B型肝炎訴訟・給付金
B型肝炎訴訟のデメリットとは?その解決方法を弁護士が解説!
目次
1.そもそもB型肝炎訴訟とは
B型肝炎訴訟とは、これまでに国が行ってきた集団予防接種によりB型肝炎に感染した人が、国に損害賠償を求めて起こす訴訟をいいます。
これまで行われてきた集団予防接種などでは、注射器を再度使用することが頻繁にあったため、B型肝炎ウイルスの感染が拡大してしまいました。
国は、このような状況を改善することなく、注射器の再利用を止めさせるための適切な指導を行いませんでした。
こうした国の過失が問われ、平成18年に最高裁判所の判決により国の賠償責任が確定しました。平成24年にはB型肝炎給付制度が開始し、損害賠償は給付金の支給になりました。
国を相手にB型肝炎訴訟を提起して、一定の要件を満たしていることにより国と和解が成立すると、法律に基づいて、一定のB型肝炎給付金を受け取ることができます。
B型肝炎給付金の金額は、50万円から3600万円までを上限とします。
B型肝炎給付金請求には期限があり、2027年3月末を期限としているため、この請求期限までに訴訟提起をしなければなりません。
B型肝炎給付金を受け取りたいものの、B型肝炎訴訟を起こす場合にはデメリットのほうが多いのではないか、このような心配から訴訟提起をためらう人は少なくありません。
本記事では、B型肝炎訴訟メリット、デメリット、デメリットを解決する方法、B型肝炎訴訟での誤解しやすい点などをB型肝炎訴訟・給付金に強い弁護士が解説します。
2.B型肝炎訴訟のメリットとは
B型肝炎訴訟のメリットは、資料をそろえることで請求が認められれば、病状などにより金銭的な補償を受給できることです。
受給できる金額は、以下のとおりです。
病状・病状 | 支給金額 |
---|---|
死亡・肝がん・重度の肝硬変 | 3600万円 |
20年の除斥期間を経過した死亡・肝がん重度の肝硬変 | 900万円 |
軽度の肝硬変 | 2500万円 |
▼20年の除斥期間を経過した軽度の肝硬変 | |
①現在、肝硬変に罹患している | 600万円 |
②上記以外 | 300万円 |
慢性B型肝炎 | 1250万円 |
▼20年の除斥期間が経過した慢性B型肝炎 | |
①現在、慢性B型肝炎に罹患している | 300万円 |
②上記以外 | 150万円 |
無症候性キャリア | 600万円 |
20年の除斥期間が経過した無症候性キャリア(特定無症候性持続感染者) | 50万円 |
資料を揃えたり、請求の申請など、様々な手間を要しますが、一定の金額を受給できる可能性があることは、B型肝炎訴訟の給付金請求の大きなメリットです。
3.B型肝炎訴訟のデメリットとは
B型肝炎訴訟のデメリットは、主に下記の2つです。
3-1.検査などの費用がかかる
B型肝炎訴訟の1つめのデメリットは、必要な検査や集めなければならない資料を収集するための費用がかかることです。
B型肝炎訴訟を提起する場合、B型肝炎ウイルスに持続感染していることを証明する資料、母子感染ではないことを証明する資料など医療記録の資料収集が必要になります。
医療資料を取得するための料金は、病院により費用や手数料に差異があり、通院や入院期間が長いほどに医療記録も膨大なものとなるため、費用もそれなりにかかります。
また、訴訟を提起する際に必要となる収入印紙や郵便切手代などの裁判費用、住民票や戸籍謄本などの公文書の取得にかかる費用も発生します。
さらに、B型肝炎訴訟の請求金額が高くなればなるほど、納める収入印紙代も高額になり、申立人が一人で手続きを行う場合には、それらの費用を事前に支払わなければなりません。
B型肝炎訴訟を起こす際は、請求前の資料収集や検査、裁判費用の支払が必要になるため、給付金を受け取る前にどれくらいの支出があるかを把握しておくことが望ましいでしょう。
3-2.資料収集や書類作成、検査の受診が面倒
B型肝炎訴訟の2つめのデメリットは、資料を集めたり書類を作成するために時間と手間がかかり、非常に面倒であることです。
まず、集団予防接種により直接ウイルス感染した一次感染者がB型肝炎訴訟を提起する場合、以下の資料が必要になります。
- 昭和23年7月1日~昭和63年1月27日までに集団予防接種等を受けたことを証明する資料
- B型肝炎ウイルスに継続して感染していることを証明する資料
- 母子感染ではないことを証明する資料
- 満7歳までに集団予防接種を受けたことを証明する資料
- その他の集団予防接種以外の感染原因がないことを証明する資料
