慰謝料請求したい

不倫されて慰謝料請求できる条件は?流れや注意点を弁護士が解説

不倫されて慰謝料請求できる条件は?流れや注意点を弁護士が解説
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配偶者が不倫をしていた場合、配偶者や不倫相手に対し慰謝料を請求することはできるかどうか、慰謝料請求できない場合はあるかどうかなど、気になることも多いのではないでしょうか。本記事では、不倫された側の配偶者が慰謝料請求するために必要な条件、慰謝料請求の手続きの流れや慰謝料請求する上で注意すべき点等について解説します。

目次

1. 不倫慰謝料とは

不倫慰謝料とは、既婚者が配偶者以外の相手と性的関係を伴う交際(不貞行為)を行った事実等があった場合に発生する慰謝料を指します。

慰謝料(民法第710 条)とは、第三者による不法行為(故意または過失に基づいて他者の権利または法律上保護される利益を侵害する行為)によって受けた精神的苦痛に対する賠償金を指します。

不倫という言葉自体は法律用語ではありませんが、似た言葉である「浮気」との違いとして配偶者以外の相手との交際が性的関係を伴う場合が「不倫」にあたると考えられています。

また、「不倫」は、裁判上の離婚請求が認められる「不貞行為」(民法第770条1項1号)と同じ意味であるとされることが多いように思います。なお、不倫慰謝料の保護法益が何かという議論はまだ完全に決着をみたわけではありませんが、東京地方裁判所平成17年11月15日判決は、「婚姻共同生活の平和の維持によってもたらされる配偶者の人格的利益」であると示しています。

2. 不倫慰謝料を請求できる条件

既婚者が配偶者以外の相手と性的関係を伴う交際をした場合、その既婚者は原則として他方配偶者に対して不法行為に基づく損害賠償(慰謝料支払)義務を負います。

ただし、他方配偶者が必ず慰謝料を請求することができるわけではありません。また、離婚を求める場合か否かによらず、不倫相手に対しても慰謝料請求できる場合がありますが、この場合も必ず慰謝料を請求することができるとは限りません。

本章では、配偶者及び不倫相手に対して不倫の慰謝料を請求できる条件について解説します。

2-1. 配偶者が不倫を認めたか不倫を証明することができる

慰謝料請求権は不倫に代表される不法行為によって受けた精神的苦痛に対する賠償請求権です。そのため、まず不倫した側の配偶者が、不倫を行った事実を認めた場合には慰謝料を請求することができるでしょう。

他方で、不倫を行った事実を認めなかった場合には、最終的には裁判でその事実の有無が争われることになります。この場合、慰謝料を請求する側が不倫等の不法行為の事実を証拠によって証明した場合には慰謝料の請求が認められます

2-2. 不倫時に婚姻関係が破綻していないこと

慰謝料請求権の保護法益が「婚姻共同生活の平和の維持によってもたらされる配偶者の人格的利益」であるとすると、既婚者が配偶者以外の相手と性的関係を持った場合に、最初に性的関係を持った時点で婚姻関係が破綻していた場合には、既に保護すべき法益がありませんので、慰謝料の請求が認められない可能性があります。

婚姻関係が破綻していたといえるか否かが争われた場合、最終的には、裁判官が婚姻状況を総合的に考慮して、これを判断します。

2-3. 不倫が発覚した時点または離婚成立日から3年経過していない

不倫の慰謝料請求権については不法行為による損害賠償権の消滅時効規定(民法第724条)が適用されます。これにより、慰謝料請求権は ①被害者が損害及び加害者を知った時から3年間それを行使しないとき(1号)、及び②不法行為の時から20年間行使しないとき(2号)には時効により消滅します。厳密には②の20年という期間は「除斥期間」と呼ばれています。

したがって、離婚を求めない場合の配偶者に対する慰謝料請求権は被害者が不貞行為の事実を知った時点から3年を経過すると時効消滅してしまいます。また、被害者が不貞行為の事実を知らなかった場合でも、不貞行為が最後に行われた時点から20年経過すると慰謝料請求権が消滅します。

