慰謝料請求したい

貞操権侵害とは?慰謝料請求できるケースや相場を弁護士が解説!

貞操権侵害とは?慰謝料請求できるケースや相場を弁護士が解説!
この記事をSNSでシェア!

本記事では「貞操権侵害」とは何か、どのような行為が貞操権侵害に該当するのか、貞操権侵害行為に対して慰謝料請求できるケースや慰謝料額の相場等について解説します。

目次

1.貞操権侵害とは

本章では、貞操権侵害という言葉の意味について、意味が似ている「不貞行為」「不倫」と比較して解説します。

1-1. 定義

この記事でいう、貞操権侵害とは、「貞操権」という権利を侵害する行為をいいます。貞操権とは、夫婦が自分以外の相手と性的関係を持たないことを要求する権利をいいます(判例等で同じ意味で「守操請求権」という言葉が使われる場合があります)。

1-2. 貞操権侵害と不貞行為・不倫の違い

貞操権侵害という言葉は、裁判で離婚を請求することが可能な離婚原因(法定離婚事由)の1つである「不貞行為」(民法第770条1項1号)と似ています。また、一般的な言葉である「不倫」とも似ています。これら3つの類似点と相違点を比較すると以下のようになります。

  • 貞操権侵害:既婚者Aが配偶者B以外の相手Cと性的関係を伴う交際をすることという意味では「不貞行為」と同じであるが、AのBに対する権利侵害とCのBに対する権利侵害の両方を指して使うことができる。ただし、AのBに対する権利侵害は主に「不貞行為」と呼ばれるため、「貞操権侵害」については交際相手CのBに対する権利侵害を指して使うことが多い。
  • 不貞行為:既婚者Aが配偶者B以外の相手Cと性的関係を伴う交際をすることという意味では「貞操権侵害」と同じであるが、主に既婚者AのBに対する権利侵害を指して使われている。すなわち、ACが性的関係を伴う交際をした場合、Aの行為は配偶者Bとの関係で不貞行為かつ貞操権侵害に該当する。
  • 不倫:専門用語ではないので厳密な定義はないが、ほぼ「貞操権侵害」を指している。ただし、性的関係を伴わない場合も含めて婚外恋愛全般を「不倫」と呼ぶ場合もあるため、貞操権侵害よりも指し示す範囲が広い

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

2. どのような行為が貞操権侵害に該当するのか

貞操権を侵害する行為は、既婚者が配偶者以外の相手と性的関係を伴う交際をすることです。

※以下、既婚者Aによる配偶者Bに対する貞操権侵害行為の相手Cを「不倫相手」と表記します。

「配偶者以外の相手」とは、配偶者以外の異性を指しますが、不倫相手が同性であった場合も貞操権侵害に該当するとした判例があります(東京地方裁判所2004[H16]年4月7日付判決)。

「性的関係」(肉体関係)とは原則的には性行為を指します。従って、配偶者以外の相手と交際していても性行為を行った事実がない場合は貞操権侵害にあたりません。また、性行為を行った事実を裁判で証明できなかった場合も貞操権侵害が認められないことになります。

「交際」とは、相互に恋愛感情を持って行動を共にしたり連絡を取り合ったりすることをいいます。従って、店舗型・無店舗型の風俗店従業員が業務時間内に既婚者である客と性行為を行うことは、従業員が業務として対価を得て行っているものなので「交際した」ことにあたらず、貞操権を侵害するとはいえないと解される可能性があります。

ただし、既婚者が店舗外で、あるいはその従業員の業務時間外に従業員と性的関係を伴う交際を行うことは貞操権侵害に該当するでしょう。

3. 貞操権侵害で相手に慰謝料請求できるケースとできないケース

本章では、貞操権を侵害された側の配偶者が慰謝料請求できるケースとできないケースについて、貞操権を侵害した側の配偶者に慰謝料請求する場合と不倫相手に慰謝料請求する場合に分けて解説します。

