不当解雇

リストラとは?言い渡された際の対処法を弁護士が解説!

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1.リストラとは

リストラは、英語で「再構築」を意味する「restructuring」の略で、本来は会社が経営を革新する目的で企業再編や吸収合併などの手法を取ることを意味する言葉です。しかし日本では経営の悪化により事業を縮小したり不採算事業を切り捨てるときに人件費をカットするための人員削減という意味で使われています。リストラは法律的な用語ではなく、厳密な用語の定義があるわけではありません。

解雇が厳しく制限されている日本では、従業員を切り捨てるリストラは簡単には認められていません。違法なリストラをされたときは不当な解雇であるとして会社を訴えることができます。

2.リストラと解雇との違い

リストラと意味が似ている言葉に「解雇」があります。

解雇とは、会社が従業員との労働契約を一方的に解消することをいいます。

解雇には、「懲戒解雇」「普通解雇」「整理解雇」などいくつかの種類があります。

懲戒解雇とは、従業員が問題行為をしたときに就業規則にあらかじめ定められた懲戒規定に基づいて行われる解雇です。懲戒解雇は従業員が横領、ハラスメント、経歴詐称などの不祥事を働いたことを理由として行われることが一般的ですが、従業員が被る不利益が非常に大きいことから、労働法で厳しく規制されています。リストラは会社の都合で行われる人員削減を指しますので、社内の秩序を乱した従業員に対するペナルティとして行われる懲戒解雇とは性質が異なります。

普通解雇とは、従業員が労働契約で定められた義務を果たすことができなくなったときに行われる解雇です。従業員が会社に無断で会社に来なくなり、そのまま音信不通になったときなどに行われるのが典型的です。

解雇の類型の中でリストラに最も近いのが整理解雇です。整理解雇とは、会社が業績不振などの理由で従業員を雇用し続けることが困難になった場合に、一定の要件のもとで会社が一方的に労働契約を解除することを言います。整理解雇も従業員が大きな不利益を被る点では懲戒解雇と変わりありませんので、厳しい要件をクリアしたときに初めて合法となります。

リストラという言葉には、希望退職の募集や、従業員の自主的な退職を促す退職勧奨など、解雇以外の手段による人員整理が含まれる場合もあります。そのためリストラと整理解雇が全く同じ意味で使われているわけではありませんが、この記事ではリストラと整理解雇と同じ意味の言葉として解説します。

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3.リストラとレイオフの違い

レイオフは英語の「lay off」が元になっている言葉で、人件費削減のために従業員を一時的に解雇することを意味します。

業績悪化や経営革新を目的として従業員を解雇し、人件費の削減を狙う点でリストラとレイオフは似ていますが、レイオフが再雇用を前提とする一時的な解雇なのに対して、リストラは再雇用を想定していない点が異なります。

4.リストラとクビの違い

「クビ」という言葉は法律上の用語ではありませんが、「彼は会社の金を横領をしてクビになった」というように解雇と同じ意味で使われるのが一般的です。「会社の業績が悪化して仕事をクビになった」というように、リストラや整理解雇の意味で使われることもあります。

5.リストラ(整理解雇)の要件とは

日本の労働法では解雇が非常に厳しく制限されており、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合のみ限定的に認められています(労働契約法第16条)。整理解雇の場合、次の4つの要件を全て満たさなければならず、一つでも満たしていないと違法になるとされています。

  • ①人員削減を行う経営上の必要性
  • ②使用者による十分な解雇回避努力
  • ③解雇される対象者の選定基準およびその適用の合理性
  • ④手続きの妥当性

5-1.①人員削減の必要性

人員整理を避けることができない経営上の差し迫った理由があることをいいます。経営がきわめて悪化しており、従業員を解雇しなければ状況を打開できないような必要性がなければならず、単に生産性を向上させるために人員整理をしたいというような事情では認められません。

5-2.②の使用者による十分な解雇回避努力

解雇という手段をとる前に、解雇以外の人員削減の手段を用いて解雇をできる限り回避することをいいます。つまり、解雇を避けるための努力を何もせず従業員を切り捨てることは違法となります。

