その他

自己都合退職は有給消化できない?対処法などを弁護士が解説!

自己都合退職は有給消化できない?対処法などを弁護士が解説!

以前と比べて転職に対するハードルが下がり、スキルアップや待遇改善を求めて転職する人が増えています。

転職するには現在勤めている会社を退職することになりますが、退職する際に残っている有給休暇は消化できるのか気になる方もいらっしゃると思います。

本記事では、転職などを理由とする自己都合退職の際に有給休暇は取得できるのか、円満に有給休暇を消化するためのポイント、有給休暇の申請を拒否された場合の対処法などについて弁護士が詳しく解説いたします。

退職を考えている方はぜひ最後までお読みください。

1.そもそも退職時に有給消化できるのか

「退職するのに有給なんて取れるのだろうか」と疑問に思う方もいるかもしれません。

結論から言うと、退職するにあたり、有給消化してから退職することはできます。

なぜなら、有給(年次有給休暇)は労働者に与えられた権利であり、使用者は、労働者からの求めに応じ、原則として有給休暇を与えなければならないからです(労働基準法第39条1項)。

したがって、退職を理由に有給休暇を取らせないのは違法となる可能性が高いです。

以下では、退職時に有給休暇を取得する際のよくある疑問点について解説します。

1-1.有給休暇は何日間とれるのか

退職時において会社から付与されている有給休暇については、全て消化することができます。

退職するからといって遠慮せず、未消化の有給休暇について、全て消化してから退職するようにしましょう。

1-2.最終出社日の前に有給休暇をとる場合

最終出社日の前に有給休暇を消化する場合、最終出社日=退職日とする場合が多いと思います。

つまり、最終出社日の前に有給休暇を消化しながら、最終出社日の前までに全て消化し、最終出社日をもって退職するというパターンです。

この場合、最終出社日までに仕事の引継ぎや貸与物の返却手続きなどを終えておくようにしましょう。

1-3.最終出社日の後に有給休暇をとる場合

最終出社日の後に有給休暇を消化する場合、有給休暇の消化が完了した日=退職日となります。

つまり、最終出社日をもって会社への出社は終了しますが、その翌日から有給休暇消化期間に入り、有給休暇の消化が完了した日をもって退職日となるパターンです。

この場合、有給休暇を消化する前に仕事の引継ぎや貸与物の返却などを終えておく必要があります。そうしないと、有給休暇消化期間に出社する必要が出てきてしまいます。

また、会社に対し、最終出社日が退職日ではなく、有給休暇の消化期間満了日とすることはしっかりと伝える必要があります。最終出社日が退職日であると判断されてしまうと、有給消化がされないまま退職の扱いになってしまうおそれがあります。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

2.自己都合退職でも有給消化はできるのか

有給休暇の消化は労働者の権利ですから、退職の理由が自己都合退職であっても、有給消化は当然に可能です。

ただし、雇用形態によって有給休暇の発生の仕方が異なりますので、以下では雇用形態ごとに有給休暇の発生条件を解説します。

2-1.アルバイト・パートの場合

アルバイトやパートの場合、そもそも有給休暇は無いと思われる方もいるかもしれませんが、アルバイトやパートでも有給休暇は発生します。

ただし、どんなときでも発生するわけではなく、以下の2つの条件を満たすことが必要です(労働基準法第39条1項)。

  • 雇用開始日から継続して6か月以上勤務していること
  • 全労働日の8割以上勤務していること

以上の2つの条件を満たせば、正社員でなくとも有給休暇は発生します。よって、退職する場合にも有給休暇を消化して退職することができます。

ただし、勤務日数や勤務時間によって付与される有給休暇の日数は異なってきます。具体的には以下のリンクをご参照ください。

厚生労働省:労働基準法第四章第三十九条(有給休暇の付与日数)より

2-2.派遣社員の場合

派遣社員の場合も有給休暇を取得することはできますが、派遣社員が雇用契約を結んでいるのは派遣元の会社です。

よって、派遣社員の場合、実際に働いている現場である派遣先と、派遣元に有給休暇の申請方法について確認をする必要があります。

それ以外はアルバイトやパートと同じ条件で有給休暇が発生します。

登録型派遣のように派遣期間が予め決まっている場合、派遣期間中に有給消化できるよう注意する必要があります。

2-3.外資系企業の場合

外資系企業であっても日本の労働法が適用されますので、有給休暇は日本の企業と同様に発生します。

また、自己都合退職であっても当然に有給休暇を取得することができます。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

