その他

雇い止めとは?雇い止めされた際の対処法や相談先を弁護士が解説

雇い止めとは?雇い止めされた際の対処法や相談先を弁護士が解説
この記事をSNSでシェア!

「雇い止め」という言葉は時々耳にしますが、解雇とはどのように違うでしょうか。また、裁判等で不当解雇を争って解雇の無効が認められる場合があるように、雇い止めが無効となる場合はあるでしょうか。本記事では、雇い止めが無効になるのはどのような場合か、雇い止めされた場合の対処法や相談先等について解説します。

1.雇い止めとは

1-1. 有期契約の満了時に会社側の判断で契約を終了させること

雇い止めとは、期間の定めのある労働契約(労働基準法第14条1項・労働契約法第17条)の満了時に会社側の判断により契約を更新せずに終了させることをいいます。雇い止めという言葉は法律上の用語ではないのですが、有期労働契約の満了時に当事者双方の意思によって契約を終了する場合と区別するために一般的にこの言葉が使われています。

1-2. 無期転換権(労働契約法第18条)の新設との関係

2013[H25]年の改正労働契約法施行により、同一の使用者との間での有期労働契約が更新され続けて通算契約期間が5年を超えた場合には、当該労働者の申込みにより無期労働契約に転換できるという「無期転換権」の制度が新設されました(労働契約法第18条1項)。労働契約法第18条は全ての非正規雇用労働者が対象となります。この制度ができた一方で、企業側が無期転換権を行使させないために契約期間が5年を超えないあたりで雇い止めするというケースが生じています。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

2.雇い止めと解雇の違い

雇い止めという言葉は日常的に耳にしますが、解雇とはどう違うのだろうと思われたことはないでしょうか。本章では雇い止めと解雇の違いについて解説します。

2-1. 労働契約の「満了時点」か「途中」かの違い

雇い止めと解雇とは、会社側がその一方的な意思によって強制的に労働契約を終了する、つまり労働者に対してその会社での仕事をやめさせる点で共通しています。両者の違いは、会社が労働契約を終了するのが「有期契約の満了時点」であるか、有期無期を問わず「契約の途中」であるかという点にあります。すなわち、解雇の場合は(a)期間の定めのない労働契約が含まれる点、そして、(b)有期労働契約の「途中」で会社が契約を解除する点で、雇い止めと異なります。

2-2. 解雇のほうが要件が厳しい

解雇は労働者にとって予期しない時期にその会社での仕事をやめさせられることになるため、労働者が大きな不利益を被ることになります。そこで労働者の利益を保護する必要があることから、解雇に対しては労働基準法・労働契約法上より厳格な要件が課されています。

まず、労働者を解雇する場合は労働契約を終了させる日の30日以上前に予告するか、予告しない場合は30日分以上の賃金を支払うことが義務づけられています(労働基準法第20条)。

また、法律上「合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合」は解雇権の濫用にあたるとして解雇は無効になります(労働契約法第16条:解雇権濫用の法理)。さらに、差別的な理由や法律上の権利を行使したことを理由とする解雇が禁止されています。

有期労働契約においても、やむを得ない事由がない限り期間満了前に解雇されることが禁止されています(労働契約法第17条1項)。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

3.雇い止めが無効になるケース

雇い止めが行われるのは契約期間満了時であることから、解雇に比べると従業員が不利益を受ける程度は小さいと考えられています。そのため、有効要件は解雇の場合に比べると緩やかに解されています。しかし古くから裁判で雇い止めの効力を争う事例も多く、判例の蓄積の中で雇い止めの有効要件を画する法理が形成され、現在では労働契約法第19条に明文化されました。本章では、雇い止めの法理に照らして雇い止めが無効となるケースについて解説します。

3-1 雇い止めの法理

雇い止めが行われるのは契約期間満了時であることから、雇い止めに対しては解雇に対する労働契約法第16条は適用されません。しかし、有期契約が繰り返し更新されていた事例での雇い止めの効力を争う判例が蓄積される中で「雇い止めの法理」が形成され、2012[H24]年の労働契約法改正により、雇い止めの法理を明文化した第19条が新設されました。

同条によると、労働者が有期労働契約満了後速やかに更新の申込みをした場合において、以下の(a)及び(b)の要件をいずれも満たす場合には、会社は労働者の申込みを拒否することができません。