解雇回避努力の例として、残業を削減すること、新規採用を控えること、余った人員を配転したり、関連会社などに出向・転籍させること、非正規の労働者を雇止めしたり解雇すること、一時的に会社を休業させること、希望退職者を募集すること、役員報酬を削減することなどがあります。

5-3.③の解雇の対象者の選定基準およびその適用の合理性

解雇をする必要がある場合であっても、解雇する人数と対象者を決めるにあたって合理的な基準を定め、その基準を公正に適用して対象者を決めなければならないことを意味します。

合理的な基準の例としては、勤務成績、勤続年数、扶養家族の有無や数といった労働者の生活上の打撃などが挙げられます。国籍・信条・社会的身分や、性別、婚姻・妊娠・出産、育児・介護など、違法な差別に当たる基準で解雇することは認められません。責任感、協調性といった抽象的で客観性を欠き使用者の主観で大きく左右される基準や、合理性を客観的に説明できないような基準も許されません。経営不振を理由に経営者が気に入らない従業員を狙い撃ちして退職させるようなことは認められていません。

5-4.④の手続きの妥当性

解雇の対象者、労働組合、労働者の過半数を代表する者と十分に協議し、整理解雇について納得を得るための努力を尽くしていることをいいます。

会社によっては、労働協約や就業規則において解雇をするときには事前に労働組合と協議し、または同意を得ることを要する旨の定めが置かれていることがあります。この場合には、所定の手続きを経ていることが必要となります。

そのような定めがない場合であっても、使用者は労働者や労働組合に対して、人員整理の必要性、解雇回避の方法、整理解雇の時期・規模・人選の方法などについて説明を行い、その納得を得るために誠意をもって協議を行うことが求められます。

このように整理解雇は、やむを得ない理由があり、適正な手続きを経て行われたときに初めて認められています。4つの要件を一つでも満たしていない場合は不当解雇として無効となります。

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6.リストラが始まりそうな会社の特徴

リストラはある日突然言い渡されることもありますが、リストラが行われる会社では前もって何らかの予兆が現れることも少なくありません。リストラが始まりそうな会社の特徴を押さえておくことで、早い段階で準備や対策をすることができます。

リストラが始まりそうな会社は資金繰りが苦しいことから、人件費削減に取り掛かる前に人件費以外の経費削減を推し進めることが多いです。電気代、コピー代、接待費などの経費ついてうるさく言われるようになった場合、会社の資金繰りが厳しくなりつつある可能性があります。

多くの会社にとって、経費の中で最も大きいのが人件費です。固定給を減らすことは会社にとってハードルが高いため、多くの場合、手当や賞与といったカットしやすい給与から削減されます。手当や賞与が減らされることは会社の業績が悪化していることの現れであり、リストラの予兆である可能性があります。

経費削減や手当・賞与の減額で資金繰りが改善しない場合、会社はいよいよ人員削減に着手します。しかし、すでにご説明したとおり日本では解雇が非常に厳しく制限されており、会社が従業員との労働契約を一方的に解除することは簡単ではありません。そこで、解雇ではなく退職勧奨や希望退職の募集により人員削減が試みられることがよくあります。

退職勧奨とは会社が従業員に対して自主的な退職を促すことをいいます。

退職勧奨は解雇と異なり会社と従業員双方の合意の下で労働契約の解消を目指すものです。したがって、双方の合意がある限り法律的に問題とはなりませんが、会社が退職を強要したような場合には違法となることがあります。たとえば、退職に応じない意思を明確にしているのに執拗に退職を求められたり、解雇するだけの理由がないにもかかわらず「退職に応じないと解雇することになる」などと伝えて退職を求めた場合、事実上の解雇として違法とされます。

7.リストラを言い渡された場合の対処法

日本の労働法では従業員の地位が手厚く保護されています。逆に会社は解雇規制という厳しい制約を課せられており、従業員を簡単に退職させることはできません。そのため、会社からリストラを言い渡されたときには泣き寝入りするのではなく、権利を主張して毅然と対処することが肝心です。