3.自己都合退職で有給消化する流れ

結婚、妊娠、介護などの家庭の事情や、転職や留学など環境の変化を理由とする退職は自己都合退職となります。

以下では、自己都合退職により有給休暇を消化する場合の流れについて詳しく解説します。

3-1.退職の意思表示

転職などにより会社を退職することが決まったら、まずは直属の上司に退職の意思を伝えます。

就業規則により、通常は1か月前までに退職の意思表示をすることになっていると思いますが、退職の意思が固まり次第早めに上司に伝えましょう。

退職の意思を伝えた際に上司から慰留されることがありますが、退職にあたって会社の了承を得る必要はありません。よって、会社から反対されたとしても、退職をすることはできます。

3-2.退職願の提出

退職の意思を伝えた後は、通常は、会社に退職願を提出することが多いと思われます。民法上は退職日の2週間前までに退職を伝えればよいことになっていますが、就業規則では遅くとも1か月前までに退職願を出すことを定めている場合が多いです。民法の規定と就業規則のいずれを優先すべきかは議論のあるところですが、(就業規則の定める期間があまりにも不合理でない限り)この場合は1か月前に提出しておくのが無難でしょう。

3-3.業務の引継ぎ

退職願を提出して退職する日が決まったら、業務の引継ぎを行います。退職日前日になってバタバタしないよう、余裕を持って行うようにしましょう。

なお、業務の引継ぎは退職する際の法的な義務ではありません。よって、自分が行っていた業務をリストにしたメモを後任に渡す程度でも問題はありません。

もっとも、円満に退職するためにも、後任がしっかり引き継げるくらいの準備はするようにしましょう。

3-4.貸与物の返却等

会社から借りている制服やパソコンなどがある場合、退職日までに返却する必要があります。返却を忘れてしまった場合、退職日以降に会社に行かなければならなくなったり、郵送で送る必要が出てきますので、退職日までに忘れずに返却するようにしましょう。

また、社宅や寮に住んでいる人は、退職日までに引っ越す必要があります。時期によっては引っ越し業者の手配が難しい場合がありますので、早めに手続きをするようにしましょう。

3-5.有給休暇の取得

退職することが決まったら、現在の有給休暇の日数を確認し、有給休暇の消化の仕方を検討しましょう。

先ほど説明したとおり、最終出社日以降にまとめて有給休暇を消化する方法と、最終出社日までに有給休暇を消化する方法があります。

前者の場合、残りの有給休暇の日数から逆算して最終出社日を決定します。例えば、残りの有給休暇の日数が10日で、10月31日(火)を退職日としたい場合、10営業日前である10月17日(火)を最終出社日とします。

有給休暇が20日以上ある場合などは、ほぼ1か月まるまる有給休暇の消化期間となるため、最終出社日が早くなります。業務の引継ぎや貸与物の返却などでバタバタしないよう余裕を持った計画を立てましょう。

後者の場合、有給休暇を消化しながら出社し、最終出社日をもって退職日とします。よって、先ほどのパターンよりも余裕はありますが、有給休暇を取得する日数は同じなのでこちらも余裕を持って引継ぎなどをしておきましょう。

3-6.退職時の書類の受取り

退職の際にはさまざまな書類を受け取る必要があります。例えば、以下のようなものを受け取る必要がありますので、忘れずに受け取りましょう。忘れてしまった場合、退職後に会社に問い合わせる手間が増えてしまいます。

  • 雇用保険被保険者証
  • 離職票
  • 源泉徴収票
  • 退職証明書
  • 年金手帳

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

4.退職までに円満に有給消化するためのポイント

原則として有給休暇の消化のタイミングは労働者の自由です。もっとも、出来る限り会社とトラブルを起こさずに有給休暇をして退職したいと思う方もいるかもしれません。

以下では、会社とトラブルにならず円満に有給休暇を取得するためのポイントを解説します。

4-1.繁忙期に有給休暇を消化しない

会社の繁忙期であっても退職するのは自由ですし、退職に向けて有給消化することもまた自由です。しかし、繁忙期に有給休暇をまとめて消化し退職されてしまうと、会社の業務に支障が出ることも考えられます。