ただし、離婚に至った場合には、不倫という不法行為のほかに、離婚を余儀なくされたことに対する慰謝料が発生しますので(不倫慰謝料とは区別され、離婚慰謝料などと呼ばれます)、離婚成立日から3年は元配偶者に慰謝料請求が可能です

したがって、配偶者に対して慰謝料請求する場合、①離婚して元配偶者に対して慰謝料請求権する場合と ②離婚を求めずに慰謝料請求する場合で消滅時効の起算点(消滅時効の進行が始まる時点)に違いがあります。

以下では、不倫相手に対して慰謝料請求が認められる条件についてご説明します。

2-4. 不倫相手の身元が特定できている

まず、不倫相手の氏名・住所が特定できていることが必要になります。この点、配偶者に対する慰謝料請求は不倫相手の氏名住所が不明でも可能です。しかし不倫相手に対して慰謝料請求する場合は、人違いが許されないことはもちろん、相手の氏名や住所が特定できていなければ慰謝料請求の内容証明郵便や訴状を送ることもできません。

2-5. 被害者が不倫相手を特定した時点から3年経過していない

配偶者に対して慰謝料請求する場合は民法第724条1号の「加害者を知った時」という要件が問題にならないのに対して、不倫相手に対して慰謝料請求する場合は「加害者を知った時」つまり被害者が不倫相手を特定した時が起算点になります。通常は不倫の事実発覚よりも不倫相手特定のほうが時間的に後になるので、被害者が不倫相手を特定した時点から3年経過していない時点では不倫相手に対する慰謝料請求が認められます。

なお、被害者が不倫相手を特定したか否かにかかわらず、最後に不倫(不法行為)が行われた時から20年経過した場合も慰謝料請求権が認められないことになります。

2-6. 性的関係を持った相手が既婚者であることを知り、又は過失によって知らなかったこと

不貞行為が行われた場合、既婚者と不倫相手とは既婚者の配偶者に対する1個の慰謝料支払義務について連帯責任を負うことになります(民法第719条1項:共同不法行為)。しかし不倫相手が共同不法行為者と認められるのは、故意又は過失がある場合、つまり相手が既婚者であることを知り、又は知らなかったことについて過失がある場合に限られます。

従って、相手が既婚であるかどうかを全く話さなかったり、あるいは「独身である」「配偶者とは離婚した」等と偽っていた場合には不倫相手に不法行為の故意・過失が認められない可能性があります。

なお、裁判では原告側(慰謝料請求する側)が、被告(不倫相手)が性的関係を持った時点で相手(原告の配偶者)が既婚者であることを知り、又は過失によって知らなかったことを立証する必要があります。

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3. 不倫の慰謝料を請求できないケースはあるの?

本章では、不倫の慰謝料請求が認められないケースについて解説します。

3-1. 配偶者に対して慰謝料請求する場合

(1)不貞行為の事実がないか事実を証明できなかった場合

配偶者が結婚後に第三者と交際した事実はあるが、性的関係を持った事実がない場合、またはその事実を証明できなかった場合は原則として慰謝料請求が認められません。ただし、不貞行為に類似する行為を立証することができる場合には、離婚を求める場合は性的関係を持った事実を証明できなかった場合でも、「婚姻共同生活の平和の維持によってもたらされる配偶者の人格的利益」を侵害するものとして、例外的に慰謝料の請求が認められるケースがあります。

(2)交際相手と性的関係を持った時点で婚姻関係が破綻していた場合

配偶者が交際相手と性的関係を持った時点で長期にわたり別居中であった等、婚姻関係が破綻していたと認められる場合には、保護すべき法益を侵害していません(そもそも保護すべき法益が認められない)ので、慰謝料を請求することができません。

