不当解雇

退職勧奨は違法?対処法や断り続けるポイントを弁護士が解説!

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会社を辞めたくないのに、上司から「ここにいても君にできる仕事はないよ」「自分で仕事を探したら?」さらに「何でまだいるの?」等と言われた場合には、会社を辞めるしかないのでしょうか。

本記事では、退職勧奨について、特に会社を辞めたくない従業員に対して会社が退職勧奨を繰り返した場合の対処法を労働問題に強い弁護士が解説します。

目次

1.そもそも退職勧奨とは

退職勧奨とは、企業側が従業員の自発的な退職を勧めることです。

退職勧奨は解雇と同じであると誤解されることがありますが、両者には明確な違いがあります。

そこで、まず本章では、そもそも退職勧奨とは何か、解雇とどのように違うか等を解説します。

1-1. 解雇との違い

退職勧奨は、「労働契約を終了させようとする行為」という点で解雇と共通しています。

退職勧奨と解雇とは、

  • ①労働契約を終了させる上で労働者の合意が必要か否か 
  • ②労働法上の明文の規制が存在するか否か

の点で異なります。

①解雇は、使用者の一方的な意思表示に基づき労働者の同意を必要とせずに労働契約を終了する行為です。

これに対して、退職勧奨は労働契約終了に対して労働者が合意していることが必要です。

そのため、解雇をされた労働者は、その無効を争わない限り、同意がなくても雇用契約が終了するのに対し、退職勧奨を受けた労働者は、同意をしない限り、雇用契約が終了することはありませんから、その会社に残ることが可能です。

解雇は使用者の一方的な意思により、従業員からその地位を奪う行為であるため労働基準法と労働契約法を中心に様々な規制が存在します。

まず労働基準法第20条では、使用者が労働者を解雇する条件として事前の予告とともに、予告をしない場合には賃金30日分の解雇予告手当を支払うことを義務付けています。

また、労働契約法第16条は解雇そのものに「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が必要であると定めています。

さらに、労働基準法第19条は業務上の疾病や負傷で休業している労働者、産前産後休暇中の女性労働者に対しては休業期間中及び復職後30日間解雇できないと定めています。

この他にも、男女雇用機会均等法・育児介護休業法・労働組合法等に解雇を禁止する規定が存在します。

これに対して退職勧奨はあくまで労働者の自由意志に基づくことを前提とするため、会社が従業員に退職を勧める行為が「退職勧奨」の範囲内と認められる場合は法的な規制は存在しません

1-2. 退職勧奨も違法となる場合がある

このように、退職勧奨はあくまで従業員の自由な意思に基づく退職を促すものです。

しかし、会社の従業員に対する働きかけが強引に退職を迫るようなものである場合は「退職強要」として違法となる可能性があります(なお、「退職勧奨」や「退職強要」は、法律上の用語ではありません。本記事では、違法な「退職勧奨」を以下、「退職強要」といいます。)。

退職強要に対しては、退職の意思表示の無効を主張したり、損害賠償や慰謝料を請求することが考えられます。

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2. 会社が退職勧奨を行うよくある理由

会社が従業員に対して退職勧奨を行う理由としてよくあるのは以下のようなものです。

2-1. 従業員の能力不足や勤務態度不良

明らかに能力不足であったり、無断欠勤を繰り返すような従業員であっても、不当解雇で訴えられるリスクもありますので、解雇をすることには慎重な検討を要します。

一方で、退職勧奨であれば、労働者の同意を前提としていますし、同意を得るための労働者のメリットとして、以下の点を提示することが可能です。

まず、退職勧奨であれば、解雇の場合は支給されない特別退職金を支給して再就職までの生活費を確保させることができます。

また、失業保険受給にあたって特定受給資格者(雇用保険法第23条2項2号)として、自己都合退職者よりも有利な条件で受給できるようにするという配慮を示すことができます。