このような事態を気にされるのであれば、会社への配慮として、できる限り繁忙期を避けて退職するようにしたり、まとめて有給休暇を取得しないよう分散して少しずつ取得するなど、会社の業務に支障が出ないように調整することも考えられます。

4-2.当日に有給休暇を消化しない

労働者に有給休暇を消化する権利があっても、当日いきなり有給休暇を消化するといわれると会社は困ってしまうでしょう。

会社によっては就業規則で1週間前までの申請を必要とするところもあります。法律上は何日前までに申請しなければならないというルールはありませんが、円満に有給休暇を消化できるよう、退職までのスケジュールを組んで計画的に有給休暇を消化するようにしましょう。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

5.退職前の有給消化を拒否された際の対処法

「退職する場合は有給休暇を消化することはできない」と会社から有給休暇の消化を拒否されるケースがあります。

先ほども説明したとおり、退職する場合でも有給休暇の消化は当然可能であるため、このような会社の対応は違法です。

以下では、退職前に有給休暇の消化を拒否された場合の対処法を解説します。

5-1.労働組合へ相談

会社から有給休暇の消化を拒否された場合、上司に相談しても問題は解決しないでしょう。会社に労働組合がある場合、まずは労働組合に相談してみましょう。

労働組合から会社に働きかけてくれた結果、問題が解決することもあります。

ただし、労働組合がない会社の場合、この方法によることはできませんので、次の方法を検討することになります。

5-2.労働基準監督署へ相談

労働基準監督署は、労働基準法をはじめとする労働法令を遵守しているかを監督する機関です。

有給休暇の消化は、労働基準法で労働者に与えられた権利ですから、有給休暇の消化を拒否することは労働基準法に違反します。よって、労働基準監督署は相談に乗ってくれます。

会社が労働基準法に違反している場合、労働基準監督署が会社に対し指導勧告をしてもらえることもあります。労働基準監督署から指導勧告を受けると会社は態度を改める場合が多いため、この点はメリットであるといえます。

しかし、労働基準監督署は会社の間に入って交渉をすることはできませんし、訴訟などの法的措置をとることもできません。

交渉や法的措置を行いたい場合、次の方法を検討することになります。

5-3.弁護士へ相談

有給休暇の消化を拒否された場合において、労働組合や労働基準監督署に相談しても解決しない場合、弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士に依頼すると弁護士費用はかかりますが、労働問題に関するあらゆるトラブルを扱うことができるため、有給休暇の消化をめぐって会社と対立している場合は弁護士に相談しましょう。

5-4.法的措置

弁護士へ依頼して会社と交渉をしてもらっても会社が態度を改めない場合、法的措置を取ることになります。具体的には労働審判と訴訟があります。

労働審判

労働審判とは、労働者と会社との間で発生した労働に関するトラブルを迅速に解決するための手続です。

労働審判は原則として3回以内の期日で終了するため、裁判と比較して迅速な解決を目指すことができます。

訴訟

退職時に有給休暇の消化を拒否された結果、給料がもらえなかったりボーナスが支給されなかったりした場合には、支払を求めて訴訟をすることもできます。

労働問題に関するトラブルの場合には労働審判のほうが迅速に解決できる場合が多いため、訴訟はじっくり争いたい場合に検討することになるでしょう。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

6.有休消化のトラブルを弁護士に相談、依頼するメリット

先ほども説明したとおり、有給休暇の消化をめぐって会社と紛争になっている場合には弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談・依頼をするメリットは主に以下の3つです。

6-1.会社との交渉を代理できる

弁護士はあらゆる労働問題を本人に代わって対応することが可能です。有給休暇の消化をめぐって会社と紛争になっている場合、本人を代理して会社と交渉をすることも可能です。

「退職するときは有給休暇を消化できない」といった法的に誤った主張を繰り返しているような場合、弁護士が代理人として交渉すれば会社が速やかに誤りを認めて態度を改めてくれる可能性が高くなります。

このように、本人が直接交渉するよりも、労働法に精通している弁護士に依頼して交渉してもらったほうが有利に進められる可能性があるのです。

6-2.適切な証拠収集のアドバイスがもらえる

有給休暇を消化したつもりだったのに欠勤扱いされてしまったり、最終出社日以降に有給休暇を消化したつもりだったのに最終出社日を退職日とされてしまい有給休暇を消化できなかったというケースがあります。