これらの資料は、病院や役所などで収集する必要があり、また、病状によって申立人本人が作成しなければならない資料などが必要になる場合もあります。
特に、訴訟手続きに必要となるカルテなどの医療記録の資料を収集するためには、病院での検査が必要になり、診療受付時間内に受診しなければなりません。
次に、B型肝炎訴訟を提起する場合、裁判所に訴状を提出しなければなりません。訴状には請求の内容とそれを基礎づける事実の記載が必要です。
万が一、訴状の記載に不備がある場合、修正や追加資料の提出をしなければならず、裁判官に悪い印象を与えてしまうこともあるため、注意しなければなりません。
B型肝炎訴訟で給付金を受給するためには、和解制度で規定されている和解要件を証明するための証拠の収集も必要となるため、手続きが非常に面倒になります。
4.B型肝炎訴訟のデメリットを解決する方法
B型肝炎訴訟のデメリットを解決する方法は、何よりもB型肝炎訴訟の経験と実績を持つ弁護士に依頼することです。
ここでは、デメリットを解消するための2つの方法について解説します。
4-1.費用を節約する
B型肝炎訴訟のデメリットを解決する1つめの方法は、検査などにかかる費用を節約することです。
B型肝炎訴訟を提起するためには、様々な検査や資料の収集のための費用がかかりますが、効率的に準備をすることで費用を削減することができます。
B型肝炎訴訟では、血液検査や戸籍謄本など書類を取得するための費用、印紙代などの費用が必要となり、こうした必要最小限の費用を削減することはできません。
ただし、弁護士のアドバイスに従うことで、事前に準備をしっかり行い効率的に無駄なく書類を収集したり、血液検査や書類取得の費用を削減することが可能になります。
さらに、印紙代の費用を弁護士が立替して支払い、後日に給付金が支給されてから精算することも可能になる場合もあるため、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
弁護士費用は、成功報酬をメインにしているところがほとんどであるため、和解が得られずに給付金が支給されなければ支払いの必要がありません。
したがって、受給要件を満たす限り弁護士費用のみを支払わなければならない、ということはほとんどないため、安心して訴訟を提起できるでしょう。
4-2.弁護士に必要書類の収集を一任する
B型肝炎訴訟のデメリットを解決する2つめの方法は、弁護士に必要書類の収集を一任することです。
上述したように、B型肝炎訴訟を提起する場合には、様々な書類の収集が必要になりますが、弁護士に依頼して必要な資料の収集ならびに作成を一任することが可能です。
カルテなどの病院の医療資料をはじめ、戸籍謄本などの役所関係の書類などに関しても、ほとんどが弁護士が代行して取得することが可能です。
また、診断書も過去の記録を参考にして作成できるのであれば、弁護士が申立人に代わって申請することができる場合もあります。
確かに、訴訟提起には様々な資料の収集が不可欠になりますが、弁護士に一任することで収集にかかる手間や時間を大幅に削減することができるでしょう。
5.B型肝炎訴訟で誤解されていること
B型肝炎訴訟で誤解されていることの多くは、弁護士に相談することで解決できます。
ここでは、B型肝炎訴訟で誤解されがちな問題点について、見ていきます。
5-1.裁判所に出廷しなければならない
B型肝炎訴訟で誤解されている1つめの問題点は、訴訟を申立てた原告本人が裁判所に出廷しなければならないと思われていることです。
B型肝炎訴訟では、原告(ウイルス感染者被害者)と被告(国)が出席して、主張や証拠を提示して立証をする口頭弁論などが行われます。
したがって、B型肝炎訴訟を提起すれば、原則的には、原告が平日の日中に裁判所に出廷しなければなりません。
しかし、弁護士に依頼することで、本人に代わり裁判手続ならびに裁判所への出廷を弁護士が代行することが可能となります。
確かに、国を相手にB型肝炎訴訟を起こすことは、勇気のいることであり、毎回行われる口頭弁論や弁論準備手続に出席することは、原告にとって大きな負担となります。
しかし、弁護士に依頼することで、本人に代わり裁判手続ならびに裁判所への出廷を弁護士が代行することが可能となるため、仕事を休んだり出廷の準備をする必要もありません。
B型肝炎訴訟を検討の際には、できるだけ早い時期から、まずは弁護士に相談してみることをおすすめします。
5-2.訴訟したことを周りに知られてしまう
B型肝炎訴訟で誤解されている2つめの問題点は、訴訟をしたことを周りに知られてしまうと思われていることです。
