給与未払い

給料が振り込まれない場合の対処法や請求方法を弁護士が解説!

給料が振り込まれない場合の対処法や請求方法を弁護士が解説!

「給料日の帰りにATMで確認したら、給料が入っていなかった」

「2か月も給料が未払いになっているので、もしかすると会社が危ないんじゃないかと思う。さすがに2か月となると泣き寝入りもできない。会社に請求するにはどうすればよい?」

など、給料日に給料が振り込まれていなかったり、1か月分以上給料が未払いのために困っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

本記事は、給料が振り込まれない場合の対処法や未払いの給料の請求方法等について弁護士が解説します。

1. 給料の振込に関する決まりごと

労働基準法第24条は、事業者の賃金支払いについて、以下の4つの原則を定めています。

  • ①通貨払いの原則
  • ②直接支払いの原則
  • ③全額払いの原則
  • ④毎月1回以上、一定期日支払いの原則

本章では、給料の振込に関して、会社側が守らなければならない4原則について解説します。

1-1.給料は現金で支払うのが基本

給料は労働者に対して現金で直接、全額支払わなければなりません。ただし、これらの原則には合理的な理由がある場合に一定の例外が認められています。

(1)通貨払いの原則と例外

労働者に対する賃金は原則として、通貨で支払わなければなりません(労働基準法第24条1項本文)。通貨とは、日本銀行券及び日本の貨幣をいいます。外国通貨・小切手での支払いや、現物支給等は労働基準法第24条違反となります。

例外として、以下の場合は通貨以外による支払いが認められています(労働基準法第24条1項但書、労働基準法施行規則第7条の2)。

  • 労働協約に別段の定めがある場合
  • 労働者の同意を得て労働者の指定する口座に入金する場合
  • 退職手当について、一定の要件を満たす小切手や郵便為替により支払う場合

(2)直接払いの原則と例外

給料は、原則として直接労働者に支払わなければなりません(労働基準法第24条1項本文)。例えば、労働者の親や代理人に対して支払うことは原則として労働基準法違反となります。労働者が未成年者である場合も、親に支払うことは労働基準法第59条で禁止されています。

ただし、給料が国税徴収法や民事執行法に基づいて差し押さえられた場合には、差押え債権者に対して給料を支払っても違法ではありません。

(3)全額払いの原則と例外

給料は、原則として全額を支払わなければなりません(労働基準法第24条1項本文)。これは、会社が労働者に対する債権を持つ場合に、債権と給料を一方的に相殺することを禁止するためと解されています。

ただし、法令に別段の定めがある場合は例外が認められています(労働基準法第24条1項但書)。例えば、給料から以下の名目で控除を行っても違法ではありません。

  • 源泉徴収
  • 社会保険料控除
  • 財形貯蓄金控除

1-2. 給料は毎月1回以上支払う必要がある

給料は原則として、毎月1回以上支払わなければなりません(労働基準法第24条2項)。「翌月にまとめて払う」「月末で締めて支払いは翌々月末」等の支払い方法は認められません。

ただし、臨時に支払われる給料や賞与等は例外となります(労働基準法第24条2項但書)。

1-3. 給料は給料日の午前10時までに引き出せるようにする

また、給料は一定の期日を定めて支払われなければなりません(労働基準法第24条2項本文)。

給料の振込時間については、労働基準法に定めはありません。なお、行政通達によって「給料は、給料日の午前10時までに引き出せるようにしなければならない」とされています(令和4年11月28日 基発1128第4号 都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)。

そのため、多くの会社は銀行の営業開始時刻である午前9時には給料が引き出せるように入金の手配をしています。また、振込予約により、給料日当日の午前0時の時点に入金が設定されていることもあります。

なお、労働基準監督署の指導は法律とは異なるため、給料日の午前10時を過ぎてから給料を振り込んでも罰則はありません。中小企業等では、給料日の午後に振り込まれる場合もあるでしょう。

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2. 給料が振り込まれないケース

給料が振り込まれないケースは、以下の原因によることが考えられます。

2-1.銀行のシステム障害

まず、たまたま給料日の当日や前日に銀行のシステム障害が発生したために会社からその従業員の口座宛ての給料が振込できなくなってしまったことが考えられます。

通常は遅くても2日程度で回復するので、銀行のサイト等で回復したことを確認してから口座をチェックしてください。

2-2.給料日が連休途中に重なっている

入社直後等で、その会社では給料日が土日祝日に重なった場合に後ろ倒しで翌営業日に入金することを確認していなかったために、給料日直前の営業日に給料が入っていないのを未払いと勘違いしてしまうことがあります。