そのため、このような場合には、解雇より退職勧奨がなされることが一般的です。

2-2.精神疾患等で休職中の従業員に症状改善の見込みがない場合 

労働基準法第19条は業務上の疾病や負傷で休業している労働者に対して、休業期間中及び復職後30日間解雇することを禁止しています。

また、復帰後30日後以降であっても、仕事が原因でうつ病や適応障害を発症した労働者を解雇することは不当解雇になる(労働者側から訴えられる)可能性があります。

就業規則で休職期間が満了した場合に退職扱いにすると定めている会社は多くあり、これ自体は違法ではありません。

しかし、休職した従業員に対して自主退職(自己都合退職)扱いにするよりも、退職勧奨による退職とすることで特別退職金を支給したり、失業保険受給にあたって特定受給資格者(雇用保険法第23条2項2号)として自己都合退職者よりも有利な条件で受給できるようにするという配慮を示すことができます。

そのため、このような場合には、解雇より退職勧奨がなされることが一般的です。

2-3. 経営悪化・事業再編等の経営上の都合

経営悪化や事業再編等の会社経営上の都合により、やむを得ず人員を整理する必要が生じた場合にも、退職勧奨が行われることが考えられます。

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3. 退職勧奨は拒否できるのか

退職勧奨は、あくまで労働者本人の自発的な意思による退職を促す行為です。労働者側には退職勧奨に応じる義務はなく、退職したくないのであれば拒否する権利があります。

「退職しなければ解雇する」と脅されたり、その後に実際に解雇されたような場合は違法な退職勧奨=退職強要や不当解雇として、退職を争うことができる可能性があるでしょう。

4. 退職勧奨が繰り返されるケース

退職勧奨を断っても繰り返されるケースとしては、会社がその従業員を問題社員扱いした場合です。

「問題社員」とは、能力不足・勤務態度不良等、会社にとって好ましくない、できれば辞めてもらいたい従業員をいいます。

問題社員に対しても解雇することは容易ではないので、代わりに退職勧奨を繰り返し行って辞めさせようとします。

5. 何度も繰り返される退職勧奨の違法性について

従業員に圧力をかけて退職に追い込むことは「退職強要」(違法)となる場合があります。

退職強要に対しては、不法行為に基づく損害賠償請求(民法第709条)や慰謝料請求(民法第710条)を行うことが考えられます。

本章では、何度も繰り返される退職勧奨の違法性について解説します。

5-1. 退職勧奨が違法な退職強要となる場合

  • ①退職届の提出を1日に何回も迫る
  • ②退職させるための面談を高頻度又は長時間に渡って行う
  • ③従業員の人格を否定するような言葉を浴びせたり、退職しなければ減給する・降格させる等の不利益を与える旨の告知を行う

5-2. 退職勧奨を違法な退職強要にあたると判断した裁判例

退職勧奨が退職強要として違法であると判断された裁判例には、以下のものがあります。

(1)東京高等裁判所2012[H24]年11月29日付判決

自己都合退職を拒否した航空会社従業員に対し、上司が長時間面談を行い「懲戒(解雇)になると、会社辞めさせられたことになるから、それをしたくないから言ってる」「この仕事には、もう無理です。記憶障害であるとか、若年性認知症みたいな」等の言葉を浴びせたことが「退職強要」に該当すると認められました。

なお、原告にも度重なる仕事のミスや寝坊による遅刻等の落ち度があったことが考慮され、従業員による慰謝料請求500万円に対して会社に20万円の支払いを命じる判決が下されました。

(2)最高裁1980[S55]年7月10日付判決

自主退職を拒否した高校教員に対し、学校側が10回以上「職務命令」として市教育委員会への出頭を命じたり、優遇措置なしで退職するまで勧奨を続けると申し向ける等の執拗な退職勧奨を行ったことが退職強要にあたると判断されました。

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6. 退職勧奨を繰り返されるが、辞めたくない場合の対処法

