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労基署への相談はばれるの?匿名で相談する方法や注意点を解説!

労基署への相談はばれるの?匿名で相談する方法や注意点を解説!
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1.労基署(労働基準監督署)とは

労基署(労働基準監督署)とは、労働基準法その他の労働関連法令に基づいて、管轄内の事業所が法令に違反していないか監督し改善指導を行う厚生労働省の機関です。

労基署は全国に321署と4支署が配置され、労働者の相談窓口として、労働に関する相談や法令に違反する事実の申告の受付け、労働基準監督官の立ち入り調査を含む事業所の監督・指導を行います。

労基署が会社の違法行為を認めると、労働基準監督官の立ち入り調査が行われます。会社が労基署の指導に従わないときには、監督官が事業主や関係者を逮捕・捜索・差押をすることもあります。

会社が残業代を払ってくれない、有給休暇がとれない、雇用契約書と現状が異なる、など会社の違反行為が疑われる場合は、労基署に無料で相談・通報することができます。

しかし、労基署に相談や通報にいった場合、会社にばれてしまうのではないかと不安に思う方も少なくありません。労基署に相談した後も継続して同じ会社で働くことを希望しているのであれば、会社に知られることはなおさら避けたいところでしょう。

本記事では、労基署への匿名相談の可否、相談できる内容、相談する方法などについて労働問題に強い弁護士が解説します。

2.労基署に匿名での相談は可能なのか

ここでは、労基署に匿名で相談できるのか、相談できるメリットやデメリット、また匿名で相談した後の流れについて解説します。

それぞれ見ていきましょう。

2-1.匿名での相談は可能

労基署に匿名で相談すること自体は可能です。実名を言わないからといって、労基署が相談を拒否するようなことはありません。匿名を希望することを伝えれば、匿名のままで相談を受付けてくれます。

ただし、匿名で相談する場合は、以下のメリット・デメリットがあるので注意しましょう。それぞれについてよく理解したうえで、匿名で相談するのか否かを検討してください。

2-2.匿名で相談するメリット・デメリット

労基署に匿名で相談すると、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか?

(1)メリット

匿名で労基署に相談するメリットは、実名で相談するよりも会社にばれる可能性が低いということです。労基署に相談するときに氏名や会社名も伝えなければ、労基署への相談は会社にばれません。ただし、匿名であっても小規模の会社であったり、また特定の情報しか知りえない人の通報であるような場合には、実質的に相談者が特定されてしまうケースがあるため注意してください。

また、匿名にすることで、労基署に会社の違反行為を相談しやすくなり精神的な負担が軽減されます。労基署に相談するということは、違法な状態を是正して労働条件を改善してほしいという目的のほかにも、話を聞いてもらいたい、不当な状況を理解してもらいたいという想いもあるでしょう。このような場合に、匿名にすることは労働者にとっては有益です。

(2)デメリット

反対にデメリットは、匿名で労基署に相談すると相談内容が特定されずに一般論として処理されてしまうことです。氏名のみならず会社名までもわからないとなると、会社の違反行為もどのような状況であるのか、労基署でも対処できなくなるからです。

例えば、クレーンなどの危険物のある現場で長期残業が強いられるなど早急に対応が必要な事案は、匿名よりも実名で通報したほうがよいでしょう。労働災害が発生しそうな危険で緊急を要する場合は、労基署も早期に動いてくれます。

2-3.匿名で相談したあとの流れ

労基署に労働問題を匿名で相談すると、その後はどのような流れになるのでしょうか。

労基署に会社の違反行為を相談・通報すると、労基署では通報された相談が労働基準法や他の労働関連法令に違反していないのか精査します。労基署で会社の違反行為が認定されると労働基準監督官の臨検監督という立ち入り調査が会社に入ります。立ち入り調査では、帳簿やタイムカード、雇用契約書や就業規則などを確認しながら労働者の勤務体制や職場環境の調査を行います。

立ち入り調査の後は、労基署より調査の結果が知らされます。会社に違反行為があれば是正勧告が出されます。この是正勧告は、会社に期限内に違反行為の是正を行うことを勧告する行政指導であるため、法的な拘束力はありません。ただし、期限を過ぎても違反行為が是正されない場合には、事業主が刑事処分を受けることもあるので注意が必要です。

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3.労基署に匿名で相談した場合、会社にばれるのか

労基署に匿名で相談・通報をした場合、会社にばれる可能性はあるのでしょうか?