(a)以下のいずれかに該当する場合

  • 期間の定めのある労働契約(有期・期間雇用)が反復更新されて、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合(同条1号)
  • 期間の定めのない契約と実質的に異ならないとまではいえないものの、雇用関係継続への合理的な期待が認められる場合(同条2号)

(b)雇い止めが客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められないこと

3-2 雇い止めの違法性を判断するための要素

個々のケースで労働基準法第19条の雇い止め法理が適用されるか否かについては、判例をもとに厚生労働省が定める基準によれば特に以下の要素を考慮すべきとされます。

判断要素① 業務の客観的内容

具体例:従事する仕事の種類・内容・勤務の形態(業務内容の恒常性/臨時性、業務内容について正社員と同一性があるか否か等)

判断要素② 契約上の地位の性格

具体例:地位の基幹性/臨時性(嘱託・非常勤講師等)

労働条件について正社員と同一性があるか否か

判断要素③ 当事者の主観的態様

具体例:継続雇用を期待させる当事者の言動・認識の有無・程度等(採用に際して雇用契約の期間がどの程度であるか、更新や継続雇用の見込み等について雇い主側から説明があったか否か等)

判断要素④ 更新の手続・実態

具体例:契約更新の状況(反復更新されていたか否か、反復更新の回数、勤続年数等)

契約更新時の手続の厳格性の程度(更新手続の有無・時期・方法・更新の可否の判断方法

判断要素⑤ 他の労働者の更新状況

具体例:同様の地位にある他の労働者で雇い止めになったケースの有無

判断要素⑥ その他

具体例:有期労働契約を締結した経緯・勤続年数や年齢等の上限設定等

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

4.雇い止めされた際の対処法

本章では、契約更新を見込んでいたにもかかわらず雇い止めされてしまった場合に、法的にどのような手段をとることができるかを解説します。

4-1.雇い止め理由証明書を請求する 

解雇の場合は解雇理由証明書を請求することができます(労働基準法第22条により、請求があった場合に発行が義務づけられています)が、雇い止めの場合は雇い止め理由証明書の発行を請求することができます。労働基準法第14条に基づく厚労省告示第357号の第2条により、有期労働契約を3回以上更新した人、または雇い入れから1年以上勤務するとき、使用者は30日前までに予告する必要があります。その場合に労働者は雇い止めの理由の証明書を請求することが可能で、請求があった場合会社は遅滞なく交付する義務を負います。

雇い止め理由の例としては以下のようなものが挙げられます。

  • 前回の契約更新時に本契約を更新しないことが合意されていた
  • 契約締結当初から更新回数の上限を設けており、本契約は当該上限にあたる
  • 担当していた業務が終了・中止した
  • 事業縮小のため
  • 業務を遂行する能力が十分ではないと認められるため
  • 業務命令に対する違反行為、無断欠勤等の勤務態度不良

4-2. その他の証拠を揃える

雇い止め理由証明書と併せて、以下のような証拠を揃えることにより、会社との交渉や労働審判・訴訟で自分の主張の正当性を証明しやすくなります。

  • 雇用契約書
  • 労働条件通知書
  • 勤続年数や更新回数がわかる書類
  • 契約更新手続の内容がわかる書類
  • 契約更新を期待させる会社の言動や雇い止めについての会社と従業員の交信履歴(メールのコピー等)

4-3. 会社と交渉する

雇い止め理由証明書の発行を受けたら、会社に対して従業員の地位確認または雇い止め無効と損害賠償を求める交渉を行います。

4-4. 労働審判申立て・訴訟提起

従業員の地位確認または損害賠償請求について会社との交渉が成立しなかった場合は、労働審判申立てまたは民事訴訟を提起することになります。

(1)労働審判

雇い止めの無効主張のような労働紛争については、訴訟とは別に労働審判制度を利用することができます。労働審判では初回の期日(審理)を経て話し合いによる解決の見込みがあると判断されれば調停手続、それが難しいと判断されれば審判により解決策が提示されます。労働審判は一般的に以下のようなメリットがあるといわれています。