3-1.慰謝料請求できるケース

(1)配偶者が貞操権侵害行為の事実を認めたか貞操権侵害の事実が証明された

慰謝料請求権は貞操権侵害行為によって受けた精神的苦痛に対する賠償請求権です。そのため、まず貞操権を侵害した側の配偶者が、貞操権侵害行為を行った事実を認めた場合には慰謝料を請求することができるでしょう。

また、貞操権侵害の事実を認めなかった場合は最終的に裁判でその事実の有無が争われることになりますが、慰謝料請求する側が貞操権侵害の事実を証拠によって証明した場合には慰謝料請求が認められることになるでしょう。

(2)貞操権侵害行為が行われた時点で婚姻関係が破綻していなかった

一般に慰謝料請求権は貞操権侵害を根拠としています。従って、既婚者が配偶者以外の相手と性的関係を持った場合に、最初に性的関係を持った時点で婚姻関係が破綻していたとはいえない場合には貞操権侵害が認められるでしょう。

婚姻関係が破綻していたといえるか否かが争われた場合は、最終的に裁判官が婚姻状況を総合的に考慮して判断することになります。

(3)不倫が発覚した時点または離婚成立日から3年経過していない

不倫の慰謝料請求権については不法行為による損害賠償権の消滅時効規定(民法第724条)が適用されます。これにより、慰謝料請求権は ①被害者が損害及び加害者を知った時から3年間それを行使しないとき(1号)、及び②不法行為の時から20年間行使しないとき(2号)には時効により消滅します。厳密には②の20年という期間は「除斥期間」と呼ばれています。

従って、離婚を求めない場合の配偶者に対する慰謝料請求権は被害者が貞操権侵害行為の事実を知った時点から3年を経過すると時効消滅してしまいます。また、被害者が貞操権侵害行為の事実を知らなかった場合でも、貞操権侵害行為が最後に行われた時点から20年経過すると慰謝料請求権が消滅します。

ただし、離婚に至った場合で離婚後に元配偶者に慰謝料請求が可能なのは離婚成立日から3年以内となります。

従って、配偶者に対して慰謝料請求する場合、①離婚して元配偶者に対して慰謝料請求権する場合と ②離婚を求めずに慰謝料請求する場合で消滅時効の起算点(消滅時効の進行が始まる時点)に違いがあります。

以下の(4)(5)(6)は、不倫相手に対して慰謝料請求が認められるケースです。

(4)不倫相手の身元が特定できている

まず、不倫相手の氏名・住所が特定できていることが必要になります。この点、配偶者に対する慰謝料請求は不倫相手の氏名住所が不明でも可能です。しかし不倫相手に対して慰謝料請求する場合は、人違いが許されないことはもちろん、慰謝料請求の内容証明や訴状を送る際には相手の氏名・住所が特定できていなければなりません。

(5)被害者が不倫相手を特定した時点から3年経過していない

配偶者に対して慰謝料請求する場合は民法第724条1号の「加害者を知った時」という要件が問題にならないのに対して、不倫相手に対して慰謝料請求する場合は「加害者を知った時」つまり被害者が不倫相手を特定した時が起算点になります。

通常は不倫の事実発覚よりも不倫相手特定のほうが時間的に後になるので、被害者が不倫相手を特定した時点から3年経過していない時点では不倫相手に対する慰謝料請求が認められます。

なお、被害者が不倫相手を特定したか否かにかかわらず、最後に貞操権侵害行為が行われた時から20年経過した場合も慰謝料請求権が認められないことになります。

(6)性的関係を持った相手が既婚者であることを知り又は過失により知らなかった

貞操権侵害行為が行われた場合、既婚者と不倫相手とは既婚者の配偶者に対する1個の慰謝料支払義務について連帯責任を負うことになります(民法第719条1項:共同不法行為)。しかし不倫相手が共同不法行為者と認められるのは、貞操権侵害の故意がある場合、つまり相手が既婚者であることを知り又は過失によって知らなかった場合に限られます。

従って、相手が既婚であるかどうかを全く話さなかったり、あるいは「独身である」「配偶者とは離婚した」等と偽っていた場合には不倫相手に貞操権侵害の故意が認められないことになります。なお、裁判では原告側(慰謝料請求する側)が、被告(不倫相手)が性的関係を持った時点で相手(原告の配偶者)が既婚者であることを知り又は過失により知らなかったことを立証する必要があります。

