慰謝料請求したい

不倫の慰謝料相場はいくら?慰謝料を決める要素を弁護士が解説!

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本記事では、不倫の慰謝料の相場や、慰謝料の金額を決定づける要素について解説します。

目次

1.不倫の慰謝料とは

この記事でいう、不倫の慰謝料とは、既婚者が配偶者以外の相手と性的関係を伴う交際をした事実があった場合に配偶者に対して発生する慰謝料を指します。

慰謝料(民法第710 条)とは、不法行為によって受けた精神的苦痛(非財産的損害)に対する賠償金です。夫婦はお互いに配偶者に対して、自分以外の相手と性的関係を持たないことを要求する権利(貞操権)を持っています。不倫はこの貞操権を侵害する 不法行為にあたります。そして、貞操権侵害によって受ける損害は通常、財産的なものよりも精神的苦痛のほうが大きくなります。従って、貞操権を侵害された側は、侵害した側つまり不倫の当事者に対して慰謝料を請求することができます。

2.不倫の慰謝料相場はどれくらいなのか

不倫した配偶者に対して慰謝料を請求することを考えたとき、「こういう場合にいくらぐらい慰謝料を請求できるか」という相場が気になるのではないでしょうか。

本章では不倫の慰謝料相場について、不倫した配偶者に対して離婚を求める場合と離婚を求めない場合に分けて解説します。

2-1.離婚を求める場合

(1)相場は100~300万円

不倫した配偶者に対して離婚を求める場合、請求できる慰謝料は(a)不倫が原因で離婚に至ったことにより受けた精神的苦痛に対する慰謝料(離婚慰謝料)と(b)配偶者以外の相手と性的関係を伴う交際をしていたことにより自身が受けた精神的苦痛に対する慰謝料(不貞行為慰謝料)との合計額となります。

離婚を求める裁判では、離婚慰謝料・不貞行為慰謝料とも婚姻期間や未成熟の子供の有無・年齢、不貞行為が行われた期間や不貞行為に至った交際の経緯等の様々な事情を総合的に考慮してケースバイケースで判断されますが、相場はおおむね100万円〜300万円とされています。

(2)不倫以外に婚姻を破綻させた事情があれば増額の可能性

不倫した側の配偶者(有責配偶者)が不倫以外に配偶者に対して身体的暴力やモラハラ、生活費を渡さない・お金を取り上げる、行動を監視する等の「配偶者に対する暴力(DV)」にあたる行為を行っていた等、他に婚姻を破綻させる原因になるような事情がある場合には増額されます。ただし、1,000万円を超えるのは有責配偶者の資力が高く、かつ事情が悪質である場合に限られます。離婚の財産分与と併せて行われる場合や、不倫の有責配偶者によるDV等の事情があった場合で500万円程度とされています。

2-2.離婚を求めない場合

(1)相場は50~100万円

離婚を求めない場合は、上の(b)の不貞行為慰謝料のみを請求することができます。不倫の事実により貞操権を侵害されたことは認められますが、それによって婚姻が破綻するには至らなかったことになるので離婚を求める場合に比べて相場の金額は低くなります。多くの場合50万円〜100万円程度で、多額となるケースでも150万円~200万円程度とされています。

(2)財産状況等により相場以上の慰謝料が認められる場合もある

割合としては少ないですが、離婚を求めない場合であっても、配偶者や不倫相手の財産状況、婚姻継続期間と不倫の継続期間、未成熟の子の有無や年齢、不倫の経緯、被害者が受けた精神的苦痛の程度等の諸事情を考慮して、相場を大幅に上回る額の慰謝料が認められたケースもあります。

例えば東京地方裁判所2004[H16]年4月23日付判決は、婚姻期間3年・不倫継続期間2年半で離婚に至らなかったものの被害者(妻)が鬱病及び自律神経失調症を発症していたケースで、判決は被告の不倫相手の女性に対して400万円の支払いを命じました。