給料日が土日祝日に重なった場合の入金日については就業規則や労働契約書を確認してください。

2-3. 経理担当者のミス

大企業では起こりにくいですが、中小企業で経理担当者が1人しかいなかったり、経理担当者が手動で振り込み作業を行っている会社では給料日前に負担が集中します。そのため一部の従業員に対して入金の手配をし忘れてしまう等のミスが起こる可能性もあります。

2-4. タイムカードの押し忘れ

タイムカードで勤怠管理している会社では、出退勤時にタイムカードを押し忘れていると経理上欠勤扱いとなってしまう可能性があります。従業員側が勤怠報告を忘れてしまうとその分の給料が発生していないとみなされてしまうので、タイムカード打刻や勤務表の提出を忘れないようにしてください。

2-5. 会社の経営悪化

大企業では、会社の経営が悪化しても予告なしに給料が支払われなくなるということは起こりにくいですが、中小企業では経営が悪化するとある月から給料が未払いになって、そのまま会社が倒産してしまう可能性があります。

経営状況を察知したら、未払賃金の請求を視野に入れて自身の勤怠管理データを保存等の証拠収集を始めることをお勧めします。

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3. 給料が振り込まれない場合の対処法

本章では、給料が振り込まれていない場合に最初に行うべきことについて解説します。

3-1. 会社に確認する

給料日の当日の終業時刻近くなっても給料が振り込まれていないことを確認したら、会社に確認してください。一番起こりうる原因は銀行のシステムエラーなので、経理担当者が「振込の手配をした」と返答した場合はシステムが回復するまで待ってください。

返答がなかったり、「給料は振り込んだ」といわれて数日たっても入金の確認が取れない場合は、法的手段をとる場合に備えて可能な限り勤務時間の証拠となるものを用意しておくと安心できます。

3-2. 労働基準監督署に相談する

給料の未払いは労働基準法に違反するので、労働基準監督署に相談することもできます。

前月の給料日までは遅滞なく振り込まれていた場合には、次の給料日までに振込が行われる可能性もあるので、労働基準監督署はすぐに調査を行ってくれるわけではありません。しかし、早期に相談しておくと、その後未払いが続いた場合に申告を行えば動いてくれる可能性が高くなります。

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4. 給料未払いの請求を行う方法

その月に支払われるはずだった給料が翌月になっても未払いの状態であれば、そのまま未払の給料が増えていったり、未払いのまま会社が倒産する可能性もあります。会社に対する未払い給与の請求に踏み切るためには何をすればよいでしょうか。

本章では、会社に対して未払いの給料の請求を行う方法について解説します。

4-1. 証拠を集める

まず、未払いの給料が発生していること、及びその金額を証明できる証拠を集める必要があります。以下の(1)に挙げた資料をすべて揃えることができれば証拠としては確実ですが、それらが手元に残っていない場合でも、(2)に挙げたような資料をできる限り集めるようにしてください。

(1)確実に証拠となるもの

  • ①労働条件がわかる資料:就業規則、労働契約書等
  • ②労働時間がわかる資料:タイムカード
  • ③業務内容がわかる資料:上司による残業指示書(メール含む)
  • ④支払われた賃金の金額がわかる資料:給与明細

(2) (1)に挙げた証拠が残っていない場合

  • 個人的につけていた業務日誌
  • 業務用パソコンのログイン・ログアウトの記録
  • 法定労働時間外のメールの送受信記録
  • 終電がなくなった等の理由で利用したタクシーの領収書等

4-2. 会社と交渉する

上記の証拠を収集したら、会社の上司または人事部に相談して未払い給与の請求についての話し合いの場を設けましょう。しかし、会社が対応してくれるとは限らず、従業員個人でこれを行うことは実際には容易ではありません。

4-3. 会社に対して内容証明郵便で請求する

会社と交渉することが困難な場合、そのまま請求を行わずにいると賃金債権が順次消滅時効にかかってしまいます。そこで未払賃金の請求書面を内容証明郵便で送付することによって、最低でも消滅時効の完成を6か月間猶予させることができます。