3-2. 慰謝料を請求できない場合

(1)性的関係を持った事実がなく離婚を求めない場合

配偶者が結婚後に第三者と交際した事実はあるが、性的関係を持った事実がない場合、またはその事実を証明できなかった場合は原則として慰謝料請求が認められません。

前述のように、離婚を求める場合は性的関係を持った事実を証明できなかった場合でもその交際によって婚姻が破綻したといえるような事情がある場合に例外的に認められるケースがあります。しかし離婚を求めない場合は、貞操権侵害の事実がない以上、交際によって婚姻が破綻したともいえないので慰謝料請求は認められないことが多いといえるでしょう。

(2)性的関係を持った時点で夫婦関係が破綻していた場合

性的関係を持った時点で既に別居中である等、婚姻関係が破綻していた場合には貞操権を侵害したとはいえないことになります。

(3)不倫が発覚した時点または離婚成立日から3年経過していた

また、被害者が貞操権侵害の事実を知らなかった場合も、最後に貞操権侵害行為が行われてから20年経過すると慰謝料請求権が消滅します。

以下の(4)(5)(6)は不倫相手に対する慰謝料請求が認められないケースです。その理由については前項の「慰謝料請求が認められるケース」をご参照ください。

(4)不倫相手の身元を特定できない場合

不倫相手の氏名と住所を特定できない場合は、慰謝料請求することができません。なお、被害者個人による特定が難しい場合、弁護士に依頼して弁護士照会制度(弁護士法第23条2項)を利用することによって特定できる可能性があります。

相手の実家・固定電話番号・携帯電話番号・所有する車のナンバープレート等がわかっている場合には、これらの制度を利用して、氏名と現住所を特定できる可能性があります。

(5)相手が既婚者であることを知らなかったか「独身である」等と偽られた場合

慰謝料請求された時点で、交際相手が既婚者であることを知らなかった場合、あるいは「自分は独身だ」「離婚した」等と偽られていたという場合は貞操権侵害の故意が認められないことになるので、慰謝料請求することができない可能性があります。

(6)不倫の事実が発覚して被害者が不倫相手を特定した時点から3年経過した場合

不倫相手に対する慰謝料請求権が時効消滅した場合です。ここでいう「特定」は「何らかの方法で請求することが可能になったこと」を表すので、氏名の特定は必ずしも必要なく、住所等によって請求先が特定された時点を指すと解されています。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

4. 貞操権侵害の慰謝料相場

貞操権侵害行為に対して慰謝料を請求することを考えたとき、次に気になることとして「こういう場合にいくらぐらい慰謝料を請求できるか」という相場の問題があると思います。

本章では貞操権侵害の慰謝料相場について、配偶者に対して離婚を求める場合と離婚を求めない場合に分けて解説します。

4-1.離婚を求める場合

(1)離婚を求める場合の慰謝料の相場

配偶者に対して離婚を求める場合、請求できる慰謝料は(a)貞操権侵害が原因で離婚に至ったことにより受けた精神的苦痛に対する慰謝料(離婚慰謝料)と(b)配偶者以外の相手と性的関係を伴う交際をしていたことにより自身が受けた精神的苦痛に対する慰謝料(貞操権侵害慰謝料)との合計額となります。

離婚を求める裁判では、離婚慰謝料・貞操権侵害慰謝料とも婚姻期間や未成熟の子供の有無・年齢、不貞行為が行われた期間や、貞操権侵害行為に至った交際の経緯等の様々な事情を総合的に考慮してケースバイケースで判断されますが、相場はおおむね100万円〜300万円となることが多いでしょう。

(2)貞操権侵害以外の原因で慰謝料が増額される場合

貞操権侵害行為を行った側の配偶者(有責配偶者)が、貞操権侵害行為以外に配偶者に対して身体的暴力やモラハラ、生活費を渡さない・お金を取り上げる、行動を監視する等の「配偶者に対する暴力(DV)」にあたる行為を行っていた等、他に婚姻を破綻させる原因になるような事情がある場合には増額されます。