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3.不倫の慰謝料の金額はどのように決まるのか

本章では、不倫の慰謝料の金額がどのように決まるか、慰謝料額を決定づける要素について裁判離婚の場合の裁判所の判断基準に基づいて解説します。

3-1. 不倫が行われた期間・程度・状況

一般的に、以下の要素が多くなるほど慰謝料は増額される傾向にあります。

  • 不倫が行われた期間が長く、性的関係を持った頻度が高い
  • 有責配偶者の側から不倫関係に誘った

3-2. 婚姻の状況

婚姻期間、夫婦の年齢、未成熟の子供の有無・年齢、夫婦の円満度等のさまざまな要素を考慮します。一般的に、以下の要素があると慰謝料は増額される傾向にあります。

  • 婚姻期間が長い
  • 未成熟の子供がいる
  • 子供の年齢が幼い
  • 夫婦関係が円満であった
  • 妻が妊娠中に夫が不倫していた

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4. 不倫の慰謝料請求ができるケース

本章では、不倫された側の配偶者が慰謝料請求できるケースとできないケースについて、有責配偶者に慰謝料請求する場合と不倫相手に慰謝料請求する場合に分けて解説します。

4-1. 配偶者が貞操権侵害行為の事実を認めたか貞操権侵害の事実が証明された

慰謝料請求権は貞操権侵害行為によって受けた精神的苦痛に対する賠償請求権です。そのため、まず貞操権を侵害した側の配偶者が、貞操権侵害行為を行った事実を認めた場合には慰謝料を請求することができるでしょう。

また、貞操権侵害の事実を認めなかった場合は最終的に裁判でその事実の有無が争われることになりますが、慰謝料請求する側が貞操権侵害の事実を証拠によって証明した場合には慰謝料請求が認められるでしょう。

4-2. 貞操権侵害行為が行われた時点で婚姻関係が破綻していなかった

慰謝料請求権は貞操権侵害を根拠としています。従って、既婚者が配偶者以外の相手と性的関係を持った場合に、最初に性的関係を持った時点で婚姻関係が破綻していたとはいえない場合には貞操権侵害が認められるでしょう。

婚姻関係が破綻していたといえるか否かが争われた場合は、最終的に裁判官が婚姻状況を総合的に考慮して判断することになります。

4-3. 不倫が発覚した時点または離婚成立日から3年経過していない

不倫の慰謝料請求権については不法行為による損害賠償権の消滅時効規定(民法第724条)が適用されます。これにより、慰謝料請求権は ①被害者が損害及び加害者を知った時から3年間それを行使しないとき(1号)、及び②不法行為の時から20年間行使しないとき(2号)には時効により消滅します。厳密には②の20年という期間は「除斥期間」と呼ばれています。

従って、離婚を求めない場合の配偶者に対する慰謝料請求権は被害者が貞操権侵害行為の事実を知った時点から3年を経過すると時効消滅してしまいます。また、被害者が貞操権侵害行為の事実を知らなかった場合でも、貞操権侵害行為が最後に行われた時点から20年経過すると慰謝料請求権が消滅します。

ただし、離婚に至った場合で離婚後に元配偶者に慰謝料請求が可能なのは離婚成立日から3年以内となります。

従って、配偶者に対して慰謝料請求する場合、①離婚して元配偶者に対して慰謝料請求権する場合と ②離婚を求めずに慰謝料請求する場合で消滅時効の起算点(消滅時効の進行が始まる時点)に違いがあります。

4-4. 以下は、不倫相手に対して慰謝料請求が認められるケースです。

4-4. 不倫相手の身元が特定できている

まず、不倫相手の氏名・住所が特定できていることが必要になります。この点、配偶者に対する慰謝料請求は不倫相手の氏名住所が不明でも可能です。しかし不倫相手に対して慰謝料請求する場合は、人違いが許されないことはもちろん、慰謝料請求の内容証明や訴状を送る際には相手の氏名・住所が特定できていなければなりません。