B型肝炎訴訟を起こすことで、B型肝炎に感染していることや受給金を受けるために訴訟を起こしたと周囲に思われてしまう等の心配をする人が少なくありません。
しかし、B型肝炎訴訟は、原則的に非公開の弁論手続の中で審理などの訴訟手続が行われるため、上記のような心配は不要です。
また、B型肝炎に感染しているなどの個人情報に関しても、弁護士には守秘義務があるため、弁護士が他者に訴訟に関する情報を漏洩することもありません。
5-3.弁護士費用を損してしまう
B型肝炎訴訟で誤解されている3つめの問題点は、弁護士費用を損してしまうと思われていることです。
B型肝炎訴訟を提起しても、万が一、給付金の対象者ではなかった場合、弁護士費用だけがかかってしまう、あるいは、弁護士費用が支払えないなどの不安を持つ人が多くいます。
しかし、法律事務所の中には初回の相談や着手金などを無料にしたり、相談者の経済状況に応じた料金設定を提示してくれるところもあります。
弁護士に事前に相談することで、給付金の対象者であるのか否かを判断してもらえることもあるため、費用の負担を気にせずに手続きを進めることができるでしょう。
弁護士費用に不安を感じる場合には、初回の相談の際に法律事務所の弁護士費用について確認してみることをおすすめします。
6.B型肝炎訴訟を弁護士に相談、依頼するメリット
B型肝炎訴訟を弁護士に相談・依頼するメリットは、以下の3つです。
それぞれについて、見ていきましょう。
6-1.訴訟に必要な検査や書類についてアドバイスが貰える
B型肝炎訴訟を弁護士に相談・依頼する1つめのメリットは、訴訟に必要な検査や書類についてアドバイスが貰えることです。
B型肝炎訴訟を提起して給付金を受給するまでには、血液検査結果報告書や戸籍謄本など様々な資料を収集しなければなりません。
特に、血液検査では、それぞれに必要な検査の項目が異なることもあり、必要以上に手間と時間がかかってしまうことも少なくありません。
弁護士に依頼することで、豊富な経験から、どのような検査や資料が必要になるのか、申立人の状況に応じた的確なアドバイスを受けることが可能になります。
先に述べたように、B型肝炎訴訟を提起する場合には、様々な資料の収集が必要になりますが、病院によって資料のための検査が異なることがよくあります。
どのような検査が必要になるのか、弁護士がその都度に確認することで、余計な検査の費用を控えることもできるでしょう。
6-2.必要な資料収集を代行してくれる
B型肝炎訴訟を弁護士に相談・依頼する2つめのメリットは、必要な資料の収集を代行してくれることです。
先に述べたように、B型肝炎訴訟を提起する場合は、集団予防接種などで注射器などの連続使用以外の感染原因がないことを示すための、医療記録などが必要になります。
こうした資料の収集には、病院側により対応が異なることもあるため、すべてを準備するには相当の手間の時間を要します。
弁護士に依頼することで、訴訟に必要な資料の収集を代行してもらうことが可能です。資料収集のみならず、裁判に必要な書類作成や裁判所の手続きも一任できるので安心でしょう。
6-3.弁護士費用の一部が支給される
B型肝炎訴訟を弁護士に相談・依頼する3つめのメリットは、国から弁護士費用の一部が支給されることです。
弁護士に依頼した場合に、弁護士費用が支払えるのか不安になる人も少なくありません。
しかし、弁護士に依頼して給付金請求手続きを行う場合、和解して給付金が支給されるようになると、給付金の4%が訴訟手当金として支給されるようになります。
初回無料相談を利用して、どれくらいの費用がかかるのか事前に見積もりをとることで、和解までお金の心配をせずに、訴訟に集中することができるようになります。
6-4.正確に手続きを進めて必要な情報を受け取れる
B型肝炎訴訟に精通した弁護士に依頼すれば、何が重要なポイントであるかを把握しているので、正確に手続きを進めてくれます。
B型肝炎給付金を受給するためには、B型肝炎訴訟という国家賠償請求訴訟を提起しなければならないため、基本的に時間がかかります。
さらに、訴訟には資料の収集が必要であり、書類に不備や漏れがあれば手続きが中断するため給付金の受給が遅れてしまいかねません。
また、給付金が支給されるまで、弁護士から必要な情報を受け取れることも、弁護士に依頼する際の大きなメリットです。
7.B型肝炎訴訟のデメリットに関するよくあるQ&A
ここでは、B型肝炎訴訟のデメリットに関するよくあるQ&Aについて見ていきます。
7-1.訴訟提起は被害者本人でもできますか?