①原則として3回の期日で審理が終了するため、訴訟に比べると早期に問題解決を図ることができる

②裁判官とともに従業員側と会社側の双方から選ばれた労働審判員が関与することにより、同様の事例に照らした解決策を提案してもらうことができる

③審理が非公開で行われるため、当事者のプライバシーが守られる

他方、審判結果に対して一方が異議を申し立てた場合や、労働審判委員会の判断によって労働審判を終了した場合には訴訟に移行します。

この場合さらに時間と労力のかかる訴訟手続を経なければならないため、結果として最初から訴訟提起した方が早かったという事態が生じることがあります。また、労働審判では早期解決を目指すために双方が譲歩を求められることが多いので、例えば慰謝料の支払を求める場合などには、労働者側の主張どおりの金額で合意に至る可能性は高いとはいえません。従って、証拠関係が複雑ではなく、双方合意による解決の可能性がある場合に労働審判が適しているといえます。

(2)民事訴訟

任意交渉の段階で会社が頑なに契約更新を拒絶していたというように会社との歩み寄りが難しい場合は、労働審判を経ずに訴訟を提起するのが得策です。未払い賃金または逸失利益(契約が更新されていれば得られた賃金)等の請求額合計が140万円以下の場合は簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所に訴訟提起します。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

5.雇い止めの裁判例

雇い止めの効力が裁判で争われた場合、判例は①当該有期労働契約が期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っているか否か、及び②契約継続に対して期待することに合理的な理由があるといえるかについて、おおむね3章で述べた6つの要素に基づいて判断しています。本章では、これらの基準に基づいて雇い止めが無効とされた裁判例をご紹介します。

5-1. 実質無期契約タイプ

(1)東芝柳町工場事件(最高裁第一小法廷1974[S49]年7月22日付判決)

期間工として5回から23回にわたって契約を更新していた労働者が不況に伴う業務上の都合を理由に雇い止めされたために雇い止めの無効を主張した事件です。

裁判所は「契約を反復更新することで期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態となった場合には、雇い止めに意思表示は実質において解雇の意思表示に他ならず、解雇に関する法理を類推すべきである」と判断しました。

その上で、本件では期間工との契約が以下の事情から期間の定めのない契約と異ならない状態で存続していたと判断しました。

  • 期間工の仕事の種類・内容の点で無期労働契約の本工と差異がないこと
    採用の際に、会社側が長期継続雇用や本工への登用の可能性について期待させるような言動をしたこと
  • 会社が必ずしも期間満了の都度直ちに更新手続をとっていたわけではないこと
  • 過去に期間工が2ヶ月の期間満了によって雇い止めされた事例が存在しないこと

そして「本件の期間工に対する更新拒絶は無期雇用労働者の解雇と同様に扱うべきであるとし、解雇事由に該当するような理由がない本件において期間満了を理由として雇い止めすることは許されない」として雇い止めを無効と判示しました。

5-2. 期待保護タイプ

(1)龍神タクシー事件(大阪高裁1991[H3]年1月16日付判決)

臨時雇いのタクシー運転手が1年間の雇用契約期間満了時の雇い止めの無効を主張した事件です。裁判所は「本件雇用契約は、その実態に関する諸般の事情に照らせば、実質は期間の定めのない雇用契約に類似するものであり、雇用の継続を期待することに合理性を是認できるものとして、更新拒絶が相当と認められるような特段の事情が存在しない限り、期間満了のみを理由とした雇い止めは信義則に照らし許されない」として雇い止めを無効としました。

(2)カンタス航空事件(東京高裁2001[H13]年6月27日付判決)

原告はオーストラリアに本店を置く航空会社の日本支社で管理されている客室乗務員として、雇用期間を1年間とし、更新期間を5年間と区切った期間の定めのある雇用契約を締結し、契約社員として勤務していたところ期間満了による契約終了として雇い止めされました。これに対して解雇の法理の適用ないし準用による解雇無効を主張して従業員の地位確認を求めた事件です。裁判所は解雇の法理適用を認めた上で、「期間の定めのある契約でも契約を反復更新してきた場合には、期間満了のみの理由で契約を打ち切ることは信義則上許されない」として雇い止めを無効と判示しました。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

