不当解雇

解雇理由証明書とは?従業員向けに重要性や注意点を弁護士が解説

解雇理由証明書とは?従業員向けに重要性や注意点を弁護士が解説
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「会社を解雇されてしまった。解雇されるような理由も思い当たらないし会社がリストラを進めているようにも見えない。明らかに不当だと思うが、解雇の理由を教えてもらえなかったのでどうしたらよいかわからずに困っている」

解雇されてしまった従業員が不当解雇を争うためには、解雇が違法であることを証明する証拠が必要です。

そして、解雇が違法であることを争う中で、重要な証拠のひとつが会社が発行する「解雇理由証明書」です。

本記事では、会社の従業員の方に向けて、解雇理由証明書とはどのような書類であるか、及び解雇理由証明書の重要性や請求方法、請求する上での注意点などを労働問題に強い弁護士が解説します。

目次

1. 解雇理由証明書とは

解雇理由証明書は、会社が労働者を解雇する場合にその解雇理由を具体的に記載した証明書です。

労働基準法第22条2項により、解雇予告日から退職までの間に労働者が解雇理由証明書を請求した場合には、会社が遅滞なくこれを交付することが義務づけられています。

本章では、解雇理由証明書と名称や内容が似ている他の証明書・通知書との違いを解説します。

1-1. 解雇理由証明書と退職証明書の違い

(1)共通点

解雇理由証明書と退職証明書とは、どちらも労働基準法第22条で「労働者が請求した場合には遅滞なく交付しなければならない」とされている点で共通します。また、それゆえに労働者が請求したのに交付されなかった場合は事業者が30万円以下の罰金を科される可能性がある(労働基準法第120条1項)ことも同様です。

(2)相違点

退職証明書は、労働者が退職した事実を証明する書類です。退職の理由が解雇である場合も含まれますが、解雇に限られない点で解雇理由証明書と異なります。

また、記載すべき事項が労働者が請求した事項に限られる(労働基準法第22条3項)点では両者は共通しますが、記載事項の内容自体は異なっています。

さらに、両者の違いをまとめると以下のようになります。

解雇理由証明書退職証明書
対象解雇の場合(即時解雇の場合を除く)解雇及び解雇以外の退職事由による場合(即時解雇の場合を含む)
請求可能な時期解雇予告時から解雇日の2年後まで
※解雇予告日以降に別の理由で退職した場合は交付不要(労働基準法第22条2項但書)
解雇日またはそれ以外の事由による退職日から2年間
証明事項解雇理由・在職期間
・在職中に担当した業務の種類
・在職中の地位
・賃金
・退職理由
のうち従業員が記載を請求した事項
根拠条文労働基準法第22条2項労働基準法第22条1項
労働者の事実上の使用目的・解雇の有効性の判断材料
・労働審判・訴訟での証拠資料
・社会保険の変更手続
・転職先の会社での入社手続

1-2. 解雇理由証明書と解雇予告通知書の違い

労働基準法第20条により、会社には、労働者を解雇する場合に少なくとも30日前までに解雇予告をすることが義務づけられています。この解雇予告の書面が解雇予告通知書です。

解雇予告通知書の書面上にも解雇理由が記載される場合がありますが、解雇理由の記載は義務づけられていません。

すなわち、役割が「解雇の予告」にある点で、解雇理由証明書と異なります

1-3. 解雇理由証明書と解雇通知書の違い

解雇通知書は、会社が労働者に解雇を伝える際に交付する書面です。解雇通知は書面で行う義務はなく、口頭で行うことも認められますが、通常は書面で行われます。

解雇通知書は、会社が労働者に交付するのが「解雇の時点」に限られる点で解雇理由証明書と異なります。

1-4. 解雇理由証明書と離職票の違い

離職票は、ハローワークで失業保険の給付申請を行うときに必要となる公的書類です。

離職票には退職理由が記載される点で退職証明書と共通し、退職理由が解雇である場合には解雇理由証明書と共通します。

しかし、これは退職理由が自己都合であるか会社都合であるかによって失業保険の受給開始日や受給期間が異なるために、それを区別する目的で記載されるものです。

従って、公的機関への提出を前提とする点、及び発行目的において解雇理由証明書や退職証明書と異なります。

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2. 解雇理由証明書の重要性について

解雇理由証明書は、解雇が法的に有効であるか否かを検討する上で非常に重要な資料となります。

なぜなら、法律上、会社が労働者を解雇するにあたっては解雇理由に客観的合理性と社会的相当性が認められなければならない労働契約法第16条)とされており、この合理性・相当性を判断する上で、解雇理由証明書が重要な意義を持つからです。