(3)不貞行為の事実を知ってから3年経過した場合

離婚を求めない場合、配偶者に対する慰謝料請求権は被害者が不貞行為の事実を知ってから3年経過した場合に消滅時効にかかります。

3-2. 不倫相手に対して慰謝料請求する場合

不倫相手に対して慰謝料請求する場合、慰謝料請求が認められない事情として2-1.(1)(2)(3)に加えて以下の条件のいずれにも該当しないことが必要です。

(1)不倫相手の身元が確認できていない

まず、不倫相手の住所及び氏名が特定できていない場合には、事実上慰謝料を請求することができません。なお、住所及び氏名は、被害者個人で特定することが難しい場合でも、固定電話番号・携帯電話番号・自家用車のナンバーのいずれかがわかっている場合には、弁護士に依頼することで弁護士照会制度(弁護士法第23条の2)を利用して特定することができる場合があります(弁護士は、相手方の特定のためだけに依頼を受け、弁護士会照会を利用することはできませんのでご注意ください)。

(2)配偶者と性的関係を持った事実がない、又は立証できない

配偶者と性的関係を持った事実がない、あるいはその事実を裁判で原告が立証できなかった場合には、原則として不倫相手に対する慰謝料請求権も認められません。

ただし、不貞行為に類似する行為を立証することができる場合には、不貞行為の事実の証明に成功した場合と比べると慰謝料額は少なくなりますが、「婚姻共同生活の平和の維持によってもたらされる配偶者の人格的利益」を侵害するものとして、例外的に慰謝料の請求が認められるケースがあります。

(3)性的関係を持った相手が既婚者であることを知らなかった

慰謝料請求された時点で性的関係を持った相手が既婚者であることを知らず、知らないことに過失がない場合(例えば相手が「自分は独身である」「妻(夫)とは離婚した」「離婚協議中である」等と偽っていた場合)には、不法行為の故意又は過失が認められないため慰謝料を請求することができません。

訴訟で不倫相手に対して慰謝料を請求する場合は、原告側が被告に不法行為の故意又は過失があったことについて立証責任を負います。

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4. 不倫の慰謝料相場はどのくらいなのか

不倫の慰謝料請求をする上で、もう一つ気になることは「相場はいくらぐらいか」ということではないでしょうか。本章では、不倫の慰謝料相場について、離婚を伴う場合と離婚を伴わない場合に分けて解説します。

4-1. 離婚を伴う場合

(1)相場は100~300万円

不倫した配偶者に対して離婚を求める場合、請求できる慰謝料は(a)不倫が原因で離婚に至ったことにより受けた精神的苦痛に対する慰謝料(離婚慰謝料)と(b)配偶者以外の相手と性的関係を伴う交際をしていたことにより自身が受けた精神的苦痛に対する慰謝料(不貞行為慰謝料)の双方があります。

離婚を求める裁判では、離婚慰謝料・不貞行為慰謝料とも婚姻期間や未成熟の子供の有無・年齢、不貞行為が行われた期間や不貞行為に至った交際の経緯等の様々な事情を総合的に考慮してケースバイケースで判断されますが、相場はおおむね100万円〜300万円とされています。

(2)不倫以外に婚姻を破綻させた事情があれば増額の可能性

不倫した側の配偶者(有責配偶者)が不倫以外に配偶者に対して身体的暴力やモラハラ、生活費を渡さない・お金を取り上げる、行動を監視する等の「配偶者に対する暴力(DV)」にあたる行為を行っていた等、他に婚姻を破綻させる原因になるような事情がある場合には慰謝料の額が増額されることもあるでしょう。

ただし、1,000万円を超えるような高額の慰謝料が認められるのは有責配偶者の資力が高く、かつ事情が悪質である場合に限られると言ってよいでしょう。

2-2.離婚を伴わない場合

離婚を伴わない場合は、上の(b)の不貞行為慰謝料のみを請求することができます。不倫の事実により「婚姻共同生活の平和の維持によってもたらされる配偶者の人格的利益」が侵害されたことは認められますが、それによって婚姻が破綻するには至らなかったことになるので離婚を求める場合に比べて「損害」の程度が低いとされ、相場の金額は低くなります。