こういった場合、会社に対してきちんと有給休暇の消化申請をしていたかが問題となりますが、弁護士に依頼すれば有給消化の際にしっかりと証拠を残しておくようアドバイスをもらうことができ、無用な紛争を防ぐことができます。

6-3.法的措置を取ることができる

弁護士は労働問題に関するあらゆる法的手続きを代理することができます。よって、会社が有給休暇の消化を拒否して交渉に応じない場合には、本人に代わって労働審判や訴訟など法的措置を取ることができます。

本人にとっては退職手続きだけで手間がかかるのに、有給休暇の消化をめぐって慣れない訴訟をしたりすることは精神的にもきついでしょう。

弁護士に依頼すれば本人に代わって法的措置を取ってくれますので、本人に負担をかけることなく転職活動等に集中することができます。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

7.退職時の有給消化に関するよくある質問と回答

以下では、退職時の有給消化に関するよくある質問に回答します。

7-1.有給消化中に転職してもいいの?

まず、有給消化中に転職活動を行うことは全く問題ありません。退職を決める前に転職活動を行い、すでに転職が決まっているという場合が多いとは思いますが、有給消化中の転職活動自体は問題ありません。

次に、有給消化中に転職先の勤務を開始することは会社の就業規則との関係によります。有給消化中はまだ会社との雇用契約は継続していますから、有給消化中に転職先の勤務を開始することは、「副業」とされるおそれがあります。

就業規則で副業禁止が規定されている会社の場合、就業規則違反であるとして懲戒解雇となる可能性もあります。

副業禁止が規定されている会社の場合、有給消化中に転職先の勤務を開始することは控えるか、会社に許可を得たうえで行うようにしましょう。

一方、副業禁止が規定されていない会社の場合、有給消化中に転職先の勤務を開始することは問題ありません。

7-2.自己都合退職で有休消化する際の理由はどうする?

自己都合退職であっても会社都合退職であっても、有給休暇を取得する際に理由は不要です。労働法上、有給休暇を取得する際に理由を求めることは認められていません。理由が何であれ、会社は有給休暇を取得させなければなりません。

よって、理由としては「私用のため」としておけば足ります。「転職活動のため」「転職先へのあいさつのため」など、具体的な理由を書く必要はありません。

7-3.自己都合退職で有休消化すると給料やボーナスはどうなる?

自己都合退職で有給休暇を消化する場合であっても、給料は当然にもらえます。有給休暇とはその名のとおり「有給」の休暇ですから、欠勤とは異なり、働いたものとみなされます。よって有給消化中であってもその期間の給料は当然にもらうことができます。

一方、ボーナスについてはケースバイケースです。ボーナスの支給条件として、ボーナス支給日に会社に在籍していることを要件とする会社もあります。その場合、ボーナス支給日前を退職日としてしまうと、ボーナスがもらえないことになってしまいます。

退職日を決める前に、ボーナスの支給条件がどのように定められているかを就業規則等で確認しておくようにしましょう。

ボーナスの支給日に会社に在籍していることが条件となっている場合、退職日がボーナス支給日以降となるよう有給消化を調整する必要があります。

相談無料初回60分

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

8.まとめ

自己都合退職であっても有給休暇の消化は問題なくできることがおわかりいただけたと思います。

しかし、自己都合退職により有給休暇を取得する際は、会社が有給消化を認めないなどのトラブルが発生するケースがよくあるのです。

そのような場合、どうせ退職するからしかたがないとあきらめず、弁護士に相談してみましょう。

労働問題に精通した弁護士であれば、適切なアドバイスがもらえるでしょう。本人の代わりに会社と交渉をしてくれたり、法的措置を取ることも可能です。

退職後は原則として有給休暇は消滅してしまいますが、会社に有給休暇消化を拒否されてしまった結果やむなく有給休暇を消化せずに退職してしまった場合、争うことができる可能性があります。

私たち法律事務所リーガルスマートは、退職する前の有給取得に関するトラブルをはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

少しでもお悩みでしたら、
弁護士にご相談ください。

相談無料初回60分

担当者

内田 貴丈
内田 貴丈法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2019年12月 弁護士登録
2020年1月 都内法律事務所にて勤務
2021年8月 法律事務所リーガルスマートにて勤務
ホーム お役立ちコラム 労働問題 その他 自己都合退職は有給消化できない?対処法などを弁護士が解説!

電話受付時間 10:00〜17:30 (土日祝・年末年始を除く)