4-5. 被害者が不倫相手を特定した時点から3年経過していない

配偶者に対して慰謝料請求する場合は民法第724条1号の「加害者を知った時」という要件が問題にならないのに対して、不倫相手に対して慰謝料請求する場合は「加害者を知った時」つまり被害者が不倫相手を特定した時が起算点になります。通常は不倫の事実発覚よりも不倫相手特定のほうが時間的に後になるので、被害者が不倫相手を特定した時点から3年経過していない時点では不倫相手に対する慰謝料請求が認められます。

なお、被害者が不倫相手を特定したか否かにかかわらず、最後に貞操権侵害行為が行われた時から20年経過した場合も慰謝料請求権が認められないことになります。

4-6. 性的関係を持った相手が既婚者であることを知り又は過失により知らなかった

貞操権侵害行為が行われた場合、既婚者と不倫相手とは既婚者の配偶者に対する1個の慰謝料支払義務について連帯責任を負うことになります(民法第719条1項:共同不法行為)。

しかし不倫相手が共同不法行為者と認められるのは、貞操権侵害の故意がある場合、つまり相手が既婚者であることを知り又は過失により知らなかった場合に限られます。

従って、相手が既婚であるかどうかを全く話さなかったり、あるいは「独身である」「配偶者とは離婚した」等と偽っていた場合には不倫相手に貞操権侵害の故意・過失が認められない可能性があります。

なお、裁判では原告側(慰謝料請求する側)が、被告(不倫相手)が性的関係を持った時点で相手(原告の配偶者)が既婚者であることを知り又は過失により知らなかった旨を立証する必要があります。

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5. 不倫の慰謝料請求ができないケース

本章では、不倫の慰謝料請求ができないケースについて解説します。

5-1. 性的関係を持った事実がなく離婚を求めない場合

配偶者が結婚後に第三者と交際した事実はあるが、性的関係を持った事実がない場合、またはその事実を証明できなかった場合は原則として慰謝料請求が認められません。前述のように、離婚を求める場合は性的関係を持った事実を証明できなかった場合でもその交際によって婚姻が破綻したといえるような事情がある場合に例外的に認められるケースがあります。しかし離婚を求めない場合は、貞操権侵害の事実がない以上、交際によって婚姻が破綻したともいえないので、原則として慰謝料請求は認められないでしょう。

5-2. 性的関係を持った時点で夫婦関係が破綻していた場合

最初に性的関係を持った時点で既に別居中である等、婚姻関係が破綻していた場合には貞操権を侵害したとはいえないことになります。この点、一方が他方の不倫の事実を知らないまま不仲になり別居している間に不倫が発覚したというような状況でも、不貞行為と婚姻破綻の間に因果関係があるとはいえないため貞操権侵害は認められないことになります。

5-3. 不倫が発覚した時点または離婚成立日から3年経過していた

また、被害者が貞操権侵害の事実を知らなかった場合も、最後に貞操権侵害行為が行われてから20年経過すると慰謝料請求権が消滅します。

以下5-4・5-5・5-6は不倫相手に対する慰謝料請求が認められないケースです。

5-4. 不倫相手の身元を特定できない場合

不倫相手の身元を特定できない場合も配偶者に対する慰謝料請求は可能ですが、最低でも住所と氏名が特定できていなければ不倫相手に対して慰謝料請求することはできません。

5-5. 相手が既婚者であることを知らなかったか「独身である」等と偽られた場合

不倫相手が、慰謝料を請求された時点までその相手が既婚者であることを知らなかった場合、あるいは既婚者側が「自分は独身である」「離婚した」「離婚協議中である」等と偽っていた場合には貞操権侵害の故意・過失が認められず、不倫相手に対する慰謝料請求は認められない可能性があります。

ただし、不倫関係を継続中に既婚者であることを知ったが関係を継続したというような場合は、知った時点以降の性的関係において貞操権侵害の故意が認められることになります。

5-6. 不倫の事実が発覚して被害者が不倫相手を特定した時点から3年経過した場合

配偶者に対する慰謝料請求では民法第724条1号の「加害者の特定」が問題となりませんが、不倫相手に対する慰謝料請求では加害者つまり不倫相手が特定されていることが必要となるため、消滅時効も不倫相手が特定された時点から進行します。この場合の「特定」は何らかの方法で請求が可能になることを意味するので、氏名までは必要ではなく、住所等により請求する先が特定されていれば足りると解されています。