ただし、内容証明で請求を行っても会社が応じない場合には、この6か月の間に「裁判上の請求」にあたる労働審判申立てや訴訟提起を行う必要があります。労働審判や訴訟の手続が開始すると時効の完成が猶予されます。

4-4. 労働基準監督署に申告する

労働基準監督署は管轄地域の会社(事業所)が労働基準法違反行為を行っている旨の申告があれば、その会社に対して違反状態を是正するように(賃金の未払いの事例であれば、当該従業員に対して賃金を支払うように)、指導や勧告を行ってくれる可能性があります。

ただし、労働基準監督署はより悪質な法令違反から優先的に対処しているため、申告を行っても必ず指導や勧告を行ってくれるとは限りません。

また、労働基準監督署は厚生労働省所轄の行政機関であるため、個々の労働者を代理して会社に対する請求を行うことはできません。

4-5. 弁護士に相談する

会社の従業員個人が未払い給与を請求する方法としては、労働問題を専門とする弁護士に相談するのがベストといえます。相談する時点で証拠収集ができていない場合でも、どのような資料が証拠として役立つかや、その収集方法について教えてもらうことができます。

従業員本人では困難な、会社側が保有している証拠の開示請求も依頼することができます。

また、会社との交渉や内容証明による請求、交渉が成立しなかった場合の法的手続きをすべて任せることができます。

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5. 給料未払いのトラブルを弁護士に相談・依頼するメリット

給料や残業代の不払いは明らかに違法ですが、従業員個人が会社相手に未払い給料や残業代を支払ってもらうことは容易ではありません。(特に会社が倒産している状況)

会社が倒産した場合に、未払いの給料や残業代を確実に支払ってもらうためには、労働問題を専門とする弁護士に相談・依頼することをお勧めします。本章では未払い給料や未払い残業代の請求を弁護士に依頼するメリットについて解説します。

5-1. 未払い残業代の発生の有無や金額を調べてもらえる

収集可能な証拠をもとに、時効消滅していない残業代を算出する作業にはかなりの手間がかかります。

例えば変形労働時間制をとる会社では所定労働時間が日や週によって異なるため、労働時間が長くても残業代が発生しているかを判断するのに時間がかかります。

弁護士に相談すると、残業代請求の経験に基づき、客観的に未払いの給料や残業代が発生しているか、発生しているとすればいくら請求することができるかを正確に教えてもらうことができます。

5-2. 未払い残業代請求のための証拠の集め方を教えてもらえる

未払いの給料や残業代の請求にあたっては、雇用契約書や労働条件通知書など自身が保管していれば利用できるもの以外に、業務アカウントによるメールの送受信履歴など、消去してしまっていて会社側だけが保持しているデータもあります。

容易に入手できない証拠についても収集が必要なのか、必要であればどのように入手すればよいかなどは特に従業員個人にとって「壁」となりやすいです。特に昨今では、情報管理に関する法令も厳しくなってきていますので、注意が必要でしょう。

これらについても弁護士に教えてもらうことや、手続きを代理してもらうことが可能です。

5-3. 会社との交渉を任せることができる

未払いの給料や残業代の請求にあたっては会社側と交渉しなければなりません。

しかし、会社が倒産手続に追われている中で従業員個人が交渉しようとすると取り合ってくれない可能性があります。また逆に会社側が顧問弁護士を立ててくることもあります。

弁護士に依頼していれば会社側の対応に関係なく、未払い残業代請求に向けての交渉を対等に行うことができます。

5-4. 交渉不成立の場合の労働審判や民事訴訟等の法的手続を任せることができる

未払いの給料や残業代の請求にあたり、証拠収集・交渉とともに壁となるのが法的手段をとる場合です。労働審判は手続きが比較的単純で短期間で終結させることができますが、やはり申立てから審理まで全て一人でやることは容易ではありません。

さらに訴訟提起するとなると、期日に全て出席して証拠調手続や口頭弁論での陳述も求められます。そのため少額訴訟や簡易裁判所への訴訟提起であっても一人でやることには大きな負担が伴います。弁護士に依頼していれば労働審判・民事訴訟ともすべて任せることができます。

未払い賃金・残業代請求手続代理・代行には費用がかかりますが、弁護士に依頼することで確実に支払いを受けることができます。最近では、着手金の支払いを必要としない成功報酬制をとっている法律事務所も多くあります(ただし、そのような法律事務所では、成功報酬の割合が高く設定されている可能性があるので、注意が必要です)。

また、多くの法律事務所では初回相談や初回相談の一定時間(30分~60分程度)を無料としているので、無料相談を利用して問題点を的確に整理することで費用を抑えることが可能です。

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6. 給料未払いに関するよくあるQ&A

本章では、給料未払いに関して頂くことの多い質問と、それに対する回答をご紹介します。

6-1. 給料は何時に振り込まれるのが一般的ですか?