会社に執拗に退職勧奨されても、どうしても会社を辞めたくない場合には、以下の方法をとることができます。

6-1. 配達証明付き内容証明郵便による書面で拒否の意思を示す

会社が退職勧奨をやめない場合には、退職勧奨に応じない旨を記載した通知書を配達証明付き内容証明郵便で送付するという方法があります。

通知書は、会社の代表取締役宛てに、退職勧奨に応じる意思がないこと、これ以上の退職勧奨を控えてほしいという内容で、日付と自分の住所氏名を記載してください。

6-2. 弁護士から通知書を送付してもらう

通知書は、弁護士に作成・送付を依頼することもできます。

弁護士が通知書を作成・送付する場合、「今後の貴社との話し合いは代理人が行う」「本件については今後、本人に連絡しないでください」という記載を入れることができます。

また、退職勧奨が継続された場合には法的手続をとる旨を記載します。

これらの記載を入れた通知書を弁護士が送付することにより、会社からの本人に対する退職強要は止まることが多いでしょう。

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7. 退職勧奨を断り続ける際のポイント

退職勧奨を繰り返すことは、それ自体が違法な退職強要にあたる可能性が高いと言えるでしょう。

しかし、従業員側の態度や言葉遣い等によっては、断り続けても執拗に退職勧奨を繰り返されることがあります。

本章では退職勧奨をやめさせるためのポイントを解説します。

7-1. 断る意思を丁寧かつ明確に示す

まず、退職勧奨に対して承諾する義務がない以上、断る意思を明確に示すことが大切です。

退職勧奨を繰り返されると、心理的に「それほど辞めさせたがっている会社に居続けても待遇も上がらないだろうし、将来に希望が持てないから転職したほうがよいのではないだろうか」等という迷いが出てきて、それが態度や言葉遣いに現れてしまいます。

「迷い」を見せることで会社側が退職勧奨をやめることはまずありません。退職の条件を良くする等によって、より退職の意思を持たせるように仕向けてきます。

ただし、断る権利があるといっても、感情的になって強い言葉や素振りで拒否することは逆効果になるおそれがあります。

「そのような協調性に欠ける者をこれ以上うちの会社で雇えない」等と理由をつけて、解雇を言い渡すといったことになりかねません。

トラブルに発展した場合には不当解雇や退職強要で会社を訴えることができますが、その会社で働き続けることは事実上難しくなることも多いでしょう。

退職勧奨に応じる意思がない以上、できる限り冷静に、かつ明確に退職勧奨を断る意思を示すようにしてください。

7-2. 「この会社で働き続けたい」ことを強調する

経営悪化による人員削減のような、会社都合で従業員数を減らさなければならないことが明白な場合を除いて、退職勧奨を断る場合は「この会社で働き続けたい」と伝えることがポイントです。

退職勧奨に応じないことを明確に示しつつ、その理由として「仕事にやりがいを感じていて、上司や同僚との出会いにも感謝している。だからこの会社でこれからも働き続けたい」等、仕事の内容や職場環境に対するポジティブな感想を合わせて述べることで、会社側は退職勧奨をやめる可能性があります。

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8. 退職勧奨を弁護士に相談、依頼するメリット

本章では、退職勧奨された場合に対処法を弁護士に相談、依頼するメリットについて解説します。

8-1. 退職勧奨されて困ったらすぐ相談できる

退職勧奨は、会社側にとっては解雇のような法的な規制を受けずに従業員を辞めさせることができる手段です。解雇通知に比べるとあいまいな言葉が使われることも多く、また昨今では労働者側に退職勧奨と気づかせずに巧妙なやり口で退職させようとするケースが増えています。

逆に、パワハラ的な手段で退職勧奨された場合に「解雇された」と誤解している可能性もあります。

このような場合、労働者としては、解雇された(と思っている)ために、出社しないという状況となるわけですが、会社としては解雇をしていない(できない)のに労働者が無断で欠勤し続けているなどという理屈がたつため、退職勧奨を止めたい・復帰したいと争っても、別の理由(無断欠勤)にて解雇されてしまう可能性があります。

そのため、会社側が面談を申し入れてきたり「今後のキャリア」について何らかの声掛けを行ってきたような場合(すなわち退職勧奨ととらえられる対応をしてきた場合)は、早い段階で弁護士に相談することが大切です。

労働問題に強い弁護士に相談することで、退職勧奨を受けたり、あるいは「自分に会社を辞めさせようとしているのではないか」と疑わせるような取り扱いを受けた場合の適切な対処法のアドバイスを受けることができます。

8-2. 行使できる権利と証拠の収集方法について教えてもらえる

また、条件次第で退職勧奨に応じる意思がある場合の特別退職金についてや、会社に対して行うことが可能な請求や、それを行うための証拠の収集方法についてアドバイスを受けられます。

(1)特別退職金の交渉について

退職勧奨を行う場合には、通常の退職金とは別に「特別退職金」が支払われることがあります。このような労働者が退職勧奨に応じやすくするために示される退職条件を「退職パッケージ」などと言うことがあります。