この場合の慰謝料の金額は、50万円〜100万円程度で、高額となる場合でも150万円~200万円程度とされることが多いでしょう。

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5. 不倫の慰謝料請求するために必要な証拠と集め方

慰謝料請求できる条件や慰謝料額の相場がわかったとして「不倫の証拠を集められるかが不安」という方は多いと思います。本章では、不倫の慰謝料請求するために必要な証拠と証拠の集め方について解説します。

5-1. 必要な証拠

示談交渉の段階では、証拠がなくても慰謝料請求することが可能です。しかし交渉が成立せず、裁判で慰謝料請求することになった場合には、請求する側が裁判官に「不倫の事実があったことについて確証を得させる程度」の証拠を提示する必要があります。

不倫の事実について確証を得させる程度の証拠となるのは以下のような資料です。単独で強力な証拠となるものを★★、他の証拠とあわせれば有力な証拠となるものを★で表しています。ただし、これらがすべて必要なわけではありません。

  • ★★配偶者と第三者がラブホテルに出入りする場面の動画や写真
  • ★★配偶者と第三者との、性的関係を推測させる内容の通話音声
  • ★★配偶者と第三者との、性的関係を推測させる外出場面の動画
  • ★★配偶者と第三者とのメール、LINE、手紙等のやり取りで性的関係を推測させる内容のもの
  • ★★産婦人科の診療明細等、妊娠や堕胎の事実の証拠となるもの
  • ★★探偵事務所の調査報告書(上記に挙げた写真、動画及び音声等を含む)
  • ★配偶者や不倫が疑われる相手のSNS投稿で性的関係を推測させる内容のもの
  • ★手帳、日記、メモ等で不倫が疑われる相手と会う予定が記録されたもの
  • ★クレジットカードの利用履歴やレシート類でラブホテル等の施設を利用したことがわかるもの
  • ★GPSのデータ(ラブホテル他の施設に行ったことを推測させるもの)
  • ★ドライブレコーダーやカーナビの履歴で不倫目的の外出や行先を推測させるもの

5-2. 証拠の収集方法

(1)自ら証拠収集を行う場合

①自宅内・自家用車内にボイスレコーダーを設置する

自力で証拠収集するにあたって、費用や手間をそれほどかけずにできることの1つがボイスレコーダーによる音声収集です。

なお、東京地方裁判所平成21年11月17日では、配偶者の運転する自動車内にボイスレコーダーを取り付け、車内の音声を録音したというケースで、この証拠の違法性(証拠能力)が争われましたが、裁判所は証拠を有効としています。

もっとも、ボイスレコーダーの設置場所や設置時間等によっては、証拠として認められなくなる可能性もあるので、注意が必要です。

②放置されていた衣服のポケットの中身を確認する

特に夫が不倫している疑いがある場合には、衣服のポケットに証拠となりそうな物が残されている可能性があります。配偶者所有のバッグ類の中身を見ることも、不倫の疑いが強い場合の証拠収集目的であればある程度許されますが、気づかれた時にトラブルになる可能性があります。

しかし衣服のポケットの中身の場合は、入ったまま洗濯したりクリーニングするということができないので取り出しても特に問題はないでしょう。取り出したことに気づかれたくない場合は写真を撮ってそのまま戻してもよいでしょう。

③注意点

証拠収集目的であっても、犯罪に該当する行為を行うことはできません。ボイスレコーダーの例でいえば、自宅・自家用車以外の場所に設置して音声を収集することは違法です。

設置場所が不倫相手の自宅であれば住居侵入罪(刑法130条)に該当する可能性が高いでしょう。

(2)探偵に依頼する場合

配偶者と不倫相手が一緒にラブホテルに出入りする場面の写真や動画等、有力な証拠となる資料ほど被害者本人が行うことが困難になります。そこで、そのような有力な証拠を確実に得たい場合は探偵事務所に調査委託することをお勧めします。