6.雇い止めのトラブルの相談先

本章では、雇い止めに遭ってしまった場合の相談先機関を御紹介します。

6-1.厚生労働省の総合労働相談コーナー

厚生労働省が「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律」に基づいて設置した無料の相談サービスです。総合労働相談コーナーは全国に379箇所あり、都道府県の労働局や労働基準監督署に設置されています。雇い止めの他、その職場で起こったトラブル全般について対面または電話により相談することができます。総合労働相談コーナーでは専門の相談員が相談者から雇い止めに至った事情をヒアリングした上で、都道府県労働局による助言・指導や紛争当事者(雇い止めの場合は従業員と会社)の話し合いの仲裁手続(あっせん手続)の利用申出を受け付けています。

総合労働相談コーナーでの相談や助言・指導・あっせん手続は、全て無料で利用することができます。ただし、行政官庁のサービスであるため、労働者の立場に立って会社側に要求を行ったり、雇い止めを取り消す等の権限はありません。また、あっせん手続で会社側が話し合いに参加しなかった場合は手続きが終了します。

6-2.労働組合

また、会社との交渉を労働組合にサポートしてもらう方法もあります。有期契約労働者も労働組合に加入することが可能です。会社によっては有期契約労働者の労働組合がありますが、会社の労働組合が存在しない、あるいは加入できない場合は地域の合同労組(ユニオン)に加入することができます。労働組合は労働組合法で認められた団体交渉権を行使して、雇い止め撤回を求める交渉をすることができます。

6-3.弁護士(法律事務所)

雇い止めが明らかに不当であり、訴訟になっても雇い止め撤回を求める、または損害賠償や未払い残業代を請求したいという場合は弁護士に相談することをお勧めします。多くの法律事務所では初回の法律相談あるいは初回法律相談の一定の時間を無料としているので、無料相談を利用して解決の見通しや弁護士費用見積もり等を聞くことができます。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

7.雇い止めのトラブルを弁護士に相談するメリット

雇い止めは有期労働契約満了時に行われるため、解雇に比べると争っても主張が認められにくいのではないかと思われるかもしれません。しかし、過去に雇い止めを無効とした判例も数多くあります。本章では雇い止めのトラブルを弁護士に相談するメリットについて解説します。

7-1.会社との交渉を全て任せることができる

雇い止めに遭った従業員が個人で会社に対して雇い止めの撤回や未払い賃金の請求等を行うことは容易ではありません。会社が取り合ってくれないことも多く、また顧問弁護士を立ててくる可能性もあります。また、人事部や会社の管理職と顔を合わせたくない方も多いと思います。この点、弁護士に依頼すれば雇い止めの撤回、未払い賃金や残業代の請求等、法律的に行使できる権利を実現するための交渉を全て任せることができます。弁護士に依頼することで会社が真剣に対応してくれることもよくあります。会社側が顧問弁護士を立ててきても対等に交渉することができます。また、交渉のために必要な証拠の集め方についても教えてもらうことができます。

7-2.訴訟手続を任せることができるのは弁護士に限られる

また、会社との交渉がまとまらずに裁判になった場合でも、代理人として訴訟手続の全てを任せることができます。労働事件では通常、依頼者ご本人が訴訟に出席する必要はありません。第三者機関で労働者本人の訴訟手続を代理することができるのは弁護士のみで、他の士業者や(会社との交渉が可能な)労働組合も訴訟手続を代理することはできません。

8.まとめ

有期雇用契約の従業員が予期しない雇い止めを通告されたら、次の仕事が決まる保証がない中で不安な日々を過ごすことになってしまいます。雇い止めが不当であっても、無効を主張して争うことに時間と労力を使うべきか、それより早く次の仕事を見つけたほうがよいのではないかと迷うのではないでしょうか。しかし、雇い止めがその従業員にとって明らかに不当であるとすれば「非正規だから仕方ない」などと諦めず、労働問題に強い弁護士に相談することをおすすめします。

「最初に契約するときに会社から正社員登用の可能性があるといわれたので頑張っていたのに、事業縮小を理由に雇い止めされてしまった」「契約期間が通算で5年になったので無期転換申込権を行使しようとしたら雇い止めされてしまった」等、雇い止めに関する悩みや御質問がありましたら、是非法律事務所の無料法律相談を御利用ください。

この記事をSNSでシェア!

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

相談無料初回60分

担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
ホーム お役立ちコラム 労働問題 その他 雇い止めとは?雇い止めされた際の対処法や相談先を弁護士が解説

電話受付時間 10:00〜17:30 (土日祝・年末年始を除く)