弁護士に相談することで、退職勧奨に応じる場合の特別退職金の増額等の交渉についてのアドバイスを受けたり、あるいは交渉の代理を依頼することができます。

(2)会社側の行為が退職強要にあたることを立証するための証拠収集方法

また、退職勧奨が違法な退職強要にあたることを主張して慰謝料や損害賠償請求を行う場合は、会社側の行為が退職強要にあたることを立証するための証拠が必要です。

弁護士に相談することにより、立証に必要な証拠の収集方法を教えてもらうことができます。

8-3. 会社との交渉を任せられる

退職勧奨が強迫的な手段によって行われたために会社に対して慰謝料を請求したい場合等、退職勧奨に関連したトラブルを解決したい場合には、会社と交渉する必要があります。

しかし、労働者個人が会社と交渉して請求を認めてもらうことは簡単ではありません。

会社が対応してくれなかったり、会社側が交渉を弁護士に依頼する可能性もあります。

会社との交渉を弁護士に依頼すれば、会社側がどのような対応をとった場合でも対等に交渉することができます。

また、退職勧奨が強迫的な手段によって行われている場合には、交渉代理の依頼を受け次第、弁護士が会社に対して「今後の連絡は当弁護士宛てにお願いします」と記載した受任通知を送付します。

これにより、会社による執拗な退職勧奨行為を停止させることが期待できます。

8-4. 労働審判・訴訟等裁判所が関わる手続きもすべて任せられる

会社との交渉が成立しなかった場合には労働審判や訴訟等、裁判所が関わる手続によって請求を行います。

労働審判や訴訟も、交渉と並んで労働者が単独で行うことが困難な手続です。労働者としては、これらに時間と労力を費やすよりは早く再就職を決めたり、再就職した会社で働きたいところでしょう。

裁判所が関わる手続についても、弁護士に代理人を依頼していればすべて任せることができます。

交渉や労働審判・訴訟等の代理を依頼すると費用はかかりますが、最近では着手金不要の成功報酬型の料金体系を採用している法律事務所も多くあります。

また、多くの法律事務所が初回相談または初回相談の一部の時間を無料で行っています。この無料相談を利用して、費用や請求実現の見込み等の見通しを立てることが可能ですので、気軽に活用してみましょう。

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9. 退職勧奨に関するよくあるQ&A

本章では、退職勧奨に関して頂くことの多い質問と、それに対する回答をご紹介します。

9-1.退職勧奨の面談で録音禁止といわれた場合、面談を録音することは違法になりますか?

一般論として、法律上明確に、会社内での録音を禁止するものはありません。

そのため、秘密録音が違法となるかどうかは、その行為態様や必要性、録音されることによって会社が被る損害の大小などを総合的に考慮して判断されると言えるでしょう。

また、違法な手段によって収集された証拠が、裁判上有効であるのかという問題もあります。

個別具体的な状況に応じて慎重な判断が必要とされますので、判断に困るときには事前に弁護士に相談するのが良いでしょう。

9-2. 退職勧奨に応じて退職した後で、違法な退職強要にあたるとして復職を求めることはできますか?

違法な退職強要に基づきなされた退職の意思表示は無効であり、退職の意思表示が無効であれば、従業員たる地位を失っていないとして、復職を求めることは可能です。

もっとも、外形上、退職届を提出するなど本来自由な意思によって表明する退職の意思表示がなされているとすれば、これを覆す主張・立証活動を行わなければならないため、復職が認められるためのハードルは決して低くありません。

なお、一方で、会社側の退職勧奨の態様によっては、復職までは認められない(求めない)ものの、退職強要が不法行為にあたるとして損害賠償請求が認められることもあります。

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10. まとめ

退職勧奨はあくまで従業員に対して自発的な退職を勧めるものですが、特に能力不足や勤務態度不良の従業員に対しては繰り返し行われることがあります。

しかし、繰り返し退職勧奨が行われても会社をやめたくない場合は、明確に拒否の意思を示すとともに、会社に対してこれ以上の退職勧奨を控えるよう通知書を送付する等の対処をすることができます。

執拗な退職勧奨をやめさせたい方は、対処法について弁護士にご相談ください。

私たち法律事務所リーガルスマートは、解雇・退職勧奨をはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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