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6. 不倫の慰謝料請求する方法

配偶者が不倫していると確信して慰謝料請求を考えたとき、まず「どうやって慰謝料請求すればよいか」が気になるのではないでしょうか。

本章では不倫の慰謝料請求の方法について解説します。

6-1.相手と話し合いの機会を持つ

まず、慰謝料請求する相手と話し合い(示談交渉)の機会を持ち、そこで不倫の事実を認めさせて慰謝料請求するという方法をとることができます。離婚を求める場合は離婚協議の中で配偶者と話し合うか、不倫相手も入れて三者で話し合います。

離婚を求めない場合は夫婦間・三者間または不倫相手との間で慰謝料について交渉することになります。

交渉が成立した場合は、離婚協議書または和解書の原文を作成して公証役場に持参し、公正証書として作成することをお勧めします。公正証書は、裁判の判決と同等の強制力を持つため、慰謝料の支払いが行われなかったり分割払いが途中で滞ったりした場合に強制執行が可能です。

6-2.話し合いを拒否された場合・会いたくない場合は内容証明で請求書を送る

相手から話し合いを拒否されたり、配偶者とも不倫相手とも直接会いたくないという場合は慰謝料請求書を作成して内容証明郵便で郵送するようにしてください。内容証明郵便を利用することにより郵便局がその郵便の内容と発送日時・到達日時を記録して証明してくれるので、慰謝料請求権が消滅時効(民法第724条1号)にかかるのを防ぐことができる場合があります。

6-3. 交渉不成立の場合や請求を無視された場合は訴訟を提起する

示談交渉が成立しなかったり、内容証明を送っても支払いが行われなかった場合は裁判所に慰謝料請求訴訟を提起することになります。なお、まずは離婚協議・調停手続において請求し、これらによっても離婚が成立しない時には、家庭裁判所に離婚訴訟を提起してその中で慰謝料請求を行います。

慰謝料請求訴訟の場合、請求額が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所に訴訟提起します。

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7. 不倫の慰謝料を請求する際の注意点

本章では、不倫の慰謝料を請求する際に注意すべきことについて解説します。

7-1. 時効期間内に請求すること

貞操権侵害の慰謝料請求権は時効または除斥期間内経過後に消滅します(下記の表参照)。

そのため、特に不倫の事実を知った場合には時効期間が短いので、法律上消滅時効の進行を止める「裁判上の請求」(民法第147条1項1号)または「督促」(同2号)をできるだけ早く行うことが大切です。「催告」には、口頭・書面で行った場合も含まれます。ただし口頭で請求しただけでは証拠が残らないため、内容証明郵便で請求書面を郵送することをお勧めします。

[時効期間のまとめ]

請求相手/離婚有無離婚した場合離婚しなかった場合
配偶者離婚成立の日から3年最後の貞操権侵害から20年事実を知った時から3年最後の貞操権侵害から20年
不倫相手身元を特定してから3年最後の貞操権侵害から20年身元を特定してから3年最後の貞操権侵害から20年

7-2. 不倫当事者に慰謝料支払義務についての求償権を放棄させる

不倫相手に貞操権侵害の故意がある場合、有責配偶者と不倫相手とは被害者に対して1個の慰謝料支払義務を連帯して負うことになります。

そのため、有責配偶者と不倫相手との間で負担部分を定めていれば、どちらかが全額支払った時に他方に対して負担部分を超える部分について支払いを求めることができます。これを「求償権」といいます。しかしこの負担部分は債務者間で自由に定めることができるため、債権者側からみると不都合が生じる場合があります。

例えば、妻Bが夫Aの不倫相手Cに対して100万円の慰謝料請求をしたとすると、AC間で負担部分を100:0と定めていれば、CがBに対して100万円支払ったとしてもCはBに対して全額求償できることになります。これでは、Bが夫の不倫相手に対して慰謝料請求した意味がなくなってしまいます。