ただし探偵の調査委託料金は高額であるため、どの程度の証拠が必要であるか、証拠を得るためにはどの料金プランを利用するのがベストであるかを事前によく検討する必要があります。

調査料金プランは大まかに①時間制②パック制③成功報酬制に分かれています。料金プランごとの費用目安・メリット・デメリットは以下のようになります。

料金プラン費用の目安メリットデメリット
時間制探偵1人あたり1時間1~2万円
(通常2人稼働)
短時間で完了する見通しがある場合は費用を抑えられる・必要時間数の見積もりができない
・稼働時間に比例して高額になる
パック制20時間40~50万円
/1日20万円等の固定料金
・見積もりが明確・時間単価を抑えられる
・事前情報が少ない場合に適している
・原則前払い・調査が成功しなくても返金されない
成功報酬制調査成功の場合
全額後払い
・初期費用がかからない
・不倫の疑いが強いが事前情報が少ない場合に適している
・報酬が高額になりやすい
(100万円を超える場合がある)
・「成功」の定義について依頼者とずれがないか確認する必要がある
右にスクロールしてください

(3)弁護士照会制度(不倫相手の特定が難しい場合)

不倫相手の氏名・住所を特定することが難しい場合、弁護士に相談して弁護士照会制度利用によって特定してもらうという方法があります。

弁護士照会制度(弁護士法第23条の2)とは、弁護士が依頼を受けた事件について、必要な情報について所属する弁護士会を通して公務所または公私の団体に照会する制度をいいます。氏名・住所を特定する場合は、特定したい相手の固定電話番号・携帯電話番号・所有する車のナンバーのうち1つ以上がわかっていればそれを手がかりに電話会社、携帯電話会社、運輸局への照会を行うことができます。LINEのIDについてもLINE株式会社への照会は可能ですが、登録者情報の開示を拒否される可能性があります。

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6. 不倫の慰謝料請求をする方法と流れ

本章では、有責配偶者または不倫相手に対して慰謝料を請求する方法と慰謝料請求の手続きの流れについて解説します。

6-1.離婚を求める場合の配偶者に対して慰謝料請求する場合

(1)離婚協議の中で慰謝料について話し合う

離婚を求める場合は、最初に配偶者と離婚についての話し合い(離婚協議)を行い、財産分与や(未成熟の子供がいる場合の)養育費・親権者の取り決め等の協議事項と併せて慰謝料について話し合います。配偶者が慰謝料名目または財産分与に含める形で支払いに同意した場合はその旨を離婚協議書に記載します。

(2)協議が成立した場合は公正証書を作成する

協議事項のすべてに合意ができた場合は、離婚協議書の原文を作成して公証役場に持参し、公正証書として作成することをお勧めします。これは公正証書が裁判の判決と同等の強制力を持つため、慰謝料の支払いが行われなかったり分割払いが途中で滞ったりした場合に直ちに強制執行が可能になるからです。

(3)協議不成立の場合は調停を申立てる

慰謝料について、または他の協議事項について合意が成立しなかった場合は、離婚を求める側が家事調停(家事事件手続法第255条1項)を申立てて家庭裁判所で調停委員を介した話し合いを行います。

調停が成立すれば離婚が成立し、慰謝料支払いについても強制力が生じます(民事執行法第22条7号)。

調停で協議事項の一部または全部について合意できなかった場合は、審判手続(家事事件手続法第284条1項)に移行して裁判官が職権で決定するか、調停を申し立てた側が家裁に離婚訴訟(民法第770条1項)を提起して訴訟で慰謝料請求することになります。

6-2. 離婚を求めずに配偶者に対して慰謝料請求する場合

(1)配偶者・不倫相手と示談交渉する

離婚を求めずに配偶者に慰謝料請求する場合は、配偶者及び不倫相手と三者間で話し合いを行います(示談交渉)。相手から交渉を拒否されたり、配偶者とも不倫相手とも直接会いたくないという場合は慰謝料請求書を作成して内容証明郵便で郵送すると良いでしょう。