はい、被害者本人がB型肝炎訴訟を提起することも可能です。
B型肝炎訴訟は、B型肝炎ウイルス感染の責任を国に追及するために、賠償金(和解金)の支払を求める国家賠償訴訟です。
国家賠償請求訴訟は、弁護士を代理人としなくても、申立人本人が訴訟を提起することが可能です。したがって、被害者本人が訴訟を提起することも可能です。
7-2.B型肝炎訴訟を被害者本人が提起するのは負担が大きいですか?
B型肝炎訴訟は、過去の判例や集団訴訟原告との基本合意者などにより、和解の要件と立証に必要な証拠がある程度類型化されています。
このため、ある程度は和解制度が整備されているため、通常の訴訟よりは被害者本人の負担がそれほど大きいとまでは言えないでしょう。
ただし、訴訟のために必要になる資料や検査は、それぞれの状況により病院側でも対応が異なるため、弁護士に依頼したほうが、労力と時間の削減につながるでしょう。
7-3.裁判所や弁護士事務所に行かなければなりませんか?
弁護士に依頼すれば、裁判所に行く必要はありません。弁護士事務所は、それぞれ事務所により異なりますが、電話やメール、郵便のやり取りのみで手続きできる場合もあります。
したがって、裁判所も弁護士事務所にも行く必要はありません。
7-4.病院や医者に迷惑をかけてしまいませんか?
いいえ、迷惑をかけるようなことはありません。B型肝炎訴訟は、医療ミスによる医療過誤訴訟ではなく、国に賠償を求める国家賠償請求訴訟です。
つまり、集団予防接種によりウイルス感染が拡大した国の責任を問うものであり、医療過誤による医者の責任を問うものではありません。
国家愛称請求訴訟であるため、様々な資料の提出が必要になるため、病院や医者には、検査や診断書の作成に協力をお願いすることは多くなりますが、裁判への出頭を求めたりするものではありません。
7-5.予防接種を受けたことや予防接種で感染したことをどのように証明しますか?
集団予防接種を受けたことを証明するためには、母子健康手帳や各自治体の予防接種台帳を利用することで証明することが可能です。
ただし、こうした母子健康手帳や予防接種台帳が残っていないことも少なくないため、注意が必要です。
母子健康手帳や予防接種台帳がない場合には、腕や肩に予防接種の注射の痕のような接種痕が残っていることを医者に証明してもらうことが可能です。
さらに、戸籍謄本や住民票などで、幼少期の住所を確認することができれば、集団予防接種を受けていたという推認をもらうことが可能です。
母親の血液検査結果、カルテなどにより、母子感染などの他の感染原因がないことを確認することも推認を得るうえで必要になります。
8.まとめ
本記事では、B型肝炎訴訟のデメリット・メリット、デメリットを解決する方法、B型肝炎訴訟での誤解点など、B型肝炎訴訟に強い弁護士が解説しました。
B型肝炎訴訟でよく言われる、検査などの費用がかかる、資料収集や書類作成、検査などが面倒といったデメリットの多くは、弁護士に依頼することで負担を軽減することが可能です。
また、B型肝炎訴訟を被害者自身で提起することは、裁判所への訴状の提出、準備書面の作成や証拠資料の収集など、かなりの負担が大きくなります。
B型肝炎給付金の受給を検討されている方は、早い段階から弁護士に相談してみることをおすすめします。一度弁護士の話を聞いておくだけでも有益な情報を得られるでしょう。
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担当者
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■経歴
2019年12月 弁護士登録
2020年1月 都内法律事務所にて勤務
2021年8月 法律事務所リーガルスマートにて勤務
担当記事
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