算を誤り、本来請求できたはずの残業代を請求できないという事態にもなりかねません。

労働問題を専門とする弁護士に依頼することで、こうした個別情報をすべて加味した正確な残業代ならびに遅延損害金の計算が可能です。

5-3.会社との直接交渉を回避できる

弁護士に依頼する3つめのメリットは、会社との直接交渉を回避できることです。

弁護士に請求を依頼することで、会社との交渉をすべて一任できるため、労働者は会社と直接交渉せずに手続きを進めることができます。

さらに、残業代請求に必要な証拠や書類の作成も弁護士に代行してもらうことで、労働者の時間と手間を省くことが可能になります。

5-4.会社が対応するようになる

弁護士に依頼する4つめのメリットは、会社が対応するようになることです。

未払い残業代を会社に請求したものの、会社が何かしらの反論をして請求を拒絶するケースは少なくありません。

しかし、弁護士が介入することで、将来的に労働審判や訴訟に発展する可能性もあるため、会社としても真摯に対応するようになることが多いです。

会社が残業代の請求に応じない場合には、まずは、弁護士に相談してみることをおすすめします。

5-5.労働審判や訴訟に移行した際の手続きを一任できる

早い段階から残業代請求を弁護士に依頼しておくことで、会社が請求に応じずに労働審判や訴訟に移行した場合でも、訴訟手続きを継続して一任することができます。

労働審判などの裁判手続は、労働者が個人で行うこともできますが、専門的な知識を要するため、弁護士のサポートを受けることでより有利に手続きを進めることができます。

また、訴訟に移行した場合、早い段階から弁護士が介入することで状況を熟知しているため、一貫してスムーズな対応が可能になります。

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6.まとめ

今回は、退職後に未払い残業代を請求する場合の事前準備や手順などについて、労働問題に強い弁護士が解説しました。

ご自身で未払い残業代を請求することは、時間的にも精神的にも負担が大きく、計算も大変です。また、資料が手元になく、会社に資料を請求できないまま初動が遅れてしまい、消滅時効の完成により残業代が請求できなくなるといった事態は避けたいところです。

残業代の請求についてお悩みであれば、まずは早い時期に専門家である弁護士に相談することをおすすめします。

私たち法律事務所リーガルスマートは、未払いの残業代請求をはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

内田 貴丈
内田 貴丈法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2019年12月 弁護士登録
2020年1月 都内法律事務所にて勤務
2021年8月 法律事務所リーガルスマートにて勤務
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