この求償権については、連帯債務者全員の同意があれば放棄させる(行使させない)ことができます。そこで、示談交渉の場で求償権不行使について相手の同意を得ておくことをお勧めします。

7-3. 証拠収集目的であっても犯罪に該当する行為をしないこと

慰謝料請求するためには不倫の事実を立証するための証拠が必要となります。確かに貞操権侵害は不法行為にあたるのですが、立証のための証拠収集の目的であっても刑法等の犯罪に該当する行為を行うことは許されないので注意が必要です。

特に、①不倫相手の住居への立ち入りや ②不倫相手の住居内での監視カメラ・ボイスレコーダー設置、③住居からの物・データの持ち出し、④不倫相手の所有物を破壊したり使用不能にしたりする行為、⑤不倫相手に対して殺す等と脅したり ⑥脅した上で金銭を奪ったりする行為はすべて刑法犯罪に該当する可能性があります※。

このような行為を行った場合、刑事処分で逮捕・起訴されたり、不倫相手から損害賠償請求される可能性がありますので注意が必要です。

※①住居侵入罪(刑法第130条) ②個人情報保護法第18条(情報の利用目的の通知義務)違反③窃盗罪(刑法第235条) ④器物損壊罪(刑法第261条) ⑤脅迫罪(刑法第222条)  ⑥恐喝罪(刑法第249条1項)

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8. 不倫の慰謝料請求を弁護士に相談するメリット

不倫の慰謝料については、まずどのくらい請求すればよいか個人で判断することは難しいでしょう。

また内容証明郵便には支払いを法的に強制する効力がないため、無視された場合に無理やり取り立てることはできません。強制的に取り立てるためには裁判で請求認容判決を得ることが必要ですが、訴訟では不貞行為の事実を立証しなければならないため単独で行うことは困難です。

この点、不倫の慰謝料請求について弁護士に相談することで、これらの問題を解決することができます。本章では、不倫の慰謝料請求を弁護士に相談するメリットについて解説します。

8-1. 証拠収集方法について助言を受けられる

(1)証拠収集を個人で行うのは困難

不倫の慰謝料請求で最初にネックとなりやすいのが「証拠収集」です。配偶者や不倫相手が不倫の事実をすぐに認めて慰謝料請求に応じてくれれば証拠は必要ありません。しかし、多くの場合は不倫の事実を認めさせるための証拠を集める必要が生じます。また、離婚請求や不倫の慰謝料請求の交渉が成立せずに訴訟になった場合は、原告側(離婚や慰謝料を請求する側)が配偶者の不倫の事実を立証しなければなりません。

(2)弁護士に相談すれば証拠収集の悩みが解決する

この点、男女問題に強い弁護士に相談すれば個別の事情に応じて必要となる証拠の種類や、それぞれの証拠の集め方について詳しいアドバイスを受けることができます。また、不倫相手の特定等、個人情報を得る必要がある場合は弁護士照会制度を利用して行うことが可能です。さらに、必要な場合は信用できる探偵事務所(興信所)を紹介してもらうことができることもあるでしょう。

8-2. 適正な請求額を算定してもらえる

不倫の慰謝料を請求する場合、まず「どのくらい請求できるか」ということが気になるのではないでしょうか。

配偶者が不倫していたことを知ってしまうと、憤りにかられて多額の慰謝料を取りたい気持ちになるのも当然です。

しかし、慰謝料額の算定はさまざまな要素を総合的に判断して行う必要があります。そこで弁護士に相談することにより、経験に基づいて適正な慰謝料額を算定してもらうことができます。

8-3. 内容証明送付・示談交渉・訴訟等の法的手続を任せることができる

不倫の慰謝料を請求するにあたっては法的な手続を行う必要があることも、個人にとっては障害となりがちです。個人で内容証明を送っても相手が無視したり交渉に応じてくれない可能性があります。あるいは相手側が弁護士を立ててくるということも想定されます。