リストラを言い渡されたときには次のような対処法が考えられます。

会社からリストラを言い渡された時点で、すでに会社との話し合いは始まっています。会社からリストラすると言われたら、なぜリストラをするのか、なぜ自分が対象となるのかを聞き取り、退職金の増額などの条件がある場合にはその内容も確認するようにしましょう。リストラの理由は、先にご説明した「整理解雇の4要件」にもかかわるため重要です。

話し合いの内容は整理解雇の有効性を争うときに重要になりますので、必ず書面にして渡してもらうようにしましょう。会社が書面化を拒むなど強硬な態度に出る場合は「言った言わない」の争いを避けるため、会話を録音する、自分で書面を作成するなどの対応をおすすめします。

会社は退職の意思があるなら退職合意書にサインをするよう求めてくるかもしれません。しかし、一度退職勧奨の申し出に応じてしまうと後から撤回することは困難です。明確な退職の意思がある場合は別ですが、その場で回答を求められても即答はせず保留にするようにしましょう。

退職の意思がないことを明確にした後も執拗に退職勧奨が行われると違法となりますので、退職の意思がない場合には会社にはっきり伝えるとともに、できれば日付入りの書面を作って会社に渡すことをおすすめします。

「整理解雇の4要件」を満たしていないのに会社をリストラされたり、違法な退職勧奨が行われた場合は、会社に対して慰謝料や未払い賃金を請求できる可能性があります。そのようなときは、法律の専門家である弁護士にできるだけ早く相談し、解決のためにどのような手段が考えられるかアドバイスを受けましょう。詳しくは後ほどご説明しますが、弁護士に依頼すると煩わしい会社との話し合いや裁判手続きを任せることができたり、会社から受け取る額の増額が期待できるなどのメリットがあります。

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8.リストラ(整理解雇)の裁判例

8-1.リストラ(整理解雇)が有効になった裁判例

会社が行ったリストラ(整理解雇)が有効とされ、会社が勝訴した裁判例に、東洋酸素事件(東京高裁昭和54年10月29日判決・労民集30巻5号1002頁・労判330号71頁・判時948号111頁)があります。

この事案は、高圧ガスおよびその製造装置の製造・販売等を行う会社において、会社が工場を閉鎖し、就業規則の「やむを得ない事業の都合によるとき」に該当するとしてある部門の従業員全員を解雇した事件です。

従業員らは整理解雇は無効であるとして訴えを起こし、原審の東京地裁は解雇回避措置が不十分であるなどの理由で解雇を無効としましたが、東京高裁でこれが覆されました。

東京高裁は、整理解雇の4つの要件をそれぞれ検討してリストラ(整理解雇)を合法としました。

「人員削減の必要性」については、「企業の運営上やむをえない必要があり、かつ合理的な措置であった」としてこれを認めました。

「解雇回避努力」については、他の部門に配置転換することは困難だったとして会社の主張を認めました。被告の会社は希望退職者の募集を行っていませんでしたが、当時は求人難の時期であり希望退職者を募集すると同業他社からの引き抜きのおそれがあったこと、整理解雇の対象者の再就職事情が極めて良好だったことなどから、希望退職者を募集すべきであったとはいえないとしました。

「人選の合理性」については、一定の客観的基準に基づく選定であり、その基準も合理性を欠くものではないとしました。

最後の「手続きの妥当性」については、会社の対応はいささか性急かつ強引であったとしながら、介護協議に関する労働協約がなく、部門の廃止の可能性を事前に労働組合に知られていたことなどから、違反しないと判断しました。