ただし1,000万円を超えることは非常に例外的なケースといえるでしょう。

離婚の財産分与と併せて行われる場合や、有責配偶者によるDV等の事情があった場合では、500万円程度が認められるケースもあります。

4-2.離婚を求めない場合

離婚を求めない場合は、上の(b)の不貞行為慰謝料のみを請求することができます。

不倫の事実により貞操権を侵害されたことは認められますが、それによって婚姻が破綻するには至らなかったことになるので離婚を求める場合に比べて相場の金額は低くなります。多くの場合50万円〜100万円程度で、多額となる場合でも150万円~200万円程度となることが多いでしょう。

ただし、有責配偶者や不倫相手の収入が多い・行為が悪質・貞操権を侵害された側の配偶者が精神疾患を発症した等の状況によって300万円~400万円程度の慰謝料が認められた事例もあります(次章「貞操権の侵害に関する判例」参照)。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

5. 貞操権の侵害に関する判例・裁判例

本章では、貞操権侵害による慰謝料請求が認められるか否かが問題になった判例をご紹介します。

5-1. 配偶者に対して慰謝料を免除しても不倫相手は慰謝料支払義務を免れないとした判例(最高裁1994[H6]年11月24日付判決)

原告である妻Bが、夫Aの不倫相手Cに対して慰謝料300万円を請求した事件です。

CはBが夫Aに対して慰謝料支払債務を免除したことにより、当時の民法の連帯債務の規定である旧民法第437条によって免除の効力が慰謝料支払義務の連帯債務者であるCにも及ぶ(つまりCの慰謝料支払義務が消滅する)と主張しました。

これに対して判決は、ACがBに対して負う共同不法行為に基づく慰謝料支払義務(民法第719条1項・第710条)は「不真正連帯債務」であるとして、旧民法第437条の適用を否定するとともに、妻Bの免除の意思は配偶者Aに対してのみ行うものだったことを理由としてCの主張を認めず、Cに対して慰謝料300万円の支払いを命じました。

5-2. 離婚に至らなかった場合でも不倫相手に対して相場を大きく上回る額の慰謝料支払いを命じた判例(東京地方裁判所2003[H15]年2月14日付判決)

原告である妻Eが夫Dの不倫相手Fに対して慰謝料1240万円を請求した事件です。

DEは離婚に至らなかった一方、不倫相手FはDとの不倫関係を中止する意思がないのにDの妻Eに対して謝罪の意思を表した手紙を送る等していたことから、行為の悪質性を考慮して裁判所はFに対して、離婚に至らなかった場合の慰謝料額の相場を大きく上回る慰謝料440万円の支払いを命じました。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

6. 貞操権侵害で慰謝料請求する方法

配偶者による貞操権侵害に対して慰謝料請求を考えたとき、まず気になることの一つとして「どうやって慰謝料請求すればよいか」ということがあると思います。

本章では貞操権侵害に対する慰謝料請求の方法について解説します。

6-1.相手と話し合いの機会を持つ

まず、慰謝料請求する相手と話し合い(示談交渉)の機会を持ち、そこで不倫の事実を認めさせて慰謝料請求するという方法をとることができます。離婚を求める場合は離婚協議の中で配偶者と話し合うか、不倫相手も入れて三者で話し合います。

離婚を求めない場合は夫婦間・三者間または不倫相手との間で慰謝料について交渉することになります。

交渉が成立した場合は、離婚協議書または和解書の原文を作成して公証役場に持参し、公正証書として作成することをお勧めします。公正証書は、裁判の判決と同等の強制力を持つため、慰謝料の支払いが行われなかったり分割払いが途中で滞ったりした場合には、強制執行が可能になります。

6-2.話し合いを拒否された場合・会いたくない場合は内容証明で請求書を送る

相手から話し合いを拒否されたり、配偶者とも不倫相手とも直接会いたくないという場合は慰謝料請求書を作成して内容証明郵便で郵送するようにしてください。

内容証明郵便を利用することにより郵便局がその郵便の内容と発送日時・到達日時を記録して証明してくれるので、慰謝料請求権が消滅時効(民法第724条1号)にかかるのを防ぐことができる場合があります。