3-1.原則的に守秘義務があるため会社にはばれない

労基署や労働基準監督官は、職務上知りえた情報を外部に漏らしてはならない「守秘義務」があるため、労基署から会社に相談者の情報が伝えられることはありません(労働基準法105条)。

労基署に会社の違法行為を相談したことを理由に、会社が相談者に解雇や賃金の引き下げ、あるいは不当な配置転換などの不利益な取り扱いをすることも禁止されています。

労働者には、会社の違反行為を申告して是正を求める権利があるからです(労働基準法104条)。

万が一、会社が相談者に対して不利益な取り扱いをしたことが労基署によって認められた場合には、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられます(労働基準法119条)。

したがって、労基署に匿名で相談したら会社にばれるのか否か、必要以上に心配しなくてもよいのですが、以下のようなケースには注意が必要です。

3-2.例外的に会社にばれてしまうケース

労基署や労働基準監督官が会社に相談者の情報を伝えることはありませんが、以下のようなケースは、実名でも匿名でも会社にばれてしまう可能性があるため注意が必要です。

  • 小規模な会社で相談者が予測できる
  • 特定の個人しか知りえない情報を証拠として提出した

このような状況にあると、会社にばれることを恐れて誰も労基署に通報できなくなってしまいますが、以下の対策をとることで相談者がだれなのか、会社が特定しにくくなります。

3-3.会社にばれにくい方法

以下は、労基署に匿名で相談する場合に会社にばれにくい対策法です。

(1)調査票の依頼

調査票とは、労働時間や賃金あるいは残業など会社の実態を調べるために労基署が会社に提出させる書類をいいます。労基署の立ち入り調査とは関係なく、労基署が管轄する会社に一律に送付します。

会社の違反行為で労基署に相談する場合には、この調査書の送付を依頼することで、だれが労基署に相談にいったのか特定されづらくなります。

(2)資料等証拠の提出

労基署に会社の違反行為を証明するための資料、例えば違反行為の実態や経過、原因や諸事情などを明記した資料を労基署に提出することも有効な対策です。

提出された証拠をもとに、労基署が書類などを精査し労働基準法違反の疑いがある場合には、労基署の立ち合い調査が行われるでしょう。

ただし、提出した証拠により誰が通報したのか特定される資料については注意が必要です。労基署に提出できるものなのかわからない場合には、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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4.労基署に匿名で相談・通報できる内容

労基署は、労働者の窓口として、労働問題をはじめとした労働基準法に違反する相談を受付けています。労基署は法違反の有無の観点から会社を調査して是正・監督することを業務としているために、相談内容も労働基準法や労働関係法令に違反する可能性のあるものに限定されます。

本章では、労基署で相談・通報できる具体例とできない具体例、また相談から対応するまでの期間について解説します。

4-1.匿名で相談・通報できる内容

労基署は労働者の権利を保護するために、会社の労働基準法などに違反する事案を取り扱う行政機関です。したがって、匿名でも、また実名であっても、相談できる内容は会社の違反行為を是正させることで問題が解決できるものに限られます。

具体的には、以下のようなケースです。

  • 賃金、残業代、退職金などが未払いである
  • 有給休暇がない
  • 差別的な取り扱いがある
  • 退職ができない
  • 長時間労働を強いている
  • 不当解雇・不当懲戒処分

4-2.匿名で相談・通報できない内容

労基署の指導を会社が無視すると、事業主が逮捕されるなどの刑事事件に発展する恐れがあります。ただし、労基署に相談しても労基署の対応が期待できない事案があるので注意しましょう。具体的には、以下のようなケースです。

  • 労働基準法や労働関係法令に違反しない事案
  • モラハラやセクハラなどのハラスメント行為
  • 残業代や退職金などの未払い金銭の支払い請求
  • リストラ
  • 異動・配置転換
  • 懲戒処分
  • 無断欠勤や能力不足など正当な理由による解雇

4-3.匿名で相談・通報してから対応するまでの期間

労基署に匿名で相談・通報したものの、いつ会社に立ち入り調査に来てくれるのか、いつ結果が報告されるのか、気になる方も多いことでしょう。

しかし、労基署では相談された全ての事案に対応するわけではないので注意が必要です。特に、匿名で相談・通報する場合は、事実関係を特定できずに一般論として対応されないこともあるのが現状です。