8-2.リストラ(整理解雇)が無効になった裁判例

リストラ(整理解雇)が無効になり、労働者側が勝訴した裁判例として、アイレックス事件(横浜地判平成18年9月26日判決・労判930号68頁)があります。

この事件は、プリント配線板等の製造販売業を営む会社が、売上げの低下に伴う収益悪化を理由に、正社員21名を解雇したものです。

解雇の対象者は、人事考課成績の低い者から、管理職および代替性の低い労働者と会社が考える者等を除外する形で選定されていました。また、会社は解雇に先立って、役員報酬や管理職賃金の削減、有期雇用の臨時社員の削減などの措置を行っていた。

裁判所は、「人員削減の必要性」については、会社の売上が大きく減少していたこと、多額の経常損失を生じていることから、経営状態の著しい悪化により人員削減を行う必要性があったとしました。

「解雇回避努力」については、会社が解雇に先立って希望退職の募集をしていないこと、臨時社員の削減も全面的なものではないこと、一時帰休や出向をしていないことなどから、会社がとった措置は十分とはいえないとしました。

「人選の合理性」については、従業員の人事考課を基準として行うこと自体が合理性を欠くとはいえないが、人事考課結果が低いのに解雇の対象から除外される者の選定基準は合理的といえず、解雇の対象者の選定の方法に合理性を是認するのは困難であるとしました。

「手続きの妥当性」については、会社が解雇に先立って行った面談での説明と不十分であるとしました。

このように裁判所は、整理解雇の4要件のうち1つ目の「人員削減の必要性」は認めたものの、その他の点については不十分であるとして、会社が行った整理解雇は無効であると判断しました。

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9.リストラに関するトラブルを弁護士に依頼するメリット

突然会社をリストラされたときは、できるだけ早く弁護士に相談することをおすすめします。リストラに関するトラブルを弁護士に依頼することには重要なメリットがいくつかあります。

そもそも、リストラをされたとき、従業員は会社にどのような法的な請求ができるのでしょうか?

会社が行ったリストラが裁判で無効と判断されると、リストラによって被った精神的な損害について慰謝料を請求できる場合があります。慰謝料は50万円から100万円程度が相場ですが、リストラに際してハラスメントが行われた場合などはさらに高くなることもあります。

さらに、本来であれば受け取れたはずの給与を会社に請求することができます。たとえば3月末時点でリストラされ、9月末に整理解雇が無効だと判断された場合、4月から9月までの6か月間は本来なら従業員の地位に基づいて賃金を請求できたはずなのに、違法な解雇により無給となってしまったことになります。そこで、この間の給与を未払い賃金として請求することができます。これを「バックペイ」と呼びます。賃金や未払いの期間にもよりますが、バックペイは数十万円から数百万円、ときには数千万円になることもあります。

慰謝料やバックペイを受け取るためには必ず裁判を起こさないといけないわけではありません。裁判になればこれらの金銭を支払わなければならないとわかれば、相手は交渉段階で支払いに応じる可能性が高くなります。

このような煩雑な手続きを本人に代わって行うことができるのが弁護士です。

弁護士は、まず法的な知識と経験に基づいてリストラ(整理解雇)の有効性を判断します。リストラが無効である可能性が高い場合には相手に請求するバックペイや慰謝料の額を計算し、会社と交渉を行います。会社が支払いに応じないときの裁判手続きも任せることができます。

弁護士法という法律により会社との交渉を業務として代行することができるのは、弁護士に限られています。弁護士資格を持たない業者に交渉を依頼することは違法なだけでなく、本来であれば回収できたはずの慰謝料やバックペイを回収できなかったり、業者とのトラブルに発展するリスクもありますので、リストラ(整理解雇)をめぐる会社との交渉は必ず弁護士に依頼するようにしましょう。

10.まとめ

リストラ(整理解雇)は会社にとって避けられない場合もあります。しかし、従業員にとって仕事を失くし、生活の糧を失うなど大きな影響があるのがリストラです。また、解雇が厳しく規制されている日本では、リストラが無効となるケースも少なくありません。そこで、リストラされたときは法律的な解決策がないか検討することをおすすめします。

リストラされたときは泣き寝入りするのではなく、法律の専門家である弁護士に相談して法的な手段による解決を目指しましょう。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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