ただし、内容証明郵便を利用しても慰謝料を強制的に取り立てる効力は発生しません。

6-3. 交渉不成立の場合や請求を無視された場合は訴訟を提起する

示談交渉が成立しなかったり、内容証明を送っても支払いが行われなかった場合は裁判所に慰謝料請求訴訟を提起することになります。

なお、離婚を求める場合は、離婚調停手続の中で請求することが可能です。

また、離婚調停によっても離婚が成立しなかった場合には、家庭裁判所に離婚訴訟を提起してその中で慰謝料請求を行います。

慰謝料請求訴訟の場合、請求額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所に訴訟提起します。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

7. 貞操権侵害で慰謝料請求する際のポイント

本章では、貞操権を侵害された側の配偶者が慰謝料請求する際に注意すべき点について解説します。

7-1. 時効期間内に請求すること

貞操権侵害の慰謝料請求権は時効または除斥期間内経過後に消滅します(下記の表参照)。

そのため、特に不倫の事実を知った場合には時効期間が短いので、法律上「請求」に該当する行動をできるだけ早く起こすことが大切です。「請求」は訴訟提起のことをいい、口頭・書面で行った場合は含まれないことに注意が必要です。

[時効期間のまとめ]

請求相手/離婚有無離婚した場合離婚しなかった場合
配偶者離婚成立の日から3年最後の貞操権侵害から20年事実を知った時から3年最後の貞操権侵害から20年
不倫相手身元を特定してから3年最後の貞操権侵害から20年身元を特定してから3年最後の貞操権侵害から20年

7-2. 貞操権侵害行為者に慰謝料支払義務についての求償権を放棄させる

不倫相手に貞操権侵害の故意がある場合、有責配偶者と不倫相手とは被害者に対して1個の慰謝料支払義務を連帯して負うことになります。

そのため、有責配偶者と不倫相手との間で負担部分を定めていれば、どちらかが全額支払った時に他方に対して負担部分を超える部分について支払いを求めることができます。これを「求償権」といいます。

しかしこの負担割合は債務者間で自由に定めることができるため、債権者側からみると不都合が生じる場合があります。

例えば、妻Bが夫Aの浮気相手Cに対して100万円の慰謝料請求をした場合に、AC間で負担部分を100:0と定めていれば、CがBに対して100万円支払ったとしてもCはBに対して全額求償できることになります。BがAに離婚を求める場合は生計も分かれるので大きな問題とはいえませんが、離婚を求めない場合は慰謝料請求後もBAの家計が同一のままです。そのため、CからAに対して全額求償されてしまうと夫の浮気相手に対して慰謝料請求した意味がなくなってしまいます。

この求償権については、連帯債務者全員の同意があれば放棄させる(行使させない)ことができます。そこで、示談交渉の場で求償権不行使について相手の同意を得ておくことをお勧めします。

7-3. 証拠収集目的であっても犯罪に該当する行為をしないこと

慰謝料請求するためには貞操権侵害の事実を立証するための証拠が必要となります。確かに貞操権侵害は不法行為にあたるのですが、立証のための証拠収集の目的であっても刑法等の犯罪に該当する行為を行うことは許されないので注意が必要です。

特に、①不倫相手の住居への立ち入りや ②住居内での監視カメラ・ボイスレコーダー設置、③住居からの物・データの持ち出し、④不倫相手の所有物を破壊したり使用不能にしたりする行為、⑤不倫相手に対して殺す等と脅したり ⑥脅した上で金銭を奪ったりする行為はすべて刑法犯罪に該当する可能性があります※。

このような行為を行った場合、刑事処分で逮捕・起訴されたり、不倫相手から損害賠償請求される可能性がありますので、注意が必要です。

※①住居侵入罪(刑法第130条) ②個人情報保護法第18条違反(利用目的の通知義務) ③窃盗罪(刑法第235条) ④器物損壊罪(刑法第261条) ⑤脅迫罪(刑法第222条) ⑥恐喝罪(刑法第249条1項)