給料の振込時間については、法律で決められているわけではありません。ただし、行政通達によって「給料は、給料日の午前10時までに引き出せるようにしなければならない」とされています(令和4年11月28日 基発1128第4号 都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)。

そのため、多くの会社は銀行の営業開始時刻である午前9時には給料が引き出せるように入金の手配をしています。また、日付が変わる午前0時の時点に入金が設定されていることもあります。

従って、午前10時までに振り込まれるのが一般的ですが、入金が午前10時を過ぎても違法ではありません。中小企業等では、給料日の午後に振り込まれる場合もあります。

6-2. 退職後に給料が振り込まれない場合は違法?どうすればいい?

労働基準法第24条は、従業員が退職した後の未払いの賃金に対しても適用されます。

従って、退職後であっても、当月または前月分までの給料は労働契約で合意した条件に基づき給与の振込みが行われなければなりません。

たとえば月末締めで翌月25日払いの会社を9月末に退職した場合は、10月25日に9月分の給料の振込が行われていなければ違法です。この場合、会社に対して未払いの給料の支払いを請求することができます。

ただし、賃金債権は3年で消滅時効が完成するため(労働基準法第115条)、未払い分の給料はその給料が支払われるはずだった月の給料日から3年以内に請求しなければ、支払を受けられなくなる可能性がありますので注意が必要です。

なお、労働基準法上、日時と場所を定める等の方法によって給料分の現金をまとめて手渡しすることは認められます。

退職後に会社に対して未払いの給料を請求する場合は、証拠収集や会社との交渉について弁護士にご相談ください。

6-3. 明細と振込額が違うときはどうすればいい?

明細の振込予定額と実際の振込額が合わないときは、給与の項目の中で支払われていないものがないか確認してください。

不一致が起こりやすい時間外労働や休日出勤を始めすべての項目をチェックしてから、「給料明細のこの項目で〇〇円の差があります」と具体的に指摘できるようにしましょう。

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7. まとめ

給料が振り込まれない場合、それが初めてであればシステムエラーや経理担当者のミス等によることもあります。会社に確認してすぐに明確な返答があった場合には数日以内に問題が解決するでしょう。

しかし、会社に確認しても返答がなかったり、あいまいな返事が返ってきた場合には会社の経営悪化による資金不足が生じている可能性があります。

1回の未払いですぐに法的手段をとるのは尚早ですが、会社に対する請求を想定して証拠収集を始めたほうがよいでしょう。この段階で、労働問題を専門とする弁護士が在籍する法律事務所の無料相談を利用すると、想定される状況や、証拠の収集方法等の直近の対処法を教えてもらうことができます。

「3か月前に退職したが、退職前月と当月の給料がまだ支払われていない」

など、給料未払いのトラブルでお困りの方は是非、労働問題を専門とする弁護士にご相談ください。

私たち法律事務所リーガルスマートは、未払いの給料請求をはじめとする労働問題の専門チームがございます。初回60分無料でのご相談をお受付しています。不安なことがあったら、一人で悩まず、お気軽にご相談ください。

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担当者

牧野 孝二郎
牧野 孝二郎法律事務所リーガルスマート弁護士
■経歴
2009年3月 法政大学法学部卒業
2011年3月 中央大学法科大学院法務研究科修了
2012年12月 弁護士登録(東京弁護士会)
2012年12月 都内大手法律事務所にて勤務
2020年6月 Kiitos法律事務所設立
2021年3月 優誠法律事務所設立
2023年1月 法律事務所リーガルスマートにて勤務

■著書
・交通事故に遭ったら読む本 第二版(出版社:日本実業出版社/監修)
・こんなときどうする 製造物責任法・企業賠償責任Q&A=その対策の全て=(出版社:第一法規株式会社/共著)
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