内容証明郵便を利用することにより郵便局がその郵便の内容と発送日時・到達日時を記録して証明してくれるので、慰謝料請求の事実等についての証拠にすることができます。ただし、内容証明郵便を利用しても慰謝料を強制的に取り立てる効力は発生しません。

(2)交渉不成立の場合や請求を無視された場合は訴訟を提起する

示談交渉が成立しなかったり、内容証明を送っても支払いが行われなかった場合は裁判所に慰謝料請求訴訟を提起することになります。請求額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所に訴訟提起します。

6-3.不倫相手に対して慰謝料請求する場合

不倫相手に対して慰謝料請求する場合、手順は前項(離婚を求めずに配偶者に対して慰謝料請求する場合)と同じです。ただし、最初に不倫相手の住所氏名を特定することが必要です。

7. 不倫の慰謝料請求をする際の注意点

本章では、不倫の慰謝料請求をする際に注意すべきことについて解説します。

7-1. 時効期間内に請求すること

不倫に基づく慰謝料請求権は時効または除斥期間内経過後に消滅します(下記の表参照)。

そのため、特に不倫の事実を知った場合には時効期間が短いので、法律上消滅時効の進行を止める「裁判上の請求」(民法第147条1項1号)をできるだけ早く行うことが大切です。これは訴訟提起を指しています。また「催告」(民法第150条1項)をすることで時効の完成を猶予させることができますが、口頭で請求しただけでは証拠が残らないため、内容証明郵便で請求書面を郵送することをお勧めします。

[時効期間のまとめ]

請求相手/離婚有無離婚した場合離婚しなかった場合
配偶者離婚成立の日から3年最後の不倫から20年事実を知った時から3年最後の不倫から20年
不倫相手身元を特定してから3年最後の不倫から20年身元を特定してから3年最後の不倫から20年

7-2. 不倫当事者に慰謝料支払義務についての求償権を放棄させる

不倫相手に不法行為の故意又は過失がある場合、有責配偶者と不倫相手とは被害者に対して1個の慰謝料支払義務を連帯して負うことになります。これは5-1.で述べたように不真正連帯債務と呼ばれますが、不真正連帯債務であっても連帯債務の求償権の規定は適用されます。これにより、有責配偶者と不倫相手との間で負担部分を定めていれば、どちらかが全額支払った時に他方に対して負担部分を超える部分について支払いを求めることができます。しかしこの負担部分は債務者間で自由に定めることができるため、債権者側からみると不都合が生じる場合があります。

例えば、妻Bが夫Aの不倫相手Cに対して100万円の慰謝料請求をしたとすると、AC間で負担部分を100:0と定めていれば、CがBに対して100万円支払ったとしてもCはAに対して、支払った慰謝料の全額を求償することができるのです。これでは、Bが夫の不倫相手に対して慰謝料請求した意味がなくなってしまいます。

この求償権については、連帯債務者全員の同意があれば放棄させる(行使させない)ことができます。そこで、示談交渉の場で求償権不行使について相手の同意を得ておくことをお勧めします。

7-3. 証拠収集目的であっても犯罪に該当する行為をしないこと

慰謝料請求するためには不倫の事実を立証するための証拠が必要となります。確かに不倫は不法行為にあたるのですが、立証のための証拠収集の目的であっても刑法等の犯罪に該当する行為を行うことは許されないので注意が必要です。

特に、①不倫相手の住居への立ち入りや ②不倫相手の住居内での監視カメラ・ボイスレコーダー等の設置、③住居からの物・データの持ち出し、④不倫相手の所有物を破壊したり使用不能にしたりする行為、⑤不倫相手に対して殺す等と脅したり ⑥脅した上で金銭を奪ったりする行為はすべて刑法犯罪に該当する可能性が極めて高いといえます※。