8. 貞操権侵害の慰謝料請求を弁護士に相談するメリット

貞操権侵害について確信が持てれば、慰謝料請求することが可能です。しかし、被害者単独で慰謝料請求することにはさまざまな障壁が立ちはだかります。この点、貞操権侵害の慰謝料請求について、男女問題に強い弁護士に相談することで障壁を乗り越えて慰謝料請求を実現することができます。本章では、貞操権侵害の慰謝料請求を弁護士に相談するメリットについて解説します。

8-1. 証拠収集方法について助言を受けられる

(1)証拠収集を個人で行うのは困難

貞操権侵害の慰謝料請求で最初にネックとなりやすいのが「証拠収集」です。配偶者や不貞行為の相手が貞操権侵害の事実をすぐに認めて慰謝料請求に応じてくれれば証拠は必要ありません。しかし、多くの場合は貞操権侵害の事実を認めさせるための証拠を集める必要が生じます。また、離婚請求や貞操権侵害の慰謝料請求の交渉が成立せずに訴訟になった場合は、原告側(離婚や慰謝料を請求する側)が配偶者の貞操権侵害の事実を立証しなければなりません。

(2)弁護士に相談すれば証拠収集の悩みが解決する

この点、男女問題に強い弁護士に相談すれば個別の事情に応じて必要となる証拠の種類や、それぞれの証拠の集め方について詳しいアドバイスを受けることができます。また、不貞行為相手の特定等、個人情報を得る必要がある場合は弁護士照会制度を利用して行うことが可能です。さらに、必要な場合は信用できる探偵事務所(興信所)を紹介してもらうことができることもあるでしょう。

8-2. 適正な請求額を算定してもらえる

貞操権侵害の慰謝料を請求する場合、まず気になるのは「いくらぐらい請求できるか」ということだと思います。配偶者が不貞行為していたことを知ってしまうと憤りにかられて多額の慰謝料を取りたいと思うのは当然です。しかし、慰謝料額の算定は貞操権侵害行為の状況、結婚生活の状況、離婚を求めるか求めないか、離婚を求める場合は他に財産分与や養育費等財産的な問題で交渉する必要があるか否か、離婚を求めない場合は配偶者と不貞行為相手の一方または両方に請求するか等、さまざまな要素を総合的に判断して行う必要があります。弁護士に相談することにより、経験に基づいて適正な慰謝料額を算定してもらうことができます。

8-3. 内容証明送付・示談交渉・訴訟等の法的手続を任せることができる

貞操権侵害の慰謝料を請求するにあたっては法的な手続を行う必要があることも、個人にとっては障害になりがちです。

個人で内容証明郵便を送っても相手が無視したり、交渉を求めても応じてくれない可能性があります。あるいは相手側が弁護士を立ててくるということも想定されます。

弁護士に相談することにより、弁護士名義での慰謝料請求が可能になるので相手が交渉に応じてくれる可能性が高くなります。また相手側が弁護士を依頼している場合でも対等に交渉することができます。さらに、離婚請求や慰謝料請求の交渉がまとまらずに裁判で争うことになった場合も、個人で行うのが難しい訴状作成や証拠の提出、期日出席・弁論等の訴訟関連の手続を任せることができます。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

9. まとめ

貞操権侵害で慰謝料請求する場合、証拠収集、相手との交渉、訴訟提起等すべて個人で行うのは困難な法的手段をとる必要があります。男女問題に強い弁護士に相談することで、慰謝料を支払ってもらうために適切な方策を講じることができます。

「夫の不倫相手に対して慰謝料請求したいが、独身であると言われたらしい。これでも慰謝料請求できますか?」

「DVが原因で別居後に離婚した元夫が不倫していたことが離婚後にわかった。元夫に対して慰謝料請求することはできますか?」

など、貞操権侵害の慰謝料請求に関するご質問がありましたら、ぜひ法律事務所の無料法律相談をご利用ください。

この記事をSNSでシェア!

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

相談無料初回60分

担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
ホーム お役立ちコラム 不倫慰謝料 慰謝料請求したい 貞操権侵害とは?慰謝料請求できるケースや相場を弁護士が解説!

電話受付時間 10:00〜17:30 (土日祝・年末年始を除く)