また、会社に対して復職を求めたり、未払賃金や慰謝料等を請求するための交渉を弁護士に依頼した場合、会社側は解雇当初とは別の解雇理由を主張してくる場合があります。

これ自体は違法ではありませんが、裁判になった場合には「解雇理由証明書に記載しなかった理由を後から追加した」とみなされ、裁判官に対する心証に影響を与えます。

後で理由を追加することを防ぐ、あるいは追加した理由の説得力を失わせるためにも、解雇理由証明書には意義があるといえます。

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3. 解雇理由証明書は何に使うのか

解雇理由証明書を使用する目的について、法的な定めはありませんが、事実上は従業員が会社に対して解雇の無効を主張する場合の証拠として使用します。

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4. 解雇理由証明書の請求方法

解雇理由証明書は、解雇予告をされた日から請求できます。会社が書式を定めている場合は書面で請求できますが、口頭で請求することもできます。ただし、拒否された場合や交付を受けられないまま解雇されてしまった場合にその違法性を証明するために、「解雇予告証明書を請求した事実」を証拠として残す必要があります。

そこで、内容証明郵便を利用して請求することをお勧めします。

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5. 解雇理由証明書の注意点

会社に対して解雇理由証明書を請求する場合、以下の点に注意する必要があります。

5-1. 解雇理由証明書には請求できる期間に制限がある

解雇理由証明書(及び退職証明書)の請求権は、解雇日から2年で時効消滅します(労働基準法第115条・1999[H11]年3月31日基発※第169号)。従って、解雇の日付から2年経過すると解雇理由証明書を請求できなくなるので、この期限以内に請求する必要があります。

※基発:厚生労働省労働基準局長名義で発行する通達

5-2. 必ず解雇理由の記載を請求する

労働基準法第22条3項は、解雇理由証明書には「労働者の請求しない事項を記載してはならない」と定めています。

従って、解雇の有効性の判断の根拠や証拠として解雇理由証明書を請求する場合には、必ず解雇理由の記載を請求してください。

解雇理由証明書の解雇理由については、厚生労働省のテンプレートによれば以下の6つの選択肢があり、それぞれについて「具体的には(空欄)によって、当社が(空欄)となった/あなたが(空欄)したことによる」という形で空欄に具体的理由を記載する体裁になっています。

  • ①不可抗力による事業継続不能
  • ②整理解雇(事業縮小等の会社都合)
  • ③懲戒解雇(職務命令に対する重大な違反)
  • ④懲戒解雇(業務に関する不正行為)
  • ⑤普通解雇(勤務態度不良・成績不良等)
  • ⑥その他

参照:厚生労働省 解雇理由証明書様式

会社が発行する解雇理由証明書の様式に、この様式のような具体的理由を記載する空欄があったとしても、具体的理由を記載してもらうためには労働者側がそれを請求する必要があります。

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6. 解雇理由証明書から発展する労働トラブルとは

解雇理由証明書に関連して起こりうる労働トラブルには以下のようなものがあります。

6-1. 会社が解雇理由証明書を発行してくれない

会社は、労働者が解雇理由証明書の発行を請求した場合は「遅滞なく」発行することが労働基準法第22条2項で義務づけられています。

この「遅滞なく」の具体的期間について明文の規定はありませんが、おおむね1週間~2週間程度と解されています。

従って、請求から半月程度経過しても解雇理由証明書を発行しなかった場合には、会社が発行を拒否したものと考えられます。

この場合は、労働基準法第22条違反案件として労働基準監督署に告発(申告)することを検討してみても良いかもしれません。

6-2.解雇理由証明書に解雇の理由の記載を要求したのに記載してもらえなかった

労働基準法第22条3項は、解雇理由証明書には「労働者の請求しない事項を記載してはならない」と定めています。これは逆にいえば、労働者が請求した事項については記載しなければならないことを意味するといえます。