このような行為を行った場合には、刑事事件として逮捕・起訴されたり、不倫相手から損害賠償請求される可能性があります。

※①住居侵入罪(刑法第130条) ②個人情報保護法第18条違反(個人情報の利用目的の通知義務) ③窃盗罪(刑法第235条) ④器物損壊罪(刑法第261条) ⑤脅迫罪(刑法第222条)  ⑥恐喝罪(刑法第249条1項)

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8. 不倫の慰謝料請求についてよくあるQ&A

本章では、不倫の慰謝料請求について相談者様からお受けすることが多い質問と、それに対する回答を御紹介します。

8-1.  不倫相手に対してだけ慰謝料請求することはできますか?

配偶者に対して慰謝料請求せずに不倫相手に対してだけ慰謝料請求することは可能です。

ただし、請求できるのは不倫相手に不法行為の故意又は過失が認められる場合、つまり性的関係を持った相手が既婚者であることを不倫相手が知り、又は知らないことに過失がある場合に限られます。

「既婚者とは知らなかった」「独身だ/離婚したといわれた」等と故意や過失を否定された場合、交渉は難しく、裁判でも故意・過失について被害者側が立証する必要がありますので、相手方の主張と矛盾する証拠がない場合には、請求が困難になる可能性があります。

なお、この場合配偶者に対しては慰謝料を免除する意思なのか、不倫相手に請求した上で拒否された場合には配偶者に請求する意思なのかを明確にしておくことをお勧めします。裁判で争うことになった場合、配偶者に対して免除する意思を明確にしておいたほうが不倫相手のみに対する慰謝料請求が認められやすくなるでしょう。

8-2. 決定的な証拠が見つからなかった場合慰謝料請求は無理ですか?

結論からいえば、示談交渉や内容証明による慰謝料請求は可能です。

不倫の事実を証明するに足りる証拠を用意することが条件となるのは、訴訟で慰謝料請求する場合です。示談交渉や内容証明で慰謝料請求する場合、単独で有力な証拠を持っていたほうが請求が容易になりますが、可能な範囲で得た証拠を組み合わせることによって説得力が出る場合もあります。

8-3. 離婚時に慰謝料請求しなかった場合離婚後に請求できますか?

離婚した時点で慰謝料請求していなかった場合でも、慰謝料請求権の消滅時効期間以内であれば離婚後に請求することが可能です。

夫婦が離婚する場合、婚姻期間中に夫婦の一方が他方に対して不法行為を行った事実があれば、被害者側が加害者側に対して慰謝料請求することができます。この慰謝料請求権は離婚成立の日から3年で時効消滅します(民法第724条1項1号)。これは、離婚慰謝料請求の根拠が「離婚に至る原因を作ったこと」となるため、時効の起算日にあたる「損害を知った日」が離婚成立の日となるためです。

離婚後に慰謝料請求する場合は、元配偶者に対して交渉を申し入れるか、現在の住所を特定した上で内容証明郵便による請求書類を送付してください。

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9. 不倫の慰謝料請求を弁護士に相談するメリット

配偶者が不倫していたことに対する確信が持てれば、慰謝料請求することは可能です。

しかし、どのくらい請求すればよいか個人で判断することは難しく、また内容証明郵便には支払いを法的に強制する効力がないため、無視された場合に無理やり取り立てることはできません。

強制的に取り立てるためには裁判で請求認容判決を得ることが必要ですが、訴訟では不貞行為の事実を立証しなければならないため単独で行うことは困難です。この点、不倫の慰謝料請求について弁護士に相談することで、これらの問題を解決することができます。本章では、不倫の慰謝料請求を弁護士に相談するメリットについて解説します。

9-1. 証拠収集方法について助言を受けられる

(1)証拠収集を個人で行うのは困難

不倫の慰謝料請求で最初にネックとなりやすいのが「証拠収集」です。配偶者や不倫相手が不倫の事実をすぐに認めて慰謝料請求に応じてくれれば証拠は必要ありません。しかし、多くの場合は不倫の事実を認めさせるための証拠を集める必要が生じます。