労基署に実名で相談した後は、労働基準監督官が立ち入り調査を行うか否かを判断するための精査を行いますが、この精査する期間は事案ごとに異なります。1週間以内に対応する場合もあれば、複雑な事案であるために数か月して対応してくれることもあります。

匿名で相談すると事実関係が特定できないなどの問題から放置されてしまう可能性が大きいため、早急に解決しなければならない問題は専門家に相談することをおすすめします。

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5.労基署に匿名で相談・通報する方法

労基署に匿名で相談・通報する方法は、以下のとおりです。

5-1.労基署に直接訪問する

最寄りの労基署の窓口を訪問して、匿名で担当者に直接相談・通報できます。直接訪問は、メールや電話での相談・通報よりも労基署が動いてくれる可能性が高くなります。会社の違法行為を証明できる証拠があれば、会社に立ち入り調査を行うなどの対応を早期に行ってくれるでしょう。

また、匿名で相談・通報する場合でも、会社の違法行為を証明する証拠の違法性が高いと認定されれば、匿名でも労基署が対応する可能性は充分にあります。最寄りの窓口で相談してみましょう。

労基署には、それぞれの業務に応じた窓口があります。

(1)方面課(監督課)

労働基準法その他の労働関連法に違反する事案の相談・申告を受付けています。

例えば、残業などの未払い問題、不当な解雇などの一般的な労働問題はここで相談・通報できます。

(2)安全衛生課

労働安全衛生法に基づいた事案の相談・申告を受付けています。

例えば、機械、設備、爆発物、発火物などが適切に管理されていない、ガスや粉じんによる健康障害があるなどの労働問題を取り扱っています。

(3)労災課

労働者災害補償保険法(労災保険)に基づいた事案の相談・申告を受付けています。

例えば、業務上又は通勤中の負傷などの労災事故の問題を扱っています。ただし、匿名であれば労災保険の給付まではできないため注意しましょう。

5-2.メール

厚生労働省のサイトにある「労働基準関係情報メール窓口」から匿名で相談が可能です。

ただし、あくまでもメール相談であることから、問題解決のために労基署の指導監督が行われるわけではないため注意が必要です。

参考|労働基準関係情報メール窓口

5-3.電話

厚生労働省の「労働条件相談ホットライン」に匿名で相談ができます。相談に対して一般的な解決方法やアドバイスが受けられますが、匿名であればアドバイスが制限されることもあるでしょう。

電話番号
0120-811-610

受付時間
月・火・木・金|17時から22時まで
土・日|10時から17時まで
※年末年始を除く

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6.労基署に匿名で相談・通報する際の注意点

たとえ匿名であっても労基署は、労働に関するすべての問題に対応するわけではありません。また、労基署に相談したことが会社にばれてしまうのは、通常は労基署や労働基準監督官からではなくその他の原因によるものです。

本章では、労基署に相談する際に注意するべき点について解説します。

6-1.労働基準法などに違反する可能性のある事案のみ

労基署に匿名で相談・通報できるのは、労働基準法その他の関連法令に違反する事案に限られます。冒頭でも解説した通り、賃金の未払いやサービス残業、労災の隠匿、健康診断の不実施など労働関連法令に違反する事案に限られています。

したがって、労働問題に関するすべてのケースにおいて労基署に相談できるわけではないので注意しましょう。とくに、労基署の是正勧告は裁判のような法的強制力がないため、賃金の未払いや残業代を確実に請求したい場合には、弁護士に相談することをおすすめします。

6-2.自身が特定されにくい証拠を持参する

労基署に相談する場合は、たとえ匿名であっても会社の違法行為がわかる証拠を提出することをおすすめします。証拠が不十分だと、労基署が対応してくれる可能性は低くなります。

特に、匿名のメールや電話での相談は、事実確認が難しいために調査がされない可能性もあります。労基署の立ち入り調査を希望する場合には、たとえ匿名であっても直接訪問して相談・通報することをおすすめします。

ここで注意しなければならないのは、証拠を提出する際に誰が相談・通報したのか特定できる場合があります。匿名の相談でも、自身が特定されにくい証拠を提出しましょう。

6-3.相談・通報の事実を口外しない

労基署に相談・通報したことは、基本的に口外しないようにしましょう。特に、会社関係の人には、たとえ信頼できる間柄であっても、どこかから情報が漏れ会社にばれてしまう可能性があります。