「請求事項」が問題になるのは事実上、解雇理由についてです。また、通常は解雇理由証明書の様式上、解雇理由の記載自体は手間がかからずにできます。

解雇理由の記載がないために、具体的理由だけでなく解雇の種別(懲戒解雇・普通解雇・整理解雇)もわからないとすれば、退職金請求の可否や失業手当の受給条件等が確定せず、労働者が不当に不利益を受けることになります。

従って、この場合は会社に対して解雇理由の記載を請求してください。解雇理由記載の請求は、内容証明郵便によって書面で行うことをお勧めします。また、書面の作成を弁護士に依頼する方法もあります。

解雇理由の記載の請求書面作成を弁護士に依頼することで、会社側が記載した解雇理由に納得がいかなければ、会社に対してできる請求があるか同じ弁護士に相談したり、会社との交渉を依頼することができます。

6-3. 解雇予告時に伝えられた解雇理由と解雇理由証明書に記載された解雇理由が違っていた

会社は、労働者の請求に応じて、労働者が請求した内容を記載した解雇理由証明書を遅滞なく交付すれば、労働基準法第22条2項の解雇理由証明書交付義務を果たしたことになります。

しかし、解雇理由証明書に記載された解雇理由が、事前に口頭で伝えられた解雇理由と異なるものだった場合、会社は労働基準法第22条2項で定められた解雇理由証明書の交付義務を果たしたことになりません。

この場合、会社に対して解雇理由証明書の解雇理由の記載の訂正を求めることができます。

会社に訂正を求めても応じない場合は労働基準法第22条2項違反となるので、労働基準監督署に相談することも検討してみましょう。

また、訂正を求める旨の通知書の作成を弁護士に依頼して、内容証明で送付するという方法もあります。

ただし、これらの方法により争うとしても、口頭で別の解雇理由を告げられたことをどのように立証するかが、ポイントとなるでしょう。

6-4. 解雇理由証明書に記載された解雇理由に納得がいかない

解雇理由証明書の発行を受けたが、記載された解雇理由が身に覚えのないものであったり、あるいは解雇理由に対して解雇という処分が重すぎると感じた場合には、解雇そのものが違法である可能性があります。

会社が従業員を解雇するにあたっては、解雇する理由に客観的合理性と社会的相当性があることが求められます(労働契約法第16条)。

解雇理由に納得がいかない場合は、会社に対して解雇の撤回と復職・バックペイ(解雇以降に受けられたはずの賃金)を求めるため、または解雇を争わずに解決金を請求するために会社と交渉する必要があります。

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7. 解雇理由証明書から発展する労働トラブルを弁護士に相談、依頼するメリット

本章では、「解雇理由証明書を発行してくれない」「解雇理由に納得がいかない」といった解雇理由証明書から発展する労働トラブルについて弁護士に相談、依頼するメリットを解説します。

7-1. 解雇理由証明書発行を拒否された場合の対処法を相談できる

前章で述べたように、解雇理由証明書を請求してからおおむね半月程度経過しても会社が発行しなかった場合は、労働基準監督署に申告することができます。

労働基準監督署が申告を受けて会社に立ち入り調査を行い(申告監督)、解雇理由証明書を発行するように勧告(是正勧告)を行った場合には、是正勧告で定められた期限までに発行しなければ会社と代表者が刑事罰を受ける可能性があるので発行してもらえる可能性が高くなります。

しかし、労働基準監督署は重大な労働基準関係法令違反の案件を優先的に扱うため、必ず

申告監督を行ってくれるとは限りません。また、申告監督から指導・勧告を行ってくれるとしても、申告してから会社側が是正措置(解雇理由証明書発行)を行うまでには1~2か月程度時間がかかります。

解雇そのものが不当であることを主張したい場合は、労働基準法第22条違反として労基署に告発するとともに、できるだけ早く解雇の違法性を証明できる証拠を集める必要があります。

この点、解雇理由証明書の発行が遅いと思った時点で弁護士に相談することで、証拠の収集方法等の対処法について的確なアドバイスを受けることができます。

7-2. 解雇理由をもとに会社に対して行う請求について相談できる

解雇理由証明書に記載された理由が労働者にとって不当である場合は、解雇の効力を争う場合は復職やバックペイの請求、争わない場合は主に解決金の請求を行うことができます。