弁護士に相談することにより、弁護士名義での慰謝料請求が可能になるので相手が交渉に応じてくれる可能性が高くなります。また相手側が弁護士を依頼している場合でも対等に交渉することができます。さらに、離婚請求や慰謝料請求の交渉がまとまらずに裁判で争うことになった場合も、個人で行うのが難しい訴状作成や証拠の提出、期日出席・弁論等の訴訟関連の手続を任せることができます。

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9. 不倫の慰謝料を弁護士に依頼した際の費用内訳と相場

不倫の慰謝料請求を弁護士に依頼する場合、やはり弁護士費用が心配になると思います。弁護士費用については、以前は日弁連が定めた弁護士報酬規定(旧報酬規定)によって一律に決められていました。

現在では旧報酬規定が廃止されたため、報酬体系が自由化されています。

本章では、不倫の慰謝料請求を弁護士に依頼した場合の費用相場・内訳・相場について解説します。

9-1. 相談料

相談料について、旧報酬規定では個人の場合「30分ごとに5,000円から1万円の範囲内の一定額」と定められていました。現在もこの料金を採用して「30分5,000円・1時間1万円(税別)」と定める法律事務所が多いのですが、不倫の慰謝料請求のように依頼者が個人の場合は初回相談あるいは初回相談のうち一定時間(30分~1時間)を無料にしている法律事務所が多くあります。また、来所が難しい依頼者に向けてLINEやメッセンジャー、ZOOM等でのオンライン無料相談を行っている所もあります。

9-2. 着手金

旧報酬規定では弁護士に業務を依頼する場合には着手金を支払う必要があり、着手金額については最低額を10万円として、以下のように定められていました。

経済的利益(慰謝料請求額)報酬割合(消費税別)
300万円以下8%または10万円のいずれか多い方
300万円~3,000万円5%+9万円
3,000万円~3億円3%+169万円
3億円以上2%+369万円

現在も旧報酬規定に従う形で着手金を定めている法律事務所もありますが、着手金を無料ないし低額にする法律事務所も増えています(その分、成功報酬の割合や額が高くなっていることが多いでしょう)。

なお、着手金とは別に事務手数料がかかる場合があります。不倫の慰謝料請求の場合は交渉(または内容証明作成+送付)・訴訟(第一審)に分けて設定しているところが多いです。その場合、相場は税別で交渉で1万円程度、訴訟では2万円~3万円程度となります。

離婚手続の中で不倫の慰謝料を請求する場合は、交渉で1万円程度、調停で1万円程度、訴訟では2万円~3万円程度となります。

9-3. 報酬金

旧報酬規定では以下の割合となります。

経済的利益(裁判で認められた慰謝料額)報酬割合(税別)
300万円以下16%
300万円超~3,000万円以下10%+18万円
3,000万円超~3億円以下6%+138万円
3億円を超える場合4%+738万円

実際に認められる不倫慰謝料の相場は50~300万円なので、現在も多くの法律事務所が旧報酬規定の「300万円以下」の項目に準じた報酬額を定めています(この場合には着手金の割合が多くなっていたり、旧報酬基準に準じて定められているでしょう)。

成功報酬制をとる場合は、報酬に着手金や手数料・実費等を加算するのでこれよりも高くなることが多いです。

9-4.実費

交通費実費、内容証明郵便の切手代、裁判所の訴状等送達用の印紙代等の実費が含まれます。

9-5.日当

遠方に出張する場合、出張日当がかかる場合もあります。出張日当の相場は税別で半日1万円~3万円、1日3万円~5万円となります。

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10. 不倫慰謝料に関するよくあるQ&A

本章では、不倫慰謝料についてよくお受けする質問とその答えをご紹介します。

10-1. 離婚する場合財産分与や養育費とは別に慰謝料請求できますか?