会社にばれることを避けたい場合には、一切口外しないほうがよいでしょう。

6-4.会社で労基署に相談・通報する準備をしない

匿名で相談・通報する場合に労基署に提出する証拠が必要になりますが、社内で証拠の準備をする際に、同僚などに見つかってしまうこともあるため注意が必要です。

労基署に提出する証拠の準備を会社内で行うことはおすすめしません。会社内でしか準備ができないような場合は、会社の人にばれないように充分に配慮して準備しましょう。

6-5.労基署に相談する前に準備すること

労基署に匿名で相談する際には、以下の準備をすることをおすすめします。

(1)事実関係を整理する

労基署に相談する前には、まずは相談したい内容の事実関係を整理する必要があります。労基署に行ったものの、そもそも相談したい内容が法違反であるのか、何を相談したかったのか、など明確でなければ徒労に終わってしまいます。

何が問題でどのような対応を希望しているのか、今一度事実関係を整理し効率よく質問できる準備が大切です。

(2)証拠を収集する

労基署に労働問題の相談・通報を匿名でする場合には、口頭のみの説明でも受付けてもらえますが、より具体的な対応を希望する場合は、会社の違法行為が証明できる証拠を収集することが重要です。

給与明細、雇用契約書、就業規則、タイムカード、相談する内容により必要な証拠は異なりますが、どのような証拠が有益であるのか不明の際は、弁護士に相談してみるのもよいでしょう。

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7.労基署ではなく弁護士に相談するメリット

労基署は、労働基準法など法令違反の疑いがある事案のみ扱う機関であるため、労働者の個人的な労働トラブルを解決するものではありません。

労基署では取り扱ってもらえない個人的な労働問題は、弁護士に相談しましょう。

ここでは、労基署ではなく弁護士に相談するメリットについて解説します。

7-1.あらゆる労働問題の相談ができる

弁護士は労基署では対応できないあらゆる労働問題についても相談を受け付け、事案に応じた適切なアドバイスをすることができます。

また、労基署に相談・通報するべき問題であっても、会社にばれるか心配な場合には代理人として労基署に通報することも可能です。

さらに、弁護士に相談することで、雇用保険や生活保護など事案に応じて利用可能な公的制度の申請もできるでしょう。

7-2.労基署で解決できない問題を解決できる

労基署は会社の法令違反が認められる場合に限り、是正勧告をし改善のための監督指導を行います。したがって、法令違反が認められなければ、会社に対して是正もできません。

また、たとえ労基署が是正勧告をしたとしても、労働者の権利侵害に対して会社に損害賠償が命じられるわけではないため、労働者の救済として充分ではないこともあるでしょう。

労働者の権利侵害に対する救済は、弁護士の業務でもあります。労基署に代わり労働者の権利を守ってくれるでしょう。

7-3.会社の未払い金請求ができる

労基署では会社の未払い金問題に対して是正勧告するのみで実際に未払い金を支払うように会社に請求するような命令をするわけではありません。

弁護士であれば、会社に対して労働者に代わって未払い金を支払うように請求することが可能です。近年、労働基準法が改正され、未払い賃金の請求が過去3年まで遡って請求できるようになりました。

7-4.解雇を恐れずに会社に交渉ができる

 労基署に労働問題を相談・通報する際は、会社にばれないか不当な扱いをされないか不安に思う人も多いでしょう。労働問題に精通している弁護士であれば、専門知識と実績をもとにあらゆる労働問題に対して会社と対等に交渉することが可能です。

弱い立場の労働者を守るために労基署が設置されているはずなのに、現実は労基署が対応してくれないために泣き寝入りする労働者があとを絶ちません。

また、交渉によっても問題が解決されないときには、労働審判や裁判を検討することも必要になるでしょう。まずは、弁護士に相談してみましょう。

8.まとめ

労基署への相談は基本的にばれることはありません。したがって、匿名でなくても心配する必要はありませんが、それでも職を失うリスクは避けたいものです。

労基署に相談する際にも、相談できる内容や相談・通報する際の注意点があります。労基署へ通報する際に弁護士にも相談しておくことで、万が一、会社にばれて不利益な扱いをうけても弁護士が介入してくれます。

労働問題でお悩みの際は、まずは弁護士に相談してみましょう。

私たち法律事務所リーガルスマートは、労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。
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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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