しかし、労働者個人ではどのような請求をどの程度(金額等)行うことができるか、請求が通る見込みはあるか等を判断するのは容易ではありません。

解雇理由証明書の発行を受けた時点で労働問題を専門とする弁護士に相談することで、解雇理由に照らして会社にたいしてどのような請求を行うことができるかを教えてもらえます。

7-3. 会社との交渉を任せられる

会社に対してどのような請求を行うかを決めても、労働者個人が会社を相手に交渉して請求を認めてもらうことは困難です。会社が取り合ってくれないことも多く、また顧問弁護士が出てくる可能性もあります。

弁護士に交渉の代理を依頼することによって、会社側と対等に交渉することができます。

7-4. 労働審判や訴訟手続の代理を任せられる

会社との交渉が成立しなかった場合は労働審判を申し立てるか、会社相手に訴訟を提起することになります。しかし、交渉や証拠収集とあいまって、労働者個人がこれらの法的手続きを行うことには多大な負担がかかります。

労働問題を専門とする弁護士に依頼することで、労働審判や訴訟手続きについてもすべて任せることができます。

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8. 解雇理由証明書に関するよくあるQ&A

本章では、解雇理由証明書に関して頂くことの多い質問と、それに対する回答をご紹介します。

8-1.解雇理由証明書を請求しても会社が出してくれない場合は、どうすればよいですか?

解雇予告された労働者が会社に対して解雇理由証明書を請求した場合、会社が発行を拒むことは原則として違法(労働基準法第22条2項違反)となります。

ただし、請求した日が解雇日(退職日)を過ぎている場合は、発行しなくても違法ではありません。

従って、解雇予告された日から解雇日の間に請求した場合で、①会社に発行を拒否された場合、あるいは②請求から半月以上すぎても発行しない場合は、労働基準監督署に申告することができます。

また、解雇理由が明確にわからない状態でも、解雇自体が違法と思われる場合は、できるだけ早く弁護士に相談することをお勧めします。

8-2.即日解雇された場合、解雇理由証明書をもらうことはできますか?

即日解雇された場合は、解雇理由証明書をもらうことはできません。

解雇理由証明書は、解雇予告から解雇日の間に発行する書類です。即日解雇の場合は、解雇予告期間が存在しないため、解雇理由証明書を発行できません。

ただし、退職証明書については、即日解雇の場合でも発行が義務づけられているので(労働基準法第22条1項)、請求して発行を受けることができます。

8-3. 労働基準法第22条の「遅滞なく」は、具体的には請求から何日くらいの間ですか?

会社が解雇理由証明書の請求を受けた場合の「遅滞なく」が具体的にどのくらいの期間を意味するかについては、明文の規定はありません。

法律用語として使われる「遅滞なく」は「事情が許す限り早く」を意味すると解されています。

これは、最も早急な対応を要求する意味の「直ちに」に比べると求められる対応のスピードは速くないのですが、だいたい1週間~2週間以内に対応してくださいという意味だと考えられます。

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9. まとめ

解雇理由証明書は、解雇予告を受けた労働者が請求した場合に会社が発行することを義務づけられている書類で、解雇が法的に有効であるか否かを検討する上で事情に重要な資料です。

また、解雇理由証明書の交付を受けていれば、不当解雇として訴訟によって争いになった場合に会社が解雇理由証明書の記載とは別の解雇理由を主張したとしても「解雇理由証明書に記載しなかった理由を後から追加した」とみなされ、裁判官に対する心証に影響を与える可能性があります。

このように、後で理由を追加することを防ぐ、あるいは追加した理由の説得力を失わせるためにも、解雇理由証明書には意義があるといえます。

従って、解雇を予告された場合には、まずは解雇理由証明書の発行を請求してください。

他方、解雇理由証明書の発行請求に対する会社側の対応や、記載された解雇理由をめぐってトラブルになることもあります。

解雇理由通知書の問題も含めて、会社を解雇されたためにどうすればよいか悩んでいる方は是非、労働問題を専門とする弁護士にご相談ください。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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