離婚手続の中で最初に行う離婚協議(民法第763条)において、相手側が同意すれば財産分与・養育費等の財産関係の協議事項とは別に慰謝料請求についての取り決めを行うことができます。または、合意により財産分与に慰謝料分を含めることも可能です。

離婚を求める側が財産分与とともに、あるいは財産分与と別に不倫の慰謝料請求を行ったが有責配偶者のほうがそれを拒否したという場合は、家事調停(家事事件手続法第255条1項)を申立てて調停委員を介して話し合いを行うことになります。

調停でも慰謝料請求についての合意が成立しなかった場合、最終的には家庭裁判所に離婚訴訟(民法第770条)を提起して訴訟手続の中で慰謝料請求することになります。

10-2. 離婚せずに不倫相手に慰謝料請求しようとしたら配偶者に「自分が肩代わりする」と言われてしまった場合、肩代わりさせずに不倫相手に支払わせるにはどうすればよいですか?

(不倫相手に慰謝料請求することが可能な条件を満たしているという前提で)

不倫相手と有責配偶者とは、共同不法行為者(民法第719条1項)として相談者様に対して1つの慰謝料支払債務を連帯して負っていることになります。これは契約関係に基づかないことから不真正連帯債務と呼ばれています。不真正連帯債務の債務者の間でも民法の連帯債務の求償権についての規定が適用されます。従って、債務者間で負担部分を定めることが可能であるとともに、債務者の一人が負担部分を超える額を支払った場合にはその額について他の債務者に支払いを求めることができます(求償権の行使)。

本件で、配偶者が「不倫相手の肩代わりをする」といった場合、法律的には負担部分を配偶者100:不倫相手0のように定めて、不倫相手が全額支払った場合に配偶者に対して全額求償できるようにすることになります。しかし、それでは不倫相手に慰謝料請求した意味がなくなってしまいます。

求償権については、債務者全員の同意があれば放棄する旨を約束させることができます。そこで、相談者様と配偶者・不倫相手の三者間の示談交渉を行い、不倫相手が配偶者に対して求償権を放棄することを認諾させるという方法があります。配偶者と不倫相手が頑なに求償権放棄を拒否した場合、慰謝料を減額する代わりに求償権を放棄してもらうという方法があります。減額を申し出ても求償権放棄を拒否される等、交渉が進まないおそれがありましたら弁護士に相談することをお勧めします。

10-3.不倫相手に慰謝料請求したら分割払いにしてほしいと言われた。最後まで支払ってもらえるか不安なので滞納させない方法を教えてほしい。

慰謝料は一括払いが原則で、分割払いにすることは債権者(被害者)側にとってデメリットしかありません。しかし現実に一括払いが困難であるのは致し方ありません。滞納を防ぐ方法としては以下のものがあります。

①まず最初に頭金として多めの金額を支払ってもらう(示談成立時または示談成立から3営業日以内等、可能な限り早期に)

②示談書に以下の事項を明記する

  • 慰謝料総額
  • 分割払いの回数
  • 支払い開始月と完了予定年月
  • 頭金
  • 頭金以外の1回ごとの支払額
  • 滞納した場合の措置(滞納したら遅延損害金を徴収する、残金を一括で支払う等) 
  • 残金支払もなされなかった場合の強制執行認諾文言

③示談書を公証役場に持参して強制執行認諾文言付き公正証書とする

(民事執行法第22条7号により滞納時の強制執行が可能になります)

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11. まとめ

不倫の慰謝料額については概ね相場が決まっていますが、離婚を求める場合は他の財産的協議事項との調整の問題があります。また離婚を求めない場合には相場の金額が大きくない上、不倫相手に対して請求するには住所氏名の特定や分割払い対応等様々な問題が生じます。男女問題に強い弁護士に相談することにより、個別の当事者の状況に照らして適正な慰謝料額を算定するとともに、示談交渉や公正証書作成、訴訟等の難しい法的手続をすべて任せることができます。

「子供2人がまだ小さいので離婚はしたくないが、不倫相手が許せないので慰謝料請求したい。しかし不倫相手はお金がないらしいので下手に支払わせると夫が肩代わりしてしまいそうで意味がない。肩代わりされるくらいなら離婚した方がいいかもしれない。離婚すべきかどうかのアドバイスも含めて不倫相手から慰謝料を取れる方法はあるかを教えてほしい」

等、慰謝料額を始め不倫慰謝料全般についてご質問がありましたら、ぜひ法律事務所の無料相談をご利用ください。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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