また、離婚請求や不倫の慰謝料請求の交渉が成立せずに訴訟になった場合は、原告側(離婚や慰謝料を請求する側)が配偶者の不倫の事実を立証しなければなりません。

(2)弁護士に相談すれば証拠収集の悩みが解決する

この点、男女問題に強い弁護士に相談すれば個別の事情に応じて必要となる証拠の種類や、それぞれの証拠の集め方について詳しいアドバイスを受けることができます。また、不倫相手の特定等、個人情報を得る必要がある場合は弁護士照会制度を利用して行うことが可能です。さらに、必要な場合は信用できる探偵事務所(興信所)を紹介してもらうことができることもあるでしょう。

9-2. 適正な請求額を算定してもらえる

不倫の慰謝料を請求する場合、まず気になるのは「いくらぐらい請求できるか」ということだと思います。配偶者が不倫していたことを知ってしまうと憤りにかられて多額の慰謝料を取りたいと思うのは当然です。

しかし、慰謝料額の算定は不倫の状況、結婚生活の状況、離婚を求めるか求めないか、離婚を求める場合は他に財産分与や養育費等財産的な問題で交渉する必要があるか否か、離婚を求めない場合は配偶者と不倫相手の一方または両方に請求するか等、さまざまな要素を総合的に判断して行う必要があります。弁護士に相談することにより、経験に基づいて適正な慰謝料額を算定してもらうことができます。

9-3. 内容証明送付・示談交渉・訴訟等の法的手続を任せることができる

不倫の慰謝料を請求するにあたっては法的な手続きを行う必要があることも、個人にとってはネックとなりがちです。個人で内容証明を送っても相手が無視したり交渉に応じてくれない可能性があります。あるいは相手側が弁護士を立ててくるということも想定されます。

弁護士に相談することにより、弁護士名義での慰謝料請求が可能になるので相手が交渉に応じてくれる可能性が高くなります。また相手側が弁護士を依頼している場合でも対等に交渉することができます。さらに、離婚請求や慰謝料請求の交渉がまとまらずに裁判で争うことになった場合も、個人で行うのが難しい訴状作成や証拠の提出、期日出席・弁論等の訴訟関連の手続きをすべて任せることができます。

10. まとめ

不倫されたときに慰謝料を請求するためには、一定の条件に該当している必要があります。また、確実に慰謝料を獲得しようと思えば最終的に訴訟で請求を認めてもらうための証拠を集めたり、相手側と交渉して請求を認めさせる等のハードルを乗り越えていかなければなりません。個人で請求できる見通しが得られない場合、男女問題を得意とする弁護士に相談することをお勧めします。

「夫が不倫して不倫相手が妊娠していることもわかったので離婚を考えている。不倫相手に対しても慰謝料請求したいが、向こうはお金があまりあるとは思えない。夫のほうはある程度財産があるので財産分与や夫に対する慰謝料請求を認めさせれば金銭面では片が付くが、この状況で不倫相手から慰謝料を取れないのは納得できない。不倫相手に対して慰謝料請求できる可能性があるか知りたい」

「妻が不倫している疑いがあるので夜中にこっそり妻のハンドバッグを調べていたら見たことのない高価なアクセサリー等、いろいろ怪しいものが見つかった。ただ妻のスマホを見ていたときにうっかりLINEに既読をつけてしまい、妻から違法だとか訴えるとかいわれてしまった。とりあえず離婚は考えていないが、妻の不倫相手をつきとめて慰謝料請求したい。ハンドバッグの中身やスマホの中身を調べたことが原因で請求が認められない等ということはありますか?」

等、不倫の慰謝料を請求するための条件や手続き等についてお悩みや御質問がありましたら、是非法律事務所の無料法律相談をご利用ください。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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